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38.※ 誤解

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桐谷の言う通り、時間帯的に下校してる生徒の数は少なくて、ほとんど誰にも会うことはなかった。

「おじゃまします・・・」

桐谷の家に着くと、希望ちゃんはもう帰ってきていた。

「お兄ちゃんお帰りー。 あっ、星野、さん・・・こんにちは」

希望ちゃんはオレを見て一瞬固まった後、ペコリとお辞儀をしてくれた。

「希望ちゃん、こんにちは。 おじゃまさせてもらうね」

にこって笑いかけると、希望ちゃんはパッてカオを赤くした。

「は、はい! どうぞ、ごゆっくり!」

桐谷は小さくため息をつくと、

「希望。 おやつ食べたら勉強しろよ」

「わかってますー。 ちゃんと勉強するし、お兄ちゃんたちの邪魔はしないよー」

キッチンの方に行く希望ちゃんを見て、桐谷は自分の部屋に足を向けた。

「どうぞ」

促されて、桐谷の部屋に入る。


先に部屋に入ったオレは、あとから入ってきてドアを閉めた桐谷を振り返って、

「ごめん」

立ったまま、頭を下げた。

「もう『陽人とはキスしない』って言ってたのに、あんなことになって。 また写真まで撮られて、拡散してるし・・・」

桐谷はなにも言葉を発しない。

頭を下げてるオレには、桐谷の表情は見えない。

「それに・・・ 連絡できなかったことも、本当にごめん。 早く謝んなきゃいけなかったのに・・・」


桐谷の足が近づいてくる。

オレの左頬に、手が触れた。

ゆっくりとカオを上げると、桐谷の寂しそうな表情が見える。

右手はオレの頬に触れたまま、左手はオレの二の腕を掴み、オレを真っ直ぐ立たせた。

「・・・もう、いいよ。 中間も自分が悪いって言ってただろ。 星野は嫌がってたって」

オレは視線を下げる。

「でもさ・・・・ もともとこんなことになったのって、オレが原因だから・・・」

桐谷の左手もオレの頬に触れて。

「じゃあ星野は、中間とキスしたかったのか・・?」

オレはふるふると首を振る。

「そんなことない」

桐谷はフッて口角を持ち上げた。

「・・・だったら、もう、いいよ・・・」


ゆっくりと桐谷のカオが近づいてきて、

唇が、重なった。


桐谷のアツい舌が、オレの口内に挿入ってくる。

くちゅっ・・・

「んっ・・・・」

オレも桐谷の首に手を回す。

「ふっ・・・ん、」

オレたちは何度も深いキスを繰り返す。

「んんっ・・・・は、んっ・・」


気持ち、イイ・・・

段々、カラダもアツくなってくる。

でも・・・


「はっ・・・」

オレは唇を離した。

「も、だめ」

「なんで・・・?」

欲情した瞳で、桐谷はまたオレにキスをする。

「んっ・・・ き、りや」

ぐってその肩を押すけど、桐谷はオレから離れない。

「ふ、んっ・・・」

キスをして、オレの舌を吸う。


ぞくんっ


「んんっ・・・!」

キスだけなのに、快感が腰に響いて、オレはカラダをよじる。


「だ、めっ・・・」

ダメって言いながら、きっとすごい欲情したカオしてるんだろうな、オレ。

でもほんと、このままじゃヤバくて。

「も、だめ・・・ まじ、ヤバい、から・・・」

必死で訴えると、桐谷は足をオレの足の間に入れてきた。


ぐりっ


「ちょ、ぁあっ・・・」

桐谷は足で、オレの股間を刺激する。 思わず声が漏れて、オレは慌てて手で口元を押さえた。

こんなカオじゃ説得力ないだろうけど、桐谷のことをにらみつける。

「希望ちゃん、いるっ、だろ・・・! やばいって・・・!」

小声で抗議するけど、桐谷はオレの耳に噛みついてきた。


ぞくっ、ぞくっ


甘噛みされて、腰が震える。

「きり、やっ・・・」

抵抗する力も弱くなって。 そんなオレの表情を見て、桐谷は嬉しそうに口角を持ち上げた。

「・・・すっごい、蕩けてる」

カラダに力が入らないオレは、目だけ桐谷をにらんで、抵抗する。

そんなオレに桐谷は微笑んで、抱きしめてきた。

桐谷の背中に手を回して、オレも抱き着く。



桐谷の体温を感じながら、さっき、奥山さんといたときのことを思い出した。

桐谷が奥山さんと帰ろうとしたこと。

オレの手を振り払ったこと。

思い出すと、また、悲しくなってきて。

オレは桐谷に抱き着く腕に力を入れてしまっていた。


「星野・・・」

桐谷は優しくオレの後頭部を撫でる。

「・・・さっき・・・なんで泣いてたんだ・・・?」

その言葉に、オレは思わず桐谷の胸を押して、カラダを離した。

「・・・な、んでって・・・ わっかんねーのかよ・・・・」

にらみつけると、桐谷は申し訳なさそうなカオをした。

「オレが・・・星野の手、振り払ったりしたから・・・だよ、な・・・」

オレは桐谷の胸に置いた拳を、ぐって握りしめる。

「そうっ・・だよ・・・ それだけじゃなくて・・・ 奥山さんと一緒に帰ろうとしたり・・・オレがいんのにさ・・・」

思い出すと、また、目の奥が熱くなってきて。

「勉強するからって・・・ふ、たりきりになって、オレの、こと・・・邪魔みたいに・・・」

オレ、すげー情緒不安定、だ。

泣きたくないのに、涙が、こぼれる。

「星野・・・! 星野、ごめん・・・・!」

桐谷は両手でオレの頬に触れ、親指でオレの涙をぬぐった。

「星野のこと、泣かせたくないのに・・・・」

桐谷も、泣きそうなカオ、してる。


オレの頬に触れてる桐谷の手に、自分の手を重ねる。

「桐谷さ・・・ 奥山さんのこと、好き、なのか・・・?」

「え・・・?」

桐谷から目を逸らして、自嘲気味に笑ってしまう。

「やっぱさ・・・奥山さんの方が、話合うよな・・・頭もいいし・・・・
それに・・・ 女子、だし・・・・・」

「な、なに言ってるんだよ・・・」

手で濡れた頬をぬぐい、笑ってオレは桐谷から離れた。

「だってさ・・・ 奥山さんと2人で居たいから、オレに邪魔されたくなくて、あんなに冷たかったんだろ?
委員会終わるの待ってても、奥山さんと帰るし」

そうだよ・・・ オレより、奥山さんのこと選ぶことが多くて・・・

「会いたくて・・・早く学校行ったりしても、すげーそっけないし。 邪魔すんなって、言われたし」

そ・・・っか・・・・

オレが桐谷にこだわってただけで、桐谷はもう・・・・ オレのこととか、どうでもいいのかもな・・・

「まあ・・・・ オレが『学校では話さない』って言ったんだし。 自分で蒔いた種だな」


オレは小さくため息をつくと、床に置いていたカバンを持った。

「星野・・・?」

「ゴメン。 帰るわ」

・・・桐谷のカオは、見れない。

やっぱ・・・キツイし、また・・・泣きそうだから。

「星野」

桐谷に腕を掴まれる。

「・・・悪かった。 今日だって、奥山さんと帰ろうとしてたのに、オレが・・・泣いたりしたから、帰れなかったな」


あー・・・ すげー、胸が痛い。

失恋するって、こんなにキツイんだな・・・ 知らなかった。

「星野、こっち、向いて」

ぐって腕を引かれて、桐谷の方にカラダを向かされる。


「オレ・・・奥山さんのこと、好きとかじゃない」


その言葉に恐る恐る桐谷のカオを見るけど・・・ 真剣な瞳で、オレのことを見ていた。

ウソ・・・は、ついてなさそう・・・・だ・・・

「じゃあ・・・なん、で」

やっぱり、胸が、痛い。

きゅううって、締め付けられるみたいだ。


桐谷は言いにくそうに少しうつむいて。

「奥山さんが・・・・星野のこと、気になってるみたいだったから・・・・」


・・・・・・・・・は?

桐谷の言葉に、頭が思考停止する。

・・・・なに、言ってんだ・・・・?


「だから・・・星野と仲良くして欲しくなくて。 邪魔、したくて・・・・」

桐谷は恥ずかしそうに、少し頬を染めている。


オレは・・・さっきまで胸が痛かったのがウソのようだ。

「お前・・・・なに言ってんの?」


桐谷って・・・・ もしかして・・・・ バカ、なんだろうか。


「奥山さんが好きなのは、どう考えたってお前だろ」

思わず冷たいトーンで言い放ってしまったオレの言葉に、桐谷はカオを上げてオレを見た。

「はっ・・・?
いや、奥山さん、オレが星野の話すると嬉しそうだし・・・ 最近、よく話したりしてるだろ・・・」


無自覚すぎだろ・・・・・!!

オレは額に手を当てて一つため息をついた。


「お前・・・バカだろ」

「ば・・・・」

桐谷のことをキッてにらんで、

「お前が! 嬉しそうにオレの話するからだろうが! 好きなヤツが嬉しそうにしてるから、奥山さんもにこにこ話聞いてんだろ! 最近オレと奥山さんがよく話すのも、全部お前絡みだよ!!」

怒鳴るように言ったオレの言葉に、桐谷は固まってしまった。

「明らかにお前のこと好きな女子とわざわざ2人きりになろうとするからさ・・・ だから、お前も奥山さんのこと好きなのかと思って・・・・」

桐谷は少しうつむいて視線を泳がせている。 ・・・まだ、混乱してるみたいだ。

「オレ・・・ 奥山さんはてっきり星野のことが好きなんだと思ってた・・・・」


桐谷・・・ オレと奥山さんの邪魔したかったのか・・・・

じゃあ・・・・ オレのこと、まだ、好き、なんだよな・・・・?


オレは桐谷の首に腕を回した。

「じゃ、あさ。 桐谷は、オレと奥山さん、どっち取るんだよ?
オレも奥山さんも・・・ お前のこと、好きなんだけど」


強気のセリフを言ってはいるが、本当は、めちゃくちゃ心臓ばくばくいってる。

だってさ・・・ 奥山さんが自分のこと好きって、桐谷は気づいてなかったわけで。

それを分かっても、オレを選ぶの・・・かな・・・・・


桐谷はフッて、優しく笑った。

「・・・星野に、決まってる」


ちゅ

軽いキスを落として。


「・・・ほんとに・・・? 奥山さんの方が、話、合うだろ・・・?」

「合うとこもあるけど・・・・ でも、星野が好きだから」


くちゅっ

今度は舌を絡めて。


「んっ・・ふっ・・・」

少し唇を離して。

オレは桐谷の手を掴んで、自分の胸に当てた。

「奥山さんは、女子だよ・・・? カラダだって柔らかいし、かわいいだろ」

桐谷は口角を持ち上げて、オレの胸を撫でる。

「それでも、オレは星野がいい。 好きだから」

オレの首筋にキスをして。

「はっ・・ん、ん」

「それに・・・星野は、かわいいよ。 かわいいし、カッコいい」

つって、舌で舐められて。

「やっ・・・は、ぁ」

ぞくって、腰に快感が走る。


「星野・・・好きだよ・・・」

欲情した瞳で見つめられて、胸がきゅって締め付けられる。

でもさっきみたいにキツくて痛いんじゃなくて、甘い感覚。

「オレも、好き・・・桐谷・・・・」


舌を出して絡めて。

オレたちは深いキスを何度も繰り返した。




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