【完結】愛しの魔王様～魔王（依存・執着）×勇者(積極的わんこ)～

31

風呂場から上がると、レオリオが服を持ってきた。驚いて、体を隠そうとするとルーシアはグリードの裸を隠す様に、レオリオから服を受け取った。
彼に独占欲に触れ嬉しくなる。

タオル床に落ちたため、グリードがそれを拾おうとするとルーシアが慌てて止めた。
「まって……」
「うっ……」突然、息が詰まったように苦しくなった。
もうダメだと思った瞬間、ルーシアに抱きしめられた。すると、普通に呼吸ができた。
「はぁ……はぁ……」
何が起きたのか分からず、混乱し、ルーシアを見つめた。
ルーシアに口づけをされ、流れてくる唾液を飲むと落ち着いた。
「以前言っただろう。グリードは私の力の範囲でしか生きられない」嬉しそうに笑った。
以前1メートルと聞いていたが、もっと狭い範囲になっていた。
「そうでした」
ルーシアの側にいないと生きられないという事実に、喜びを感じた。
「ルーシア様と離れられないんですね」
嬉しそうに微笑み、ルーシアに縛られた運命を幸せに感じる。
ルーシアに、騎士団の制服を着せられ）驚きの表情を浮かべた。
「安心しろ。魔力範囲はいくらでも広げられる。安心して、国王の城に行け」
ルーシアに口づけされ、『王族暗殺』という彼の願いを思い出した。
「もし、私が嫌ならそのまま騎士として王都で生活しても構わない。魔力範囲は広げとく」
そういうと、グリードの返事を聞かずに国王の城の前に飛ばした。
「でも僕は……」王都での生活を断ろうと口を開いた時、飛ばされた。
「え……」
突然の移動に驚き、国王の城の前に立ち尽くす。
心の準備ができていなかった。
混乱した表情で周囲を見回し、ルーシアの姿を探すが見つからない。
「あ……」近くにあった、水たまりに移った自分の姿を見て慌てた。ルーシアとお揃いのツノがなくなっていた。泣きそうになり、頭に触ると感触がある事に安堵した。
「見えないだけか」
これから国王の城に向かう身としてツノはあってはならない事はわかるが寂しくなった。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。強く手を握りしめ、覚悟を決めると城に向かって歩き始めた。