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第六章 ドライアド怒りの一撃!
第一話 天草夏美の手作りケーキ
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夕方になり、遠野さんが目を覚ました。
オレはそれに気付き、体調を気遣う。
少し疲れたらしいが、デートは続行できると言う。
いつもの遠野さんと違って、疲れているのが表情で分かる。
しかし、折角デートを続行してくれると言うので、オレは遠野さんの体調に気を配りながら、喫茶店『ドライアド』に向かう。
バイト仲間の天草夏美が、このデートのためにいろいろ準備してくれているらしいから、優先的にそこへ行く。
辿り着いた時には、夕方の六時であり、独特のムードを醸し出していた。
オレはちょっとロマンチックな雰囲気に浸りながら、いつものテーブル席に座る。
オレと遠野さんは、テーブル越しに向かい合う形になった。
ウエイトレス姿をした夏美さんは、オレ達に笑いながら語り掛けて来た。
「大変申し訳ありません。
このテーブル席は、ご予約のお客様がいますので、あちらのカウンター席に移動してくださいませんか?」
「え? そうなのか。じゃあ、移動します」
遠野さんが先に移動し、オレがぐずぐずしていると、夏美さんが小声でこう言った。
「ダメですよ! デートでは、テーブル席で向かい合って座るより、カウンター席で二人くっ付いて座らないと。彼女と身体を近付けるようにして坐るのがベストなんです!」
「ああ、ありがとう」
「それと、鏡野さんとメアリーちゃんが先に来て、二人の様子を窺っているので注意してくださいね。
特に、メアリーちゃん。あの手のタイプは、わがままで自分勝手ですからね。
折角のデートを邪魔されるかもしれませんよ」
「ああ、分かっている。注意するよ!」
オレは、夏美さんに案内された席に移動した。
夏美さんは本当に良く気が付く人だ。
クラスの男女に好かれているのも納得できる。
オレは遠野さんとくっ付いて座る。
服越しに体温を感じると、とたんに緊張してしまう。
「大丈夫? 何か飲み物を持って来ようか?何が飲みたい?」
「何でも良いよ。ありがとう」
オレは遠野さんを気遣い、いろいろ助けてあげる。
ドリンクバーから飲み物を持ってきたりする気遣いなどから、彼女を大切にする事をアピールする。
男性は、自分の友達を紹介したり、経済力などをアピールするが、こういう些細な親切こそが女性を喜ばせるのだ。
荷物をさりげなく持つ、道路の安全な場所を歩かせる、ドアを開けてあげる、体調を気遣うなどが、女性の心をゲットするのだ。
みんなも日頃から心掛けよう。
特定の彼女だけでなく、女性全般にそういう気遣いできれば、いずれは素晴らしい女性に巡り合える事だろう。
保障はしないが……。
オレはいくつかの飲み物をピックアップし、遠野さんに渡してあげる。
プールに入って、体が冷えているだろうから、温かいお茶を持って来てあげた。
「はい、ジャスミンティーだよ。ケーキを食べる時は、こっちのアッサムティーガお勧め」
「ありがとう」
遠野さんは、ジャスミンティーを一口飲む。
「うん、身体が温まるよ。おいしい」
食事も中盤に差し掛かった頃、夏美さんは特別なケーキを持って来てくれた。
「はい! 私がお二人に感謝を込めて作った特別製のケーキです。
と言っても、遠野さんのケーキレシピを元にアレンジしただけですけど……」
「うわー、とっても嬉しいよ! ありがとう、夏美ちゃん!」
遠野さんは、天草夏美さんのケーキを見て元気を取り戻したようだ。
誕生日ケーキならぬ、デート記念日ケーキだ。
ちゃんと名前まで書いてあり、嬉しさも倍増する。
「ほほう、ナツミン(夏美)の手作りケーキですか。どれどれ?」
オレと遠野さんを見張っていたメアリーが突然現れ、ケーキをバクバクと食べ始めた。
「モグモグ、うーむ、なかなかのお味ですな。
しかし、えるふの方がやはり美味しい。
ナツミン、もっと努力して美味しいケーキを僕のために作ってね♡」
メアリーはそう言いながら、オレ達のケーキを全て食べてしまった。
空になった皿だけがテーブルに残る。
鮮やか過ぎる手口により、夏美さんの反応がワンテンポ遅れた。
メアリーが席に帰ろうとした時になって、ようやく怒りを顕わにする。
「ちょっと、何してんのよ! これは、木霊君とえるふさんのために作ったケーキなのよ。ちゃんと名前まで書いてあったじゃない!」
「ゲップ、ごちそうさまでした。もう食べちゃったもん。今さら怒られても知らないよ。怒る時は、すぐその場で怒らないと、何を怒られているかも理解できないからね!」
「動物か! 犬や猫と同じ頭か! とりあえず代金は払ってもらうわよ! 良いわね?」
「ええ! ナツミンが勝手に持って来たんでしょ?
なら、ナツミンが払うのが当然じゃん!
木霊だって、えるふだって、代金は払いたくはないよね?」
「木霊君とえるふさんのために、私が自腹で用意したケーキを、あなたが勝手に食べたのよ? あなたは、私にケーキ代を払う責任があるわ!」
「ええ! 木霊とえるふは食べて良くて、僕が食べたら怒るなんて、そんなの差別だよ!
この店は、差別待遇をする店だったんだね。よし、ネットでそう言い広めよう!」
「止めて! あれは私が二人のために準備した物なの! この店は関係ないよ!」
「じゃあ、ナツミンは差別する人って事?」
「そうね。あなたにだけ特別に差別待遇してあげるわ。
今回は許してあげるけど、次から同じような事したら営業妨害兼窃盗罪で訴えるわよ!」
「はいはい、分かりました」
メアリーと夏美さんが口論していると、鏡野真梨が介入する。
メアリーにきついツッコミを入れ、動きを止める。
メアリーは、倒れ込み、悶え苦しんだ。
「うおおおお、出る! ケーキが逆流する!」
「天草さん、ごめんな。
ウチがトイレに行っている間に、このアホが迷惑をかけたみたいで……。
料金は二倍にして払わせるさかい、勘忍してや!」
「いえ、料金は私が出しますので、ペットの世話はちゃんとしてくださいね。
次からは、メアリー入店拒否にしますよ」
「おおきに! しっかり世話しておくさかい、勘忍してな!」
メアリーは、鏡野によって店の奥に運ばれていった。
まあ、邪魔者がいなくなって良かったが……。
遠野さんが、夏美さんのケーキで元気に成り掛けていたのに、メアリーのせいでまた落ち込んだ状態になってしまった。
天草夏美さんも気分を害したのか、暗い表情でトイレの方に向かう。
折角オレ達のためにケーキを作ってくれたのに、悪い思いをさせてしまったようなのでオレは謝りに追い掛ける。
トイレに行くふりをして、夏美さんの様子を見るのだ。
「メアリー、あの子嫌い……」
天草夏美さんは、いままで見せた事も無いような怒りの表情で壁に靠れかかり、怒りを抑えようと必死だった。
オレは思わず声をかけてしまうが、やばいと感じて黙り込んだ。
見てはいけない一面を見たような気がする。
ここはそっとしておいた方が良いかもしれないとオレが思っていると、夏美さんの方から独り言のようにオレに話しかけてきた。
「私ね、昔はメアリーちゃんみたいに我儘だったんだ。
それで無理なお願いをお父さんとお母さんにしたら、二人ともいなくなっちゃた……」
夏美さんは我に帰り、オレの方に笑いかける。
「嘘だよ。本当は、メアリーちゃんの才能に嫉妬しているだけだよ。
あの子って、すごい集中して、いろいろな発明品を作ったりしているんでしょ?
私はある程度の事は出来るけど、そこまで特出した才能は無いもの。
それが、あの子を嫌う理由かな……。やっぱり忘れて今の話!
人の悪口を言っているみたいになっちゃうからね。
代わりのケーキを持って行くから、しばらく待っていてね!」
「あ、うん……」
夏美さんは、オレから逃げるように厨房に向かった。
さすがに、厨房まで追い掛けて行く事は出来ないので、そのままトイレに行く。
オレが見えなくなった所で、夏美さんは気持ちを落ち着かせていたようだ。
「私、何であんな事を木霊君に言ったんだろ。もしかして私、木霊君の事を……」
天草夏美さんは独り言をつぶやいていた。
オレはトイレで用を済ませ、遠野さんの隣の席に戻る。
遠野さんは、体調が良くなっているが、まだ本調子ではないようだ。
オレは励ましたいと考え、いろいろ喜ぶような事を言う。
「天草さんが、代わりのケーキを持って来てくれるって。
後、オレの母さんが、遠野さんのために用意してくれた浴衣があるから、オレの家で着替えて夏祭りに出かけよう。
花火とかも見られるし、夜店もやっているらしいよ。
オレ自身が用意したプレゼントは無いけど……。ごめん、そこまで気が付かなかった。
今のオレのお金じゃあ、屋台で何か買うくらいしかできないけど……」
「うん、ありがとう。いろいろ気を使ってくれて……」
遠野さんはそう言いながら、オレの胸に顔を埋める様にしてきた。
遠野さんの突然の行動に、オレはドッキリする。
やっぱり体調が悪いのかなと考えていると、遠野さんの声が聞こえてくる。
「木霊君が好き……」
それは突然の告白だった。
オレもつられて答えようとする。
「オレも……」
「はい! 代わりのケーキをお持ちしました。あれ、タイミング悪かった?」
オレが遠野さんに告白しようとした瞬間、天草さんがケーキを持って来てくれた。
「うん、少し……。でも、気にしないでね」
まあ、失敗なんて誰にでもある事だ。タイミングが悪くなっても仕方ない。
しかし、一度途切れたタイミングを元に戻す事は出来ない。
「ケーキを食べようか……」
オレは告白をまたの機会にし、ケーキを食べるように遠野さんに勧める。
「うん、そうだね」
遠野さんも一度中断された空気を元に戻す事はせず、次に期待するようだ。
まあ、小さい声だったから、オレが聞いていないと思ったのかもしれない。
オレがケーキを取り分けようとすると、天草さんがこう言う。
「私も休憩に入るから一緒に食べよう。私の分も取り分けておいてくれる?」
「ああ、分かった」
まあ、ケーキをご馳走になるわけだ。このくらいは問題ない。
オレはそう思い、ケーキを三人分に切り分けた。
オレ達は、天草さんが来るまで待ち、一緒に食べようと思う。
五分すると、天草さんがオレ達のテーブルに座る。
オレと遠野さんの間に……。デートをしているカップルの間に入る。
明らかにデートの妨害をしているとしか思えなかった。
今までの天草さんとは別人の様だ。
メアリーに洗脳でもされたのだろうか?
そう疑いたくなる行動だった。
オレはそれに気付き、体調を気遣う。
少し疲れたらしいが、デートは続行できると言う。
いつもの遠野さんと違って、疲れているのが表情で分かる。
しかし、折角デートを続行してくれると言うので、オレは遠野さんの体調に気を配りながら、喫茶店『ドライアド』に向かう。
バイト仲間の天草夏美が、このデートのためにいろいろ準備してくれているらしいから、優先的にそこへ行く。
辿り着いた時には、夕方の六時であり、独特のムードを醸し出していた。
オレはちょっとロマンチックな雰囲気に浸りながら、いつものテーブル席に座る。
オレと遠野さんは、テーブル越しに向かい合う形になった。
ウエイトレス姿をした夏美さんは、オレ達に笑いながら語り掛けて来た。
「大変申し訳ありません。
このテーブル席は、ご予約のお客様がいますので、あちらのカウンター席に移動してくださいませんか?」
「え? そうなのか。じゃあ、移動します」
遠野さんが先に移動し、オレがぐずぐずしていると、夏美さんが小声でこう言った。
「ダメですよ! デートでは、テーブル席で向かい合って座るより、カウンター席で二人くっ付いて座らないと。彼女と身体を近付けるようにして坐るのがベストなんです!」
「ああ、ありがとう」
「それと、鏡野さんとメアリーちゃんが先に来て、二人の様子を窺っているので注意してくださいね。
特に、メアリーちゃん。あの手のタイプは、わがままで自分勝手ですからね。
折角のデートを邪魔されるかもしれませんよ」
「ああ、分かっている。注意するよ!」
オレは、夏美さんに案内された席に移動した。
夏美さんは本当に良く気が付く人だ。
クラスの男女に好かれているのも納得できる。
オレは遠野さんとくっ付いて座る。
服越しに体温を感じると、とたんに緊張してしまう。
「大丈夫? 何か飲み物を持って来ようか?何が飲みたい?」
「何でも良いよ。ありがとう」
オレは遠野さんを気遣い、いろいろ助けてあげる。
ドリンクバーから飲み物を持ってきたりする気遣いなどから、彼女を大切にする事をアピールする。
男性は、自分の友達を紹介したり、経済力などをアピールするが、こういう些細な親切こそが女性を喜ばせるのだ。
荷物をさりげなく持つ、道路の安全な場所を歩かせる、ドアを開けてあげる、体調を気遣うなどが、女性の心をゲットするのだ。
みんなも日頃から心掛けよう。
特定の彼女だけでなく、女性全般にそういう気遣いできれば、いずれは素晴らしい女性に巡り合える事だろう。
保障はしないが……。
オレはいくつかの飲み物をピックアップし、遠野さんに渡してあげる。
プールに入って、体が冷えているだろうから、温かいお茶を持って来てあげた。
「はい、ジャスミンティーだよ。ケーキを食べる時は、こっちのアッサムティーガお勧め」
「ありがとう」
遠野さんは、ジャスミンティーを一口飲む。
「うん、身体が温まるよ。おいしい」
食事も中盤に差し掛かった頃、夏美さんは特別なケーキを持って来てくれた。
「はい! 私がお二人に感謝を込めて作った特別製のケーキです。
と言っても、遠野さんのケーキレシピを元にアレンジしただけですけど……」
「うわー、とっても嬉しいよ! ありがとう、夏美ちゃん!」
遠野さんは、天草夏美さんのケーキを見て元気を取り戻したようだ。
誕生日ケーキならぬ、デート記念日ケーキだ。
ちゃんと名前まで書いてあり、嬉しさも倍増する。
「ほほう、ナツミン(夏美)の手作りケーキですか。どれどれ?」
オレと遠野さんを見張っていたメアリーが突然現れ、ケーキをバクバクと食べ始めた。
「モグモグ、うーむ、なかなかのお味ですな。
しかし、えるふの方がやはり美味しい。
ナツミン、もっと努力して美味しいケーキを僕のために作ってね♡」
メアリーはそう言いながら、オレ達のケーキを全て食べてしまった。
空になった皿だけがテーブルに残る。
鮮やか過ぎる手口により、夏美さんの反応がワンテンポ遅れた。
メアリーが席に帰ろうとした時になって、ようやく怒りを顕わにする。
「ちょっと、何してんのよ! これは、木霊君とえるふさんのために作ったケーキなのよ。ちゃんと名前まで書いてあったじゃない!」
「ゲップ、ごちそうさまでした。もう食べちゃったもん。今さら怒られても知らないよ。怒る時は、すぐその場で怒らないと、何を怒られているかも理解できないからね!」
「動物か! 犬や猫と同じ頭か! とりあえず代金は払ってもらうわよ! 良いわね?」
「ええ! ナツミンが勝手に持って来たんでしょ?
なら、ナツミンが払うのが当然じゃん!
木霊だって、えるふだって、代金は払いたくはないよね?」
「木霊君とえるふさんのために、私が自腹で用意したケーキを、あなたが勝手に食べたのよ? あなたは、私にケーキ代を払う責任があるわ!」
「ええ! 木霊とえるふは食べて良くて、僕が食べたら怒るなんて、そんなの差別だよ!
この店は、差別待遇をする店だったんだね。よし、ネットでそう言い広めよう!」
「止めて! あれは私が二人のために準備した物なの! この店は関係ないよ!」
「じゃあ、ナツミンは差別する人って事?」
「そうね。あなたにだけ特別に差別待遇してあげるわ。
今回は許してあげるけど、次から同じような事したら営業妨害兼窃盗罪で訴えるわよ!」
「はいはい、分かりました」
メアリーと夏美さんが口論していると、鏡野真梨が介入する。
メアリーにきついツッコミを入れ、動きを止める。
メアリーは、倒れ込み、悶え苦しんだ。
「うおおおお、出る! ケーキが逆流する!」
「天草さん、ごめんな。
ウチがトイレに行っている間に、このアホが迷惑をかけたみたいで……。
料金は二倍にして払わせるさかい、勘忍してや!」
「いえ、料金は私が出しますので、ペットの世話はちゃんとしてくださいね。
次からは、メアリー入店拒否にしますよ」
「おおきに! しっかり世話しておくさかい、勘忍してな!」
メアリーは、鏡野によって店の奥に運ばれていった。
まあ、邪魔者がいなくなって良かったが……。
遠野さんが、夏美さんのケーキで元気に成り掛けていたのに、メアリーのせいでまた落ち込んだ状態になってしまった。
天草夏美さんも気分を害したのか、暗い表情でトイレの方に向かう。
折角オレ達のためにケーキを作ってくれたのに、悪い思いをさせてしまったようなのでオレは謝りに追い掛ける。
トイレに行くふりをして、夏美さんの様子を見るのだ。
「メアリー、あの子嫌い……」
天草夏美さんは、いままで見せた事も無いような怒りの表情で壁に靠れかかり、怒りを抑えようと必死だった。
オレは思わず声をかけてしまうが、やばいと感じて黙り込んだ。
見てはいけない一面を見たような気がする。
ここはそっとしておいた方が良いかもしれないとオレが思っていると、夏美さんの方から独り言のようにオレに話しかけてきた。
「私ね、昔はメアリーちゃんみたいに我儘だったんだ。
それで無理なお願いをお父さんとお母さんにしたら、二人ともいなくなっちゃた……」
夏美さんは我に帰り、オレの方に笑いかける。
「嘘だよ。本当は、メアリーちゃんの才能に嫉妬しているだけだよ。
あの子って、すごい集中して、いろいろな発明品を作ったりしているんでしょ?
私はある程度の事は出来るけど、そこまで特出した才能は無いもの。
それが、あの子を嫌う理由かな……。やっぱり忘れて今の話!
人の悪口を言っているみたいになっちゃうからね。
代わりのケーキを持って行くから、しばらく待っていてね!」
「あ、うん……」
夏美さんは、オレから逃げるように厨房に向かった。
さすがに、厨房まで追い掛けて行く事は出来ないので、そのままトイレに行く。
オレが見えなくなった所で、夏美さんは気持ちを落ち着かせていたようだ。
「私、何であんな事を木霊君に言ったんだろ。もしかして私、木霊君の事を……」
天草夏美さんは独り言をつぶやいていた。
オレはトイレで用を済ませ、遠野さんの隣の席に戻る。
遠野さんは、体調が良くなっているが、まだ本調子ではないようだ。
オレは励ましたいと考え、いろいろ喜ぶような事を言う。
「天草さんが、代わりのケーキを持って来てくれるって。
後、オレの母さんが、遠野さんのために用意してくれた浴衣があるから、オレの家で着替えて夏祭りに出かけよう。
花火とかも見られるし、夜店もやっているらしいよ。
オレ自身が用意したプレゼントは無いけど……。ごめん、そこまで気が付かなかった。
今のオレのお金じゃあ、屋台で何か買うくらいしかできないけど……」
「うん、ありがとう。いろいろ気を使ってくれて……」
遠野さんはそう言いながら、オレの胸に顔を埋める様にしてきた。
遠野さんの突然の行動に、オレはドッキリする。
やっぱり体調が悪いのかなと考えていると、遠野さんの声が聞こえてくる。
「木霊君が好き……」
それは突然の告白だった。
オレもつられて答えようとする。
「オレも……」
「はい! 代わりのケーキをお持ちしました。あれ、タイミング悪かった?」
オレが遠野さんに告白しようとした瞬間、天草さんがケーキを持って来てくれた。
「うん、少し……。でも、気にしないでね」
まあ、失敗なんて誰にでもある事だ。タイミングが悪くなっても仕方ない。
しかし、一度途切れたタイミングを元に戻す事は出来ない。
「ケーキを食べようか……」
オレは告白をまたの機会にし、ケーキを食べるように遠野さんに勧める。
「うん、そうだね」
遠野さんも一度中断された空気を元に戻す事はせず、次に期待するようだ。
まあ、小さい声だったから、オレが聞いていないと思ったのかもしれない。
オレがケーキを取り分けようとすると、天草さんがこう言う。
「私も休憩に入るから一緒に食べよう。私の分も取り分けておいてくれる?」
「ああ、分かった」
まあ、ケーキをご馳走になるわけだ。このくらいは問題ない。
オレはそう思い、ケーキを三人分に切り分けた。
オレ達は、天草さんが来るまで待ち、一緒に食べようと思う。
五分すると、天草さんがオレ達のテーブルに座る。
オレと遠野さんの間に……。デートをしているカップルの間に入る。
明らかにデートの妨害をしているとしか思えなかった。
今までの天草さんとは別人の様だ。
メアリーに洗脳でもされたのだろうか?
そう疑いたくなる行動だった。
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