ワケあり男装令嬢は家督を継いで、死刑執行人になると決めた。

みかん坊や

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四刑

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婚約パーティーから、6年の月日が経ち、私は16歳になった。

パブリックスクール生活初日。
私は起き上がり、部屋の窓のカーテンを開けた。窓から差す眩しい朝日を浴びたのは、いつぶりだったっけ?

一昨日、私はリアと共にスクールの寮に入った。リアは貴族寮、私は一般生徒が入る一般寮に入る事となった。貴族寮のリアには、公爵邸から何人か連れてきた召使いがこれから2年間彼女の身の回りの世話をする事になる。
一方で私は、贅沢なことにこの6畳ほどの小部屋を一人で使う。誰もいない生活なんて、生まれて初めて。公爵邸にいた頃のビクビクした生活に比べて、まさに夢心地だわ。

誰の声も聞こえてこない空間を、私はふと見渡した。埃一つない部屋の片隅には、まだ開けていない段ボールが二つと、お古のキャリー。机の上の届いたばかりである新しい教科書とスクールの制服を見て、私は改めて実感した。


——ついに始まったのだと。


起きて私がまず第一にしなければならないのは、晒しを巻く事。
私の名前は、今日からラルフ。女の名前であるラウラを捨て、男の名前で入学届を書いた。確実に死刑執行人になる為には、時が来るまで決して女だと悟られてはならない。技術を見られる事なく、性別で見くびられるのは絶対にゴメンだわ。

でも、晒しを巻いたからといって決して気は抜けない。私が専攻する教育コースは、死刑執行人になるための英才教育に特化したコースで、もちろん女子生徒は私以外にいない。それも講義は実技が8割で、男性でも身体つきがいい男が大半を占めている。

私も多少なりとも筋肉を鍛えようと独自の鍛錬を頑張って来たものの、食事バランスと時間が限られていた為、一般男性程度の筋肉も鍛える事が出来なかった。女性にしては逞しく、男性にしては細身の体な為、講義では間違いなく浮いてしまう事だろう。だが、こればかりは間に合わなかったのだから、今更悔やんだところで仕方がない。


***


「ラルフ! 見て! 可愛いでしょ?」


遅れて待ち合わせ場所の校門前にやって来たリアは、謝罪を寄越すでもなく、真っ先に制服姿を見せつけて来た。


「似合ってる」


純潔さを際立たせるリアの紺色の制服姿は、確かに可愛い。


「やっぱり? リアが一番似合っているんじゃないかしら!」


しかしだからと言って勘違いして欲しくない点は、リアがこの学園で1番可愛いというわけではないという点。
親バカな公爵に育てられたお陰で、リアはすっかりおめでたい思考回路しか持てない人間になってしまった。

もちろん、リアは不細工では無いものの、とびきりな美人というわけではない。リアよりも美人な令嬢なんて、校門を通って行く人を見るだけでもすでに50人は見つけた。
しかし、誰一人としてリアのように自分が一番可愛いなどとひけらかしていない。


「行くよ」


これ以上この子を野放しておくと公爵家の恥、延いては私の恥を晒すことになる。
リアと私は別校舎。さっさとリアを送り届けてこの子から離れねば。


「待ってよ、ラルフ。まだフランツ様がいらしてないわ」
(げっ……)


フランツ・シャイト
第二皇子の名だ。


「あ、噂をすればよ!  フランツ様~~!!」


目敏くフランツ皇子が乗っている馬車を見つけると、リアは大きな声で手を振った。


「聞こえていないのかしら?」


皇子から何も反応が帰っこない事に、リアは少し拗ねた態度を見せた。逆にどうしてまだ豆粒にしか見えないほど距離があるというに聞こえると思ったの?

それに今ここであなたが手を振った所で、馬術者しか見えないということが何故この子は分からないのだろうか。まさか自分が手を振れば、皇子が窓から顔を出して振り返してくれるとでも期待したのかしら?

物理の法則が成り立つこの世界で、少女マンガの世界は具現化しないという事にいい加減目を覚ましてほしいわ。

それに……第二皇子が、貴女にそんなことを本気でする訳ないじゃない。



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