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第四章 ハルピュイアと悲劇の少女
第十一話 美少女ランキング再び
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犬神今日子が教室を出て行った後、遠野さんがオレを心配して探していた。
遠野さんはオレを見付けると、話しかけて来る。
「木霊君、ごめんね。
怒らせるような事をしちゃって……。
原因はやっぱり私のせいだよ。
でも、みんなが木霊君の心配しているんだよ。
少しだけでも、私とおしゃべりして欲しい。
私のケーキは美味しいかな?
みんなはかなりうまくなっているって言うけど、木霊君には失敗作もうまくいっている物も渡しているんだよ。
私の思いを、全て知って欲しいから……」
オレは心配してくれる遠野さんにこう応える。
「美味しいよ。
最初は、遠野さんを避けていただけだけど、最近みんなに近づかないのは、別の理由があるんだ。
遠野さんのケーキ作りとは関係ないよ。心配かけてごめん」
「そうなの。私も目の前で木霊君に食べて欲しくて、意地になっているのかも……。
でも、来週の土曜日には、家に来て欲しい。
実は、私とお祖母ちゃんがケーキ対決をするのですが、審査員を木霊君に願いしたいんです。
お祖母ちゃんも同意してくれて。
この時だけは、木霊君に目の前で私のケーキを食べて欲しいです。
審査は木霊君の判断に任せますが、どうでしょうか?」
オレは少し考えてから返答する。
「実は、オレの身体が暴走しているようなんだ。
何か、考えたりすると、身体に影響が出る。
幸い、みんなに気付かれるような事にはなっていないけど。
食事をしたら気付かれるかもしれない。
だから、みんなを避けていたんだ。
そういうわけだから、行けそうもないよ。ごめんね」
遠野さんはちょっと嬉しそうな声で言い、オレの手をさりげなく掴む。
「え! そうだったんですか?
それなら、黒沢さんが何とかしてくれるかもしれません。
今日は、私と一緒に帰りましょう。大丈夫です。
黒沢さんも木霊君と同じような身体らしいですから……。
きっと、木霊君の魔法(マジック)の事も、身体の事も何とかしてくれるはずです!」
オレは遠野さんから一歩ほど離れる。
「今は、昼休みだし、昇降口で待っているね。
オレのためにいろいろしてくれて、ありがとう。
もうすぐ授業が始まるから……」
オレは遠野さんを置いて、先に教室に戻って行った。
その後の遠野さんは、少し嬉しそうな顔をして、残りの授業を受けていた。
次の授業が始まる前に、酒牧がオレに近付いてきた。
彼は、以前に学校で倒れた事があるが、オレと遠野さんの懸命な処置により、数日ほどで学校に復帰する事が出来ていた。
美女ランキングが倒れる主な原因だったが、彼は懲りずに、また統計を調べたという。
本当に有能な奴だ。
今の魔法(マジック)のできないオレでは、彼でさえ輝いて見える。
オレに今月の結果を報告してくれる。
今回も各クラスを回って、クラス代表の美少女を決めているらしい。
今月は、女子の人気投票もしたそうだ。
本当なら男子を選ぶはずだが、女生徒の多くは女子ばっかり指名したらしい。
なんと、美女達のコメントまで載っているという手際の良さだ。
まあ、オレの気になっているクラスだけ教えてもらった。
無能なオレには、女子と付き合う資格も無いと思っていたのだが、男の性(さが)で思わず聞いてしまう。
「まず、一年A組(アミメット組)は、男女ともに満場一致で、天草夏美(あまくさなつみ)に決まったよ。
やはり成績優秀・料理が美味しい・綺麗好き・運動神経も良いというのは、反則級に近いな。
クッキーとかを焼いて持って来ているというぞ。
先生達も、彼女には注意せず、自分の食べる分を持って行くという。
彼女いわく、友達と最近頑張っている子にあげているんだとか……。
俺も少し分けてもらった。
惚れてしまいそうな勢いだ!
審査員としては公平でなければいけないんだが……。
この胸のときめきは止められない!
本人からのコメントは、『木霊君、遠野さんが泣いていたよ!』だ。
一応、全校生徒が知っている」
オレは聞きながら照れる。
こんなに、みんなに迷惑をかけてしまったんだなと……。
部活やバイトを休んだから仕方ないけど、遠野さんにもやっぱり迷惑をかけちゃったからな。
酒牧は次のクラスを話し出す。
正直、B組とかはどうでもいいんだけどな……。
「一年B組(バックべアー組)は、男女で意見が分かれたようだ。
男子の一番人気は、水泳部のホープ・水谷海(みずたにまりん)だ。
スタイルは巨乳・お淑やかで可愛い・唯一化け物じゃない・水着が欲しいなどの意見が出て一位。
女子の一番人気は、B組の怪物・鏡野真梨だな。
痴漢から守ってくれる・バイト紹介してくれる・商品券や割引チケットくれるなどから、女子の人気が殺到したぞ!
俺も割引チケット貰っている。
本人達のコメントはこちら。
水谷海は、『染井という刑事さんに、水着と下着を盗まれた。
鏡野さんが取り返してくれて、感謝!』らしい。
鏡野真梨は、『染井と木霊、後で泣かす』だそうだ。
これは、全校中が知っているぞ!」
オレに緊張が走る。
これじゃあまるで、オレが下着泥棒の共犯みたいじゃないか。
天草夏美のコメントと合わせると、オレが染井刑事と合同で罪を犯した気がしてなんか嫌だ。
酒牧は勿体ぶって言う。
「次は、ついに一年C組(カプリコーン組)。
まずは男子人気の一位からだ!
以前は遠野さんだったが、今回は残念!
新しく入学して来た新入生のメアリー・ブラットソンちゃんだ!
見た目は、遠野さんを思わせるロングヘアーだが、巨乳なのと幼い感じが高ポイントを叩きだしたぞ。
ブラジャーが透けている・巨乳が好き・サプリメントをくれたなどによって、男子人気を獲得したようだ。
木霊からしてみたら残念だったかな?」
「いや、別に……。
遠野さんは、男子にはケーキをあげていないからな。
女子のポイントは高いはずだ」
「おお、木霊のまさに読み通り。
女子人気一位は、遠野えるふさんだ!
ケーキをもらった・ケーキのレシピを教えてもらった・結婚してくれ! などの意見をもらった。
女子人気においては、学年一位だろう。
今後を期待している生徒も多数いる」
オレは言葉に出さず、心の中でこう思う。
(ほとんどケーキ作りがポイントを集めているな。
そして、女子の中にやばい奴がいるな。
『結婚してくれ!』とか、ストーカーレベルの危ない奴だぞ。
まあ、冗談なのだろうが……)
酒牧は続けて、オレに本人達のコメントを教えてくれる。
「メアリーちゃんのコメントは、『えるふ、結婚してくれ!』だったよ。
まあ、これは俺の独断で公開してないけど……」
(メアリー、お前だったのか!
しかし、冗談の可能性もある。
掴みを取るつもりでそう言ったと信じたい……)
オレはメアリーが言った事を思い出したが、いつも学校で見ているメアリーは、遠野さんが好きな事を微塵も出していない。
遠野さんの周りにいて、ケーキを貪るように食べているだけだ。
オレとメアリーが初めて会った日から、全く表情が変わってはいなかった。
だからオレは、メアリーのコメントが冗談であると悟る。
「遠野さんのコメントは、『木霊君、私の想いを込めて作ったケーキを食べて。
私のケーキ、一つ一つにそれぞれ意味があるから……。
失敗したケーキも、美味しいケーキにも、全部に想いを込めているから……』だった。
まあ、今の木霊には、重い想いかもしれないが……」
(遠野さん、美味しいケーキなら分かるけど、失敗した物にも意味があるのか?
今のオレでは、その意味が分からない。
今分かるのは、つまらないギャグを言った酒牧を絞める必要があるくらいだ)
オレはそう考えながら、酒牧に強烈な突っ込みを喰らわせていた。
遠野さんほどの急所突きではなかったが、酒牧を一分ほど黙らす。
「ごほっ、悪かった。
ケーキをもらえないから、俺も少し木霊を僻んでいた。
二人の問題は、二人で解決してくれ……。
とは言っても、三年が黙っていないようだけどな。
男子人気一位の犬神今日子と、女子人気一位の犬山公子からコメントを預かっている。
どちらもお前に関係する内容だった。
一応、警告しておく。
犬神今日子のコメントは、『何やら、女生徒を泣かしている男子生徒がいるようね。
近々お伺い致しますわ♡ 首を洗って待っていなさい♡』だ。
これだけなら冗談で済まされるかもしれないが、彼女の秘書・犬山公子がこう言っているんだ。
『木霊という男子生徒、早く遠野さんと仲直りするんだ!
さもないと、今日子さんが本気でお前を粛清しに行く。
これは冗談ではない!』だそうだ。
噂で聞いた話だが、犬神今日子は全身凶器人間の暗殺者でもあるらしい。
遠野さんは、ケーキ作りで彼女に好かれていたから、おそらく本気だぞ!」
全身凶器人間だと……。
武装でもして来るのだろうか?
警察に相談した方が良いかもしれないと、オレは考える。
しかし、要は遠野さんと仲直りすれば良いだけだ。
今日は一緒に帰る約束をしたし、襲われる事は無いだろうと思い直す。
ホームルームの時間になり、オレが帰る準備をしていると、犬山公子が一年C組の教室に来た。
どうやら、緊急の連絡があるらしい。
「最近、警官と名乗り、校区をうろついている不審者がいます。
男子生徒諸君は、近所に住む女生徒を守るように、一緒に登下校してください。
女子の生徒は、一人にならない様にくれぐれも注意してください。緊急連絡は以上です!」
(うん、オレの知っている警察官だ。顔と名前は、すでに学校中で知れ渡っているぞ!)
ホームルームも終わり、オレが帰ろうとすると、遠野さんが近付いて来て手を握る。
まあ、恥ずかしいけど、警察官の不審者が校区をうろついているようだし仕方ない。
オレと遠野さんが手を繋いでいると、昇降口の所で待機している犬山公子さんに見られる。犬山公子さんは、遠野さんの方に笑いかけてこう言う。
「なんだ、もう仲直りしてしまったようだな。
もう少し長引くかと思って、いろいろ考えていたのだが、取り越し苦労だったか……。
まあ、仲直りして良かったよ!」
遠野さんは会釈をしつつ、こう感謝する。
「いえ、ありがとうございます。
この報告も、美女ランキングも、あなたの取り計らった事ですね。
お気遣いしていただき、感謝します」
「まあ、気遣い半分、仕事半分と言ったところだ。
本当に怪しい警察官が、盗撮と盗みを繰り返している。
美女ランキングも、酒牧の協力をしたに過ぎない。
それでも感謝してくれるのなら、また美味しいケーキでも食べさせてくれ。
それで十分だ!」
「そうなんですか。
では、また美味しいケーキを用意しておきます。
お仕事頑張ってください!」
「ああ、怪しい警察官は何度も取り逃がしたが、今日こそは捕らえてやるぞ!
今日子さんもいつになく本気だし……」
オレと遠野さんは、犬山公子さんと別れて、帰宅を急いだ。
その日の夜中、校内に潜む怪しい警察官(染井亮)が、血だらけの状態で逮捕されたという。
盗撮データーは全て破棄されたが、犬神今日子の恩情によって、未だに警察官(今日子の犬)として働いているらしい。
遠野さんはオレを見付けると、話しかけて来る。
「木霊君、ごめんね。
怒らせるような事をしちゃって……。
原因はやっぱり私のせいだよ。
でも、みんなが木霊君の心配しているんだよ。
少しだけでも、私とおしゃべりして欲しい。
私のケーキは美味しいかな?
みんなはかなりうまくなっているって言うけど、木霊君には失敗作もうまくいっている物も渡しているんだよ。
私の思いを、全て知って欲しいから……」
オレは心配してくれる遠野さんにこう応える。
「美味しいよ。
最初は、遠野さんを避けていただけだけど、最近みんなに近づかないのは、別の理由があるんだ。
遠野さんのケーキ作りとは関係ないよ。心配かけてごめん」
「そうなの。私も目の前で木霊君に食べて欲しくて、意地になっているのかも……。
でも、来週の土曜日には、家に来て欲しい。
実は、私とお祖母ちゃんがケーキ対決をするのですが、審査員を木霊君に願いしたいんです。
お祖母ちゃんも同意してくれて。
この時だけは、木霊君に目の前で私のケーキを食べて欲しいです。
審査は木霊君の判断に任せますが、どうでしょうか?」
オレは少し考えてから返答する。
「実は、オレの身体が暴走しているようなんだ。
何か、考えたりすると、身体に影響が出る。
幸い、みんなに気付かれるような事にはなっていないけど。
食事をしたら気付かれるかもしれない。
だから、みんなを避けていたんだ。
そういうわけだから、行けそうもないよ。ごめんね」
遠野さんはちょっと嬉しそうな声で言い、オレの手をさりげなく掴む。
「え! そうだったんですか?
それなら、黒沢さんが何とかしてくれるかもしれません。
今日は、私と一緒に帰りましょう。大丈夫です。
黒沢さんも木霊君と同じような身体らしいですから……。
きっと、木霊君の魔法(マジック)の事も、身体の事も何とかしてくれるはずです!」
オレは遠野さんから一歩ほど離れる。
「今は、昼休みだし、昇降口で待っているね。
オレのためにいろいろしてくれて、ありがとう。
もうすぐ授業が始まるから……」
オレは遠野さんを置いて、先に教室に戻って行った。
その後の遠野さんは、少し嬉しそうな顔をして、残りの授業を受けていた。
次の授業が始まる前に、酒牧がオレに近付いてきた。
彼は、以前に学校で倒れた事があるが、オレと遠野さんの懸命な処置により、数日ほどで学校に復帰する事が出来ていた。
美女ランキングが倒れる主な原因だったが、彼は懲りずに、また統計を調べたという。
本当に有能な奴だ。
今の魔法(マジック)のできないオレでは、彼でさえ輝いて見える。
オレに今月の結果を報告してくれる。
今回も各クラスを回って、クラス代表の美少女を決めているらしい。
今月は、女子の人気投票もしたそうだ。
本当なら男子を選ぶはずだが、女生徒の多くは女子ばっかり指名したらしい。
なんと、美女達のコメントまで載っているという手際の良さだ。
まあ、オレの気になっているクラスだけ教えてもらった。
無能なオレには、女子と付き合う資格も無いと思っていたのだが、男の性(さが)で思わず聞いてしまう。
「まず、一年A組(アミメット組)は、男女ともに満場一致で、天草夏美(あまくさなつみ)に決まったよ。
やはり成績優秀・料理が美味しい・綺麗好き・運動神経も良いというのは、反則級に近いな。
クッキーとかを焼いて持って来ているというぞ。
先生達も、彼女には注意せず、自分の食べる分を持って行くという。
彼女いわく、友達と最近頑張っている子にあげているんだとか……。
俺も少し分けてもらった。
惚れてしまいそうな勢いだ!
審査員としては公平でなければいけないんだが……。
この胸のときめきは止められない!
本人からのコメントは、『木霊君、遠野さんが泣いていたよ!』だ。
一応、全校生徒が知っている」
オレは聞きながら照れる。
こんなに、みんなに迷惑をかけてしまったんだなと……。
部活やバイトを休んだから仕方ないけど、遠野さんにもやっぱり迷惑をかけちゃったからな。
酒牧は次のクラスを話し出す。
正直、B組とかはどうでもいいんだけどな……。
「一年B組(バックべアー組)は、男女で意見が分かれたようだ。
男子の一番人気は、水泳部のホープ・水谷海(みずたにまりん)だ。
スタイルは巨乳・お淑やかで可愛い・唯一化け物じゃない・水着が欲しいなどの意見が出て一位。
女子の一番人気は、B組の怪物・鏡野真梨だな。
痴漢から守ってくれる・バイト紹介してくれる・商品券や割引チケットくれるなどから、女子の人気が殺到したぞ!
俺も割引チケット貰っている。
本人達のコメントはこちら。
水谷海は、『染井という刑事さんに、水着と下着を盗まれた。
鏡野さんが取り返してくれて、感謝!』らしい。
鏡野真梨は、『染井と木霊、後で泣かす』だそうだ。
これは、全校中が知っているぞ!」
オレに緊張が走る。
これじゃあまるで、オレが下着泥棒の共犯みたいじゃないか。
天草夏美のコメントと合わせると、オレが染井刑事と合同で罪を犯した気がしてなんか嫌だ。
酒牧は勿体ぶって言う。
「次は、ついに一年C組(カプリコーン組)。
まずは男子人気の一位からだ!
以前は遠野さんだったが、今回は残念!
新しく入学して来た新入生のメアリー・ブラットソンちゃんだ!
見た目は、遠野さんを思わせるロングヘアーだが、巨乳なのと幼い感じが高ポイントを叩きだしたぞ。
ブラジャーが透けている・巨乳が好き・サプリメントをくれたなどによって、男子人気を獲得したようだ。
木霊からしてみたら残念だったかな?」
「いや、別に……。
遠野さんは、男子にはケーキをあげていないからな。
女子のポイントは高いはずだ」
「おお、木霊のまさに読み通り。
女子人気一位は、遠野えるふさんだ!
ケーキをもらった・ケーキのレシピを教えてもらった・結婚してくれ! などの意見をもらった。
女子人気においては、学年一位だろう。
今後を期待している生徒も多数いる」
オレは言葉に出さず、心の中でこう思う。
(ほとんどケーキ作りがポイントを集めているな。
そして、女子の中にやばい奴がいるな。
『結婚してくれ!』とか、ストーカーレベルの危ない奴だぞ。
まあ、冗談なのだろうが……)
酒牧は続けて、オレに本人達のコメントを教えてくれる。
「メアリーちゃんのコメントは、『えるふ、結婚してくれ!』だったよ。
まあ、これは俺の独断で公開してないけど……」
(メアリー、お前だったのか!
しかし、冗談の可能性もある。
掴みを取るつもりでそう言ったと信じたい……)
オレはメアリーが言った事を思い出したが、いつも学校で見ているメアリーは、遠野さんが好きな事を微塵も出していない。
遠野さんの周りにいて、ケーキを貪るように食べているだけだ。
オレとメアリーが初めて会った日から、全く表情が変わってはいなかった。
だからオレは、メアリーのコメントが冗談であると悟る。
「遠野さんのコメントは、『木霊君、私の想いを込めて作ったケーキを食べて。
私のケーキ、一つ一つにそれぞれ意味があるから……。
失敗したケーキも、美味しいケーキにも、全部に想いを込めているから……』だった。
まあ、今の木霊には、重い想いかもしれないが……」
(遠野さん、美味しいケーキなら分かるけど、失敗した物にも意味があるのか?
今のオレでは、その意味が分からない。
今分かるのは、つまらないギャグを言った酒牧を絞める必要があるくらいだ)
オレはそう考えながら、酒牧に強烈な突っ込みを喰らわせていた。
遠野さんほどの急所突きではなかったが、酒牧を一分ほど黙らす。
「ごほっ、悪かった。
ケーキをもらえないから、俺も少し木霊を僻んでいた。
二人の問題は、二人で解決してくれ……。
とは言っても、三年が黙っていないようだけどな。
男子人気一位の犬神今日子と、女子人気一位の犬山公子からコメントを預かっている。
どちらもお前に関係する内容だった。
一応、警告しておく。
犬神今日子のコメントは、『何やら、女生徒を泣かしている男子生徒がいるようね。
近々お伺い致しますわ♡ 首を洗って待っていなさい♡』だ。
これだけなら冗談で済まされるかもしれないが、彼女の秘書・犬山公子がこう言っているんだ。
『木霊という男子生徒、早く遠野さんと仲直りするんだ!
さもないと、今日子さんが本気でお前を粛清しに行く。
これは冗談ではない!』だそうだ。
噂で聞いた話だが、犬神今日子は全身凶器人間の暗殺者でもあるらしい。
遠野さんは、ケーキ作りで彼女に好かれていたから、おそらく本気だぞ!」
全身凶器人間だと……。
武装でもして来るのだろうか?
警察に相談した方が良いかもしれないと、オレは考える。
しかし、要は遠野さんと仲直りすれば良いだけだ。
今日は一緒に帰る約束をしたし、襲われる事は無いだろうと思い直す。
ホームルームの時間になり、オレが帰る準備をしていると、犬山公子が一年C組の教室に来た。
どうやら、緊急の連絡があるらしい。
「最近、警官と名乗り、校区をうろついている不審者がいます。
男子生徒諸君は、近所に住む女生徒を守るように、一緒に登下校してください。
女子の生徒は、一人にならない様にくれぐれも注意してください。緊急連絡は以上です!」
(うん、オレの知っている警察官だ。顔と名前は、すでに学校中で知れ渡っているぞ!)
ホームルームも終わり、オレが帰ろうとすると、遠野さんが近付いて来て手を握る。
まあ、恥ずかしいけど、警察官の不審者が校区をうろついているようだし仕方ない。
オレと遠野さんが手を繋いでいると、昇降口の所で待機している犬山公子さんに見られる。犬山公子さんは、遠野さんの方に笑いかけてこう言う。
「なんだ、もう仲直りしてしまったようだな。
もう少し長引くかと思って、いろいろ考えていたのだが、取り越し苦労だったか……。
まあ、仲直りして良かったよ!」
遠野さんは会釈をしつつ、こう感謝する。
「いえ、ありがとうございます。
この報告も、美女ランキングも、あなたの取り計らった事ですね。
お気遣いしていただき、感謝します」
「まあ、気遣い半分、仕事半分と言ったところだ。
本当に怪しい警察官が、盗撮と盗みを繰り返している。
美女ランキングも、酒牧の協力をしたに過ぎない。
それでも感謝してくれるのなら、また美味しいケーキでも食べさせてくれ。
それで十分だ!」
「そうなんですか。
では、また美味しいケーキを用意しておきます。
お仕事頑張ってください!」
「ああ、怪しい警察官は何度も取り逃がしたが、今日こそは捕らえてやるぞ!
今日子さんもいつになく本気だし……」
オレと遠野さんは、犬山公子さんと別れて、帰宅を急いだ。
その日の夜中、校内に潜む怪しい警察官(染井亮)が、血だらけの状態で逮捕されたという。
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