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元伯爵令嬢との逃避行
12話 探検
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地下の通路を案内してもらう事になった。
ランタンの光をたよりに、コツコツと音をたてて二人で歩く。
「……」
水が流れる音が所々から聞こえてくる。
どこにどう流れているかわからないと、少し不安を覚えてしまう。
おそらくこの岩壁の向こう側に地下水路、すなわち下水道があるのだが……。
この空間に嫌な臭いは一切しない。
むしろ微弱な風が常に吹いていて心地よいくらいだ。
どうやら天然の洞窟を利用したと思われるこの辺は、さっき聞いたホコリにまみれた空間とは違うらしい。
「それでね……」
その間、この国の歴史に詳しいケイトは私にいろいろ説明していた。
「この国が発展したのは、王都の清潔さにあるなんて話があるくらいでね」
「ああ」
「数百年前、ある天才が画期的な水路を発明したことがそれに貢献してるの。ってそんなのは子供でも知ってるわね」
「そうだな」
「要するに、地上の水路の水を任意で地下の水流に流す仕掛けが街中にある。それらは基本的に手入れは不要で、掃除だけでいい。だから数百年前の仕掛けを今も普通に使われているのが現状」
ランタンの光に照らされた横顔は少し得意げになっていた。
「そして、今私たちがいる空間は下水道とは別に設けられた王族専用の緊急脱出用兼、情報収集に使うルート」
「……」
「現在の王族はその存在を伝えられていないみたい。たまたま王宮に出入りしていた私が、涸れ井戸に偽装された入口を発見したの。おさらいはここまでね」
急にケイトは振り返る。
「ちなみに二年前にここを発見したとき、隠し財宝とかもあったわ」
「隠し財宝だと?」
「ええ、そのままにしてあるけどね」
「どうして?」
「別に私はお金に困ってなかったし、そんなものを売ったりしたらお墓の盗掘とか疑われちゃう。リスクに合わない」
「……なるほど」
「それも後で見せてあげるね」
「それは楽しみだ」
面白い。
私は考古学にはさほど興味は無い。
しかしそれでも少年の心を呼び覚ますかのような話だ。
「えっと、それでイーモン。まずは何が見たいの?」
「そうだな。まずはヘザー家の地下に案内して欲しい。私が今住んでる部屋が地下から見るとどうなってるのか見てみたい」
「ふーん」
流し目で見られた。
おそらく、隙を見て脱走しようとしていると疑われているか。
そんなつもりはもはやサラサラないのだが……。
†††††
しばらくして、明らかに通路の雰囲気が変わった。
天然の洞窟から、まるで坑道に入ったかのような違和感。
「イーモン。布で口と鼻を覆ったほうがいいよ」
「……?」
「ここは風が吹き抜けてないの。ホコリっぽいわ」
言われたとおり、ポケットに入っていた布で口を覆う。
たしかに見るからにここはホコリだらけだ。
「あとは蛇、気をつけてね」
「へ、蛇?」
「うん、毒はない子たちだけどね。そこら中にいるわ」
「地上から入り込んだ?」
「違うと思う。多分数百年前の王族がネズミの繁殖防止のために放した。それがずっと子孫繁栄してる」
「へえ」
いったそばから、ランタンの光の先には大きめの蛇が這っていた。
私たちに気づいてどこかに逃げていく。
「ここはもう貴族街の地下なんだ」
「……」
「だから地上に出入りしてるネズミがたくさん住んでる。さっきの蛇はそれを食べてるわけ」
「数百年食物連鎖が成り立ってるわけか」
「推測……だけどね」
そのままホコリっぽい空間を進む。
所々に岩壁に文字が彫られている。
……どこかで見たような?
「気づいた? 貴族街の通りの番号とあの刻印は同じ」
「そういうことか」
「それを目安にヘザー家の地下に行けるわ」
「Ⅶ……ね。ということは、ここはあの書店があるあたりの地下か」
「そうね。もしかしたら真上にサラがいるかも」
「……!」
ケイトの口からあの書店の店主の孫のサラの名前が出る。
「サラ様と知り合いなのか?」
なんとなく尋ねた。
「まあね。ほら、貴族が通う学園のつながりで」
「そういや、サラ様はお前の名前を口にしてたな」
何気ない会話を繰り返す。
なんだろう?
ケイトの口数が少し少なくなってきたような。
「ねえ、時間はあるし……まずは書店の地下を覗いてみない?」
「あ、ああ」
「こういう悪い事ってワクワクするよね」
「……わかる」
ということで、まずは貴族街の書店の地下に向かう事になった。
†††††
不意に、通路の先からオレンジ色に光る二つの穴が見えた。
一瞬何事かと身構える。
「書店の地下に誰かいるみたいだね」
「あ、向こうの光か。獣か何かかと思った」
「アハハ。最初は私もびっくりした。だってあの穴、目玉みたいだもんね」
「はは……」
なんだか少年時代に帰ったかのような錯覚をさっきから味わっている。
悪友と探検でもしているかのような……。
「イーモン、ここからは小声で喋って」
「え?」
「劇場と違って、多分岩壁の向こうにこっちの声は聞こえる」
「わかった」
そうして、書店の地下に隣接されている空間に静かに近づいた。
……ワインの匂いが少し漂ってきた。
そして男二人の声が聞こえてくる。
「納品、これで全部だよな?」
「ああ。しかしここの店主、酒を樽で保管してるのか。地下室全体が酒臭え」
「俺にとっては最高の香りだが」
……私たちが盗み聞きしているのをつゆ知らず、男たちは雑談を続ける。
「ワインの配達業者だね。あの二人何度か見たことある」
「……」
ケイトは小声で囁きながら、いつの間にか背伸びして覗き穴を覗いている。
「そういや、ここの縁者の貴族のご息女」
「あー、サラ様だっけ? あの庶民と区別がつかない」
「ああ、彼女行方不明の執事を熱心に探してるみたいな。さっき何か知らないか根掘り葉掘り聞かれた」
「……」
男二人の雑談は、私の関わる話題に。
「へえ、あの娘……行方不明の執事となんか関係あるのかい? たしかあのヘザー家のベアトリクス様の恋人っていううらやましい野郎だろ?」
「いや、その執事とは関わりは薄いみたいなんだがな。多分サラ様はベアトリクス様のために動いてるな」
「ふーん。まあどうでもいいけど」
「……」
急にケイトは覗くのをやめた。
そして少し悲しそうな顔で振り返る。
「ベアトリクスってさ、あんな意地が悪い性格のくせに……こういうときは周りの人が無償で協力してくれるんだよね」
「そう……なのか?」
「きっと独自にあなたを必死で探してる人もたくさんいるよ」
「……?」
「ベアトリクスもあなたも、結局人に好かれるタイプなんだよね。本人たちはそういうのをないがしろにしてるように見えるけど……」
トゲを含む感じで語っている。
何を言いたいのか。
「そりゃ、知り合いが行方不明になんかなったら誰でも心配するだろ?」
私は何気なく答えた。
そう、何気なく。
「そうかな? 私を心配してくれる人なんて……チャーリー一人だけだったよ」
「……?」
「私ね、騎士団から追われる前からもうあの森の館を出ていたんだ。いえ、正確には森の館の地下に潜んでいたの」
「え? ああ、一度ベアトリクス様が使った隠し通路か」
「ええ。でもね、そこで今みたいに会話を盗み聞きしたら……メイドのみんなも他の使用人も私の心配なんか誰もしてなかったの。みんなに意地悪ばっかしてたベアトリクスの冬休みの歓迎の話をしてた」
「へえ、それは意外だな。夏場はみんなベアトリクス様が王都に帰るからって喜んでたのに。それに、お前はあの森の館の使用人たちとは仲が良かったろ?」
「私も……そう思ってたんだけど」
ケイトはますます悲しそうな顔になる。
その姿だけを見ると……どこにでもいる少し暗い普通の少女に見えた。
ランタンの光をたよりに、コツコツと音をたてて二人で歩く。
「……」
水が流れる音が所々から聞こえてくる。
どこにどう流れているかわからないと、少し不安を覚えてしまう。
おそらくこの岩壁の向こう側に地下水路、すなわち下水道があるのだが……。
この空間に嫌な臭いは一切しない。
むしろ微弱な風が常に吹いていて心地よいくらいだ。
どうやら天然の洞窟を利用したと思われるこの辺は、さっき聞いたホコリにまみれた空間とは違うらしい。
「それでね……」
その間、この国の歴史に詳しいケイトは私にいろいろ説明していた。
「この国が発展したのは、王都の清潔さにあるなんて話があるくらいでね」
「ああ」
「数百年前、ある天才が画期的な水路を発明したことがそれに貢献してるの。ってそんなのは子供でも知ってるわね」
「そうだな」
「要するに、地上の水路の水を任意で地下の水流に流す仕掛けが街中にある。それらは基本的に手入れは不要で、掃除だけでいい。だから数百年前の仕掛けを今も普通に使われているのが現状」
ランタンの光に照らされた横顔は少し得意げになっていた。
「そして、今私たちがいる空間は下水道とは別に設けられた王族専用の緊急脱出用兼、情報収集に使うルート」
「……」
「現在の王族はその存在を伝えられていないみたい。たまたま王宮に出入りしていた私が、涸れ井戸に偽装された入口を発見したの。おさらいはここまでね」
急にケイトは振り返る。
「ちなみに二年前にここを発見したとき、隠し財宝とかもあったわ」
「隠し財宝だと?」
「ええ、そのままにしてあるけどね」
「どうして?」
「別に私はお金に困ってなかったし、そんなものを売ったりしたらお墓の盗掘とか疑われちゃう。リスクに合わない」
「……なるほど」
「それも後で見せてあげるね」
「それは楽しみだ」
面白い。
私は考古学にはさほど興味は無い。
しかしそれでも少年の心を呼び覚ますかのような話だ。
「えっと、それでイーモン。まずは何が見たいの?」
「そうだな。まずはヘザー家の地下に案内して欲しい。私が今住んでる部屋が地下から見るとどうなってるのか見てみたい」
「ふーん」
流し目で見られた。
おそらく、隙を見て脱走しようとしていると疑われているか。
そんなつもりはもはやサラサラないのだが……。
†††††
しばらくして、明らかに通路の雰囲気が変わった。
天然の洞窟から、まるで坑道に入ったかのような違和感。
「イーモン。布で口と鼻を覆ったほうがいいよ」
「……?」
「ここは風が吹き抜けてないの。ホコリっぽいわ」
言われたとおり、ポケットに入っていた布で口を覆う。
たしかに見るからにここはホコリだらけだ。
「あとは蛇、気をつけてね」
「へ、蛇?」
「うん、毒はない子たちだけどね。そこら中にいるわ」
「地上から入り込んだ?」
「違うと思う。多分数百年前の王族がネズミの繁殖防止のために放した。それがずっと子孫繁栄してる」
「へえ」
いったそばから、ランタンの光の先には大きめの蛇が這っていた。
私たちに気づいてどこかに逃げていく。
「ここはもう貴族街の地下なんだ」
「……」
「だから地上に出入りしてるネズミがたくさん住んでる。さっきの蛇はそれを食べてるわけ」
「数百年食物連鎖が成り立ってるわけか」
「推測……だけどね」
そのままホコリっぽい空間を進む。
所々に岩壁に文字が彫られている。
……どこかで見たような?
「気づいた? 貴族街の通りの番号とあの刻印は同じ」
「そういうことか」
「それを目安にヘザー家の地下に行けるわ」
「Ⅶ……ね。ということは、ここはあの書店があるあたりの地下か」
「そうね。もしかしたら真上にサラがいるかも」
「……!」
ケイトの口からあの書店の店主の孫のサラの名前が出る。
「サラ様と知り合いなのか?」
なんとなく尋ねた。
「まあね。ほら、貴族が通う学園のつながりで」
「そういや、サラ様はお前の名前を口にしてたな」
何気ない会話を繰り返す。
なんだろう?
ケイトの口数が少し少なくなってきたような。
「ねえ、時間はあるし……まずは書店の地下を覗いてみない?」
「あ、ああ」
「こういう悪い事ってワクワクするよね」
「……わかる」
ということで、まずは貴族街の書店の地下に向かう事になった。
†††††
不意に、通路の先からオレンジ色に光る二つの穴が見えた。
一瞬何事かと身構える。
「書店の地下に誰かいるみたいだね」
「あ、向こうの光か。獣か何かかと思った」
「アハハ。最初は私もびっくりした。だってあの穴、目玉みたいだもんね」
「はは……」
なんだか少年時代に帰ったかのような錯覚をさっきから味わっている。
悪友と探検でもしているかのような……。
「イーモン、ここからは小声で喋って」
「え?」
「劇場と違って、多分岩壁の向こうにこっちの声は聞こえる」
「わかった」
そうして、書店の地下に隣接されている空間に静かに近づいた。
……ワインの匂いが少し漂ってきた。
そして男二人の声が聞こえてくる。
「納品、これで全部だよな?」
「ああ。しかしここの店主、酒を樽で保管してるのか。地下室全体が酒臭え」
「俺にとっては最高の香りだが」
……私たちが盗み聞きしているのをつゆ知らず、男たちは雑談を続ける。
「ワインの配達業者だね。あの二人何度か見たことある」
「……」
ケイトは小声で囁きながら、いつの間にか背伸びして覗き穴を覗いている。
「そういや、ここの縁者の貴族のご息女」
「あー、サラ様だっけ? あの庶民と区別がつかない」
「ああ、彼女行方不明の執事を熱心に探してるみたいな。さっき何か知らないか根掘り葉掘り聞かれた」
「……」
男二人の雑談は、私の関わる話題に。
「へえ、あの娘……行方不明の執事となんか関係あるのかい? たしかあのヘザー家のベアトリクス様の恋人っていううらやましい野郎だろ?」
「いや、その執事とは関わりは薄いみたいなんだがな。多分サラ様はベアトリクス様のために動いてるな」
「ふーん。まあどうでもいいけど」
「……」
急にケイトは覗くのをやめた。
そして少し悲しそうな顔で振り返る。
「ベアトリクスってさ、あんな意地が悪い性格のくせに……こういうときは周りの人が無償で協力してくれるんだよね」
「そう……なのか?」
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「……?」
「ベアトリクスもあなたも、結局人に好かれるタイプなんだよね。本人たちはそういうのをないがしろにしてるように見えるけど……」
トゲを含む感じで語っている。
何を言いたいのか。
「そりゃ、知り合いが行方不明になんかなったら誰でも心配するだろ?」
私は何気なく答えた。
そう、何気なく。
「そうかな? 私を心配してくれる人なんて……チャーリー一人だけだったよ」
「……?」
「私ね、騎士団から追われる前からもうあの森の館を出ていたんだ。いえ、正確には森の館の地下に潜んでいたの」
「え? ああ、一度ベアトリクス様が使った隠し通路か」
「ええ。でもね、そこで今みたいに会話を盗み聞きしたら……メイドのみんなも他の使用人も私の心配なんか誰もしてなかったの。みんなに意地悪ばっかしてたベアトリクスの冬休みの歓迎の話をしてた」
「へえ、それは意外だな。夏場はみんなベアトリクス様が王都に帰るからって喜んでたのに。それに、お前はあの森の館の使用人たちとは仲が良かったろ?」
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