【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第一章 カプリコーンと魔術師(マジシャン)の卵

第五話 覚醒・エルフモード!

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 オレと遠野さんはケーキとコーヒーを買い、コンビニから帰って来た。
生徒指導室に入り、貞先生達にそれらを差し出す。
しかし、遠野さんはまだ髪の毛をポニーテールにしていない。
貞先生や刑事さんの前でエルフモードになるのはまずい。
いくら人間に近い幻獣とはいえ、身体はバッチリと変化する。
噂になり、身体を調べるような研究機関が来るのは非常にまずいはずだ。
オレはそう思って、遠野さんに告げる。



「おい、早くトイレに行って、エルフモードになって来なよ。
みんながいる前では、いろいろまずいんじゃないのか?」

「問題ないよ。
木霊君がいてくれれば、私はどこでだって幻獣になる事ができる。
安心して見ていて!」

 遠野さんは、貞先生と刑事さんの前に行き、パフォーマンスをするように立ち止る。
両手を上げ、詠唱を唱え始める。

「太古に栄えし魔獣達よ、数万年の眠りを破り、今ここに甦れ! 
覚醒・エルフモード!」

そう言いながら、遠野さんが髪型をポニーテールにすると、髪の毛と瞳の色が赤色へと変わり、耳が自然と尖り始める。
彼女は今、古代にいたと言われる賢い種族『エルフ』になったのだ。
刑事さんと貞先生はそれを見て、それぞれの感想を述べ始めた。

「おお、なんか髪の毛と瞳の色と耳が変わったぞ。
これが木霊君の魔法(マジック)なのか……。
すごいと言えば、すごい!」

刑事さんは意外と良い反応をした。
まあ、本当に種も仕掛けも無いからな。
しかし、貞先生は違う。
彼氏に振られ、欲求不満が溜まっているという女だ。
人を傷付ける感想を述べるのも超一流だ。

「うわ、さぶ……。
あんたら、このためにコンビニに行って来たの? 
まあいいけど、パフォーマンスとしては地味よ! 
もっと派手に光り輝くとか、魔法陣の下に入るとかしないと、中二病患者にも勝てないわよ!」

そう言いながらオレの買ったケーキを食べ、ふんぞり返ってコーヒーを飲む。
エルフ以上の傲慢ぶりだった。
これ以上のダメージを受ければ、必殺技のようなパフォーマンスは無くなり、ただ髪の毛を弄るだけという寂しい変化になってしまう。
その傲慢なエルフになったはずの遠野さんは弱弱しく言う。

「努力します……」

なにはともあれ、こうしてオレの容疑を晴らす舞台は整ったのだ。
後は、エルフモードとなった遠野えるふさんが、事件を解決してくれるのを期待する。
本当に、彼女の知能は上がっているのだろうか? 
これで何も変わっていなければ、ただのコスプレ以下の能力である。
あれだけの演出をして、痛い少女になっただけでは、割に合わない!
遠野さんは覚悟が決まったのか、刑事さんにこう言い出す。

「では刑事さん、事件の内容をお話し下さい。
轟木霊(とどろきこだま)の無実を証明してあげますから!
今の私に、解けない謎はなえです!」

「なえです?
ぷっ、どういう事かしら?」

「ないです、解けない謎はありません、たぶん……」

エルフモードで頑張っていた遠野さんだったが、肝心のところで噛んでしまった。
その為、自信も喪失しかけている。
刑事さんの期待感と信頼感も微妙だ。
貞先生の小馬鹿にしたような笑みが凄く腹立たしい。
刑事は、何事も無かったように事務的に、ゆっくりと事件の詳細を話し出す。

「昨夜、四月二日木曜日の午後九時頃に、一人の女性が腹部を刺されて亡くなりました。
被害者は、八木聖子。
年齢は三十二歳で、やり手の会社経営者でした。
俺も最初は、経営のトラブルによる殺人事件だと思っていたのだが、何人か目撃者がいて、近くの交番に連絡して来たようです」

刑事さんの言った事を補足するように、貞先生は話に割り込む。
どうやら刑事さんよりも目撃者を詳しく知っているようで、積極的に話す。

「その通報して来たのが、うちの高校の女生徒、鏡野真梨さんというわけね……。
あ、言っちゃいけないんだったわね。
一応、私が保護者として世話しているから知っている生徒なんだけど……」

遠野さんは、貞先生と親しい間柄の様で、一緒に住むようになった経緯を話し始めた。
大人しく刑事さんの話を聞くという基本的な事も出来ていない。
まあ、ホワイトボードに内容を書き込んでくれた為、話をうろ覚えに聞いていても理解はできるのだが……。
刑事さんは、悲しい顔で話が終わるのを待っていた。

「ああ、インターネットで見つけた相談に、貞先生が返答したのがきっかけでしたよね。
確か、刑事事件にばかり遭遇して、両親からも不安に思われ、友達もいないっていう私と同い年の大阪の女子高生ですね。
その子がそういう相談をして来たから、住んでいる環境を変えた方が良いってことで一緒に住む事になったんですよね。
家事は交替で出来るし、家賃も半分で済むとか言って……」

「ええ、まさか入学初日で殺人事件の現場に遭遇するとは思わなかったけどね。
しかも、目撃した殺人犯が私の生徒とは……」

「でも、私は貞先生のそういう所が大好きですよ。
生徒のためを思っているって、肌で感じますから……」

「今日の遠野さんは、やっぱりちょっとおかしいわね。
いつもは会話にも入って来る事は無いのに、私を誉めて来るとか……。
どこか病気かしら? 頭とか打った?」

「いえいえ、私は貞先生の事を尊敬していますよ。言葉に出さないだけで……」

「いつも単語くらいしか言わないのに、今日はとても多く話すわね。
いつもは言葉足らずだから、変な誤解を生むって評判なのに……」

「轟木霊(とどろきこだま)がいるからですよ。
話し相手ができたから、会話も変わって当然ですよ!」

「まあ、いつもの子供っぽい会話は、イライラするから嫌いだったけどね。
変な誤解も生じやすいし、理解できない時もあったわ!」

貞先生がそう言うと、遠野さんの笑顔が曇った。
コンビニの帰り道に聞いた話だが、幻住高校に入学するまでは、近所のお姉さんとして姉妹のように接して来たと言っていたけど、ここに来てのカミングアウトか……。
これは精神的にきつい!
オレが遠野さんの心配をしていると、さすがはエルフモードといったところか、何とか耐えていた。
笑顔はしているが、一筋の涙を流す。やはりギリギリなのか。

久し振りに変身したエルフモードだけに、貞先生の容赦ない言葉には打たれ弱いのだ。
さっきまで鮮やかな赤色だった髪が、褐色の色へ変化していた。
おそらく精神力を髪の毛の色で教えてくれているのだろう。
鮮やかな赤色の髪は、エルフモードである事を示しており、黒い髪の毛は、いつもの彼女に戻るのだ。

おそらくエルフモードの精神力がへし折られれば、いつもの遠野さんに強制的に戻るのだろう。
そうなれば、もう事件解決に協力するには、かなりの回復の時間がかかるはずだ。
オレは刑事に、もう一人の目撃証言について教えてくれるように頼んだ。
一刻も早く事件を解決しなければ、遠野さんの精神力が限界になってしまう。

「刑事さん、早く事件の目撃者を教えて下さい。
どんどん事件と関係ない話になっています」

「ああ、すまない。
もう一人の証言は、公園に寝泊まりしている中年のホームレスの証言だ。
女子高生の証言より、時刻が正確だった。
だけど、食い違っている部分も多くて、我々警察も困っているんだ」

「ああ、あのホームレスの老人か。
名前は、魚崎圭介。もう六十代の後半でしょ。
ボケていても不思議じゃないわ。
きっと鏡野真梨さんの証言が正確なのよ。
だから、犯人は轟木霊君の可能性が高いわね!」

貞先生は、オレが遠野さんを心配しているのが分かったのか、言葉による攻撃力が上がる。
そういえば噂話で聞いた事だが、貞先生は彼氏と別れているという。
下手なラブラブ行為は、遠野さんを更に追い詰める危険がある。
ちょっとの接触でも分かるほど、彼氏のいる女性に対しては厳しいのだ。
刑事さんは、オレと遠野さんがダメージを受けているのを悟ったのか、事件を解決する事を急いでくれる。
今や、貞先生の視線は怒りが滲み出していたのだ。

「えっと、彼は公園で寝ていたそうなんだけど、便意をもようしたようで、近くのスーパーにあるトイレに行こうとしたそうだ。
彼もやはり人間、綺麗なトイレで用を済ませたいと考えての行動のようだ」

「ちっ、テメ―なんか、その辺で野糞でもしていろ。社会の屑が!」

恐ろしいほどの暴言を吐く貞先生に、遠野さんが一矢報いる。

「貞先生、その言い方は生徒の教育上よくないと思います。
貞先生と彼氏さんの関係もその言い方が問題だったのかもしれませんよ!」

遠野さんがそう言うと、貞先生が机を蹴り上げる。
組んでいた脚を変えようとしていただけだったが、遠野さんは恐怖で身体がビクっと震えたようだ。
オレは、貞先生の死角にある遠野さんの手を握る。
オレだって、貞先生がキレたのかと思って怖かった。
机を蹴り上げて、オレ達二人を攻撃したのかと思ったほどだ。

「あら、そうよね。
そう言う言い方が、私の振られる原因かもしれないわね。
忠告ありがとう、遠野さん!
言い変えるわ。
そのお方なんて、公園のトイレで、用を済ませる価値もありませんわ。
社会の廃棄物さん!」

貞先生は笑顔だったが、殺意が漲っていた。
貞先生が殺人犯だと聞かされたら、本気で信じてしまいそうなほどだ。
うん、言い方の問題じゃないよ。
あんたの心の問題だよ、とオレは思った。
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