天才は笑わない

紺野

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「おや、天才くんじゃないか。一体こんなところでどうしたのかな。もしかして道に迷ったとか? やっぱ突出してる人ってアレだよね。そう思うでしょ、トゥールも」

「ひえっ!!?? え、 い、いいいや、僕はななな何もッ」

「だよねだよね~。やっぱ天才ってなんか変なとこあるよね~」

「いや、あんたが言うな」

「ヤダな~僕ほど模範的な生徒なんているぅ?」

「模範的な生徒はヴィレになんて来ないんですよ。ロイド先輩」



 ヴィレという制度のことは知っていた。
 しかしヴィレがこんな場所だとは思っていなかった。色々な意味で。



この学園は身分に関しては平等、公平を謳っているが、学びに関してはとことん実力主義だ。

 その1番象徴的なものが学位制度だろう。
 オルデット学園には騎士科、魔術科、教養科があるが、その全てが年ごとの成績で4つの学位に分けられる。
 下からヴィレ、ミュリベル、ルーラー、アーガルド。

 まず全体の約大半が入るミュリベル。可もなく不可もなく、特に特典がある訳では無いが普通に他生徒と共に学ぶことが出来る。

 それから、ルーラー。
 成績優秀者のクラスで、合格制。昇格試験を受けて合格することが出来ればルーラークラスとなり、寮は一人部屋、学習室の優先権を得、特別科目を受講することが出来る。

 そして各科の上位10名だけが入ることを許されるアーガルド。

 アーガルドになると寮はアーガルド専門の棟に代わり、アーガルドの塔という帝国でも最高レベルの研究機関に自由に出入りができる。その中にある学習施設や資料室のレベルは帝国随一で、魔術科のアーガルドは卒業後そのままアーガルドの塔で働く者も多いらしい。


 最後にヴィレ。

 ヴィレ行きになるくらいなら退学した方がマシだと言われる掃き溜め。
 退学を待つだけの違反常習者や社会不適合者、犯罪者スレスレの人間が入るクラスで、学び舎には全ての科の者が詰め込まれ、寮も教室も隔離されているらしい。


 俺が実質的に騎士科を退科になった日から周囲から聞こえてくる噂話で集めた情報だけでも、酷さが伝わるというものだ。

 確かに渡された地図通りに進むと、旧訓練所の奥の北の沈黙の森の前に小屋のような古い建物があった。

 どうやら寮も兼ねているらしい、ひょろひょろと縦長のそこはとても校舎と呼べるものではないようで、確かにプライドの高い貴族ならこんなところに詰め込まるくらいなら退学するだろうなと思った。



 扉は当然のように軋み建物は相当年季が入っている。
 今どき魔石を利用した明かりでなく、蝋燭のついた廊下なんて初めて見たかもしれない。どれだけ予算がないのかがよく分かる。


 建物に足を踏み入れた時からガヤガヤと騒々しさはあったが、予想以上だった。


 アーガルドの塔でこんなに煩くしていたらつまみ出されるに違いない。


「で、本当に何しに来たんだあんた」

「あの、わ、悪いことは言わないのでこんなとこ居ない方がいいですよ」

「おい、トゥールお前どういう意味だ、あ?」

「だ、だって、どう考えても住む世界が違うっていうか、違う人種っていうか……君とは違って品性漂うっていうか如何にも貴族みたいだし」

「ああん? 俺も貴族だ!!」

「えっ……それで?……」

「ていうかトゥールが珍しいんだってば」 



 そこに居たのは友人が少なく、噂話や周囲の話に疎い俺でも知っているような、ある意味では有名な生徒ばかりだったから。





 
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