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第五章
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しおりを挟むテイラー伯爵令嬢の媚びを売るような視線に、陛下とユーリ様は不快そうな顔をする。
ユーリ様が彼女を好きになるとは思ってなかったけど、ここまで拒絶してるのを見ると、ちょっと安心してしまうわね。
テイラー伯爵令嬢は、2人が自分に靡かないのを見て、何故か動揺をしている。
何で自分のことを恨んでる人が自分に惹かれると思ってるのかしら?
ユーリ様は可能性があったかもしれないけど、陛下は自分の息子を傷付けた相手ですわよ?
普通に考えて嫌われてるに決まってますわよね?
「何をビックリした顔をしている。私達が君に夢中になるとでも思っていたか?自惚れるにも程がある。今まで君が取り巻きにしてたのは、全て魅了魔法による結果だろ?本来の君の魅力で落としたものは居ないはずだ」
陛下の言葉が図星だったのか、悔しそうな顔をするけど反論は一切してこない。
「私は魅了なんて恐ろしいものを使ってません。信じてください。きっと誰かが私を陥れようとしてるんです」
「誰がそんな事をして得があるんだ?いい加減なことを言うんじゃない。どんなに言い逃れしようと君の罪は変わることはない」
「本当に私ではありません。きっと魅了魔法なんて勘違いですよ!!私はそんな魔法を使えません」
これが全部演技だから凄いわよね。
何も知らない人がこれを見たら、彼女の話を信じてしまいそう。
「魅了魔法を使われていたのは間違いない。魅了に掛かっていた者たちは、魅了魔法を消す魔導具で解放されたからな。数人だけ手遅れで廃人になってしまったんだよ。息子もその1人だ」
「魅了魔法を使われていたのは本当みたいですけど、私は絶対に使ってません。だって魔法で好きになってもらっても本心じゃないんでしょ?そんなの辛いだけです」
魅了魔法を使ったと認めたら、死刑確実だから簡単に認めるとは思ってなかったけど、ここまで手強いとは思わなかった。
自分から自首して欲しかったけど、最後まで認める気がないなら最終手段を使うしかないわね。
「本当に貴女が魔法を使ったわけではないのですね?」
「……………本当です」
私の質問に答えるのが嫌なのか、答えるまでにかなりの間があるわね。
「なら貴女には関係ないですかね?陛下達にはまだ言ってないんですけど、魅了魔法を使ったものには代償があるんですよ。これは魔導具だったとしても変わらないみたいです。使用者が分からなくても、半年後には絶対に分かるようになりますわ」
魅了を使ってるものには、結構えげつない副作用があるのよね。
「代償?それはなに!!」
「貴女は関係ないんですよね?なら知らなくても良いことですわ。副作用は女性としてはとても恐ろしいことですから、関係ないなら知らないままのほうが良いですわよ」
関係あるのは分かりきってるけど、罪を逃れようとしてるなら容赦しないわ。
テイラー伯爵令嬢のことを私は凄く怒ってるんだから、助かった理由は分からないけど、この子は私のお父様とお兄様も魅了しようとしていた。
この子が家に居候してた時に魅了が成功してたら、お父様とお兄様は今頃狂っていたはず。
テイラー伯爵夫人が廃人になってるのだから、同じ時期に魅了をされてるはずだった2人も廃人になってたはず。
「どんな副作用なんだい?見たらすぐに分かるのかい?」
「魅了魔法は魔力の他に使用者の生命を削る魔法と言われてるみたいです。魅了魔法の使う回数が多ければ多いほど、副作用が酷くなると書いてありました」
「生命を削る?どう言うことだ?でもこの者に副作用が起きてないみたいだな」
「まだ時期ではないだけです。魅了魔法は使い続けてるうちは何も起きないみたいなんです。だけど2か月間1度も使わなかったら、一気に老化が始まるみたいです」
今回の被害者の数を考えたら、亡くなってしまう可能性もあるのよね。
魅了魔法について書いてある書類には、詳しく副作用の規模は書いてなかった。
1人魅了することでどの程度老化するのか分からないから、テイラー伯爵令嬢がどうなるのか想像ができない。
過去に魅了魔法を使ってた人達は一気に老化が始まり、老人になったり、亡くなってる者が多かったと記録されていたのよね。
「嘘よ嘘よ嘘よ!!イヤーーーーーー!!」
テイラー伯爵令嬢は突然絶叫したかと思ったら、そのまま気絶してしまった。
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