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第七章 獲物を呼び寄せるセイレーン

第二話 船乗栄一の死因

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オレ達は野村警部を見つけ、早速船乗さんの事件を聞いてみることにした。
どうやら事故死として見ていたらしいが、殺人の可能性が出てきたという。
これならすぐに事件は解決するだろうと、オレは考えていた。
しかも、犯人の目星は付いているという。

「今日の刑事さんは当たりのようですね。
これなら少しはスムーズに事件が解決するかもしれませんね」

「船乗さんの事件を調査しに来たわけか。
どうして船乗さんが他殺されたと知ったのかね?
実際、警察でも俺くらいしか殺人事件を疑っていなかったのに……。
ほとんどの刑事も表紙と判断していたんだよ。
心臓発作で亡くなったというのが有力候補だったのだがね」

「実は、船乗栄一さんと付き合っているという空野ツバサさんから依頼されたのです。
今度のライブコンサートで、二人の結婚発表をする予定だったのですが、船乗さんが亡くなった事でその話は無くなりました。
しかし、タイミングから見ておかしいという事で調査依頼を受けました。
そこで、彼が死亡した場所だと言われるこの場所に調査に来たんです」

「なあ、あの歌姫とあの男性が……。
いや、確かにあり得る話だ。
彼はイケメンで、起業して成功した社長だし、大学では彼女と同期だった。
付き合っているという噂こそなかったが、状況証拠から見れば判断できるな。
まあ、お互いに年齢も結婚できる歳になっていたから覚悟はしていたが……。
まさか、そこまで進んでいたとは驚きだ。
それだけに、結婚を反対する輩も多そうではあるな!」

「そうですね、ストーカーとかもいる可能性があるそうですからね。
船乗さんに渡されるはずだった特等席のライブチケットも行方不明らしいですし、もしかしたらストーカーと思われる人物が持っているのかもしれません。
どこかで空野さんのマネージャーがライブチケットを渡しているはずなんですが……」

「船乗さんが死亡した時に持っていた所持品を確認して見たが、それらしい品物はなかったぞ。
確かに、ストーカーとかいう人物が盗って行った可能性が出て来たな!
試しに、古本屋の監視カメラを確認してみるか?
何か、証拠が写っているかもしれない」

オレ達がモニターをチェックしようとすると、遠野さんがエルフモードになると言い出した。
そこに証拠があるかもしれない。
ならば探偵能力を持つエルフモードが最適なのだ。
遠野さんはスマートフォンのアクセサリーの魔法陣を接続し、音と光で変身をし始める。

「太古に眠りし知識の英知よ、今ここに甦り……」

そこまで呪文を唱えて変身に浸っていると、突然に遠野さんのスマートフォンに電話がかかって着た。
スマートフォンに接続している為、着信が入ると別の音楽が鳴り出し、魔法陣も別の音楽に合わせた光り方をし始める。
遠野さんは急に素の状態に戻り、電話に応対する。
途中で変身を止めたので、ちょっと不機嫌だった。

「はい、遠野えるふです。
どちら様ですか?」

「お前ら、どこにいるニャン?
僕らが折角尾行していたのに、コンサート場まで行ったら、お前ら急にいなくなるから僕らが迷ったニャン。
コンサート場からどこに行ったニャン?
見知らぬ土地で怖いニャン!」

「ああ、そうですか。
じゃあ、コンサート場まで戻って下さい。
しばらくしたら私達もまた戻って着ますから……」

「えー、美味しい物食べてる?
僕らも欲しいニャン!」

「食べ物屋ではありません。
本屋にいますよ。
大人しくしていれば、ほうじ茶味のチョコボールを買って来てあげますよ」

「ガーン、ほうじ茶味のチョコボールって猫は食べちゃダメな食品ニャン。
ニャン殺する気満々ニャン、僕に死ねというのか!
それならタラタラしてんじゃねえの方がいいニャン。
二袋食べたいニャン!」

「分かりました。
安上がりで助かります。
では、一時間ほど待っていて下さい。
歌姫のツバサさんと知り合いなので、そこの楽屋近くにいれば会えますよ。
では、後ほど!」

「お、美女の歌手かね?
なら、僕らが護衛をしておくニャン」

こうして遠野さんとネコーズの会話は終わった。
鏡野真梨が電話の相手を聞いてくる。
遠野さんは変身を途中で妨害されたので、変身前だということも忘れて髪をポニーテールにしていた。
すでにエルフモードになり、鏡野真梨に答える。

「迷いネコーズからの電話でした。
気にしなくてもいいですよ。
では、モニターの確認に移りますか」

ようやくモニターを見る準備ができた。
いったい船乗栄一さんに何が起こったのだろうか?
野村警部はモニターの再生ボタンを押して、画像が始まった。
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