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第一章 カプリコーンと魔術師(マジシャン)の卵
第十話 ケーキショップにて
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オレと遠野さんは、ケーキショップに入り、ケーキとコーヒーを注文する。
いつも貞先生ときているようで、手慣れた感じだ。
金額が安くなるクーポン券も持参している。
それにより、五百円は安くなった。
「まだ貞先生は来ていませんが、もうしばらくしたら来るでしょう。
それまでの間、私の推理でよろしければ、なぜ犯人のカプリコーンが星野慎也なのかをお話しましょう」
「ああ、教えてくれ……」
遠野さんは、トイレで髪の毛をポニーテールに変身してくれた。
長時間の変身はキツイらしく、小まめに変身を解く事で持続時間を長くしているようだ。
どうやら推理の説明は、エルフモードにならないとできないらしい。
遠野さんは、エルフモードになり、推理を淡々と話し始める。
「まず、星野は、午後九時頃に、被害者の八木さんの家を訪問しました。
しかし、まだ帰っておらず、家の周りをうろうろします。
おそらく八木さんは、星野に付き纏われていたのでしょう。
そこで、星野は女装をして、待ち伏せています。
星野は、八木さんを殺す気はありませんけど、脅すためにナイフを持っていたのでしょう。
すると、偶然にも、走っている轟木霊(とどろきこだま)にぶつかり、あなたは手品道具のナイフを落としてしまいます。
星野は、とっさに自分のナイフかと思い、そのナイフを拾ってしまいました。
しかし、重量やデザインから自分のナイフではないと悟り、そのナイフをあなたに返します。
その時、あなたの後ろで、その出来事を見ていた少女がいる事に気が付き、八木さんの殺害計画を思い付きます。
五分ほどして帰って来た八木さんを、星野は持っていたナイフで刺殺し、そのまま逃走しました。
しかし、今度は魚崎さんに目撃されてしまいました。
星野は、あなたがいる事、女装していた事により、自分の犯行がばれるはずはないと思っています。
酒牧羊子さんも動機はありそうですが、身長が百七十センチあるので、ヒールの付いたくつを履いた場合は、身長が百七十五センチにもなります。
第一の目撃者が、女性と轟木霊(とどろきこだま)の身長が同じくらいと言っていた事から、星野慎也が犯人であると決めました。
いずれは、他の証拠も警察が見付けてくれるでしょう。
まあ、私の推理はこんな感じです」
「最初に、犯人が変装していると思った理由は?
いきなりカプリコーンって言い出したように感じたけど……」
「ああ。あれは、あなたとぶつかって、二人とも倒れるような衝突だったからです。
本当に女性だったら、女性だけが倒れて、あなたは無傷のはずですよ。
でも、あなたの手には、倒れた時にできた擦り傷がありますし、新品の制服に倒れた跡も残っています。
更に、物を落としてもいる。
その衝突の強さから、ぶつかったのは男性ではないかと……。
それに、もしもその女性が犯人なら、あなたに目撃されているので、犯行は控えるはずです。
それでも実行するなら、変装しているのではないかと思っただけです」
「なるほど。遠野さんは将来、警察にもなれそうだね。推理力もすごいよ」
「いえいえ、それほどでも……」
後日知る事になるが、星野慎也の自宅から犯行に使われた凶器のナイフと、変装の道具が見付かり逮捕となったそうだ。
遠野さんはオレへの説明を終えて、コーヒーを一口飲んだ。
オレは、遠野さんにお礼の言葉を述べる。
「すごいよ、遠野さん!
遠野さんがいなかったら、オレが犯人にされていたかもしれない。どうもありがとう!」
「ふふふ、木霊君……。あ、轟木霊(とどろきこだま)が私の髪を掴んだ時、制服が汚れているのに気が付いたんです。
お尻と袖口が、砂埃で汚れています。
それで犯人じゃないと分かったんですよ。
最初は、犯人が変装しているなんて知りませんでしたし、こんな間抜けな粗忽者が犯人ならすぐに捕まっているはずだと……」
「はあ、間抜けな粗忽者で良かったです……」
「でも、私の正体を見ても驚かなかったし、正直に答えたから轟木霊(とどろきこだま)は良い人だと思いました」
(パンツに気が取られていたとは言えないな……)
オレはそう思いながら、こう言う。
「ありがとう。でも、エルフモードでも木霊君って呼んでよ。
フルネームで呼ばれると、恥ずかしいからさ……」
「いえ、そこは譲れません。一応、エルフモード設定だから……」
遠野さんは推理する必要が無くなったと判断すると、ポニーテールを解いて、ロングヘアーに戻す。
褐色になっていたポニーテールを解き、髪の毛をなびかせると、赤かった髪の毛が緑の黒髪に変わり、赤かった目の瞳も黒に変色し、尖っていた耳が元に戻る。
しばらく二人でいたが、いつまで経っても貞先生現れない。
きっと来ない貞子は、あそこまで自分で約束しても来ないのだろうか?
もう八時も過ぎ、九時近くになろうとしていた。
オレは不思議に思いながら、遠野さんにこう尋ねる。
「貞先生、遅いね。いつもこうなの?」
「ごめんなさい……」
遠野さんはなぜかオレに謝る。
悪いのは貞先生のはずなのに、どうして謝るのだろうか?
オレは、不思議に思っていたが、遠野さんの話で納得した。
そして、携帯電話を取り出し、さっきのメールを見せてくる。
メールの日付は、三月二十七日であり、一週間前の物だった。
「本当は貞先生との約束なんてないんです。
私が木霊君とお話ししたくて騙したんです。ごめんなさい」
「え? どうして? 普通に誘えば良かったじゃないか?」
遠野さんはテーブルに顔を伏してそう言う。
涙を流している所が見えない様にそうしているようだ。
しかし、涙の滴がテーブルの上に落ちているので、オレは彼女が泣いている事に気が付いた。
「私は異形な者です。
こうでもしないと、木霊君が気味悪がって来てくれないと思っていたんです。
少しの間でも仲良くなりたいと思って騙しました。ごめんなさい」
「気味悪がったりはしないよ。これからも友達でいて欲しいんだけど……」
「エルフモードはまだ人間の形をしていますからそう思うのかもしれませんが、更に変身すると人間の姿じゃなくなります。
そうなると、みんなは私から離れて行きます。
確かに、私の母親は社会的地位や権力はありますが、私の学校生活をほとんど助けようとはしません。
だから、私に気を使わなくても大丈夫ですよ。
貞先生のような小さい事にこだわらない人はともかく、ほとんどの同級生は私を不気味に思います。木霊君も無理しなくて良いですから……。
今は、好奇心から話しかけてくれるのかもしれませんが、いずれは私から離れて行きます。
監視目的で付き合ってもらうなんて言ったのも、私が少しの間だけでも恋人気分を味わってみたかっただけです。
私を好きになってくれる男の子なんて、この先もいませんから……。
だからせめて、今日だけでも男女間のデートみたいな事がしてみたかったんです。
でも、騙していた事が分かったから、もう終わりですね……」
遠野さんは立ち上がり、オレの前から逃げようとした。
オレも立ち上がり、遠野さんを急いで追いかける。
通常時の遠野さんは、運動神経もあまり良くなくて、オレはすぐに追い付く事ができる。
テーブルから数メートル離れたところで追いついた。
以前は、遠野さんの髪の毛を掴んでしまったが、今度は腕を掴む事ができた。
「オレは、遠野さんが異形な者なんて思わないよ。か弱い普通の女の子だ!
確かに、ケンカしたり、怒ったりする時はあるかもしれないけど、オレは遠野えるふさんと一緒に高校三年間を過ごしたいんだ!」
オレは勢いに任せてそう言ってしまった。
でも、それがオレの本心だった。
振り返った遠野さんと目が合う。
驚いたような、嬉しいような表情をして、オレを見つめている。
オレ達がいるのはケーキショップの扉の前だった。
カランという音とともに扉が開き、オレ達の知り合いが姿を顕わした。
オレの声を聞いていたようで、こう語り掛けて来た。
「よくそんなくさいセリフが言えるわね。
ケーキショップの前でラブラブしているんじゃないわよ。
営業妨害だわ!
蹴り殺されるわよ!」
そう言われ、軽く蹴りを入れられる。
威力は弱いが、的確に脇腹を突いてきた。
ヒールの先が急所に当たり、悶絶するほど痛い!
ケーキショップに入って来たのは、貞先生だった。
「貞先生? どうしてここに……」
「私の行き付けの店よ。居ちゃ悪い?」
そういえば、ケーキのやけ食いとか言っていたな。
貞先生はキレたような表情から、笑顔の表情を浮かべてオレの襟を捕まえる。
遠野さんも腕を捕まえられ逃げられない。
お礼のつもりで奢ってくれるそうだが、拷問に近い感じがした。
「私が結婚できるまでは、可能な限り毎日付き合ってもらうわよ!
マスター、モカコーヒーセット、三つお願い!」
貞先生はオレ達を席に運び、ケーキを注文する。
奢ってくれるようだが、ケーキを食べ終わったその後は、カラオケに連れて行かれ、深夜の二時まで歌い明かした。
逃げる事は許されず、遠野さんもぐったりしている。
オレは驚愕の事実に気が付き始める。
まさか遠野さんが避けられているんじゃなくて、貞先生が避けられているんじゃ……。
幸い、貞先生の機嫌の悪い時だけ付き合わされるようで、数日間は束縛から解放された。
オレは寝る前に、遠野さんにメールを送る。
「これから三年間よろしく!」と……。
しばらくするとメールの返事が来た。
「うん♡」
遠野さんと一文字分だけ近付けた気がする。
そのメールを見ると、疲れているのに眠れない。
ハートマークを入れるなど、男子は絶対に勘違いしてしまうものだ。
ハートマークは、好きな男子だけに使い、多用しないように注意してほしい。
ストーカーなどの危険人物が出現する危険もあるからね!
明日の学校では何があるのかな?
私立幻住高等学校
学校の外装は、イギリスのキリスト教会に近いが、宗教物はすべて排除されている。
灰色の屋根に、褐色の壁、白色の柱で創られている。食堂の天窓が綺麗と評判。
体育館の屋根は円形のドームのようになっている。
図書館塔と実技塔が建っており、用途によって使い分ける。
テスト期間中は図書館利用者が多いが、休日は実技塔でいろいろマニアックな活動をしている。
文化部は図書館塔を利用し、音楽や化学系、建築系、電子系は実技塔を利用している。
体育館は日替わりで部活を使用。
お金持ちの創設者により設立。生徒は恐ろしいほどの個性派ぞろいと評判。
一芸入試制度もあり、入学人数は決まっていない。
前科者でも入る事ができ、海外支援もしていると噂。
生徒の成績はいろいろ分かれており、普通に成績が優秀な生徒、バイトと勉学が両立できている生徒、どちらかに偏っている極端な生徒、どっちも出来ない生徒の四つに分かれている。
生徒の能力を生かす事に尽力しているが、切り捨てる時も早いと噂が立っている。
バイトも成績に入り、仕事に対する姿勢などがたびたび観察されている。
試験は、マニアックな先生が作っているため、恐ろしいほど難しいと評判。
露骨にしないことを前提に賄賂制度を取り、生徒との交流を図っている。
お金や小切手、株権などは賄賂禁止。
学年と組ごとに幻獣の名前が付いている。
1年
・A組(アメミット)
・B組(バックべアー)
・C組(カプリコーン)
・D組(デュラハン)
2年
・A組(アポピス)
・B組(べヒ―モス)
・C組(キメラ)
・D組(デーモン)
3年
・A組(エンジェル)
・B組(バハムート)
・C組(ケルベロス)
・D組(ドラゴン)
いつも貞先生ときているようで、手慣れた感じだ。
金額が安くなるクーポン券も持参している。
それにより、五百円は安くなった。
「まだ貞先生は来ていませんが、もうしばらくしたら来るでしょう。
それまでの間、私の推理でよろしければ、なぜ犯人のカプリコーンが星野慎也なのかをお話しましょう」
「ああ、教えてくれ……」
遠野さんは、トイレで髪の毛をポニーテールに変身してくれた。
長時間の変身はキツイらしく、小まめに変身を解く事で持続時間を長くしているようだ。
どうやら推理の説明は、エルフモードにならないとできないらしい。
遠野さんは、エルフモードになり、推理を淡々と話し始める。
「まず、星野は、午後九時頃に、被害者の八木さんの家を訪問しました。
しかし、まだ帰っておらず、家の周りをうろうろします。
おそらく八木さんは、星野に付き纏われていたのでしょう。
そこで、星野は女装をして、待ち伏せています。
星野は、八木さんを殺す気はありませんけど、脅すためにナイフを持っていたのでしょう。
すると、偶然にも、走っている轟木霊(とどろきこだま)にぶつかり、あなたは手品道具のナイフを落としてしまいます。
星野は、とっさに自分のナイフかと思い、そのナイフを拾ってしまいました。
しかし、重量やデザインから自分のナイフではないと悟り、そのナイフをあなたに返します。
その時、あなたの後ろで、その出来事を見ていた少女がいる事に気が付き、八木さんの殺害計画を思い付きます。
五分ほどして帰って来た八木さんを、星野は持っていたナイフで刺殺し、そのまま逃走しました。
しかし、今度は魚崎さんに目撃されてしまいました。
星野は、あなたがいる事、女装していた事により、自分の犯行がばれるはずはないと思っています。
酒牧羊子さんも動機はありそうですが、身長が百七十センチあるので、ヒールの付いたくつを履いた場合は、身長が百七十五センチにもなります。
第一の目撃者が、女性と轟木霊(とどろきこだま)の身長が同じくらいと言っていた事から、星野慎也が犯人であると決めました。
いずれは、他の証拠も警察が見付けてくれるでしょう。
まあ、私の推理はこんな感じです」
「最初に、犯人が変装していると思った理由は?
いきなりカプリコーンって言い出したように感じたけど……」
「ああ。あれは、あなたとぶつかって、二人とも倒れるような衝突だったからです。
本当に女性だったら、女性だけが倒れて、あなたは無傷のはずですよ。
でも、あなたの手には、倒れた時にできた擦り傷がありますし、新品の制服に倒れた跡も残っています。
更に、物を落としてもいる。
その衝突の強さから、ぶつかったのは男性ではないかと……。
それに、もしもその女性が犯人なら、あなたに目撃されているので、犯行は控えるはずです。
それでも実行するなら、変装しているのではないかと思っただけです」
「なるほど。遠野さんは将来、警察にもなれそうだね。推理力もすごいよ」
「いえいえ、それほどでも……」
後日知る事になるが、星野慎也の自宅から犯行に使われた凶器のナイフと、変装の道具が見付かり逮捕となったそうだ。
遠野さんはオレへの説明を終えて、コーヒーを一口飲んだ。
オレは、遠野さんにお礼の言葉を述べる。
「すごいよ、遠野さん!
遠野さんがいなかったら、オレが犯人にされていたかもしれない。どうもありがとう!」
「ふふふ、木霊君……。あ、轟木霊(とどろきこだま)が私の髪を掴んだ時、制服が汚れているのに気が付いたんです。
お尻と袖口が、砂埃で汚れています。
それで犯人じゃないと分かったんですよ。
最初は、犯人が変装しているなんて知りませんでしたし、こんな間抜けな粗忽者が犯人ならすぐに捕まっているはずだと……」
「はあ、間抜けな粗忽者で良かったです……」
「でも、私の正体を見ても驚かなかったし、正直に答えたから轟木霊(とどろきこだま)は良い人だと思いました」
(パンツに気が取られていたとは言えないな……)
オレはそう思いながら、こう言う。
「ありがとう。でも、エルフモードでも木霊君って呼んでよ。
フルネームで呼ばれると、恥ずかしいからさ……」
「いえ、そこは譲れません。一応、エルフモード設定だから……」
遠野さんは推理する必要が無くなったと判断すると、ポニーテールを解いて、ロングヘアーに戻す。
褐色になっていたポニーテールを解き、髪の毛をなびかせると、赤かった髪の毛が緑の黒髪に変わり、赤かった目の瞳も黒に変色し、尖っていた耳が元に戻る。
しばらく二人でいたが、いつまで経っても貞先生現れない。
きっと来ない貞子は、あそこまで自分で約束しても来ないのだろうか?
もう八時も過ぎ、九時近くになろうとしていた。
オレは不思議に思いながら、遠野さんにこう尋ねる。
「貞先生、遅いね。いつもこうなの?」
「ごめんなさい……」
遠野さんはなぜかオレに謝る。
悪いのは貞先生のはずなのに、どうして謝るのだろうか?
オレは、不思議に思っていたが、遠野さんの話で納得した。
そして、携帯電話を取り出し、さっきのメールを見せてくる。
メールの日付は、三月二十七日であり、一週間前の物だった。
「本当は貞先生との約束なんてないんです。
私が木霊君とお話ししたくて騙したんです。ごめんなさい」
「え? どうして? 普通に誘えば良かったじゃないか?」
遠野さんはテーブルに顔を伏してそう言う。
涙を流している所が見えない様にそうしているようだ。
しかし、涙の滴がテーブルの上に落ちているので、オレは彼女が泣いている事に気が付いた。
「私は異形な者です。
こうでもしないと、木霊君が気味悪がって来てくれないと思っていたんです。
少しの間でも仲良くなりたいと思って騙しました。ごめんなさい」
「気味悪がったりはしないよ。これからも友達でいて欲しいんだけど……」
「エルフモードはまだ人間の形をしていますからそう思うのかもしれませんが、更に変身すると人間の姿じゃなくなります。
そうなると、みんなは私から離れて行きます。
確かに、私の母親は社会的地位や権力はありますが、私の学校生活をほとんど助けようとはしません。
だから、私に気を使わなくても大丈夫ですよ。
貞先生のような小さい事にこだわらない人はともかく、ほとんどの同級生は私を不気味に思います。木霊君も無理しなくて良いですから……。
今は、好奇心から話しかけてくれるのかもしれませんが、いずれは私から離れて行きます。
監視目的で付き合ってもらうなんて言ったのも、私が少しの間だけでも恋人気分を味わってみたかっただけです。
私を好きになってくれる男の子なんて、この先もいませんから……。
だからせめて、今日だけでも男女間のデートみたいな事がしてみたかったんです。
でも、騙していた事が分かったから、もう終わりですね……」
遠野さんは立ち上がり、オレの前から逃げようとした。
オレも立ち上がり、遠野さんを急いで追いかける。
通常時の遠野さんは、運動神経もあまり良くなくて、オレはすぐに追い付く事ができる。
テーブルから数メートル離れたところで追いついた。
以前は、遠野さんの髪の毛を掴んでしまったが、今度は腕を掴む事ができた。
「オレは、遠野さんが異形な者なんて思わないよ。か弱い普通の女の子だ!
確かに、ケンカしたり、怒ったりする時はあるかもしれないけど、オレは遠野えるふさんと一緒に高校三年間を過ごしたいんだ!」
オレは勢いに任せてそう言ってしまった。
でも、それがオレの本心だった。
振り返った遠野さんと目が合う。
驚いたような、嬉しいような表情をして、オレを見つめている。
オレ達がいるのはケーキショップの扉の前だった。
カランという音とともに扉が開き、オレ達の知り合いが姿を顕わした。
オレの声を聞いていたようで、こう語り掛けて来た。
「よくそんなくさいセリフが言えるわね。
ケーキショップの前でラブラブしているんじゃないわよ。
営業妨害だわ!
蹴り殺されるわよ!」
そう言われ、軽く蹴りを入れられる。
威力は弱いが、的確に脇腹を突いてきた。
ヒールの先が急所に当たり、悶絶するほど痛い!
ケーキショップに入って来たのは、貞先生だった。
「貞先生? どうしてここに……」
「私の行き付けの店よ。居ちゃ悪い?」
そういえば、ケーキのやけ食いとか言っていたな。
貞先生はキレたような表情から、笑顔の表情を浮かべてオレの襟を捕まえる。
遠野さんも腕を捕まえられ逃げられない。
お礼のつもりで奢ってくれるそうだが、拷問に近い感じがした。
「私が結婚できるまでは、可能な限り毎日付き合ってもらうわよ!
マスター、モカコーヒーセット、三つお願い!」
貞先生はオレ達を席に運び、ケーキを注文する。
奢ってくれるようだが、ケーキを食べ終わったその後は、カラオケに連れて行かれ、深夜の二時まで歌い明かした。
逃げる事は許されず、遠野さんもぐったりしている。
オレは驚愕の事実に気が付き始める。
まさか遠野さんが避けられているんじゃなくて、貞先生が避けられているんじゃ……。
幸い、貞先生の機嫌の悪い時だけ付き合わされるようで、数日間は束縛から解放された。
オレは寝る前に、遠野さんにメールを送る。
「これから三年間よろしく!」と……。
しばらくするとメールの返事が来た。
「うん♡」
遠野さんと一文字分だけ近付けた気がする。
そのメールを見ると、疲れているのに眠れない。
ハートマークを入れるなど、男子は絶対に勘違いしてしまうものだ。
ハートマークは、好きな男子だけに使い、多用しないように注意してほしい。
ストーカーなどの危険人物が出現する危険もあるからね!
明日の学校では何があるのかな?
私立幻住高等学校
学校の外装は、イギリスのキリスト教会に近いが、宗教物はすべて排除されている。
灰色の屋根に、褐色の壁、白色の柱で創られている。食堂の天窓が綺麗と評判。
体育館の屋根は円形のドームのようになっている。
図書館塔と実技塔が建っており、用途によって使い分ける。
テスト期間中は図書館利用者が多いが、休日は実技塔でいろいろマニアックな活動をしている。
文化部は図書館塔を利用し、音楽や化学系、建築系、電子系は実技塔を利用している。
体育館は日替わりで部活を使用。
お金持ちの創設者により設立。生徒は恐ろしいほどの個性派ぞろいと評判。
一芸入試制度もあり、入学人数は決まっていない。
前科者でも入る事ができ、海外支援もしていると噂。
生徒の成績はいろいろ分かれており、普通に成績が優秀な生徒、バイトと勉学が両立できている生徒、どちらかに偏っている極端な生徒、どっちも出来ない生徒の四つに分かれている。
生徒の能力を生かす事に尽力しているが、切り捨てる時も早いと噂が立っている。
バイトも成績に入り、仕事に対する姿勢などがたびたび観察されている。
試験は、マニアックな先生が作っているため、恐ろしいほど難しいと評判。
露骨にしないことを前提に賄賂制度を取り、生徒との交流を図っている。
お金や小切手、株権などは賄賂禁止。
学年と組ごとに幻獣の名前が付いている。
1年
・A組(アメミット)
・B組(バックべアー)
・C組(カプリコーン)
・D組(デュラハン)
2年
・A組(アポピス)
・B組(べヒ―モス)
・C組(キメラ)
・D組(デーモン)
3年
・A組(エンジェル)
・B組(バハムート)
・C組(ケルベロス)
・D組(ドラゴン)
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