【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ

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第三章

12

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 気持ちよく寝ていると、隣からちょんちょんと引っ張られる。

 うん?

「イリーナ起きて」

「うん?あれ?ここ何処?」

「寝ぼけないで~、式の途中だよ。そろそろ移動になるから起きて」

 ヤバっ!?

 まさか式の途中で寝ちゃったの?

 先生達の紹介までは起きてた記憶があるけど、理事長の話が始まってからの記憶がない。

「起こしてくれてありがとう。まさか寝るとは思わなかった」

「私もまさか寝るとは思わなかった。ここが後ろの方の席だったから、近くに居る人しか気が付いてないと思うけどね」

「周りには気が付かれてるんだよね………、失敗したわ。ここが窓から入ってくる光で暖かいから眠くなったわ」

「分かる。偉い人の話も長くて退屈だからね。半分ぐらいの人が寝てたよ」

 そっか…………、ここに居るのが貴族の子供ばかりだけど、退屈な話を長時間聞いたら眠くなるのは、前世の時と何も変わらないわね。

 校長先生の話で眠くなるのは定番よね。

「そう言えば、イリーナに絡んでた子がここを1度出てから、まだ戻って来てないんだよね」

「そうなの?」

「うん。式が始まる前にお手洗い行った時にすれ違ったんだけど、誰も会場に入って来てないから戻ってないはずだよ」

 ふ~ん、何かイベントでもあるのかな?

 内容を全く覚えてないから判断が出来ない。

 レイチェルに会った時に聞いてみよう。

「何もされなかった?」

「問題だよ。それよりあの子とイリーナの関係って何なの?あの子はイリーナをお姉様って呼んでたけど、イリーナはそれを拒否してたよね?姉妹なの?」

「違うわよ。一応は母方の従姉妹になるのかしら?でも微妙なのよね。従姉妹扱いをして良いのか難しい存在なのよ」

「えっと………?どういうことか聞いても問題ない?」

 エリーは聞きづらそうに聞いてきた。

 別に隠してるわけではないから問題はないのだけど、私もどう言ったら良いのか微妙なのよね。

「リリヤは私の元母親の妹の娘なのよ」

「そう言えばイリーナの家は数年前に離婚してたね」

「うん。リリヤの母親は問題を起こしたから、母方のお祖父様達から絶縁をされているわ。リリヤの親はもう亡くなってるけど、お祖父様達はずっとリリヤの存在を受け入れなかったの」

 お祖父様達からしたら受け入れられない存在よね。

 可愛い娘の子供かもしれないけど、嫌いな男の子供でもありますし、叔母様はお祖父様達を裏切ったから、行き場のなくなった恨みはリリヤに向かった。

 叔母様がやったことを考えたら仕方ないと思ってしまうけどね。

「あの子は従姉妹だから、イリーナのことをお姉様って呼んでるの?」

「ちょっと違うのよ。リリヤは私の元母親の養子になったみたいなの。だから自分は私と姉妹だって言ってるんだと思うわ」

「ん?なら姉妹なんじゃないの?ちょっと複雑な関係ではあるけど間違いはないよね?」

「庶民ならそうなのかもしれないわね。でも貴族はそんな単純なことじゃないのよ。貴族は離婚する時に親権を放棄する方は子供と縁切りしないといけないの。2度と親だと名乗らないって契約をするのよ」

 貴族としてのルールを聞いたエリーは、ビックリした顔をして固まってしまった。

 普通に考えたら厳しすぎるわよね。

 そんな暗黙のルールがあるから、貴族は子供がいる場合は滅多に離婚をしない。

 子供に愛情がない夫婦だったら迷ったりしないでしょうけど

「何でそんな決まりがあるの?その決まりは絶対なの?」

「法律で決められてるわけじゃないから絶対ではないわ。でも貴族にとっての暗黙のルールなのよ。こんな決まりが出来たのには色々と理由があるの」

「理由が?」

「えぇ、子供や家を守るための決まりなのよ。我が家を例に話すわね。家は公爵家なのは知ってるでしょ?私の元母親の実家は伯爵家だから、離婚したら元母親は伯爵家の娘に戻るわ」

「へぇ~、元サフィナ公爵夫人は伯爵家の人なったんだね。公爵家と伯爵家で結婚するのって珍しいよね?」

 商家の子供だから、流石に貴族のことを詳しいわね。

「母方のお祖父様の家は貴族として歴史が古い家なのよ。だから結婚することが出来たの。話を戻すわね。離婚する時に子供と縁切りするのは、家を乗っ取られたりしないためなのよ。もしも子供が小さいうちに父親が亡くなった時に、元母親が子供を操って好き勝手出来ないようにしてるの。我が家みたいに身分差があると、贅沢な暮らしを覚えた人は何をするか分からないからね」

 疑いたくはないけど、お金は人を狂わせるからね。

 伯爵家が貧乏だとは言わないけど、公爵家と比べたら全然生活が変わってくる。

「子供を守るための決まりなんだね。操るために恐怖を植え付けるかもしれないし、利用されそうになったって知ったら傷付くはずだから、その可能性を縁切りさせることで潰してるんだ」

「そういうことよ。完全に安全かって言うと微妙ですけどね。図々しい人は縁切りされても関わってきますから」

 周りからの評判はガタ落ちすることになりますけど、気にしない人は気にしないですから


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