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第六章 ドライアド怒りの一撃!

第二話 三角関係勃発?

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 オレは天草夏美さんに注意を促す。
オレと遠野さんの間に、彼女が割って入る様にして座ったため、軽い警告をするのだ。
これをしないと、遠野さんをより悲しませるかもしれないし、男としてもダメな気がする。

「あの、天草さん? オレと遠野さんが付き合っているのを知っているよね……。
何で、わざわざ間に入って座るの?」

天草さんは、軽くうなずいて答える。

「うん、二人がそういう関係なのを知っているよ。私から見てもお似合いだと思う。
だからこそ、二人にお願いしたい事があるんだ」

「はあ、何を?」

「私を二人の子供にして!」

天草さんは決意したようにそう言い切った。

「はあ? 同い年だよ?」

同い年というよりか、天草さんの方が全体的に見て大人らしい。
成績も良いし、体格もなかなか良い具合に成長している。
全体的スペックが高いため、オレは彼女を先輩の様に感じていた。
その普段は落ち着いている彼女が、今は慌てながら弁明する。

「あ、いや、その、養子にして欲しいとか、家族的な付き合いをしたいとかそういうのじゃないよ! 
ただ、今日は兄貴が仕事で帰って来られないから、私一人になるんだ。

でも、一人の夜は辛いの。誰かと一緒にいたいの。
だから、今日は木霊君と遠野さんと一緒にいたいの……」

オレは天草さんが間に入って来てから、オレと天草さんの間に恋愛フラグができたのかと思っていた。
しかし、そんな事は全然なかった。

天草さんは、オレと遠野さんが付き合っているからこそ、二人を両親に重ね合わせて見ていたのだ。
一つだけ誤解はある。

オレと遠野さんはデート中だけど、別に一緒に寝る様な予定はない。
部活の合宿で、みんなと一緒に泊まった事があるだけだ。
遠野さんがオレの家に泊まった事はあるけど、寝た部屋は別々だった。

さすがに、高校生男女で一緒に眠る事は世間が許してくれない。
オレがどう答えれば良いか悩んでいると、遠野さんが答える。

「木霊君が良ければだけど、私は良いよ。夏美さんと木霊君、私の三人で一緒に寝ても。私も、一人で寂しい時があるからね。夏美さんの気持ちが、少しは分かるよ」

「うん、ありがとう」

遠野さんと天草夏美さんは、オレの方を見て、何かを訴えている。
マジで男女一緒に寝るのか? 遠野さんと天草さんの二人で寝ればいいじゃないか。
さすがに、心の準備ができて無くて、男女一緒に寝るのはいろんな意味でまずい! 

遠野さんと天草さんは、オレの心の壁を打ち砕くような目で見詰めて来た。
ウルウルとした涙目で見られると弱い。

「駄目かな? 木霊君の家で、一緒に寝泊まり」

遠野さんにそう訊かれ、オレは困る。
ラブコメの主人公は、時に人間の限界を越えねばならないほどのスパルタ生活を強いられるのだ。

男性の諸君は、こういう状況でも女性が安心して信頼できる人物にならなければならない。
禁忌を犯せば、ボコボコにされた上、社会的に抹殺される可能性もあるのだ。
しかし、だからといって避ける事も出来ない。

「分かった。部屋は空いているから大丈夫だ」

「本当に? 三人一緒の部屋だよ!」

「ああ、問題ない!」

本当は、問題ありまくりだけど、オレはそう言うしかできなかった。
まあ、オレの家には、隣人の黒沢さんもいるし、妹の水霊(みずち)もいる。
一晩くらいなら何とかなるだろう。

「良かった! じゃあ、夏美さんのお兄さんが帰って来るまで、三人で一緒に寝ようね!」

「うん! 私の兄貴が帰って来るのは、一週間くらい後になると思うけど……」

遠野さんと天草さんは無邪気に笑い合っていた。
オレが男という事も、少しは考慮してくれ……。
オレの試練となる一週間が始まったのだ。

天草夏美さんは仕事が終わったら、オレの家に来ると約束して、オレと遠野さんは店を後にした。

 オレと遠野さんは、夏祭りの浴衣を着るため、一旦オレの家に帰る。
オレの母さんは、浴衣を準備して待っていた。

「はい、これは私が高校生の時に買った浴衣だよ。
安物で悪いけど、えるふちゃんにあげる!」

「ええ! こんな良い物をもらって良いんですか?」

「うん、水霊(みずち)ちゃんは自分のお気に入りがあるし、えるふちゃんは私とサイズが似ているから大丈夫だよ。早速、着て見せて!」

「ありがとうございます!」

 遠野さんは浴衣に着替えて出て来る。青色の浴衣が似合っていた。
そして、浴衣に合わせるため、ツインテールにしている。
薄緑色の目と髪の毛にちょっと筋肉質に成っているが、色気はバッチリある。

オレは二人切りになり緊張していた。
オレと遠野さんが家を出て行くと、怪しい影がオレ達を付け回している。
メアリーと鏡野真梨だった。

「ふう、高校生になって両想いになり、浮かれているカップルが一番危ないんですよ。
普段は、俺が守るからとか、彼女を大切にしたいとかほざいている木霊みたいな奴がね……。

二人切りになって、雰囲気に呑まれると、徐々に暴走し始め、ハグして、キスして、妊娠なんて好くある話ですよ。
普段は良い人を気取っているから、避妊道具なんて使い慣れてない。

ムードに呑まれて、責任取るからねとかい言って、いざ彼女が妊娠すると、責任を取れないから逃げるような卑怯者なんですよ。

なので、我々は木霊とえるふを追い掛け、木霊が野生化して暴走したら、息の根を止めなければならないのですよ。

それは、真梨の働きにかかっている。
僕が合図をしたら、木霊を問答無用でボコボコにするんだ。頼みます、真梨先生!」

「はあ、そんなもんかね……。まあ、喉を潰して、止めを刺せばええんやろ。簡単やん」

「そう、友達が暴走して、重大な過ちを犯そうとした時は、殺してでも止めねばならない。厳しいけど、これが世界のルールなんだ。

木霊がえるふの腰に手を置く、頬に触り始める、チャックを下げるなどした時は、容赦なく殺して構わん! 

警察にばれても、過剰防衛として処理される。
まあ、事故死という事で片付けられる事だろうよ。
まさか、か弱い女の子が素手で殺したとは思わないだろうしな……」

「友達のエリー(鏡野が遠野えるふに付けたあだ名)が危険なら、ウチは本気で木霊を止めるで!」

「そう! それが真の友情という奴だ! 
木霊は、確かに防御力は上がったが、不意打ちによる一撃に弱い。
更に、精神的に動揺させる事ができれば、奴の能力は無力と化す。

木霊の隣人の黒沢さんという人から聞いた。
ケーキも美味しかったし良い人だ。
挨拶をかねて訊き込みしたかいがあったよ!」

メアリーが鏡野真梨を扇動し、オレの命が危険に晒されていた。
迂闊に遠野さんに近付けば、鏡野真梨の鉄拳で殺されてしまう。
全く気付いていないオレだが、このピンチを乗り切れるのだろうか?
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