【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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第七章 獲物を呼び寄せるセイレーン

第四話 被害者の死因

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野村警部は、監察医からの報告を受け取り、オレ達にも教えてくれた。
自分一人しか殺人を疑っていなかった為、オレ達に教えても批判する警察官はいないらしい。
他の警官は早々と病死と断定して引き上げていたようだ。
事件性を疑う可能性がない以上、無闇な詮索は仕事を増やすだけなのだ。

「どうやら俺の勘が良かったようだ。
死因は、病死ではなく、毒殺の線が出て来た。
暗殺などでよく使われる特殊な薬物を付着させ、針などで刺したようだな。
それにより、病死のような感じで死んだようだ。

犯人は、君達が言うようにライブチケットを持っている人物だろう。
空野ツバサのストーカーは、ネット上では有名だからすぐに自宅を特定できる。
何かとトラブルを起こしていたから、警察官の間では有名だった。
この近くらしいから、遠野君達も一緒に来るかい?
歩いて五分ほどのところらしい」

「なるほど、殺人の可能性が出て来ましたね。
しかも、殺害動機もありそうですし……」

「て言うか、犯人やろ、そいつ!」

「可能性は高いですけど、監視カメラに映るなど隙が多いです。
毒殺を準備していたのなら、自分が疑われるようなことは極力避けるはずです。
たとえ、病死と判定される可能性が高いとしてもです。
彼から事情を聞いて見てから判断しましょう。
犯人なら、毒物も所持しているかもしれませんし、入手経路も分かるはずです」

「せやな、ほな行こか!」

こうしてオレ達はストーカーと思われる男の家を訪ねることにした。
ストーカー男の家は、家賃が月三万ほどの安いアパートであり、防犯設備は悪そうだった。
いかにも独身男性であるという洗濯物が干してある。
二階がストーカー男の部屋であり、アパートの階段を上がっているだけでも汚れが目立っていた。

遠野さんと鏡野真梨は、嫌そうにしながらも階段を上って行く。
せめて、パブリーズでもしていれば好感が持てるかもしれないが、扉の前を立つだけで汗臭い匂いが漂って来た。
それでもインターホンは綺麗に整備されており、ちゃんとチャイムの音もなる。

「この匂い、洗濯を失敗していますね。
ずっと外に干しっぱなしなので、外の匂いが移ったようです。
独身男性にありがちな失敗ですね。
これは、彼女もいない大学生でしょうか?」

「ニートかもしれん。
オッさんくさい感じはしない。
どちらかといえば、オタクくさい奴や!
大学に通わんと、しょーもない事しよって!」

「中から物音がしますね。
電気も点いているから、絶対に家の中にいますよ」

「オーイ、誰かおるんか?
おるんやったら扉開けい!
こっちは警察やねん!」

鏡野真梨は、ヤクザばりの口調で扉をガンガン叩く。
オレがこの家の住人なら、絶対に扉を開けたくない。
迂闊に開ければ、尻の毛まで抜かれそうな危険を感じさせていた。
鏡野真梨には悪いが、遠野さんの方が開けてくれる可能性は高いだろう。

「開かへんな。
居留守か、ますます怪しいで!
扉ブチ破って、確保した方がええやろ!
もうほとんど黒やん!」

「ああ、そうだな」

ヤクザ並みの危険度を感じさせるが、オレは鏡野真梨に同意する。
ライブコンサートまであまり時間もない。
このまま悪戯に時間を浪費するよりは、鏡野真梨をけしかけた方が早そうだった。
どうせ蹴り一発で開くだろうし、修復費を払うのは鏡野だからな。

「開けへんのやったら、力付くで開けるで!
こっちは警察なんや、巨悪は逮捕せんとあかん!
さもないと、住民のみんなが不安になんねん!」

鏡野真梨は自分を正義の味方と思っているようだが、側から見たら自分が犯罪者だった。
このような交渉では、怖くて出るに出てこれないだろう。
鏡野が扉をブチ破って開けようとすると、タッチの差で遠野さんがマスターキーを持って来てくれた。
大家さんに事情を話し、協力してもらったのだ。
何事も力付くでは解決しない。
そんな教訓をオレと鏡野に教えてくれた。
鏡野は誤魔化すように言う。

「そうや、そうや、マスターキーを借りるって手もあったな。
ウチとした事が、ちょっと熱くなり過ぎ取ったわ。
扉をブチ破らんでもええな。
そんなんしたら、住民に迷惑やねんな」

「そうだな、気付いて良かったな」

遠野さんは、ストーカー男の家の鍵を開ける。
トンネルを抜けると雪景色だったと言うような感動は無く、ゴミが山のように積まれていた。
小まめに掃除やゴミ捨てはしているようだが、独身男性特有の症状なのか、全然綺麗になっていなかった。
この部屋を見たり、彼女の必要性をまざまざと見せ付けられた気分だ。

「うっわ、汚な!
いや、すまん。
そんなに汚れてはおらんわ。
女性としては生理的に受け付けんけど……」

鏡野真梨は、アルバイト経験が豊富な為、清掃や料理もそれなりに得意だ。
もちろん、遠野さんや天草夏美さんのような専門のケーキを開発するまでには至っていないが、レシピさえ知っていれば何でも作れるレベルだ。
個人的には彼女にはしたくないが、彼女となるなら高スペックの持ち主だった。
ツッコミと性格に耐えられる者だけが、彼女を所有することを許されるのだ。
オレにはちょっと無理があるけど……。
殺人事件に遭遇するという特殊能力も備えているからな。
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