【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ

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第三章

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 聞かなかった事にしたいけど、もしそうしたら後々取り返しのつかないことになる可能性もある。

「王太子様に質問したいんですけど、私は貴方様の婚約者候補から外れたはずです。その証拠に月に1回あった婚約者候補全員参加の交流会も参加してません」

「そんなの俺の気を引きたいからあんな愚かな提案をしたんだろ。本気じゃなかったことは分かってる。俺から縋り付いてくるのを待ってるんだろ。俺はそんな駆け引きに引っ掛からないぞ」

 馬鹿なの?

 普通にあり得ないでしょ。

 1度婚約者候補から外れたものが復活することなんて不可能よ。

 あり得るとしたら、まだ残ってる他の候補者が次期王妃になれない程の落ちこぼれだった場合だけど、私が見てきた彼女たちはそこまで酷くなかったはず。

 誰かがずば抜けて優秀とかではなかったけど、ずば抜けて落ちこぼれなんて人も居ない。

 王太子妃の候補者に選ばれるぐらいだから、普通よりちょっと上の成績だった気がする。

「何を根拠にそんな事を言ってるのか分かりませんが、私と王太子様が婚約して結婚することは絶対にありえません」

「なら何故お前はまだ誰とも婚約をしてないんだ。俺とやり直せるのを期待してるんだろ?リリヤ嬢だってお前がまだ誰とも婚約してないのは、お前がまだ俺に未練があるからだと言っていた」

 余計なことを何で言うかな!!

 王太子様を狙ってるなら、自分の力だけで落としなさいよ。

 私に悪役令嬢を押し付けないで欲しいわ。

 ゲームの中の私は王太子様を好きだったかも知れないけど、私は王太子様は全然好みじゃないのよ。

 私の好きなタイプは大人の余裕がある人で、王太子様みたいな傲慢な子供じゃないのよ。

 あぁ~、声を大にして本音を言いたい。

「未練など一切ありませんわ。婚約者が決まってないのは偶然です」

「嘘をつくな。お前は公爵家の娘なのだから相手なんて選び放題だろ。俺の婚約者候補から外れたなら、縁談だって沢山来てるはずだ」

「縁談の申込みは確かに沢山来てるみたいですね。だけど私の父は次の婚約者は自分で選んで良いと言ってくれてますわ。だから私は自分の婚約者を学園に在籍してる間に探すつもりですわ。そんな人は私だけではないはずですから、まだ居なくても普通のはずですが?」

 最近は親が勝手に婚約者を決めることは少ない。

 婚約者になる者の条件は言われてるものは多いけど、その条件に合うものを自分で探して来るのが主流になっている。

 王族は婚約者にも王族としての教育があるから、小さい頃から数人選ばれてこの中から選ぶように言われてしまうけど、それはレベルの高い教育を求められるから仕方ない。

 逆に言えば高いレベルの教養を身に付けてるなら、婚約者候補以外でも構わないってことになるけど、それはそれで婚約者になった人は、王族教養を短期間で学ばないとイケないから大変よね。

「私が王太子様に未練が無いと分かっていただけましたか?」

 私が毅然とした態度で説明すると、王太子様は顔を真っ赤にして黙り込む。

「言葉では誤魔化すことはいくらでも出来るわよ。イリーナお姉様強がってないで、正直に自分の気持ちを話したほうが良いです。イリーナお姉様はミハイル様のことが大好きなはずです」

 違うってハッキリ言ってるんだから諦めなさいよ。

 リリヤにとっては、私が王太子様を好きじゃないと困るのかもしれないけど、好きじゃないものは好きじゃないのよ。

 前世の記憶が戻る前の私が何であんなに王太子様に執着してたのか疑問だけど、予想でしか無いけど母親だったあの人の影響もあったのかもしれない。

 あの人はずっと私の将来は王妃になることが決まってると言ってきた。

 私は公爵家のお姫様なのだから、王子であるミハイル様のお嫁さんになるのは絶対だと言ってきた。

 今、考えると軽い洗脳だったんじゃないかって思えるのよね。

 あの人は父方のお祖母様や貴族女性達からあまり歓迎されていなかった。

 私から見たあの人は完璧だったと思ってたけど、この2年間で社交界に出るようになり色々分かるようになってきた。

 あの人は誤魔化すのが上手だっただけなのよね。

 伯爵家と公爵家では求められるレベルが違う。

 伯爵家では問題なかったのかも知れないけど、公爵夫人としては納得できるレベルではなかった。

 お祖母様はあの人がお嫁に来たのを納得出来ずに、愚痴愚痴言っているのを何度も見た。

 お父様とあの人が何で結婚することになったのかは、1度も聞いたことがないから分からないけど、周りから歓迎はされなかったのは想像できる。

 周りを見返すためにも、あの人は私とお兄様の教育に力を入れていた。

 私が王太子妃に選ばれるることは、あの人が公爵夫人として子供の教育が完璧だった証になるはずだった。
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