【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第六章 ドライアド怒りの一撃!

第三話 恐るべき暗殺者の影

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 オレと遠野さんは、夏祭りをしているちょっと大きめの公園に着く。
ここでは、屋台や打ち上げ花火が夕方の五時から夜中の九時頃まで行われている。
花火は夜の七時から始まり、最後の十五分が打ち上げのピークとなる。

屋台のない反対側は、山になっており、電灯も少ない。
夏祭りの時とはいえ、人が来るのは稀である。
その公園に、オレ達は七時頃に到着した。

オレと遠野さんの周りを、鏡野真梨が付け狙っていた。
迂闊に遠野さんに触れれば、抹殺されてしまう。
オレはそんな事全く知らず、夏祭りを楽しむ。

「遠野さん、ちょっと人込みが多いね。大丈夫?」

「うん、少し人気のない場所に行きたいけど」

祭りは賑わっており、屋台の前は人ゴミでいっぱいだった。
オレは思わず遠野さんを抱き寄せ、人込みを避ける。首筋に、風を感じた。
鏡野真梨がオレに近付き、死角から首を攻撃しようとして止めた。

(なんや、人を避けさせただけか……。これはハグやないな)

オレには一瞬鏡野の気配を感じたが、人ゴミに紛れて分からなくなった。
鏡野は、メアリーと合流し、経過を報告する。

「あかん、あかん。もう少しで木霊を誤殺する所やった。危なかったわ」

「失敗は誰にでもある。
そのぐらいの勢いでいないと、奴らの行動を監視する事は出来ないからな。

一瞬でも油断すれば、人気のない暗闇に行き、事に励もうとする可能性もある。
十分に注意する事だ。
とりあえず、綿あめでも食って、気持ちを落ち着けろ」

「サンキュー! 奴らは、射的とか、輪投げとか、宝釣りに行ったな。
まあ、夕食を食ったばかりやから、食べ物系の屋台は、後で寄る気やな……」

「よし、僕らも水風船ヨーヨーを買おう!」

「せやな、奴らを見失わない限り、ウチらも祭りを楽しまんとな!」

 オレは気を取り直して、遠野さんと水風船ヨーヨーを買う。

「おじさん、水風船ヨーヨー二人分ください」

「お? お兄ちゃん、モテるね! 
さっき女の子が君の友達とか言って一つ分持って行ったよ。
君の彼女と似たような子が……。姉妹かね? はっはっは」

「何? まあ、良いや。とりあえず、二人分……」

オレは戦慄を感じていた。どこかでメアリーがオレ達を付け狙っている。
オレ達の先回りをして、金を払わせようとする奴なんてメアリーしかいない。
さっき鏡野真梨の気配も感じたしな。これで、迂闊に屋台を楽しむ事ができなくなった。

なるべく遠い場所に移動し、奴らから離れないと……。
オレは、遠野さんが水風船ヨーヨーを手に入れたのを確認すると、遠野さんの手を引いて逃げる。

「ほら、黒い水風船を手に入れたよ。後、青いのも……。きゃ!」

「遠野さん、あっちの屋台でたこ焼きを食べよう!」

「うん、良いよ」

オレは強引に、遠野さんをたこ焼き屋の屋台に連れて行った。

 メアリーと鏡野は、オレ達が移動した事に気付き、追って来る。

「まずい! 奴ら、人気のない方へ移動する気だ! 僕は人込みで進めない。
えるふを頼む。木霊の魔の手から救ってやってくれ!」

「分かったわ! 奴らがおかしな行動をした時は、躊躇なく攻撃するで!」

メアリーは、鏡野が行った事を確認すると、不敵な笑みを浮かべていた。

 オレはかなり遠くまで移動した事を知ると、鏡野達がいない事を確認する。
周囲にはあまり人がいない。ここなら、鏡野も迂闊に近付けないだろう。
オレはそう思い油断していた。

「遠野さん、ごめん。いきなり移動しちゃって、大丈夫だった?」

「はい。木霊君が盾になってくれたので、私は大丈夫でした。
ここは、人気も無いので、私も落ち着いていられます」

「良かった。じゃあ、たこ焼きでも食べない。お腹は空いてないかな?」

「あ、一人分は多いので、二人で半分子なら食べれます……」

「じゃあ、オレと一緒に食べよう!」

「はい、丁度ベンチもありますし……」

オレは遠野さんをベンチに座らせ、たこ焼きを食べる事にする。

「たこ焼きって熱いから、ゆっくり食べないと、口の中を火傷しますよね」

遠野さんは、たこ焼きを一つ取り、ちょっとずつ食べ始めた。
遠野さんがたこ焼きを食べ終わると、頬にソースが付いている。

「ソースが付いているよ……」

オレはそれに気が付き、ソースをぬぐった。その瞬間、首に激痛が走る。

「ゴッホ、何だ?」

「どうしたの?」

「いや、首がちょっと痛くなった。せき込んでごめん……」

「首に痣があるね……。今できたばかりの様な……」

オレ達のすぐ側に、鏡野がいた。
オレ達に追い付き、またも死角からオレを攻撃しようとしたのだ。

(危な! ソースを拭いてただけか! 
キスするかと思って、喉を潰しそうになったわ。
ギリギリ寸止め出来て良かったけど……)

 オレは鏡野が近くにいる事を悟る。しかし、遠野さんは気付いていないようだ。

オレは人込みを一気に駆け抜け、屋台のない公園に行く事にする。
反対側は、ほとんど人が来なくて、街灯も少ない。
一旦闇に紛れて鏡野を巻き、再び屋台に戻る事にする。

「遠野さん、ちょっとあっちの方を回って見ようか? 走る感じになるけど大丈夫?」

「え? うん、少しは休憩できたから……」

オレは人込みに入るふりをして、反対の公園に猛ダッシュする。
鏡野は、それも予測し、先回りして暗い公園に向かった。

(奴ら、人気のない公園に行き、イチャラブする気やな。
人込みの中なら、そんな大胆な行動はできへん。
暗闇に移動するという事は、エリー(鏡野が付けた遠野えるふのあだ名)を襲う気という事か! 

木霊の思い通りにはさせへん。
この公園で、イチャラブできそうな人気のない場所に先回りしてやるわ!)

鏡野はオレ達の前を高速で移動していた。
オレはそれに気付かず、暗い公園の奥の方へ向かう。

「ハア、ハア、ここまでくれば、鏡野も邪魔できないはず……」

「真梨? 真梨がどうしたの?」

「いや、鏡野真梨がオレ達を追って来ているような気がしたんだ。それで巻こうと……」

「そう、真梨の事が気になるんだ……。真梨、可愛いもんね……」

「ちょっと、遠野さん?」

遠野さんが何か勘違いをし、表情が暗くなった。
別に、オレは鏡野真梨の事が気になって妄想しているわけじゃないよ。
本当に、鏡野真梨がオレを狙っているんだって……。

オレはそう言おうとしたが、今の遠野さんには逆効果になるかもしれない。
オレが黙っていると、鏡野真梨の声が聞こえた。

「きゃあああ!」

奇声の様な悲鳴は気になるが、野良犬の落とし物でも踏んだんだろ。

「ほら、鏡野が近くにいるだろ。嘘じゃないでしょ?」

「そうだね。人気のない場所で落ち合う気だったんだ。
それで走ったりしていたんだね。ごめん、気が付かなくて……。
行ってあげて。私は大丈夫だから……」

「いや、本当に……」

オレ達が話している間に、鏡野の悲鳴が近付いて来る。
場所も分かっている事だし、鏡野を避けて遠野さんとデートの続きをしようかと考えていた。

このまま遠野さんと別れるのも誤解を大きくするだけだし、鏡野に会うのも何となくまずい。
鏡野なんてどうでも良いよ、オレは遠野さんが大事だから……。
そう言って離れるのがベストだ。オレはそう考え、遠野さんに近付く。

「オレは鏡野なんてどうでも良いよ」

オレがそう言った瞬間、鏡野と合流する。

「おお、お前ら、助けてくれ! 人が死んどんねん!」

鏡野なんてどうでも良かったけど、オレ達は離れる事ができなくなった。
下手に動けば、犯人にされかねない。

 オレ達三人は現場に行き、警察を呼ぶ事にした。

「はあ、鏡野真梨と関わって、これで三件目の殺人事件か……。
今回は、お前が誤って殺したとかじゃないよな? 
オレと遠野さんの周りをうろついていたようだったけど……」

鏡野は悪気なく言う。

「いやあ、お前らが若気の過ちを犯さないように張り込んでいたんや。
高校生で妊娠とかは、将来的にも、健康的にも、道徳的にも悪いからな!」

「話が飛び過ぎだろ! 間がだいぶ省かれているぞ!」

「いやあ、ハグしたら、衝動的にキスするやろ。
そしたら、木霊が暴走してしまうかもしれんやん。
そこで、初期の段階で止めようと思ってな。息の根を……」

「息の根を? やり過ぎだろ!」

「まあ、まあ、何もなかったしええやん」

 オレと遠野さん、鏡野は、被害者を確認する。
鏡野は死んでいると言っているが、もしかしたら早とちりで、まだ助かるかもしれない。鏡野は、携帯電話でメアリーを呼び、被害者を助ける様に指示する。
メアリーは三分ほどして、現場に到着した。

「真梨、木霊をやったと言うのは本当か? でかした! これでえるふは僕の物だ!」

「いや、違う。木霊とは別の奴が死んどんねん。ほれ、遺体を確認してみい!」

「ひい! 真梨、ついにやってしまったな!
木霊と間違えて、他人を殺すとは……。まあ、警察も真梨が素手で殺したとは思うまい。最悪、事故死か、過失致死罪だよ」

「いや、ウチはやってへんねん。来た時には、もう死んでたで」

「ほーう、なら、木霊が怪しいな。犯人は現場に戻ると言うし……。
木霊をブタ箱にぶち込むという方法で処理するのも悪くは無い」

「いや、木霊でもないよ。ずっとエリーといたからアリバイは完璧やし……」

「ちっ! ただの殺人事件か! 時間の無駄だ! 
えるふに捜査させて、さっさと解決させよう!」

まだ警察も来ていないのに、事件の捜査をして大丈夫なのだろうか?
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