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出会い
第十七話 運命の神
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細い路地裏。切り取られた空から落ちる無機質な光が、浅黒い肌と白磁の肌のコントラストを静かに際立たせていた。
「俺はアナンカリオ。運命の神だ。」
唐突に名乗ったその男は、獲物を袋小路に追い詰めた獣のように目を細めながらヨクを凝視し、その不敵な唇を吊り上げる。
「先日の上位神定例が、記憶の神の腑抜けた面のおかげで台無しでよ。んで、何事かと思って元凶を洗ってみたら……テメェにぶち当たったってワケだ」
アナンカリオの赤い瞳に宿る権能が、ヨクという存在が辿る幾千の未来を瞬時に読み解く。だが、視れば視るほど、その運命の着地点は一点に集約されていた。
「俺はよ、予定調和ってのが反吐が出るほど嫌いなんだ。テメェの運命を覗いてみりゃあ、どいつもこいつもテメェに屈し、与えられる側になる」
「……あ!もしかしてオレの運命を見て、オレに抱かれにきたってこと?」
「違ぇよ!その出来レースを俺がぶっ壊しに来たんだ!俺がテメェを組み伏せて、その運命を根底からひっくり返してやる」
運命を乱すことを至上の愉悦とする男神は、傲岸不遜な笑みを浮かべ、一歩、また一歩と距離を詰める。ヨクよりも幾分か厚みのある体躯が、薄暗い壁際へと彼を追い詰めた。
「俺に抱かれろ。テメェのその澄まし顔、めちゃくちゃにしてやるよ」
逃げ場を塞ぐように、浅黒い逞しい腕が壁を叩く。至近距離から放たれる熱気は、これまでの神々が持っていた理知的で静かなものとは正反対の、剥き出しの「雄」の匂いだった。
躊躇なく伸ばされたアナンカリオの手が、ヨクの胸元へ乱暴に這い上がる。薄い布越しに、骨格を確かめるような無遠慮な圧力が加わった。
「……ふふ、触り方が乱暴だなぁ」
「うるせぇ。男の体なんてな、弄ったところで面白くもなんともねぇんだよ。……これはただのサービスだ、有り難く思え」
吐き捨てられた言葉とは裏腹に、その手つきはどこまでも雑で、愛撫とは程遠い、獲物の肉質を確かめるような無作法な手つき。
その手が下腹部を掠め、さらなる深奥へ伸びようとしたその時。
ヨクの細くしなやかな指が、アナンカリオの手首をぴたりと、やんわりとした、しかし確実な力で制止させた。
「……待って。流石にちょっと早急すぎるし、ムードも欠片もない。相手の反応も見てないし……それじゃあ、欲が育つ前に萎えちゃうよ?」
「……あぁん!? ガタガタうるせぇんだよ! テメェは黙って抱かれてりゃいいんだ!」
淡々とテクニックの不備を並べ立てるヨクの口調に苛立ったアナンカリオが、無理やりヨクを捩じ伏せようとした、その瞬間だった。
ヨクが軽やかな動作でアナンカリオの手を引き、その強張った身体を自分の方へと引き寄せる。
不意を突かれた運命の神の視界が揺らぎ、次の瞬間、彼の荒々しい唇は、欲の神の湿った熱によって完全に塞がれた。
「……っ、ん、……!?」
アナンカリオは即座に首を振り、ヨクを突き飛ばすようにして距離を置く。汚らわしいものが触れたかのように腕で口元を乱暴に拭った。
「……ッ、テメェ……! 男同士でこんな……気持ち悪りぃことしやがって……!」
「え? 男を抱きに来たんだよね、キミ。何を言ってるの?」
「俺はテメェを女にするつもりで来たんだ!雌の顔をさせて、俺の下で鳴かせてやる。いいか、テメェはただ、女みてぇに大人しく抱かれてりゃいいんだよ!」
赤くなった顔で吠えるアナンカリオを見て、ヨクはニンマリと、毒を含んだ蜜のような笑みを深くした。
「あはは、なるほどねぇ。……キミ、もしかして男相手は初めて? なのにオレのとこ、来ちゃったんだ。勇気あるね」
ヨクの指が、今度はアナンカリオの首筋をねっとりと這い、その喉仏を優しくなぞる。
「教えてあげるよ。男同士の口づけも、悪くないってこと。レクチャー代はキミの身体でいいからね?」
欲の神の指先が、今度はアナンカリオの胸元へと伸びる。
さっきのアナンカリオの乱暴な手つきとは対照的に、薄い布越しに、乳首の周りを円を描くように微かな圧で焦らし、逃げ場を失わせるようにじっくりと、執拗に。
「テメッ、気色悪ぃ触り方すん──」
ゾクゾクと背筋を通り抜けるはっきりとしない何かに、アナンカリオが思わず後退りした瞬間。
ヨクの白い腕が、抵抗する間もなくアナンカリオの首に絡みつき、再び唇が重ねられた。
それは、先ほどの短いついばみとは一線を画す、奈落の底まで引き摺り込むような深い、深い口づけ。
欲の神の舌が、アナンカリオの歯列を強引に割り、逃げ惑う舌を絡めとっていく。
吸い付くような粘膜の熱、鼻腔をくすぐる、蜜のように甘く重たい香り。
そして首に絡みつくように回された腕から、首筋を、耳裏を、ヨクの指先が羽毛のような軽やかさで、それでいて神経を逆撫でするような淫らな精度で愛でていく。
気持ち悪いはずの感触が、ヨクの熟練の動きによって、脳を直接焦がすようなしびれるような悦楽へと変換されていく。
「……っ、んん、!……やめ、……」
突き放そうと肩に置かれた手のひらから、次第に力が抜けていく。拒絶しようとする意志を、ヨクの舌が愛しげに絡めとり、蕩けさせていく。
アナンカリオは、自分の運命が指の間から滑り落ちていくような、形容しがたい恐怖と快感に襲われた。
激しく抵抗していたはずの大きな身体が、次第に壁に押し付けられたヨクの体温に、磁石のように吸い寄せられていく。抵抗の象徴であったはずの拳は、いつの間にか力なく解かれ、ヨクの衣装の端を縋るように握りしめていた。
「女の子にさせるっていうのはね、こうやってやるんだよ。……まずは、キミ自身の身体で覚えてもらわなきゃね」
長いまつげに縁取られたオレンジの瞳が、三日月の如く細められる。
神格の権能など使わない。ただ、永い時間の中で洗練されてきた純粋な技術だけで、ヨクは運命の神の誇り高き魂を、快楽の泥濘へと引きずり込んでいった。
「俺はアナンカリオ。運命の神だ。」
唐突に名乗ったその男は、獲物を袋小路に追い詰めた獣のように目を細めながらヨクを凝視し、その不敵な唇を吊り上げる。
「先日の上位神定例が、記憶の神の腑抜けた面のおかげで台無しでよ。んで、何事かと思って元凶を洗ってみたら……テメェにぶち当たったってワケだ」
アナンカリオの赤い瞳に宿る権能が、ヨクという存在が辿る幾千の未来を瞬時に読み解く。だが、視れば視るほど、その運命の着地点は一点に集約されていた。
「俺はよ、予定調和ってのが反吐が出るほど嫌いなんだ。テメェの運命を覗いてみりゃあ、どいつもこいつもテメェに屈し、与えられる側になる」
「……あ!もしかしてオレの運命を見て、オレに抱かれにきたってこと?」
「違ぇよ!その出来レースを俺がぶっ壊しに来たんだ!俺がテメェを組み伏せて、その運命を根底からひっくり返してやる」
運命を乱すことを至上の愉悦とする男神は、傲岸不遜な笑みを浮かべ、一歩、また一歩と距離を詰める。ヨクよりも幾分か厚みのある体躯が、薄暗い壁際へと彼を追い詰めた。
「俺に抱かれろ。テメェのその澄まし顔、めちゃくちゃにしてやるよ」
逃げ場を塞ぐように、浅黒い逞しい腕が壁を叩く。至近距離から放たれる熱気は、これまでの神々が持っていた理知的で静かなものとは正反対の、剥き出しの「雄」の匂いだった。
躊躇なく伸ばされたアナンカリオの手が、ヨクの胸元へ乱暴に這い上がる。薄い布越しに、骨格を確かめるような無遠慮な圧力が加わった。
「……ふふ、触り方が乱暴だなぁ」
「うるせぇ。男の体なんてな、弄ったところで面白くもなんともねぇんだよ。……これはただのサービスだ、有り難く思え」
吐き捨てられた言葉とは裏腹に、その手つきはどこまでも雑で、愛撫とは程遠い、獲物の肉質を確かめるような無作法な手つき。
その手が下腹部を掠め、さらなる深奥へ伸びようとしたその時。
ヨクの細くしなやかな指が、アナンカリオの手首をぴたりと、やんわりとした、しかし確実な力で制止させた。
「……待って。流石にちょっと早急すぎるし、ムードも欠片もない。相手の反応も見てないし……それじゃあ、欲が育つ前に萎えちゃうよ?」
「……あぁん!? ガタガタうるせぇんだよ! テメェは黙って抱かれてりゃいいんだ!」
淡々とテクニックの不備を並べ立てるヨクの口調に苛立ったアナンカリオが、無理やりヨクを捩じ伏せようとした、その瞬間だった。
ヨクが軽やかな動作でアナンカリオの手を引き、その強張った身体を自分の方へと引き寄せる。
不意を突かれた運命の神の視界が揺らぎ、次の瞬間、彼の荒々しい唇は、欲の神の湿った熱によって完全に塞がれた。
「……っ、ん、……!?」
アナンカリオは即座に首を振り、ヨクを突き飛ばすようにして距離を置く。汚らわしいものが触れたかのように腕で口元を乱暴に拭った。
「……ッ、テメェ……! 男同士でこんな……気持ち悪りぃことしやがって……!」
「え? 男を抱きに来たんだよね、キミ。何を言ってるの?」
「俺はテメェを女にするつもりで来たんだ!雌の顔をさせて、俺の下で鳴かせてやる。いいか、テメェはただ、女みてぇに大人しく抱かれてりゃいいんだよ!」
赤くなった顔で吠えるアナンカリオを見て、ヨクはニンマリと、毒を含んだ蜜のような笑みを深くした。
「あはは、なるほどねぇ。……キミ、もしかして男相手は初めて? なのにオレのとこ、来ちゃったんだ。勇気あるね」
ヨクの指が、今度はアナンカリオの首筋をねっとりと這い、その喉仏を優しくなぞる。
「教えてあげるよ。男同士の口づけも、悪くないってこと。レクチャー代はキミの身体でいいからね?」
欲の神の指先が、今度はアナンカリオの胸元へと伸びる。
さっきのアナンカリオの乱暴な手つきとは対照的に、薄い布越しに、乳首の周りを円を描くように微かな圧で焦らし、逃げ場を失わせるようにじっくりと、執拗に。
「テメッ、気色悪ぃ触り方すん──」
ゾクゾクと背筋を通り抜けるはっきりとしない何かに、アナンカリオが思わず後退りした瞬間。
ヨクの白い腕が、抵抗する間もなくアナンカリオの首に絡みつき、再び唇が重ねられた。
それは、先ほどの短いついばみとは一線を画す、奈落の底まで引き摺り込むような深い、深い口づけ。
欲の神の舌が、アナンカリオの歯列を強引に割り、逃げ惑う舌を絡めとっていく。
吸い付くような粘膜の熱、鼻腔をくすぐる、蜜のように甘く重たい香り。
そして首に絡みつくように回された腕から、首筋を、耳裏を、ヨクの指先が羽毛のような軽やかさで、それでいて神経を逆撫でするような淫らな精度で愛でていく。
気持ち悪いはずの感触が、ヨクの熟練の動きによって、脳を直接焦がすようなしびれるような悦楽へと変換されていく。
「……っ、んん、!……やめ、……」
突き放そうと肩に置かれた手のひらから、次第に力が抜けていく。拒絶しようとする意志を、ヨクの舌が愛しげに絡めとり、蕩けさせていく。
アナンカリオは、自分の運命が指の間から滑り落ちていくような、形容しがたい恐怖と快感に襲われた。
激しく抵抗していたはずの大きな身体が、次第に壁に押し付けられたヨクの体温に、磁石のように吸い寄せられていく。抵抗の象徴であったはずの拳は、いつの間にか力なく解かれ、ヨクの衣装の端を縋るように握りしめていた。
「女の子にさせるっていうのはね、こうやってやるんだよ。……まずは、キミ自身の身体で覚えてもらわなきゃね」
長いまつげに縁取られたオレンジの瞳が、三日月の如く細められる。
神格の権能など使わない。ただ、永い時間の中で洗練されてきた純粋な技術だけで、ヨクは運命の神の誇り高き魂を、快楽の泥濘へと引きずり込んでいった。
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