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しおりを挟むずっと大人しく聞いていたウィリアムお兄様は、テーブルをバンッと叩いて立ち上がった
「ではずっとシルビアを苦しめてた愚図共を見逃すって言うつもりなの!!俺は絶対に許せない!!シルビアと同じぐらい………、いや、それ以上の苦しみを味わわせたい!!」
「見逃すなんて言ってないだろ。法律的に罰を下せないなら、貴族として暮らせないようにしてやればいい」
貴族として暮らせない?
処罰出来ないって言ってたのにそんな事が出来るの?
「お父様どういうこと?シルビアお姉様の父親がしてたことは、罰することが出来ないって言ってたでしょ?」
「この国では法律があるのをジャンヌも知ってるよな?」
「うん!!私達王族でも法律に逆らうことは出来ないんだよね?私達も悪いことをしたら、法律にしたがって罰せられるんでしょ?」
法律………
法律ってものがあるのは知ってるけど、実際にどんな内容があるのか知らない
何ならやって良くて、何なら罰せられるのか知らない
お母様が教えてくれたのは、無抵抗な者や自分より弱い相手に暴力を振るうのはいけないこと、他人のものを盗んではいけないこと、相手の尊厳を傷つけることはいけないって教えられた
当時は気にならなかったけど尊厳ってなんだろう?
「よく勉強していて偉いぞ。法律で裁けないなら、あの男たちを貴族社会から孤立するように立ち回ればいい。ソフィーにやって欲しいことが有るんだが良いか?」
「勿論よ。お茶会や晩餐会に参加して、カトリーヌの愛娘が家族から酷い扱いを受けてたって、噂を広めればいいのでしょ?」
「よく分かったな」
「当たり前じゃない。貴族にとって噂は酷ければ酷いほど今後に影響してくるもの。今回は皆から愛されていたカトリーヌの娘が傷付けられたって知ったら、私達世代の者は絶対に許さないわ」
お母様ってそんなに皆から愛されていたんだ。
外でのお母様を見ることがなかったから、あまり実感がわかないかも
家でのお母様はお父様と揉めてる姿ばかりだった
「噂程度でそんなに影響があるの?」
「ウィリアム達はまだ社交デビューしてないから分からないだろうけど、どんなに身分が高くても、悪い噂がある人は貴族社会ではやっていけないのよ。悪評が立てば立つほど集まりに呼ばれなくなる。集まりに呼ばれないってことは、流行や世間の流れが読めなくなるの。そしたらもうおしまいよ」
「法律で罰せれないなら他の方法で追い詰めるってことなのね。噂を広めるならお喋り好きな女性が最適だから、お母様の出番ってことなのね」
「そういう事だ。時間は多少は掛かるかもしれないけどな。小さい頃から周りに敬われてきたあの男には、周りから避けられたり、見下されることが1番耐えられないだろう」
伯父様はそう言って楽しそうに笑った
もしかしたら伯父様にとって、お父様を処罰できないほうが良いと思ってたのかもしれない
刑罰の内容によっては罰金刑と接近禁止だけで終わってしまう可能性もある。
侯爵家であるお父様には罰金刑では痛くも痒くもない
「ずっと気になってたんだけど、刑罰で1番重いのが何で死刑なの?死刑になるような人なら恨んでる人が多いと思うんだけど、一瞬で苦しみが終わって亡くなるのは、納得できない人が多いじゃないの?自分と同じぐらい苦しんで欲しいって考えると思うんだけど?」
「エリックの言う通り納得できない人もいるけど、死刑にすることでもう目の前に現れないと安心する人もいる。死刑が1番重いのは色々理由があるけど、1番の理由は万が一逃げられて、被害者が増えないようにするためなんだよ」
「それっておかしくない?死刑になるような相手なら監視が厳しいはずなのに、逃げることなんて出来るの?」
「不思議なもので、死刑になるほどの犯罪者の一定数は信者が多いだよ。監視してるものを誑かして脱獄に協力させてしまうことがある。だからそうならないように死刑が決まったらすぐに執行するようにしている」
へぇ~、そんなにカリスマ性があるなら、他のことに活かせばいいのに
商人とかになったら成功しそう
「取り敢えず、シルビアの父親がこっちに帰ってくるのに確実に1か月はあるから、その間にあの家族の評判を落とすことにしよう。ソフィー、頼んだぞ」
「任せてちょうだい。うふふっ、確実にあの男を地獄に落としてやるわ」
「やり過ぎて、伯母様が周りから非難されたりしないですか?」
「大丈夫よ。私は親友がのこしてくれた大切な姪の事で嘆いてるだけなのだから、周りが勝手に噂を大きくしてくれるわ」
なら大丈夫なのかな?
「なら僕は学園で噂を広めようかな。俺達の年代は大人と比べて暇だから、この手の噂はすぐに広まるよ。それに今まで全く様子が分からなかった、シルビアの情報ならすぐに広まるだろうしね」
エリックお兄さんって結構腹黒い?
お父様たちは敵に回してはいけない人を怒らせたみたいね
…………私はお父様たちが周りから孤立しても、平然としていられるかな?
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