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しおりを挟む塔の前まで来て、私は肝心なことを忘れていた。
カイル様から部屋を聞いてない。
受付に聞けば教えてもらえるかな?
でも秘書に決まったのは昨日だから、たぶん私がカイル様の秘書だって知られてないよね?
もしかしたら秘書が来るってことも知らないかもしれない。
受付でカイル様の仕事部屋を聞いて、素直に教えてもらえるかな?
カイル様は女性から人気だろうから、ファンが来たと思われて追い出される予感しかしない。
でもカイル様に来たことを知らせる手段がないから、一か八かで聞いてみるしかないよね。
もしも追い出されそうになったら、お父様とお母様を呼んでもらおう。
身分証は持ち歩いてるから、お父様の娘って証明はできる。
お父様は私がカイル様の秘書になったって知ってるから、お願いしたら取り次いでくれるはず。
ドキドキしながら塔に入るけど、何故か塔の中が騒がしいことに気が付く。
これが通常の状態なのかな?
それとも何か良くないことが起きてる?
出勤初日から危険な任務に同行は避けたい。
危険な場所に行くのは、カイル様とそれなりに親しくなってからが良い。
だって信頼関係がまだ出来てない状態で、完全に信頼するのは難しいと思う。
受付で何かあったのか聞いたら教えてくれるかな?
受付にいかないと何も進まないよね。
受付に行こうと歩き出す。
「おい。何処に行くつもりだ?」
「えっ?カイル様!?何故ここに居るんですか?」
「お前を迎えに来たんだよ。部屋も分からないだろうし、今はまだ俺が居ないと部屋に入れないからな」
カイル様が居ないと部屋に入れない?
場所を知らないから部屋まで来れないってことかな?
「忙しいのに済みません」
「問題ない。用事でもないと部屋から出ないから、良い気分転換になってるからな」
カイル様は引きこもりタイプの魔術師なのかな?
魔術師には2つのタイプがいる。
お父様たちみたいに外に出て動き回ってる魔術師と、部屋に引きこもって研究に力を入れてる魔術師に分かれる。
どちらも国として大事で、外で動き回ってる魔術師は、基本的に魔物の討伐や自然災害の復旧を手伝う、研究に力を入れてる魔術師は新しい魔法を生み出したり、新しい魔導具を作ったりしている。
魔法薬専門で作ってる魔術師もいる。
「そういえば今日は何かあったんですか?騒がしいみたいですけど?」
「俺は何も聞いてない」
カイル様が聞いてないってことは、何か危険なことが起きてるわけではないのかな?
そういえば急に静かになったような?
チラッと周りを見ると、全員の視線がこちらに集中している!?
な、何!?
こんなに人の視線が集まると、恐怖を感じるものなのね。
…………もしかしてカイル様が居るから騒がしくなってたとか?
まさかよね?
でもあり得るかも
本人も滅多に部屋から出ないって言ってたし、そんな人がロービーに居たら注目されるよね。
しかも誰かを待ってるようだったら、相手は誰なのか騒ぎになるはず。
改めて周りを観察すると、男性は興味深そうにこちらを見ていて、女性は怖い顔をしてこちらを見ている。
やっぱりモテるのね。
沢山の女性から恨まれそうね。
呪われたりしないよね?
呪は魔術と通づるものがあり、魔法が得意なものほど、強力な呪をかけることも出来ると言われている。
お父様から貰ったブレスレットは、呪も跳ね除けることが出来るみたいだから大丈夫だよね?
不安になってきたけど、カイル様の秘書を辞退するつもりはない。
だってカイル様の秘書を辞退したら、私だけの力では絶対に塔で働くことはできない。
1つだけ不安なことがあるとしたら、もしも私が誰かから危害を加えられたら、絶対にお父様達が仕返しをしそうなんだよね。
普段は温厚で優しい人たちだけど、怒らせたら1番ヤバい人達なんだよね。
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