DD!~ドーテイ刑事(デカ)の事件簿~

藤崎岳

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第4章 罪の告白

1話②

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 その後すぐ、大輔は晃司と桂奈と、柏葉館を訪ねることになった。少年たちの身元を特定する資料を借りるためだ。 

 桂奈が柏葉館に連絡すると、いつ来ても構わないと永田の妻の許可を得たので、早速向かう。 

 一太は穂積と、永田のPCから見つかった秘密のファイルを調べている。大輔も手伝えれば晃司と行動を共にしないですんだが、大輔のPCスキルでは一太の邪魔になるだけだったので、仕方なくこちら側になった。 

 三人で地下の車両係に向かう。その間中、大輔は無言だった。永田の被害者を調べることが憂鬱で、気が重い。 

 そして一緒の晃司もまた、口数が少なかった。桂奈に話しかけられても、相槌だけを返し、大輔に話しかけることも、見ることもなかった。 

 晃司に無視されている、という事実がジワジワと効いてくる。 大輔は自分で気づかぬうちに、何度もため息を吐いていた。 

 地下一階までエレベーターで下りる。そして車まで着くと、桂奈がとうとう耐えられなくなった。尋常でない空気の、大輔と晃司に。 

「あの~、今日はどうしたんですか?」 

「……なにが?」 

 晃司がとぼけた感じで答える。桂奈は軽く肩を竦めた。 

「二人とも、すっごく静かだから」 

 いつもうるさいのに。と言って桂奈は笑ってくれたが、二人は相変わらず黙したままだった。シンとして、桂奈がガクッと肩を落とす。 

「ほら~、絶対変……」 

「大輔、お前残ってもいいぞ」 

 ふいに晃司に呼ばれた大輔は、弾かれたように顔を上げた。 

「……え?」 

「一太と……穂積の手伝いしてろよ。その方がいいんだろ?」 

 意図が読めない言葉に、混乱する。そもそも、昨日と言っていることがまったく違う。 

 穂積と二人になるな、と怒ったのは晃司だったのに。 

 柏葉館に行くのが怖いという気持ち。今こうしている間にも、一太が少年の一人に気づいたかもしれないという焦り。晃司がなにを考えているのかわからない――不安。 

 大輔は、複雑に混じりあった感情に押し潰されてしまいそうだった。 足が重くて動けなくなる。 

「……大輔くん?」 

「なんなんだよ、あんた」 

 大輔は晃司を睨みつけた。 

 桂奈が驚いている。大輔に睨まれた晃司も、突然のことに顔を強張らせた。 

 大輔は、わかっていた。これは八つ当たり――ただの甘えだと。 

 しかし、自分を抑えられなかった。感情のコントロールが効かなくなった。 

「好き勝手にセクハラしたり、偉そうに怒鳴りつけてきたり……なに考えてんのか、ちっともわかんねぇよ!」 

 パン! 乾いた音が地下駐車場に響いた。 

「落ち着きなさい、堂本巡査」 

 桂奈が大輔の頬を打った。 

「一体どうしたの? そんなんじゃ一緒に仕事できない。君は……残りなさい」 

 桂奈は大輔に厳しく言いつけた。 

「係長への言い訳は自分で考えて。そこまで面倒見れない。小野寺さん、行きましょう」 

 大輔は我を失った自分に愕然とし、下を向いて二人を見ることができなかった。 

 晃司と桂奈が車に乗り込む。ドアがバタンと大きな音を立てて閉まる。怒ったようなドアの音は、桂奈だろうか。 

 大輔は、自分が情けなくてたまらなかった。 

 遅れて、もう一つのドアが静かに閉まる。その際、晃司の視線を感じたような気もしたが――それは大輔の願望だったかもしれない。 

 私情に乱されてまともに働けない男など、同情してくれる人間はいないだろう。 

 情けなくて悔しくて――恥ずかしくて、走り出した車を見送ることもできなかった。 

 
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