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第五章 危険な夢のつづき
2話
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夜の北荒間に紛れた二人は、その最奥に立つラブホテル「M」に入った。「M」は、大輔が初めて晃司に襲われた、あのラブホテルだ。
保安係と密な関係があり、ホテルの諸々のことに保安係が目をつぶるかわりに、保安係もこのホテルを色々言えないことに利用している。 だから男二人がフロントを通っても、従業員はなにも言わない。ほぼ顔パスでフロントを抜け、適当に空いた部屋にチェックインする。奇しくも、部屋は前に晃司に襲われたのと同じ三〇四号室だった。
無言で部屋に入り、ドアが閉まった瞬間――。
二人はキスをした。
荒間署からずっとその欲望を抑えてきた。それが爆発したように、互いの唇を激しく貪った。
大輔は、キスの仕方なんて知らない。けれど、初めて晃司に口づけられた時のあの荒々しさが欲しくて、見様見真似で晃司を求めた。
晃司のキスは、今日もまるで怒っているような乱暴さだった。息苦しくなって、逞しい背中に必死で捕まる。 苦しくて眩暈がしても離れたくなかった。この唇を、離したくなかった。
「んっ、んふぅ……」
大輔から、甘い吐息が零れる。
二人はキスを交わし、抱き合いながら靴を脱ぎ捨て、そのまま狭い部屋のほとんどを占領する大きなベッドになだれ込んだ。 二人でベッドに倒れて、その拍子にやっと唇が離れる。
上になった晃司が、大輔を見つめる。もう半分意識が蕩けていた大輔は、こんな場面に不似合な、晃司の不安げな瞳に首を傾げた。
「なぁ……イヤなことは、イヤだって言えよ?」
こんなに激しいキスをしているのに、晃司は不思議なことを言い出した。
蕩けていた大輔は、少しして思い出した。前にこの部屋、このベッドで泣いてしまったことを。
あの時大輔は、初めて他人から与えられた性的刺激に戸惑い、混乱し、幼い日の忌まわしい記憶が蘇ってしまった。過去と現在が交錯し、不安と恐怖でたまらず泣き出してしまった。
首を横に捻り、ベッドの左側を見る。壁一面の鏡に、晃司と晃司に組み敷かれた自分が映っていた。
恥ずかしくて目を逸らしたくなったが――恐怖や不安は感じなかった。
鏡に映るのは、幼い兄と永田ではない。大人の自分と――晃司。
大輔は顔を戻し、晃司を見上げた。真っ直ぐ自分を見つめてくる、心配そうな瞳に胸が温かくなる。
大輔は少し首を伸ばし、自ら口づけた。チュッと軽いキスを。
晃司が目を瞬かせる。大輔ははにかんで笑った。
「わかんない……です。なにがイヤで、なにがイイのかわかんないから……小野寺さんが教えてください」
晃司なら、大丈夫だから――。
口に出来ない言葉は、視線に込める。それはちゃんと伝わって、晃司がウットリと微笑んだ。
「晃司、だ」
「え?」
「こんな時に小野寺さんはねぇだろ? 晃司って呼べよ」
聞いたこともない甘ったるい声で囁かれ、大輔の瞳がトロンとする。
「……晃司、さん」
愛しい人の名を呼ぶと、体の中に危険な炎が灯った。
「大輔」
晃司が大輔の名前を呼ぶ。その甘い響きに身を震わせていると、耳朶を甘噛みされた。
大輔の体がビクッと跳ねる。それに気をよくした晃司は耳朶を舐めた後、耳の穴に舌を差し込んだ。
「あんっ!」
思わず漏れた甘い声。 晃司がニヤつく。
「耳、感じるのか?」
「……し、知らないっ」
本当に知らなかったのだ。自分の体にこんな弱点があるなんて。晃司の息が耳にかかるだけで、勝手に体が震えてしまう。
「んっ! ……んん、んぅ!」
大輔は唇をきつく噛んで、恥ずかしい声が漏れないよう我慢した。それをからかうように、晃司は形のよい耳朶を舐めながら手を伸ばし、ワイシャツ越しに大輔の知らない、もう一つの弱点を弾いた。
「ひぁ、っん!」
ビリリと全身に走った甘い痛みに、大輔はとうとう声を堪えられなくなった。
「やっ、まっ、あ……」
戸惑う大輔がボーッとしている間に、晃司が手早く大輔のネクタイを解き、脱がせたジャケットと共にどこかに放り投げた。
蕩けた目で晃司を見上げる。晃司はネクタイを外し、脱いだジャケットをやはりどこかに投げ捨てた。大輔と目が合うと、危険な笑みを浮かべて舌なめずりをした。
ゾクリとする。大輔は晃司の視線にさえ感じた。
晃司が覆い被さってくる。ワイシャツの前をはだけられ、下着のTシャツをたくし上げられ、素肌が晒された。
晃司に裸を見つめられ、大輔の身も心も火照る。恥ずかしくてたまらないのに、体の奥が疼いてどうしようもない。
「あっ、んん!」
胸の突起に直に触れられ、上ずった声が出る。
「ひゃっ、あ! うん、ああっ……」
片方を弄られながら、もう片方を舌で突かれた。淡い色の乳首が、あっという間に赤く色づいていく。
「ふぅっ……あ、あっ……ん、あぁん!」
大輔の声が激しくなるにつれ、晃司の責めも激しくなる。赤くなった突起を痛いほど吸われ、大輔の上体が大きくのけ反る。
大輔はすっかり蕩けて甘い声を上げながら、我を忘れて晃司に抱きついていた。晃司は、そんな大輔の反応を見逃さない。
スルスルと晃司の手が大輔の下半身へ伸びていき、スーツのズボンの上からすでに硬くなった大輔自身に触れた。
「あぁっ! ダメ!」
大輔の全身が大きく震えたが、それは決して恐怖や嫌悪感から来るものではなかった。百パーセント混じりけのない——快感。
触れるか触れないかの弱い力で硬くなったモノを布越しに触られ、同時に胸も弄られ、大輔の快感は強まる一方だった。
「あ、あぁっ! ……こう、じさん……それ、やだぁっ……も、う……」
触ってほしい——そんなはしたないことはどうしても言えなくて、甘えるように晃司を睨む。そうして目が合った晃司は——不安そうだった。
いやだ——と大輔が訴えたからだろう。
優しい晃司に胸が甘く痛み、目が潤む。涙目の大輔に、いよいよ晃司が慌て出した。
「大輔……大丈夫か?」
大輔を気遣う晃司が体を起こそうと――離れていこうとしたので、咄嗟にその腕を掴んだ。潤んだ瞳で晃司を見つめる。
晃司が欲しくてたまらなかった。
大輔は、晃司のために羞恥心を捨てる覚悟をした。
「触って、ほしいです……」
言いながら、晃司が触れる下半身を淫らにくねらす。
恥ずかしくて死にそうだったが、優しい晃司のため、そしてなにより晃司にやめてほしくなくて勇気を振り絞った。
それなのに——晃司が意地悪く笑った。
「どこを?」
そう訊いて、手を内腿に滑らせた。触ってほしい高ぶりにギリギリ触れない辺りを、優しいタッチで撫で回す。大輔は焦れて腰を揺らし、弱く訴えた。
「そ、そこ……」
「ん? どこだよ? 言わねぇとわかんねぇよ」
晃司は優しいのに、意地悪だ。
そんな恥ずかしいこと絶対に言えない大輔は――濡れた瞳で晃司を睨み、自らズボンの前を寛げ、ズボンを下着ごとずらした。
すでに硬く勃ち上がった自身が勢いよく飛び出す。恥ずかしくて、たまらず顔を両腕で隠した。
「大輔、お前……」
晃司の切なげな声が聞こえた。それから衣擦れの音がして――。
「んああっ!」
一気に根元まで大輔の幹が咥えられた。
「あっ! ⋯⋯うそっ⋯⋯あ、あぁっんん!」
ジュルリ、といやらしい音を立てながら、晃司が幹を唇で扱く。
(そんな、にしたら……)
大輔の内腿に力が入る。すると晃司は強い刺激を止め、先端を舌でチロチロと舐めた。
「やぁっ、ぅんん、ん!」
優しい刺激はもどかしくて、大輔は揺れる腰を抑えられない。もっともっと——と、自分でも気づかぬうちに、晃司に下半身を押しつけていた。
「はぁ⋯⋯あぁ、いい……いいっ、んん……あぁ」
大輔が快感を恥じらうことなく伝えるようになると、晃司は大輔のズボンと下着を脱がせ、ベッドの下に静かに落とした。そのまま優しく足を開かせる。
大輔はもうなにもわからないほど快感に溺れていたので、されるがままだった。ただひたすら晃司の愛撫に酔う。
「ひぅ、あ⋯⋯あぁん……いぃっ⋯⋯」
晃司に身を任せていると、軽く腰を持ち上げられた。少し苦しくなって晃司を見ると、彼の手にはいつどこから取ってきたのか、小さなボトルがあった。
(な、に……?)
蕩けた頭で懸命に考えているうち、晃司がボトルからトロリとした透明の液体を手に出した。その手で、大輔の体の一番奥に触れる。
「え?! ⋯⋯あっ!」
ヒヤリと冷たい感触に、火照った体が一瞬冷める。
「力抜いてろよ」
晃司は少し切羽詰まったような声で言った。そしてまた、大輔の硬いままの自身を口で愛撫した。
「⋯⋯あぁん!」
巧みな口淫にすぐまた体が燃えるように熱くなる。安心して快感に溺れていると、体の奥に触れた指がユルユルと固い蕾を撫で始めた。
少ない知識で、なにをされるか想像した。しかし、怖くはなかった。
「いぃ……こう、じ……いぃん、ぁんんっ!」
ツプと、晃司の指が体の中に入るのを感じた。驚きはしたが、痛くはなかった。晃司が絶えず快感を与えてくれているので、全身の力が抜けていたからかもしれない。
「あうっ、あぁ……ん、ん、んぅ……」
指が大輔の中で蠢く。そして巧みな晃司は、大輔の最大の弱点を容易く見つけた。
「あぁっ、んぁあああ!」
晃司がどこかを指で擦った。すると大輔は、感じたことのない強烈な快感に襲われた。
「やっ、なに? ……え?! あっ……あぁあ、んぁああっ!」
体がビクビクと跳ねる。しかし、晃司が大輔の腰を押さえつけるように口淫を激しくするから、突然襲ってきた強い快感を逃がせない。
「いっ、あぁあん! いいっ⋯⋯きもち、いいっ⋯⋯」
体の奥から怖いほどの快感がこみ上げ、全身が大きく震えた。
「うそっ⋯⋯ダメッ、あっ、あぁ、あぁああんん!」
自分でもわからぬうちに、大輔は射精していた。
「ぁ⋯⋯あ⋯⋯はぁ、あぁ⋯⋯」
大輔は、自分の足の間にある晃司の頭、見た目より柔らかい髪を弱々しく掴んだ。
晃司は大輔が射精しているのに、口を離してくれなかった。それどころか全て飲み干そうとするかのように、射精している間も強く吸われた。大輔は止めることもできず、全て晃司の口に吐き出してしまった。
(なに、これ……)
射精した後も、快感の余韻が強くて体に力が入らなかった。 大輔がグッタリしていると晃司が体を起こし、口元を拭った。自分の精液を拭う晃司の姿に、またエロスを感じる。
感じても感じても、収まらない情欲に戸惑う。
晃司もそんな目をしていた。燃えて濡れた、危険な瞳だった。
晃司は荒い息を吐きながら腕まくりし、己のズボンのファスナーを下ろした。
そして現れた、大きくて太いソレに大輔の顔が引きつる。
(……ムリ!)
これからされることを、少ない知識から導き出して恐ろしくなった。大輔の顔が強張って晃司がクスリと笑う。
「バ~カ。イキナリ挿れたりしねぇよ」
晃司は大輔の額にチュッとキスをした。晃司の優しさはありがたかったが、それはそれで困惑する。
(それじゃあ……晃司さんは?)
今度は自分が晃司のモノを舐めたり、お尻を弄ったりするのだろうか?
(……ムリ)
なにをどうしてよいのか、知識も経験も乏しい大輔には皆目見当がつかない。 大輔が困り果てていると、晃司がまた笑った。
「こうすんだよ」
晃司が大輔の体勢をひっくり返し、うつ伏せにした。それから腰を上げて四つん這いにさせる。
「え? こ、晃司さん?!」
獣のような姿勢に、恥ずかしさがこみ上げる。しかも尻を高く上げられたせいで、色々モロモロ丸見えになってしまった。
「……あ!」
ふいに、尻に熱いモノを感じた。後ろを振り返ると、晃司が大きく滾った自身を大輔の尻の谷間に当てていた。
やはり挿入するのだろうか、と焦ったが、晃司はそうしなかった。そのまま、熱い肉塊を擦り続ける。
「これなら、痛くないだろ?」
晃司がニヤリと笑う。そしてローションを大輔の尻と自分のモノに垂らし、滑りを良くした。
「んっ……」
大輔は枕に顔を伏せた。硬く熱い肉棒が、尻の谷間や時折前の方に滑って、会陰や袋をくすぐる未知の感覚にもどかしくなった。
「ああ……気持ちいいな……」
晃司がウットリと囁き、大輔に覆い被さって耳や首筋を舐める。
「大輔……お前、可愛いな……」
「あっふぅん!」
晃司に後ろから自身を握られた。少し柔らかくなっていたが、晃司の手の熱さに硬度を取り戻す。
晃司がローションを増やした。ヌチャヌチャと淫猥な音を立て、晃司が大輔の尻に擦りつけ続ける。
その間、晃司はずっと大輔の屹立も扱き、耳を噛んだり首を吸ったりするから――。
「ぃん……いぃ……あぁはっ、いい……」
大輔はまた快感の波に呑みこまれた。さっき射精したばかりなのに、さっきより硬く太くなっている。
はしたない己の下半身を見下ろし、大輔は恥ずかしくてたまらなくなって、扱く晃司の手を掴んだ。
「こ、晃司さん……」
「ん? ……どうした?」
「あっ! イヤッ!」
大輔を扱くのを止めると、晃司はローションで濡れそぼった蕾に指を埋めた。たっぷりのローションのお陰で、晃司の指はスルリと飲み込まれた。
クチュクチュと蕾が弄られる。性器を扱かれるのとはまた違う刺激に、大輔は声を上げた。
「お、小野寺さんっ」
「コラッ!」
お仕置きだ、とばかりに指が深く突き立てられる。そしてまた、あの弱点を強く刺激された。
「あっ! やぁあんん!」
大輔は高く上がった尻を、自らねだるように揺らした。
「こ、こう、じさん……もう……」
「……ん? なんだよ?」
晃司がまた意地悪をしてくる。大輔は首を後ろに捻り、まったく迫力のない目で睨んだ。
「だい、じょうぶ、だから……んんっ」
指が抜かれ、大輔のモノより一回り大きい先端が蕾に押し当てられた。 その熱さに、大輔の蕾が開き始める。
「なに? 聞こえねぇよ?」
晃司だって焦れた目をしているのに、余裕そうに先端で小さな孔を突いてくる。クポックポッと卑猥極まりない音に耳を犯され、大輔の脳は完全に蕩けた。
大輔は、どうしたって晃司に敵わない。
「……挿れて」
はしたない言葉も、我慢できない。
「ねぇ……挿れて?」
自ら発したいやらしい言葉に、悔しくも燃えてしまう。
晃司ももう、意地悪を言わなかった。怒ったように無言のまま、ベッドボードに並べられたゴムを取って瞬く間に自身に装着した。
「力、入れるなよ……」
晃司の声は掠れ、興奮しているのが伝わった。しかし晃司は、急いて挿入することはなかった。
グッと、最初だけ力を込めたが、その後はとてもゆっくりと、時間をかけて大輔の中に押し入ってきた。
「あ、うっ、ぅん……」
多めのローションと、晃司がゆっくりしてくれたせいか、さほど痛みはなかった。しかし、とにかく苦しい——。
太いモノに体をこじ開けられていく苦しさで、息が詰まる。
「少し、我慢しろ……」
晃司も苦しそうに言った。そしてかなり長い時間をかけて、晃司が全て大輔の中に入った。
大輔は苦しくて、顔を伏せた枕をギュッと掴んだ。息が浅くしか吸えない。そうして堪えていると晃司が倒れてきて、アムッと大輔の耳を咥えた。
「あっ!」
ふいに快感を与えられ、体から力が抜ける。
「……ごめんな、痛いよな」
優しく囁いて、晃司は背後から腕を回して大輔の乳首に触れた。言葉と同じように優しく乳首を撫でられ、大輔はビクビクと震えた。
「やっ! ……あ、あっ、あぅ……ん」
乳首を弄られたまま、もう片方の手が腹を撫で、そのまま下りていく。そして大輔が期待した通り、力を失くした幹を掴んだ。
「あっ……んう、あぁ……はぁあん!」
乳首を摘ままれ、自身を優しく扱かれる。そうしているとすぐに強い快感が戻ってきた。それだけでなく、体を押し開かれた苦しさがスッと軽くなった。
大輔の体の変化を見逃さず、晃司がググッと腰を揺する。
「あっ! あぁあ、ぁああ!」
さっき散々指で弄られた、大輔が知らない大輔の中の弱点を硬くて熱い先端が擦った。それは目が眩むほど、強い快感だった。
「あ! やぁ! ……イイっ! あぁっ、やぁん!」
イイとヤダを繰り返し、大輔は喘いだ。
晃司が体を起こす。晃司も荒い息で、大輔の腰を掴んで激しく突いた。
「……あぁっ、イイ……イイよぉ……うぅんっ」
無意識で大輔の腰も揺れていた。晃司に激しく責め立てられ、再び絶頂の波が押し寄せてくる。
「ふぁっ……んん、あぁあん!」
大輔の絶頂が近いことに気づいた晃司が、硬くなってよだれを垂らす大輔の肉茎を激しく扱いた。それに合わせ、抽挿も激しく荒々しくなる。
「あっ……あぁ! こう、じさん、俺……もう……ひぃん!」
「俺も、イク……」
晃司が大輔の耳を舐めて吸った。
「あっ、あぁあ!」
大輔の背が大きくのけ反る。
「うっ……」
晃司が短く息を吐いた。そして大輔は感じた。自分の中の晃司が、一際大きくなったのを。体の奥を大きく押し広げられ、その熱に大輔は追い詰められ――達した。
「あぁはっ……んん、あぁああっ!」
大輔は激しく震え、さっきと変わらぬ量を吐き出した。同時に晃司が大輔を強く抱きしめ、大輔の中で果てる。薄いスキン越しにも、晃司の熱が注がれたのが伝わった。
「は……あ、はぁあ……ん……」
大輔は足に力が入らなくなって、そのままベッドに倒れ込んだ。ベッドに零した自分の精液が腹についたが、拭う元気もない。晃司も、繋がったまま大輔に覆い被さった。
(……お、重い……)
けれどその重みは、温かくて幸せなものだった。耳に、晃司の熱い息がかかる。
燃えるような快感が去っても、冷めない温もりがあった。
大輔は肩で息をしながら、首を捻って晃司を見つめた。
まだ息の整わない晃司が、大輔を見つめ返す。
二人は言葉もなく、穏やかで優しいキスをした。
愛しさが胸に満ち、幸せだった。
——と、どこかから携帯のバイブ音が響いた。
二人は――目を見開いた。
ティロンティロン――今度はバイブ音ではなく着信音が聞こえた。二人の携帯電話が同時にどこかで鳴り始めたのだ。
大輔と晃司は、見つめ合ったまま青くなった。
「お、小野寺さん、俺たち……」
「勤務中、だった」
二人は一斉に飛び起きた。
「イテーッ!」
今になって、大輔のお尻がとんでもなく痛む。
「大丈夫か?! 大輔は寝てろ……て、携帯どこだよ?!」
晃司が床に散らばった、どちらのものともわからぬスーツや下着をひっくり返す。
やがて、ホテルの固定電話まで鳴り出した。
二人は飛び上がった。
「まずい! とにかく署に戻るぞ、大輔!」
「はい! ……イターッ!」
初めての夜――の甘い余韻に浸る間などまったくなく、二人は皺くちゃのスーツで荒間署に飛んで帰った。
夜の北荒間を駆け抜ける、大輔と晃司――。
二人の手は――恋人同士の手は、堅く繋がれたままだった。
保安係と密な関係があり、ホテルの諸々のことに保安係が目をつぶるかわりに、保安係もこのホテルを色々言えないことに利用している。 だから男二人がフロントを通っても、従業員はなにも言わない。ほぼ顔パスでフロントを抜け、適当に空いた部屋にチェックインする。奇しくも、部屋は前に晃司に襲われたのと同じ三〇四号室だった。
無言で部屋に入り、ドアが閉まった瞬間――。
二人はキスをした。
荒間署からずっとその欲望を抑えてきた。それが爆発したように、互いの唇を激しく貪った。
大輔は、キスの仕方なんて知らない。けれど、初めて晃司に口づけられた時のあの荒々しさが欲しくて、見様見真似で晃司を求めた。
晃司のキスは、今日もまるで怒っているような乱暴さだった。息苦しくなって、逞しい背中に必死で捕まる。 苦しくて眩暈がしても離れたくなかった。この唇を、離したくなかった。
「んっ、んふぅ……」
大輔から、甘い吐息が零れる。
二人はキスを交わし、抱き合いながら靴を脱ぎ捨て、そのまま狭い部屋のほとんどを占領する大きなベッドになだれ込んだ。 二人でベッドに倒れて、その拍子にやっと唇が離れる。
上になった晃司が、大輔を見つめる。もう半分意識が蕩けていた大輔は、こんな場面に不似合な、晃司の不安げな瞳に首を傾げた。
「なぁ……イヤなことは、イヤだって言えよ?」
こんなに激しいキスをしているのに、晃司は不思議なことを言い出した。
蕩けていた大輔は、少しして思い出した。前にこの部屋、このベッドで泣いてしまったことを。
あの時大輔は、初めて他人から与えられた性的刺激に戸惑い、混乱し、幼い日の忌まわしい記憶が蘇ってしまった。過去と現在が交錯し、不安と恐怖でたまらず泣き出してしまった。
首を横に捻り、ベッドの左側を見る。壁一面の鏡に、晃司と晃司に組み敷かれた自分が映っていた。
恥ずかしくて目を逸らしたくなったが――恐怖や不安は感じなかった。
鏡に映るのは、幼い兄と永田ではない。大人の自分と――晃司。
大輔は顔を戻し、晃司を見上げた。真っ直ぐ自分を見つめてくる、心配そうな瞳に胸が温かくなる。
大輔は少し首を伸ばし、自ら口づけた。チュッと軽いキスを。
晃司が目を瞬かせる。大輔ははにかんで笑った。
「わかんない……です。なにがイヤで、なにがイイのかわかんないから……小野寺さんが教えてください」
晃司なら、大丈夫だから――。
口に出来ない言葉は、視線に込める。それはちゃんと伝わって、晃司がウットリと微笑んだ。
「晃司、だ」
「え?」
「こんな時に小野寺さんはねぇだろ? 晃司って呼べよ」
聞いたこともない甘ったるい声で囁かれ、大輔の瞳がトロンとする。
「……晃司、さん」
愛しい人の名を呼ぶと、体の中に危険な炎が灯った。
「大輔」
晃司が大輔の名前を呼ぶ。その甘い響きに身を震わせていると、耳朶を甘噛みされた。
大輔の体がビクッと跳ねる。それに気をよくした晃司は耳朶を舐めた後、耳の穴に舌を差し込んだ。
「あんっ!」
思わず漏れた甘い声。 晃司がニヤつく。
「耳、感じるのか?」
「……し、知らないっ」
本当に知らなかったのだ。自分の体にこんな弱点があるなんて。晃司の息が耳にかかるだけで、勝手に体が震えてしまう。
「んっ! ……んん、んぅ!」
大輔は唇をきつく噛んで、恥ずかしい声が漏れないよう我慢した。それをからかうように、晃司は形のよい耳朶を舐めながら手を伸ばし、ワイシャツ越しに大輔の知らない、もう一つの弱点を弾いた。
「ひぁ、っん!」
ビリリと全身に走った甘い痛みに、大輔はとうとう声を堪えられなくなった。
「やっ、まっ、あ……」
戸惑う大輔がボーッとしている間に、晃司が手早く大輔のネクタイを解き、脱がせたジャケットと共にどこかに放り投げた。
蕩けた目で晃司を見上げる。晃司はネクタイを外し、脱いだジャケットをやはりどこかに投げ捨てた。大輔と目が合うと、危険な笑みを浮かべて舌なめずりをした。
ゾクリとする。大輔は晃司の視線にさえ感じた。
晃司が覆い被さってくる。ワイシャツの前をはだけられ、下着のTシャツをたくし上げられ、素肌が晒された。
晃司に裸を見つめられ、大輔の身も心も火照る。恥ずかしくてたまらないのに、体の奥が疼いてどうしようもない。
「あっ、んん!」
胸の突起に直に触れられ、上ずった声が出る。
「ひゃっ、あ! うん、ああっ……」
片方を弄られながら、もう片方を舌で突かれた。淡い色の乳首が、あっという間に赤く色づいていく。
「ふぅっ……あ、あっ……ん、あぁん!」
大輔の声が激しくなるにつれ、晃司の責めも激しくなる。赤くなった突起を痛いほど吸われ、大輔の上体が大きくのけ反る。
大輔はすっかり蕩けて甘い声を上げながら、我を忘れて晃司に抱きついていた。晃司は、そんな大輔の反応を見逃さない。
スルスルと晃司の手が大輔の下半身へ伸びていき、スーツのズボンの上からすでに硬くなった大輔自身に触れた。
「あぁっ! ダメ!」
大輔の全身が大きく震えたが、それは決して恐怖や嫌悪感から来るものではなかった。百パーセント混じりけのない——快感。
触れるか触れないかの弱い力で硬くなったモノを布越しに触られ、同時に胸も弄られ、大輔の快感は強まる一方だった。
「あ、あぁっ! ……こう、じさん……それ、やだぁっ……も、う……」
触ってほしい——そんなはしたないことはどうしても言えなくて、甘えるように晃司を睨む。そうして目が合った晃司は——不安そうだった。
いやだ——と大輔が訴えたからだろう。
優しい晃司に胸が甘く痛み、目が潤む。涙目の大輔に、いよいよ晃司が慌て出した。
「大輔……大丈夫か?」
大輔を気遣う晃司が体を起こそうと――離れていこうとしたので、咄嗟にその腕を掴んだ。潤んだ瞳で晃司を見つめる。
晃司が欲しくてたまらなかった。
大輔は、晃司のために羞恥心を捨てる覚悟をした。
「触って、ほしいです……」
言いながら、晃司が触れる下半身を淫らにくねらす。
恥ずかしくて死にそうだったが、優しい晃司のため、そしてなにより晃司にやめてほしくなくて勇気を振り絞った。
それなのに——晃司が意地悪く笑った。
「どこを?」
そう訊いて、手を内腿に滑らせた。触ってほしい高ぶりにギリギリ触れない辺りを、優しいタッチで撫で回す。大輔は焦れて腰を揺らし、弱く訴えた。
「そ、そこ……」
「ん? どこだよ? 言わねぇとわかんねぇよ」
晃司は優しいのに、意地悪だ。
そんな恥ずかしいこと絶対に言えない大輔は――濡れた瞳で晃司を睨み、自らズボンの前を寛げ、ズボンを下着ごとずらした。
すでに硬く勃ち上がった自身が勢いよく飛び出す。恥ずかしくて、たまらず顔を両腕で隠した。
「大輔、お前……」
晃司の切なげな声が聞こえた。それから衣擦れの音がして――。
「んああっ!」
一気に根元まで大輔の幹が咥えられた。
「あっ! ⋯⋯うそっ⋯⋯あ、あぁっんん!」
ジュルリ、といやらしい音を立てながら、晃司が幹を唇で扱く。
(そんな、にしたら……)
大輔の内腿に力が入る。すると晃司は強い刺激を止め、先端を舌でチロチロと舐めた。
「やぁっ、ぅんん、ん!」
優しい刺激はもどかしくて、大輔は揺れる腰を抑えられない。もっともっと——と、自分でも気づかぬうちに、晃司に下半身を押しつけていた。
「はぁ⋯⋯あぁ、いい……いいっ、んん……あぁ」
大輔が快感を恥じらうことなく伝えるようになると、晃司は大輔のズボンと下着を脱がせ、ベッドの下に静かに落とした。そのまま優しく足を開かせる。
大輔はもうなにもわからないほど快感に溺れていたので、されるがままだった。ただひたすら晃司の愛撫に酔う。
「ひぅ、あ⋯⋯あぁん……いぃっ⋯⋯」
晃司に身を任せていると、軽く腰を持ち上げられた。少し苦しくなって晃司を見ると、彼の手にはいつどこから取ってきたのか、小さなボトルがあった。
(な、に……?)
蕩けた頭で懸命に考えているうち、晃司がボトルからトロリとした透明の液体を手に出した。その手で、大輔の体の一番奥に触れる。
「え?! ⋯⋯あっ!」
ヒヤリと冷たい感触に、火照った体が一瞬冷める。
「力抜いてろよ」
晃司は少し切羽詰まったような声で言った。そしてまた、大輔の硬いままの自身を口で愛撫した。
「⋯⋯あぁん!」
巧みな口淫にすぐまた体が燃えるように熱くなる。安心して快感に溺れていると、体の奥に触れた指がユルユルと固い蕾を撫で始めた。
少ない知識で、なにをされるか想像した。しかし、怖くはなかった。
「いぃ……こう、じ……いぃん、ぁんんっ!」
ツプと、晃司の指が体の中に入るのを感じた。驚きはしたが、痛くはなかった。晃司が絶えず快感を与えてくれているので、全身の力が抜けていたからかもしれない。
「あうっ、あぁ……ん、ん、んぅ……」
指が大輔の中で蠢く。そして巧みな晃司は、大輔の最大の弱点を容易く見つけた。
「あぁっ、んぁあああ!」
晃司がどこかを指で擦った。すると大輔は、感じたことのない強烈な快感に襲われた。
「やっ、なに? ……え?! あっ……あぁあ、んぁああっ!」
体がビクビクと跳ねる。しかし、晃司が大輔の腰を押さえつけるように口淫を激しくするから、突然襲ってきた強い快感を逃がせない。
「いっ、あぁあん! いいっ⋯⋯きもち、いいっ⋯⋯」
体の奥から怖いほどの快感がこみ上げ、全身が大きく震えた。
「うそっ⋯⋯ダメッ、あっ、あぁ、あぁああんん!」
自分でもわからぬうちに、大輔は射精していた。
「ぁ⋯⋯あ⋯⋯はぁ、あぁ⋯⋯」
大輔は、自分の足の間にある晃司の頭、見た目より柔らかい髪を弱々しく掴んだ。
晃司は大輔が射精しているのに、口を離してくれなかった。それどころか全て飲み干そうとするかのように、射精している間も強く吸われた。大輔は止めることもできず、全て晃司の口に吐き出してしまった。
(なに、これ……)
射精した後も、快感の余韻が強くて体に力が入らなかった。 大輔がグッタリしていると晃司が体を起こし、口元を拭った。自分の精液を拭う晃司の姿に、またエロスを感じる。
感じても感じても、収まらない情欲に戸惑う。
晃司もそんな目をしていた。燃えて濡れた、危険な瞳だった。
晃司は荒い息を吐きながら腕まくりし、己のズボンのファスナーを下ろした。
そして現れた、大きくて太いソレに大輔の顔が引きつる。
(……ムリ!)
これからされることを、少ない知識から導き出して恐ろしくなった。大輔の顔が強張って晃司がクスリと笑う。
「バ~カ。イキナリ挿れたりしねぇよ」
晃司は大輔の額にチュッとキスをした。晃司の優しさはありがたかったが、それはそれで困惑する。
(それじゃあ……晃司さんは?)
今度は自分が晃司のモノを舐めたり、お尻を弄ったりするのだろうか?
(……ムリ)
なにをどうしてよいのか、知識も経験も乏しい大輔には皆目見当がつかない。 大輔が困り果てていると、晃司がまた笑った。
「こうすんだよ」
晃司が大輔の体勢をひっくり返し、うつ伏せにした。それから腰を上げて四つん這いにさせる。
「え? こ、晃司さん?!」
獣のような姿勢に、恥ずかしさがこみ上げる。しかも尻を高く上げられたせいで、色々モロモロ丸見えになってしまった。
「……あ!」
ふいに、尻に熱いモノを感じた。後ろを振り返ると、晃司が大きく滾った自身を大輔の尻の谷間に当てていた。
やはり挿入するのだろうか、と焦ったが、晃司はそうしなかった。そのまま、熱い肉塊を擦り続ける。
「これなら、痛くないだろ?」
晃司がニヤリと笑う。そしてローションを大輔の尻と自分のモノに垂らし、滑りを良くした。
「んっ……」
大輔は枕に顔を伏せた。硬く熱い肉棒が、尻の谷間や時折前の方に滑って、会陰や袋をくすぐる未知の感覚にもどかしくなった。
「ああ……気持ちいいな……」
晃司がウットリと囁き、大輔に覆い被さって耳や首筋を舐める。
「大輔……お前、可愛いな……」
「あっふぅん!」
晃司に後ろから自身を握られた。少し柔らかくなっていたが、晃司の手の熱さに硬度を取り戻す。
晃司がローションを増やした。ヌチャヌチャと淫猥な音を立て、晃司が大輔の尻に擦りつけ続ける。
その間、晃司はずっと大輔の屹立も扱き、耳を噛んだり首を吸ったりするから――。
「ぃん……いぃ……あぁはっ、いい……」
大輔はまた快感の波に呑みこまれた。さっき射精したばかりなのに、さっきより硬く太くなっている。
はしたない己の下半身を見下ろし、大輔は恥ずかしくてたまらなくなって、扱く晃司の手を掴んだ。
「こ、晃司さん……」
「ん? ……どうした?」
「あっ! イヤッ!」
大輔を扱くのを止めると、晃司はローションで濡れそぼった蕾に指を埋めた。たっぷりのローションのお陰で、晃司の指はスルリと飲み込まれた。
クチュクチュと蕾が弄られる。性器を扱かれるのとはまた違う刺激に、大輔は声を上げた。
「お、小野寺さんっ」
「コラッ!」
お仕置きだ、とばかりに指が深く突き立てられる。そしてまた、あの弱点を強く刺激された。
「あっ! やぁあんん!」
大輔は高く上がった尻を、自らねだるように揺らした。
「こ、こう、じさん……もう……」
「……ん? なんだよ?」
晃司がまた意地悪をしてくる。大輔は首を後ろに捻り、まったく迫力のない目で睨んだ。
「だい、じょうぶ、だから……んんっ」
指が抜かれ、大輔のモノより一回り大きい先端が蕾に押し当てられた。 その熱さに、大輔の蕾が開き始める。
「なに? 聞こえねぇよ?」
晃司だって焦れた目をしているのに、余裕そうに先端で小さな孔を突いてくる。クポックポッと卑猥極まりない音に耳を犯され、大輔の脳は完全に蕩けた。
大輔は、どうしたって晃司に敵わない。
「……挿れて」
はしたない言葉も、我慢できない。
「ねぇ……挿れて?」
自ら発したいやらしい言葉に、悔しくも燃えてしまう。
晃司ももう、意地悪を言わなかった。怒ったように無言のまま、ベッドボードに並べられたゴムを取って瞬く間に自身に装着した。
「力、入れるなよ……」
晃司の声は掠れ、興奮しているのが伝わった。しかし晃司は、急いて挿入することはなかった。
グッと、最初だけ力を込めたが、その後はとてもゆっくりと、時間をかけて大輔の中に押し入ってきた。
「あ、うっ、ぅん……」
多めのローションと、晃司がゆっくりしてくれたせいか、さほど痛みはなかった。しかし、とにかく苦しい——。
太いモノに体をこじ開けられていく苦しさで、息が詰まる。
「少し、我慢しろ……」
晃司も苦しそうに言った。そしてかなり長い時間をかけて、晃司が全て大輔の中に入った。
大輔は苦しくて、顔を伏せた枕をギュッと掴んだ。息が浅くしか吸えない。そうして堪えていると晃司が倒れてきて、アムッと大輔の耳を咥えた。
「あっ!」
ふいに快感を与えられ、体から力が抜ける。
「……ごめんな、痛いよな」
優しく囁いて、晃司は背後から腕を回して大輔の乳首に触れた。言葉と同じように優しく乳首を撫でられ、大輔はビクビクと震えた。
「やっ! ……あ、あっ、あぅ……ん」
乳首を弄られたまま、もう片方の手が腹を撫で、そのまま下りていく。そして大輔が期待した通り、力を失くした幹を掴んだ。
「あっ……んう、あぁ……はぁあん!」
乳首を摘ままれ、自身を優しく扱かれる。そうしているとすぐに強い快感が戻ってきた。それだけでなく、体を押し開かれた苦しさがスッと軽くなった。
大輔の体の変化を見逃さず、晃司がググッと腰を揺する。
「あっ! あぁあ、ぁああ!」
さっき散々指で弄られた、大輔が知らない大輔の中の弱点を硬くて熱い先端が擦った。それは目が眩むほど、強い快感だった。
「あ! やぁ! ……イイっ! あぁっ、やぁん!」
イイとヤダを繰り返し、大輔は喘いだ。
晃司が体を起こす。晃司も荒い息で、大輔の腰を掴んで激しく突いた。
「……あぁっ、イイ……イイよぉ……うぅんっ」
無意識で大輔の腰も揺れていた。晃司に激しく責め立てられ、再び絶頂の波が押し寄せてくる。
「ふぁっ……んん、あぁあん!」
大輔の絶頂が近いことに気づいた晃司が、硬くなってよだれを垂らす大輔の肉茎を激しく扱いた。それに合わせ、抽挿も激しく荒々しくなる。
「あっ……あぁ! こう、じさん、俺……もう……ひぃん!」
「俺も、イク……」
晃司が大輔の耳を舐めて吸った。
「あっ、あぁあ!」
大輔の背が大きくのけ反る。
「うっ……」
晃司が短く息を吐いた。そして大輔は感じた。自分の中の晃司が、一際大きくなったのを。体の奥を大きく押し広げられ、その熱に大輔は追い詰められ――達した。
「あぁはっ……んん、あぁああっ!」
大輔は激しく震え、さっきと変わらぬ量を吐き出した。同時に晃司が大輔を強く抱きしめ、大輔の中で果てる。薄いスキン越しにも、晃司の熱が注がれたのが伝わった。
「は……あ、はぁあ……ん……」
大輔は足に力が入らなくなって、そのままベッドに倒れ込んだ。ベッドに零した自分の精液が腹についたが、拭う元気もない。晃司も、繋がったまま大輔に覆い被さった。
(……お、重い……)
けれどその重みは、温かくて幸せなものだった。耳に、晃司の熱い息がかかる。
燃えるような快感が去っても、冷めない温もりがあった。
大輔は肩で息をしながら、首を捻って晃司を見つめた。
まだ息の整わない晃司が、大輔を見つめ返す。
二人は言葉もなく、穏やかで優しいキスをした。
愛しさが胸に満ち、幸せだった。
——と、どこかから携帯のバイブ音が響いた。
二人は――目を見開いた。
ティロンティロン――今度はバイブ音ではなく着信音が聞こえた。二人の携帯電話が同時にどこかで鳴り始めたのだ。
大輔と晃司は、見つめ合ったまま青くなった。
「お、小野寺さん、俺たち……」
「勤務中、だった」
二人は一斉に飛び起きた。
「イテーッ!」
今になって、大輔のお尻がとんでもなく痛む。
「大丈夫か?! 大輔は寝てろ……て、携帯どこだよ?!」
晃司が床に散らばった、どちらのものともわからぬスーツや下着をひっくり返す。
やがて、ホテルの固定電話まで鳴り出した。
二人は飛び上がった。
「まずい! とにかく署に戻るぞ、大輔!」
「はい! ……イターッ!」
初めての夜――の甘い余韻に浸る間などまったくなく、二人は皺くちゃのスーツで荒間署に飛んで帰った。
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二人の手は――恋人同士の手は、堅く繋がれたままだった。
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