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出会い
第十二話 エラーコード
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冷涼だった「記憶の間」の空気は、混じり合った呼気によって見る影もなく濁り、熱を孕んでゆく。
理性の牙城であったはずの場所で、マキナの脳内に蓄積された膨大な知識は、ヨクから流し込まれる粘着質な快楽という濁流によって、無惨にも押し流されていった。
「ん、……っぁあ!あ、ぁ……!」
マキナの喉から漏れたのは、抗拒ではなく、寄る辺ない悲鳴だった。
初めて注ぎ込まれる、他者のどろりとした熱。情報の連なりではない、生々しい「快感」という暴力的な記憶が、彼の脳内の書架を無慈悲になぎ倒していく。
ヨクの舌は、マキナの整然とした理性を土足で踏み荒らすように、その口内の隅々までを執拗に、かつ愛しげに舐めとっていく。そして酸欠に喘ぎ、力なく膝を折ったマキナの身体を、あやすように優しく、けれど逃がさぬ強さで抱きとめた。
「……ねぇ、マキナ。キミのその『知りたい』っていう欲求、ちょっと……いや、かなり行き過ぎだよ。記憶の神様が、他人の秘密を無理やり暴こうとするなんて。このままじゃ、キミ自身がその欲に呑まれちゃうんじゃない?」
耳元で囁かれる、甘く濁った声音。実際にはルクシスとの約束を守るためだけの詭弁であったが、今のマキナにそれを見破る理知は残っていない。
「だからさ……オレが発散させてあげる。キミがこれ以上、醜い欲に溺れないように。欲の神の"お仕事"だからね」
「ちが……そんな、こと……っ、やめ、て……」
拒絶の言葉を紡ごうとする唇は反論を許さないといわんばかりに塞がれ、意味を成さない吐息へと変えられた。ヨクは腰の抜けたマキナを軽々と抱え上げると、無機質な金属製の執務机の上へ、乱暴に、けれどどこか慈しむように横たわらせる。
「ひ、ぁ……っ!」
冷たい机の感触が、逆にヨクの体温を際立たせた。重厚なローブが捲り上げられ、理知を象徴する白い肌が、欲の神の視線に晒される。
ヨクの指が、マキナのなかに渦巻く「探究欲」を、強引に「性欲」へと書き換えていく。増幅された快楽は、マキナがこれまでの永い時の中で蓄積してきたどの情報よりも、重く、鋭く、彼の本質を貫いた。
「ふ、あ……ぁ、ああッ!?」
腰を跳ねさせ、マキナの指先が虚空を掻く。
金色の瞳は、押し寄せる快楽の情報量に耐えきれず、光を湛えて上転した。論理も、矜持も、記憶すべき事実も、すべてが快楽というエラーコードとなって意識の底へ沈んでいく。
「ふふ、初めてなのに欲しがりさんだな。ほら、もっと深く刻んであげる。キミが、一生忘れられないくらいのやつを」
ヨクは慈愛に満ちた、悪魔のような微笑を浮かべ、抵抗する力も失ったマキナの身体へと、容赦なくその熱を突き立てた。
記録の間に響くのは、歯車の音ではない。
記憶の神が、抗いがたい欲求に屈し、壊れたレコードのように刻み続ける、甘い絶叫と、粘着質な水音だけだった。
マキナの意識が、熱い白光の中に溶け落ちていく。
その最後の一瞬まで、ヨクは彼の脳内に、消えることのない悦楽の記憶を叩き込み続けた。
理性の牙城であったはずの場所で、マキナの脳内に蓄積された膨大な知識は、ヨクから流し込まれる粘着質な快楽という濁流によって、無惨にも押し流されていった。
「ん、……っぁあ!あ、ぁ……!」
マキナの喉から漏れたのは、抗拒ではなく、寄る辺ない悲鳴だった。
初めて注ぎ込まれる、他者のどろりとした熱。情報の連なりではない、生々しい「快感」という暴力的な記憶が、彼の脳内の書架を無慈悲になぎ倒していく。
ヨクの舌は、マキナの整然とした理性を土足で踏み荒らすように、その口内の隅々までを執拗に、かつ愛しげに舐めとっていく。そして酸欠に喘ぎ、力なく膝を折ったマキナの身体を、あやすように優しく、けれど逃がさぬ強さで抱きとめた。
「……ねぇ、マキナ。キミのその『知りたい』っていう欲求、ちょっと……いや、かなり行き過ぎだよ。記憶の神様が、他人の秘密を無理やり暴こうとするなんて。このままじゃ、キミ自身がその欲に呑まれちゃうんじゃない?」
耳元で囁かれる、甘く濁った声音。実際にはルクシスとの約束を守るためだけの詭弁であったが、今のマキナにそれを見破る理知は残っていない。
「だからさ……オレが発散させてあげる。キミがこれ以上、醜い欲に溺れないように。欲の神の"お仕事"だからね」
「ちが……そんな、こと……っ、やめ、て……」
拒絶の言葉を紡ごうとする唇は反論を許さないといわんばかりに塞がれ、意味を成さない吐息へと変えられた。ヨクは腰の抜けたマキナを軽々と抱え上げると、無機質な金属製の執務机の上へ、乱暴に、けれどどこか慈しむように横たわらせる。
「ひ、ぁ……っ!」
冷たい机の感触が、逆にヨクの体温を際立たせた。重厚なローブが捲り上げられ、理知を象徴する白い肌が、欲の神の視線に晒される。
ヨクの指が、マキナのなかに渦巻く「探究欲」を、強引に「性欲」へと書き換えていく。増幅された快楽は、マキナがこれまでの永い時の中で蓄積してきたどの情報よりも、重く、鋭く、彼の本質を貫いた。
「ふ、あ……ぁ、ああッ!?」
腰を跳ねさせ、マキナの指先が虚空を掻く。
金色の瞳は、押し寄せる快楽の情報量に耐えきれず、光を湛えて上転した。論理も、矜持も、記憶すべき事実も、すべてが快楽というエラーコードとなって意識の底へ沈んでいく。
「ふふ、初めてなのに欲しがりさんだな。ほら、もっと深く刻んであげる。キミが、一生忘れられないくらいのやつを」
ヨクは慈愛に満ちた、悪魔のような微笑を浮かべ、抵抗する力も失ったマキナの身体へと、容赦なくその熱を突き立てた。
記録の間に響くのは、歯車の音ではない。
記憶の神が、抗いがたい欲求に屈し、壊れたレコードのように刻み続ける、甘い絶叫と、粘着質な水音だけだった。
マキナの意識が、熱い白光の中に溶け落ちていく。
その最後の一瞬まで、ヨクは彼の脳内に、消えることのない悦楽の記憶を叩き込み続けた。
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