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29.『彼女』ってどんな人?

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♪~

LINEの音・・・


目を開けると、オレは裸のままベッドで寝ていた。

あきらの姿は・・・・ない。


「いてて・・・・」

体を起こしてスマホを探すと、ベッドの横のチェストの上に置いてあった。

スマホと一緒に、オレの服も畳んで置いてある。


少し、腰が痛い。


スマホを手に取り見てみると、桜庭さんからのLINEだった。


『坂本くん、昨日はありがとう。 あきらくんに送ってもらえてよかった♡  坂本くんは大丈夫だった?』


・・・・・ハートマーク・・・・


あきらに送ってもらって、本当にうれしかったんだろうな・・・・・

また2人の姿を思い出して、胸が苦しくなる。


『大丈夫だったよ』

とりあえず返事を送る。

『今日はあきらくん、彼女とデートなの?』


デート・・・・

オレと一緒に過ごしてるんだし、そういうことでもいいんだろう。


『そうみたい』

『あきらくん、週末はだいたい、彼女と会ってるの?』

『そうじゃないかな』

オレは少しあいまいに返事をする。

・・・・まあ、ほとんど一緒にいることが多いけど。


『もし彼女と予定入れてない時とか、わかったら教えて♡』


・・・・その時に、あきらと会うって、ことか?

オレが一緒に居れない時に、桜庭さんと、あきらが・・・・?


オレはぎゅって下唇を噛んだ。


・・・・いやだ。 そんなの。


心ではそう思ったけど、そんなこと、言えないし。


『わかった。 もしそういうのが分かったら、教えるな』

表面上は取り繕って返事をした。


『坂本くん、ありがとう♡  あきらくんの彼女って、どんな感じの人なの?』

どんな・・・・・って。


『普通の人だよ』

そう表現することしかできない。

・・・・だって、実際そうだし。


『すごくキレイなんじゃないの? あきらくんの彼女だし。 やっぱり、年上だったりする?』


・・・・あきら、つき合ってる人がいるって言ったって言ってたけど、どういう相手かって事は、全然言ってないんだな・・・・


『高校の、同級生だよ』

・・・・これは言ってもいいよな。

ユージやマコトにだって、あきらが言ってたし。


『同級生なの!? なんか、意外だった!』


・・・・・その気持ちは、わかる。

あきらのイメージだと、やっぱり年上のすげーキレーな人、なんだよなー・・・

ユージもそうやって聞いてたし。


『どんな感じの人? 美人系? かわいい系?』


・・・・・・どうしよう。

もう、答えようがねーよ・・・・


あきらもこうやっていろいろ聞かれるから、あえて言ってなかったんだろうな・・・・・


『あきらが言ってないなら、オレからも言いにくいよ。
どういう人かは、あきらに直接聞いてみたら?』

『そうだね。 ありがとう、坂本くん♡
またいろいろ教えてねー♡』


・・・・・ハートマーク、多いなー・・・・

こういうので、勘違いさせられたりとか、あるんだろうな・・・・

桜庭さん、すげー美人だし・・・・・


「はあ・・・・・」

思わず、タメ息が漏れる。


・・・・桜庭さんも、まさかあきらの相手がオレとは思ってないだろうし・・・・・



本当に、『彼女』から奪おうとしてるよなー・・・・


あんなに美人な人に、勝てる気なんて全然しない・・・・・

・・・・段々、気分が沈んできてしまう・・・・・・







・・・・ふと気づくと、リビングの方から人の声がした。


LINEに夢中になってて、気付かなかった・・・・・



オレはあきらが畳んで置いてくれていた服を着た。

ドアを開けて、部屋をそっと出る。


リビングを覗いてみると、キッチンに立ってるねーちゃんの後ろ姿が見えた。


ねーちゃん、もう来てたんだ・・・・・



ねーちゃんに何か話しかけて、あきらがねーちゃんの隣に立つ。


2人はカオを見合わせて笑ってた。



・・・・・なんか、新婚みたいだな・・・・・・


オレとねーちゃんは、結構カオが似てるって言われる。

自分でも、そう思う。



オレが女だったら・・・・・ ああいう風に、自然にあきらの隣に立ててたのかな・・・・・・



また変なコトを考えて、胸が苦しくなってくる。


2人をじっと見ていたら、不意にあきらがこっちを振り返った。



「あ、レイキ。 起きたのか?」

口角を持ち上げて、オレを見る。


あきらの声にねーちゃんもオレを振り返った。

「玲紀ー。 あんた、昼寝し過ぎじゃないの? 晃くんにいろいろ手伝ってもらっちゃってたわよ」


いろいろって・・・・・ ねーちゃん、そんな前から来てたのか?


「そんな手伝ってないですよ。 道具とか、皿出したりしただけだし」

「味見してくれたから、助かっちゃった。 玲紀は私の好みと同じで良いけど、晃くんの好みがわからないから」

「美紀さんの味付け、オレも好きですよ」


あきらがねーちゃんに微笑む。

ねーちゃんが、少し照れたようにカオを背けた。

「そ、そう? じゃあ良かった」


・・・・・あきらの微笑みは、ねーちゃんにも効果絶大みたいだ。

そりゃそーだよな。

ねーちゃんだって、女なんだし・・・・・・



っていうか、いつの間に『美紀さん』になってんだ!?

確か、あきらは『お姉さん』って呼んでたような・・・・・



「な、なあ。 何で名前で呼んでんだよ?」

気になる、けど、あまり気にしてるとも思われたくなくて。

ダイニングテーブルに近づきながら、なるべく平静を装って、聞いてみる。


「だって、『お姉さん』って、なんか変じゃない? 私、晃くんの姉でもないし・・・・・」

「そしたら、やっぱ名前で呼ぶしかないじゃん? 美紀さんも、それでいいって言ってくれたし」


『ね』って、2人でカオを見合わせて笑う。


・・・ダメだ。

ねーちゃんにまでヤキモチやいて、どーすんだ、オレ。



「もうすぐ出来るから、玲紀、お箸とか用意して?」

「あ、ああ。 わかった」

「じゃあ美紀さん、コレ、よそっていい?」

「うん。 お願い、晃くん」



ねーちゃんはオレの好物の肉じゃがを作ってくれてた。

それから、炊き込みご飯も。


「うわー、すげー美味そう」

「玲紀、好きだもんねー」


3人でテーブルについて、

「いただきまーす」


肉じゃがを一口食べると、柔らかいジャガイモが、口の中で崩れる。 味もしみていて美味しかった。


「すっげ、美味い!」

「ああ、美味しいな。 美紀さん、料理上手なんですね」


オレたちに褒められて、ねーちゃんは少し照れたように笑った。


「よかった。 晃くんの口にも合ったなら」



「ねーちゃん、料理上手かったんだな。 でも家で作ったりしてなかっただろ」

ねーちゃんがオレを軽く睨む。


「作ってたわよ。 ちゃんと練習したんだから。 
・・・って言っても、大体週末に作ってたから、晃くんの家に入り浸ってたあんたは知らないでしょうけど」


うっ・・・・・・

そ、そーなんだ・・・・・



オレはなにも返せなくて、炊き込みご飯を口に放り込む。

・・・・これも、美味い。


「高校の、2年くらいからだっけ? 週末ほとんど晃くんの家にいたでしょ、あんた。
ホント、ゴメンね。 このコが迷惑かけて」

「いや、迷惑だなんて、そんな」

「玲紀が入り浸ってたら、晃くんも彼女とデートできないだろうから、遠慮しなさいって言ってたんだけど」

ねーちゃんの言葉に、あきらは少し困ったように笑う。


「今日も晃くんが居るって聞いたから、ちょっと驚いちゃった。 てっきりデートでいないと思ってたから」

「オレも、そんなにいつも出歩いてるわけじゃないですよ」

「でも、いろんなコに声かけられるでしょ?」

「そんなでもないですって。 ・・・・・美紀さんだって、モテるでしょう? キレイだし」


あきらに微笑みながらそう言われて、ねーちゃんのカオが少し赤くなる。


ねーちゃんの照れてる姿って、なんか見てたらオレまで恥ずかしくなるな・・・・


「わ、私は、全然。 この間も、フラれちゃったし。 あーあ、どこかにいい人いないかなぁ」

少しタメ息をつくねーちゃん。


「大丈夫。 美紀さんならすぐに見つかりますよ」

だから、あきら・・・・・・!

ねーちゃんをこれ以上ときめかさないでやってくれ・・・・・・


中学生の頃からのあきらを知ってるねーちゃんでも、やっぱりあきらにはときめいちゃうみたいだな・・・・・




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