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第一部
新魔法開発
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「お、デュアルスペルのスキルが生えたぞ」
「マジですか」
「おう。並列思考スキルもあるし、これがそろってるといろいろ捗るんだよな」
魔法を使いながら日常生活を送ってはや一日。並列思考スキルが生まれた。これを使ってさらに別属性の魔法の同時使用を行うと生えてくるのがデュアルスペルだ。
「柊はずるい……」
莉緒がジト目で見てくるけど、成長率マシマシ度は俺の方が高いのでそれは仕方がない。
「でも莉緒も早いよね。特に魔法関連は」
「それはそうだけど……」
莉緒は魔法に特化しているとはいえ、スキルの成長率は俺の四分の一だ。なんだけど、それよりは早い気がするんだよね。
「やっぱり莉緒には数字には表れない才能があるってことじゃないかな」
「そ、そうかな……」
えへへと笑う莉緒がとてもかわいいです。鼻血出そうです。
「そこは職業も多少は影響が出てるのかもしれんな」
師匠の言葉にも納得だ。なにせ俺は未だに無職だからね。
「まぁ本題に戻すぞ。デュアルスペルを意識して、ひとつの思考で魔法を二種類使う。で、もうひとつの思考で魔法を使えば……」
「トリプルスペルのスキルが生える?」
「その通り。クワッド以降の多重スペルも同じやり方だな。スキルを意識するのとしないのとでは、取得までの時間が短くなるんだ」
「へぇ」
しばらく三種類の魔法を使い続けていたところ、またもや師匠からの言葉がかかった。
「トリプルスペルきたぞ」
こうして調子よくスキルを覚えていけるのも師匠のおかげだ。教え方がスパルタってのもあるんだけど、一番の要因は『鑑定』が使えること……なのかな。こうやってスキルを覚えたことがわかれば、すぐに次のスキルの覚え方にシフトできるからだ。
「はい」
「くくく、この調子だと弟子に抜かれるのもすぐだな」
「いやいやそんな、師匠にはさっぱり敵う気がしませんて。三百年以上の人生はさすがだと思いますもん」
謙遜でもなんでもなく実感を込めて返すも、何言ってんだコイツみたいな視線を返される。
「合わせて成長率千倍が何を言っている。三百年の経験なんぞ四か月かからんだろうが」
「ええぇぇぇ……」
あんまりな言葉に絶句していると、莉緒もポカーンとした表情になっている。
「とはいえだ。場数は千倍踏めるわけじゃないから、すぐにとはいかんだろうが」
「ですよねー」
ちょっと安心していると師匠がニヤニヤと笑い始める。
「なんだ、オレを超えたくはないのか?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
なんというか師匠は師匠らしくいて欲しいというか。教えてもらうことがなくなると寂しい……、ってすげー女々しいなこれ!
「すぐに師匠を超えて見せます!」
「くくく、その意気だ、嬢ちゃん」
莉緒はやる気満々だな。これで俺もやる気を出さなけりゃ男じゃない。
「やってやろうじゃないですか!」
触発されて気合を入れるも。
「あぁ、まぁテキトーにがんばってくれ」
「投げやり!」
師匠はすでにこのやりとりに興味を失った後であった。
「そういえば師匠。氷魔法とか雷魔法ってのはないんですか?」
ある時気になったので師匠に聞いてみた。
「氷はわかるが……、雷魔法だと?」
「えっ?」
俺なんか変なこと言った? すげー師匠が睨んでくるんだけど……。
「雷魔法ってないんですか?」
助け舟を出してくれたのか、莉緒が代わりに師匠に確認してくれる。
「ない。……というか、雷は光魔法の一種と言われているんだが」
「そうなんですか? ……でも電気は光とは違いますよ?」
「デンキ? デンキとは何だ?」
あれ? そこから? ってそうか。召喚された先と師匠の家しか知らないけど、この世界って科学はそこまで発達してなかったか。
「えーっと、師匠は静電気って知ってます? 冬場に金属を触るとバチッてくるあれ」
「んん……? なんだそれは。あー、もしかしてビデブ現象と呼ばれてるやつか? ってまさか……!」
ビデブ現象ってなんやねん。誰だよ静電気にそんな名前つけた奴! でもまぁ似た現象があってよかった。細かい説明とか無理だし。
「はい、そのまさかです。雷はその現象を超強力にしたやつです」
「なんてこった。……長年研究はされていたが、再現できなかった理由がこうも簡単に判明するとは。光魔法の延長と考えること自体が間違いだったのか。……いやだがあの仮説は途中までは有効なのではないか……」
「また始まった」
ブツブツと呟きながら自分の世界に入ってしまった師匠は放置するか。それに、ないと言われた雷魔法。断然興味が出てきたぞ。もしかしてこの世界初の新属性スキルが生えるかもしれない……!
えーっと、確か電気は電子の移動だっけ。……よし、右手から左手に電子が移動するイメージを持って魔力を……。
一時間ほど試行錯誤するも何かうまくいかない。もうちょっとな気がするんだけど何が足りないんだろうか。手と手の隙間が大きいからなのか……、そういえば空中放電するには超高電圧がいるとか聞いたことが。手と手をゆっくり近づけていけば……。
バチッ!!
「いってえぇぇぇ! ……でもできた! もしかしてスキル生えたんじゃね!?」
「……柊も立派なスキルマニア」
興奮する俺には、ぼそりと呟く莉緒の声が聞こえることはなかった。
「マジですか」
「おう。並列思考スキルもあるし、これがそろってるといろいろ捗るんだよな」
魔法を使いながら日常生活を送ってはや一日。並列思考スキルが生まれた。これを使ってさらに別属性の魔法の同時使用を行うと生えてくるのがデュアルスペルだ。
「柊はずるい……」
莉緒がジト目で見てくるけど、成長率マシマシ度は俺の方が高いのでそれは仕方がない。
「でも莉緒も早いよね。特に魔法関連は」
「それはそうだけど……」
莉緒は魔法に特化しているとはいえ、スキルの成長率は俺の四分の一だ。なんだけど、それよりは早い気がするんだよね。
「やっぱり莉緒には数字には表れない才能があるってことじゃないかな」
「そ、そうかな……」
えへへと笑う莉緒がとてもかわいいです。鼻血出そうです。
「そこは職業も多少は影響が出てるのかもしれんな」
師匠の言葉にも納得だ。なにせ俺は未だに無職だからね。
「まぁ本題に戻すぞ。デュアルスペルを意識して、ひとつの思考で魔法を二種類使う。で、もうひとつの思考で魔法を使えば……」
「トリプルスペルのスキルが生える?」
「その通り。クワッド以降の多重スペルも同じやり方だな。スキルを意識するのとしないのとでは、取得までの時間が短くなるんだ」
「へぇ」
しばらく三種類の魔法を使い続けていたところ、またもや師匠からの言葉がかかった。
「トリプルスペルきたぞ」
こうして調子よくスキルを覚えていけるのも師匠のおかげだ。教え方がスパルタってのもあるんだけど、一番の要因は『鑑定』が使えること……なのかな。こうやってスキルを覚えたことがわかれば、すぐに次のスキルの覚え方にシフトできるからだ。
「はい」
「くくく、この調子だと弟子に抜かれるのもすぐだな」
「いやいやそんな、師匠にはさっぱり敵う気がしませんて。三百年以上の人生はさすがだと思いますもん」
謙遜でもなんでもなく実感を込めて返すも、何言ってんだコイツみたいな視線を返される。
「合わせて成長率千倍が何を言っている。三百年の経験なんぞ四か月かからんだろうが」
「ええぇぇぇ……」
あんまりな言葉に絶句していると、莉緒もポカーンとした表情になっている。
「とはいえだ。場数は千倍踏めるわけじゃないから、すぐにとはいかんだろうが」
「ですよねー」
ちょっと安心していると師匠がニヤニヤと笑い始める。
「なんだ、オレを超えたくはないのか?」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
なんというか師匠は師匠らしくいて欲しいというか。教えてもらうことがなくなると寂しい……、ってすげー女々しいなこれ!
「すぐに師匠を超えて見せます!」
「くくく、その意気だ、嬢ちゃん」
莉緒はやる気満々だな。これで俺もやる気を出さなけりゃ男じゃない。
「やってやろうじゃないですか!」
触発されて気合を入れるも。
「あぁ、まぁテキトーにがんばってくれ」
「投げやり!」
師匠はすでにこのやりとりに興味を失った後であった。
「そういえば師匠。氷魔法とか雷魔法ってのはないんですか?」
ある時気になったので師匠に聞いてみた。
「氷はわかるが……、雷魔法だと?」
「えっ?」
俺なんか変なこと言った? すげー師匠が睨んでくるんだけど……。
「雷魔法ってないんですか?」
助け舟を出してくれたのか、莉緒が代わりに師匠に確認してくれる。
「ない。……というか、雷は光魔法の一種と言われているんだが」
「そうなんですか? ……でも電気は光とは違いますよ?」
「デンキ? デンキとは何だ?」
あれ? そこから? ってそうか。召喚された先と師匠の家しか知らないけど、この世界って科学はそこまで発達してなかったか。
「えーっと、師匠は静電気って知ってます? 冬場に金属を触るとバチッてくるあれ」
「んん……? なんだそれは。あー、もしかしてビデブ現象と呼ばれてるやつか? ってまさか……!」
ビデブ現象ってなんやねん。誰だよ静電気にそんな名前つけた奴! でもまぁ似た現象があってよかった。細かい説明とか無理だし。
「はい、そのまさかです。雷はその現象を超強力にしたやつです」
「なんてこった。……長年研究はされていたが、再現できなかった理由がこうも簡単に判明するとは。光魔法の延長と考えること自体が間違いだったのか。……いやだがあの仮説は途中までは有効なのではないか……」
「また始まった」
ブツブツと呟きながら自分の世界に入ってしまった師匠は放置するか。それに、ないと言われた雷魔法。断然興味が出てきたぞ。もしかしてこの世界初の新属性スキルが生えるかもしれない……!
えーっと、確か電気は電子の移動だっけ。……よし、右手から左手に電子が移動するイメージを持って魔力を……。
一時間ほど試行錯誤するも何かうまくいかない。もうちょっとな気がするんだけど何が足りないんだろうか。手と手の隙間が大きいからなのか……、そういえば空中放電するには超高電圧がいるとか聞いたことが。手と手をゆっくり近づけていけば……。
バチッ!!
「いってえぇぇぇ! ……でもできた! もしかしてスキル生えたんじゃね!?」
「……柊も立派なスキルマニア」
興奮する俺には、ぼそりと呟く莉緒の声が聞こえることはなかった。
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