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六刑
しおりを挟む私が選択したクラスは、死刑執行人の他に裁判官や書記官、弁護士や検察官など司法関連の職を目指している生徒を中心としている。その中でも執行人は、クラス順位トップの成績を取らなければなる事が難しい。
(ここか)
木造の旧校舎の階段を上がり、右に進んだ突き当たりの角部屋。今日からここが私の学び舎だ。固唾を飲み、少し緊張した面持ちで私は教室のドアを開けた。
教室の中の席がほとんど埋まっているのに対し、室内はとても静かだった。
司法クラスを志望するだけあって、スクール初日でもすでに教科書を開いて勉強している。誰一人として他の生徒に干渉せず、黙々と机に向かってペンを動かしていた。
指定された席に座り、私も他の生徒にあやかって予習でもしようかと鞄を開けた時だった。
「わっはははははーーーー!!! みんなおはよう!!」
鼓膜を破りそうなほどの耳障りな声が教室内の沈黙を簡単に破った。耳の中で耳鳴りが止まらない。なんてうるさい声をしているんだ。
血のような赤い短髪に、太陽を閉じ込めたようなオレンジの輝く瞳をした声の大きな少年は、席の位置を確認するなり、私の隣の席に腰かけた。
(まさかの隣かよ……)
正直ちょっと嫌だと思った。
「よろしくな、級友よ!! ところで君は誰だ!!」
「よろしく、大声くん。ところで君も誰?」
「俺は司法クラス一回生、ハイノ・キルヒホフだ!」
『キルヒホフ』……?
って確か、キルヒホフ男爵の?
「ラルフ・アーノイドと申します」
「同級なのだ! 敬語は必要ない! ラルフ、君は何を目指して司法クラスを選択したんだ?」
「私は、死刑執行人に……」
「そうか! 俺と同じだな!」
「!」
男爵家は裁判官の家系だから、てっきり裁判官を目指しているのかと思ったけれど……まあ、今は父様の時のように死刑執行人が固定になっていないから。技術不足で定年で変わっているから、彼はチャンスと捉えたのかもしれない。
長年、死刑執行人を担ってきたアルノルト侯爵家が無くなった今、貴族は元より平民にとっても出世ができる最大のチャンスだもの。きっと、同じ考えは彼だけではないはず。
「という事は、俺達はライバルだな! お互いに頑張ろう!」
「級友よりもライバルが先に出来るなんて嫌だなぁ」
「では級友兼ライバルだ! 『強敵』と書いて友と読むのだ!」
級友にしろライバルにしろ、もう少し声量は落として欲しいものだ。でもまあ……悪い人ではなさそうだ。
「ではラルフ! 早速級友として1つ! さっきから気になっていたのだが、君はもう少し身体を鍛えた方がいい! その肉のつき方はまるで女のようだ! 顔も女性のように癒しある顔立ち故、服さえ変えれば女と相違なさそうだ!」
「だ、誰が女だ!!」
女だと言われて、生理的に身体中から冷や汗が出てきたのが分かった。
ハイノのようにガッシリ筋肉体形でないとは言え、そこらの女に比べれば筋肉はかなり付いている方なのに。
それとも本物の男から見て、女の体である私の体つきには、違和感を感じてしまうものがあるのか……?
「気に障ったのなら済まない! 俺は不器用故、思ったことを全て口に出してしまうのだ! 因みに声が大きいのも、不器用過ぎるあまり声量の調節が不得手だからだ!」
そんな事ある?
不器用もそこまで極めてると病気の領域だと思うけど?!
「しかし死刑執行人の仕事は首斬りとはいえ筋肉を使う! それに成長期真っ只中の男の体なら、今の内に体力をつけておかなければ将来的に病気のリスクも伴う! 俺も付き合うから、これから毎朝筋肉増強トレーニングをしよう!」
「え……いいのか? 付き合ってもらって」
「一緒にすればお互いの為になる! 協働と書いて成長と読むのだ!」
「ありがとう!!」
これはこれ以上ないくらいにとても嬉しい申し出だ!
一人で筋トレをするにもどれ程の運動量が自分に適しているのか分からずに悩んでいたから、一緒にトレーニングをしてもらえるのはとても助かる!
それにハイノは着実にトレーニングを積み重ね、その結果がちゃんと体に反映している。彼の指導は、きっと為になるに違いない!
最初は近寄りがたかったが、思ったよりもハイノとは話が合い、勉強しようとしていた事も忘れて、私たちはすっかり雑談をしてしまった。
雑談を楽しんでいた私達だったが、ある一人の男の登場で、再び教室は静けさを取り戻した。
「うるさいゴミが2匹」
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