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出会い
第十話 逃走劇の終幕
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ルクシスが虚飾の神を締め上げていた手の力が緩むと同時に、ヨクは静かにその傍らに腰を下ろした。虚飾の神は、真理の神の神力で四肢を厳重に封じられ、石畳に無残に横たわっている。
「断罪現場って初めて見たな。オレもお世話にならないようにしないと」
「その時は俺が貴様を直々に裁いてやるから、心しておくんだな……」
ルクシスの恨み節にへらりと笑って返したヨクは、縛られて横たわる虚飾の神の内側を橙色の瞳で静かに覗き込む。ルクシスの支配欲に匹敵する、強烈な承認欲求の残滓が、偽りの光となって揺らめいていた。
「あぁ、なるほどね。欲を虚飾で覆い隠してたんだ。 おかしいと思ったんだよね、ルクシスが言うような神なら、批判回避欲とかが見えててもいいはずだし」
虚飾の神は、自身の天敵である真理の神という嘘を見抜くスペシャリストを、欲の神という神を虚飾で騙すことによって逃走を成功させた。それをヨクは初めて理解し、納得したように立ち上がる。
ルクシスはひとつ息を吐くと、虚飾の神をためらいなく肩へ担ぎ上げた。
成人の男神ひとりが軽々と持ち上がる様子は、彼がいかに屈辱と怒りで動いているかを示している。
「おお、力持ちだなぁ」
ヨクはその光景を眺めながら、感嘆の声を上げた。職務の遂行という高潔なプライドが、肉体の痛みという生々しい記憶を完全に覆い隠している。
ルクシスは、担いだ神の重さに耐えながら、門へ向かう一歩を踏み出す直前、冷たい視線だけでヨクを振り返った。その瞳は、既に氷のような冷たさを帯びている。
「聞け、欲の神」
ルクシスは、静かだが、魂を拘束するような強い意志を込めて、釘を刺した。
「昨日、俺と貴様の間で起きた全てのことは、今後一切他言を許さない。いかなる者の耳にも入れるな」
ルクシスの言葉は、屈辱的な関係の秘密を、ヨクに強制するものだった。彼の神格の全てが、この秘密の永続的な封印を望んでいた。
ヨクは、その真剣な眼差しに、いつもの軽妙な笑みを返した。
「りょーかい。これから、誰にも話さないよ」
ルクシスは、へらへらとしたヨクの言葉に偽りを見つけようと、神格の宿る目で睨みつけ、嘘の気配を探る。しかし、ヨクの心は、軽率な善意に満ちているだけで、欺瞞の影は微塵も見当たらない。
「嘘は……ついてないな……」
ルクシスは、その事実を確認すると、腰の痛みなど存在しないかのように、成人男神を一人担いだまま、高潔な姿勢で、光の層の中へ去っていった。
ヨクは、その直線的に消えゆく背中を見送りながら、朱と桃色の髪を指で遊ばせ、楽しげに独り言を漏らした。
「もうリューエには話しちゃったんだよな~……まあ、これから誰にも話さなきゃ、セーフだよね」
欲の神は、そう言って、その場の真理を、都合よくねじ曲げた。無自覚な悪意を背負ったまま、彼は再び、天界の光の中へと軽快に溶けていった。
「断罪現場って初めて見たな。オレもお世話にならないようにしないと」
「その時は俺が貴様を直々に裁いてやるから、心しておくんだな……」
ルクシスの恨み節にへらりと笑って返したヨクは、縛られて横たわる虚飾の神の内側を橙色の瞳で静かに覗き込む。ルクシスの支配欲に匹敵する、強烈な承認欲求の残滓が、偽りの光となって揺らめいていた。
「あぁ、なるほどね。欲を虚飾で覆い隠してたんだ。 おかしいと思ったんだよね、ルクシスが言うような神なら、批判回避欲とかが見えててもいいはずだし」
虚飾の神は、自身の天敵である真理の神という嘘を見抜くスペシャリストを、欲の神という神を虚飾で騙すことによって逃走を成功させた。それをヨクは初めて理解し、納得したように立ち上がる。
ルクシスはひとつ息を吐くと、虚飾の神をためらいなく肩へ担ぎ上げた。
成人の男神ひとりが軽々と持ち上がる様子は、彼がいかに屈辱と怒りで動いているかを示している。
「おお、力持ちだなぁ」
ヨクはその光景を眺めながら、感嘆の声を上げた。職務の遂行という高潔なプライドが、肉体の痛みという生々しい記憶を完全に覆い隠している。
ルクシスは、担いだ神の重さに耐えながら、門へ向かう一歩を踏み出す直前、冷たい視線だけでヨクを振り返った。その瞳は、既に氷のような冷たさを帯びている。
「聞け、欲の神」
ルクシスは、静かだが、魂を拘束するような強い意志を込めて、釘を刺した。
「昨日、俺と貴様の間で起きた全てのことは、今後一切他言を許さない。いかなる者の耳にも入れるな」
ルクシスの言葉は、屈辱的な関係の秘密を、ヨクに強制するものだった。彼の神格の全てが、この秘密の永続的な封印を望んでいた。
ヨクは、その真剣な眼差しに、いつもの軽妙な笑みを返した。
「りょーかい。これから、誰にも話さないよ」
ルクシスは、へらへらとしたヨクの言葉に偽りを見つけようと、神格の宿る目で睨みつけ、嘘の気配を探る。しかし、ヨクの心は、軽率な善意に満ちているだけで、欺瞞の影は微塵も見当たらない。
「嘘は……ついてないな……」
ルクシスは、その事実を確認すると、腰の痛みなど存在しないかのように、成人男神を一人担いだまま、高潔な姿勢で、光の層の中へ去っていった。
ヨクは、その直線的に消えゆく背中を見送りながら、朱と桃色の髪を指で遊ばせ、楽しげに独り言を漏らした。
「もうリューエには話しちゃったんだよな~……まあ、これから誰にも話さなきゃ、セーフだよね」
欲の神は、そう言って、その場の真理を、都合よくねじ曲げた。無自覚な悪意を背負ったまま、彼は再び、天界の光の中へと軽快に溶けていった。
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