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第四章 白と黒の遭遇
第68話 最初の接触
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オレの子供が生まれてからすでに六年は経過していた。
悟は大きくなり、小学校に通い出した。
小学校の友達とも仲が良いようだ。
今は時間が空き、久々に仕事をもらい、夫婦で調査する事になった。
オレとシルビアさんは、バルベロから与えられた任務を行っている最中だ。
カップルに扮して、ターゲットを探るという任務だ。
バルベロが調査した情報によると、この地域に亜空間を使う魔物が潜んでいるという。
情報は確かではないので、デートしながら調査しろという事だ。
まあ、子育てで疲れていた事だし丁度良い。
オレとシルビアさんの子供・悟(さとる)をバルベロに預けて、デートがてら周辺を散策している。
「じゃあ、この辺を一周したら、あそこのカフェに行こうか?
最近忙しかったからね。
偶には、ケーキでも食べないと、シルビアさんも倒れてしまうよ」
オレがそう言うと、シルビアさんも笑顔で答えてくれる。
一児の母とはいえ、まだまだ二十代の若さだ。
デートをする事で、若さを甦られるというのは本当の様だ。
夫婦のみんなも偶には子供を誰か信頼できる大人に預けて、気晴らしをする事が大切です。
だからこそ、親子の関係はいつまでも大切にしていた方が良いのです。
子育てに疲れた時の緊急避難経路となりますからね。
「そうですね。あそこのカフェは、モンブランが人気で有名です。
子育ての合間に調べていたんですよ」
「良かった。喜んでくれて……」
オレとシルビアさんがデートをしていると、何処からともなく女性の声が聞こえた。
「あら、丁度良いわ。女性の方、ちょっと私とお話ししましょうか?」
「何? 壁から声がするわ。しばらく忘れていたけど、この感覚は……」
シルビアさんがそうつぶやいたと思ったら、オレの前から忽然と消えていた。
シルビアさんは、久し振りに異次元のゲートを通過し、誰かが仕掛けた亜空間に連れ込まれた。
おそらくさっきの声の主であろう。
凶悪な異次元の魔物であり、シルビアさんに危険が迫っていた。
オレは突然の事で驚いた。
一度亜空間に入ってしまうと、条件をクリアするか、魔物自体を倒すまで出る事は出来ない。
オレが目を離した隙に、シルビアさんは何処かへ消えてしまった。
とりあえずマンホールの穴に落ちていないか確認する。
日本は、道路設備が豊かとはいえ、マンホールが割れていても交換していない時が稀にあるのだ。
道路工事の節約などで、道路を歩く人に警告を省いている会社もある。
不景気だから仕方ないと、こういう大切な経費を省いていると、決定的な事故に繋がるのだ。
幸いにも、近くにマンホールらしき穴は開いていなかった。
「シ、シルビアさん?」
オレは、シルビアさんがいなくなったので、しばらく周辺を見回る。
魔物に襲われたのなら、バルベロと連絡して、シルビアさんを救出しなければならない。
しかし、魔物の行動が鮮やか過ぎたのと、異次元のゲートを通過するのが久し振りで、オレは状況判断できないでいた。
しばらく待っていれば、シルビアさんが戻って来るかも知れないと思って待っていた。
買い物で安い物に遭遇すると、一緒に歩いている人にはいっさい告げずに消えた様にいなくなる人はよくいる。
本人に悪気はないのだろうが、喧嘩の原因になるので、よく考えて行動してほしい。
オレは、シルビアさんもそういう物に出くわしたのだろうと思っていた。
だが、シルビアさんは謎の空間に閉じ込められ、危険な状況に陥っていた。
「ここは、どこですか? なぜこんな所に?」
シルビアさんがいる所は、オレ達が行こうとしていたカフェに似ているが、別の場所だった。
テーブルと椅子、小さな喫茶店がある。
しばらくすると、コーヒーとケーキが用意されて来た。
ケーキを運んで来たのは、黒いゴスロリ服を着た女性だ。
化粧は薄いが、衣装はしっかりと着こなしている。
まるで、コスプレ喫茶に来てしまったかのような空間だった。
「ここは、私のプライベートカフェの一つよ。
テントの様にどこにでも設置できて便利よ!」
「あなた、亜空間を使える魔物ですね!
よくも、のこのこ現れたものです。
覚悟なさい、えーと名前が分からないけど……」
シルビアさんが攻撃態勢に出るが、黒い服の女性の名前が分からず、いまいち迫力に欠ける。
名前さえ分かっていれば、容赦ない攻撃をしていた事だろう。
「私の名前は黒沢エレンよ」
「そう。では、エレンさん、覚悟!」
シルビアさんが攻撃をしようとすると、エレンさんが止める。
「待ちなさい! 今日は戦いたい気分じゃないの。
まずは、コーヒーとケーキを食べていきなさい。
それに、状況を好く把握しなければ、あなたの恋人が危険にさらされているかもしれないのよ!」
「ま、まさか、マモルさんが……」
シルビアさんは、オレが危険にさらされているかも知れないと思い慌て出す。
オレの名前を聞きだした事により、エレンさんは脅しを加えて来た。
「そう!
マモルさんが身体的には大丈夫だけど、心は危険が迫っているかもしれないわね。
落ち着いて、正しい判断をしなければ、夫婦間も壊れてしまうわ。ふふふ……」
「どういう意味ですか? この世界から出しなさい!」
「いやよ! もてなしを受け入れなければ、ここから出す気はないわ!」
この空間から出るには、出されたコーヒーを飲み、ケーキを食べ終わらなければ出られないという。
何かの罠だろうか? そんな美味しい条件があるわけない。
「くう、飲んで食べるまで出さないという事か? まさか、毒とか?」
シルビアさんは匂いを嗅ぐが、そんな事で毒の有無が分かるはずもない。
エレンさんははっきりと言う。
「ないわよ。私は、嘘は言わないわ。安心して食べなさい!」
シルビアさんは、ゆっくりとケーキを食べ始める。
まあまあ美味しいが、外はどうなっているのだろうか?
オレがシルビアさんを捜しうろついていると、十代後半の女の子に声をかけられた。
道に迷っているだけかもしれないが、オレは不審さを感じる。
しかし、困っている人を放っておくわけにもいかない。
「どうしたの? この道には詳しくないんだけど……」
「あ、はい。実は、知り合いを捜しているのですけど、なかなか会えなくて。
よろしければ、しばらくお話し相手になってくれませんか?
あそこのカフェでたっぷりお礼をいたします!」
「オレも人を捜しているんだけど、迷い易い道なのかな?
じゃあ、ちょっと休憩しますか……」
ぶっちゃけ、ナンパなんて生まれて約三十年間、一度もされた事がない。
シルビアさんも声をかけて来たけど、オレが本気で困っていた様子だからだろう。
初めてのナンパに浮かれて、オレは女の子と一緒にカフェに向かう。
すると、女の子が腕組をしながらオッパイを押し付けて来た。
警戒心のない女の子なのだろうか?
(マジか! 小さいながらも形の良いオッパイ!
最近の女子高生は、ここまで無防備なのか。外は飢えた男の狼で一杯なんだ。
もうしばらく味わった後、しっかり注意しなくては……。別れ際くらいに!)
カフェに入ると、店長らしき男性が接客に来る。他の店員はいないようだ。
まあ、平日の昼間だし、珍しい事ではない。
「ご注文は何にいたしますか?」
「ケーキとコーヒーのセットを二人分お願いします」
「かしこまりました」
なかなか礼儀正しい感じの男性だった。
ケーキとコーヒーが美味しければ良いが……。
女の子は思った事が口に出るタイプらしく、心の声が漏れていた。
こういうキャラにでもしないと、主人公と思考が分からなくなるから仕方ない。
「ラッキー、結構タイプの人だよ! これなら両想いも楽勝かも……。
ナルシストって言われるかもしれないけど、私は容姿はなかなか可愛いし、ロリコン殺しのスタイルはしているはず。
それに、この人を意識し始めたら身体も元に戻ったし、人生がうまくいくかもしれないね。真面目に努力していたつもりだけど、ようやく私に運が向いて来たかも……」
女の子は独り言を言いながら、ガッツポーズをした。
オレは、コーヒーを飲みながら女の子に語り掛ける。
「どうしたの? さっきからブツブツ言っているけど……」
「あ、聞こえちゃいました?
あなたとても格好良くて、私のタイプだなって思っていたんです!
どうか、結婚を前提に付き合って下さい。絶対に後悔はさせませんから!」
女の子は、恋する乙女の目でオレを見て、そう言って来た。
悪い気はしないが、オレはもう結婚している。
丁重にお断りしなければ。
「いや、オレはもう結婚しているんだけど。ごめんね」
女の子は、ちょっと態度を変えた。
「ちっ! 殺すか? 相手の女を……」
謎の女の子は、一瞬怖い顔をしたが、すぐに笑顔になりこう言う。
「そうなんですね、でも大丈夫! 離婚は今では珍しい事ではありませんよ。
ちょっとお金と手続きが必要ですけど、弁護士と話す事によってかなりの程度まで楽にする事ができるのです。
まあ、若くて可愛い妻を手に入れるためですもの。
そのくらいのリスクは問題ありませんよね?」
「いや、子供もいるし、妻を愛している。離婚する気は全然ないよ。ごめんね!」
「ちい! やっぱり殺す(やる)しかないか。
殺人をするくらいなら、不倫して別れさせる方がマシだと思ったんですけど……。
この際仕方ないか?
いや、事故に見せかけて既成事実を作ればあるいは……。
子供は、私が育てれば良いし、そのくらいは受け入れます!
愛も、仕事も両方手に入れるわ!」
女の子は、オレを完全に無視し、何かを決意していた。
小声だからよく聞き取れなかったけど。
「どうしたの? 彼氏と不仲にでもなったのかな?」
「そう、そうなんです!
あなたと私は、恋人同士であんなに激しく愛し合っていたじゃないですか!
それなのにあの日の事を忘れたというのですか?」
「ええ! オレの知り合い?」
女の子は、また小声で何かをゴニョゴニョと言っている。
オレには聞き取れないくらいの声で……。
「ふふふ、こいつも男なら浮気の一つくらい経験があるはず……。
そこを突いて行けば、できちゃった婚として責任を取らせる事も出来るはずです。
最初に出会った男しか恋愛の対象にできない以上、その方法しかないです。
幸い、こいつは真面目そうな男。
子供がいるとなれば、責任を真面目に考え出すはず。
相手の子供も一緒に育てるという器の広さ。
さらに、若さで対抗すれば、こいつも私を選ぶはずです。
相手の女が、誰の子かも知れない子供なんて認めないと言えば、彼は私を選ぶはず……」
悟は大きくなり、小学校に通い出した。
小学校の友達とも仲が良いようだ。
今は時間が空き、久々に仕事をもらい、夫婦で調査する事になった。
オレとシルビアさんは、バルベロから与えられた任務を行っている最中だ。
カップルに扮して、ターゲットを探るという任務だ。
バルベロが調査した情報によると、この地域に亜空間を使う魔物が潜んでいるという。
情報は確かではないので、デートしながら調査しろという事だ。
まあ、子育てで疲れていた事だし丁度良い。
オレとシルビアさんの子供・悟(さとる)をバルベロに預けて、デートがてら周辺を散策している。
「じゃあ、この辺を一周したら、あそこのカフェに行こうか?
最近忙しかったからね。
偶には、ケーキでも食べないと、シルビアさんも倒れてしまうよ」
オレがそう言うと、シルビアさんも笑顔で答えてくれる。
一児の母とはいえ、まだまだ二十代の若さだ。
デートをする事で、若さを甦られるというのは本当の様だ。
夫婦のみんなも偶には子供を誰か信頼できる大人に預けて、気晴らしをする事が大切です。
だからこそ、親子の関係はいつまでも大切にしていた方が良いのです。
子育てに疲れた時の緊急避難経路となりますからね。
「そうですね。あそこのカフェは、モンブランが人気で有名です。
子育ての合間に調べていたんですよ」
「良かった。喜んでくれて……」
オレとシルビアさんがデートをしていると、何処からともなく女性の声が聞こえた。
「あら、丁度良いわ。女性の方、ちょっと私とお話ししましょうか?」
「何? 壁から声がするわ。しばらく忘れていたけど、この感覚は……」
シルビアさんがそうつぶやいたと思ったら、オレの前から忽然と消えていた。
シルビアさんは、久し振りに異次元のゲートを通過し、誰かが仕掛けた亜空間に連れ込まれた。
おそらくさっきの声の主であろう。
凶悪な異次元の魔物であり、シルビアさんに危険が迫っていた。
オレは突然の事で驚いた。
一度亜空間に入ってしまうと、条件をクリアするか、魔物自体を倒すまで出る事は出来ない。
オレが目を離した隙に、シルビアさんは何処かへ消えてしまった。
とりあえずマンホールの穴に落ちていないか確認する。
日本は、道路設備が豊かとはいえ、マンホールが割れていても交換していない時が稀にあるのだ。
道路工事の節約などで、道路を歩く人に警告を省いている会社もある。
不景気だから仕方ないと、こういう大切な経費を省いていると、決定的な事故に繋がるのだ。
幸いにも、近くにマンホールらしき穴は開いていなかった。
「シ、シルビアさん?」
オレは、シルビアさんがいなくなったので、しばらく周辺を見回る。
魔物に襲われたのなら、バルベロと連絡して、シルビアさんを救出しなければならない。
しかし、魔物の行動が鮮やか過ぎたのと、異次元のゲートを通過するのが久し振りで、オレは状況判断できないでいた。
しばらく待っていれば、シルビアさんが戻って来るかも知れないと思って待っていた。
買い物で安い物に遭遇すると、一緒に歩いている人にはいっさい告げずに消えた様にいなくなる人はよくいる。
本人に悪気はないのだろうが、喧嘩の原因になるので、よく考えて行動してほしい。
オレは、シルビアさんもそういう物に出くわしたのだろうと思っていた。
だが、シルビアさんは謎の空間に閉じ込められ、危険な状況に陥っていた。
「ここは、どこですか? なぜこんな所に?」
シルビアさんがいる所は、オレ達が行こうとしていたカフェに似ているが、別の場所だった。
テーブルと椅子、小さな喫茶店がある。
しばらくすると、コーヒーとケーキが用意されて来た。
ケーキを運んで来たのは、黒いゴスロリ服を着た女性だ。
化粧は薄いが、衣装はしっかりと着こなしている。
まるで、コスプレ喫茶に来てしまったかのような空間だった。
「ここは、私のプライベートカフェの一つよ。
テントの様にどこにでも設置できて便利よ!」
「あなた、亜空間を使える魔物ですね!
よくも、のこのこ現れたものです。
覚悟なさい、えーと名前が分からないけど……」
シルビアさんが攻撃態勢に出るが、黒い服の女性の名前が分からず、いまいち迫力に欠ける。
名前さえ分かっていれば、容赦ない攻撃をしていた事だろう。
「私の名前は黒沢エレンよ」
「そう。では、エレンさん、覚悟!」
シルビアさんが攻撃をしようとすると、エレンさんが止める。
「待ちなさい! 今日は戦いたい気分じゃないの。
まずは、コーヒーとケーキを食べていきなさい。
それに、状況を好く把握しなければ、あなたの恋人が危険にさらされているかもしれないのよ!」
「ま、まさか、マモルさんが……」
シルビアさんは、オレが危険にさらされているかも知れないと思い慌て出す。
オレの名前を聞きだした事により、エレンさんは脅しを加えて来た。
「そう!
マモルさんが身体的には大丈夫だけど、心は危険が迫っているかもしれないわね。
落ち着いて、正しい判断をしなければ、夫婦間も壊れてしまうわ。ふふふ……」
「どういう意味ですか? この世界から出しなさい!」
「いやよ! もてなしを受け入れなければ、ここから出す気はないわ!」
この空間から出るには、出されたコーヒーを飲み、ケーキを食べ終わらなければ出られないという。
何かの罠だろうか? そんな美味しい条件があるわけない。
「くう、飲んで食べるまで出さないという事か? まさか、毒とか?」
シルビアさんは匂いを嗅ぐが、そんな事で毒の有無が分かるはずもない。
エレンさんははっきりと言う。
「ないわよ。私は、嘘は言わないわ。安心して食べなさい!」
シルビアさんは、ゆっくりとケーキを食べ始める。
まあまあ美味しいが、外はどうなっているのだろうか?
オレがシルビアさんを捜しうろついていると、十代後半の女の子に声をかけられた。
道に迷っているだけかもしれないが、オレは不審さを感じる。
しかし、困っている人を放っておくわけにもいかない。
「どうしたの? この道には詳しくないんだけど……」
「あ、はい。実は、知り合いを捜しているのですけど、なかなか会えなくて。
よろしければ、しばらくお話し相手になってくれませんか?
あそこのカフェでたっぷりお礼をいたします!」
「オレも人を捜しているんだけど、迷い易い道なのかな?
じゃあ、ちょっと休憩しますか……」
ぶっちゃけ、ナンパなんて生まれて約三十年間、一度もされた事がない。
シルビアさんも声をかけて来たけど、オレが本気で困っていた様子だからだろう。
初めてのナンパに浮かれて、オレは女の子と一緒にカフェに向かう。
すると、女の子が腕組をしながらオッパイを押し付けて来た。
警戒心のない女の子なのだろうか?
(マジか! 小さいながらも形の良いオッパイ!
最近の女子高生は、ここまで無防備なのか。外は飢えた男の狼で一杯なんだ。
もうしばらく味わった後、しっかり注意しなくては……。別れ際くらいに!)
カフェに入ると、店長らしき男性が接客に来る。他の店員はいないようだ。
まあ、平日の昼間だし、珍しい事ではない。
「ご注文は何にいたしますか?」
「ケーキとコーヒーのセットを二人分お願いします」
「かしこまりました」
なかなか礼儀正しい感じの男性だった。
ケーキとコーヒーが美味しければ良いが……。
女の子は思った事が口に出るタイプらしく、心の声が漏れていた。
こういうキャラにでもしないと、主人公と思考が分からなくなるから仕方ない。
「ラッキー、結構タイプの人だよ! これなら両想いも楽勝かも……。
ナルシストって言われるかもしれないけど、私は容姿はなかなか可愛いし、ロリコン殺しのスタイルはしているはず。
それに、この人を意識し始めたら身体も元に戻ったし、人生がうまくいくかもしれないね。真面目に努力していたつもりだけど、ようやく私に運が向いて来たかも……」
女の子は独り言を言いながら、ガッツポーズをした。
オレは、コーヒーを飲みながら女の子に語り掛ける。
「どうしたの? さっきからブツブツ言っているけど……」
「あ、聞こえちゃいました?
あなたとても格好良くて、私のタイプだなって思っていたんです!
どうか、結婚を前提に付き合って下さい。絶対に後悔はさせませんから!」
女の子は、恋する乙女の目でオレを見て、そう言って来た。
悪い気はしないが、オレはもう結婚している。
丁重にお断りしなければ。
「いや、オレはもう結婚しているんだけど。ごめんね」
女の子は、ちょっと態度を変えた。
「ちっ! 殺すか? 相手の女を……」
謎の女の子は、一瞬怖い顔をしたが、すぐに笑顔になりこう言う。
「そうなんですね、でも大丈夫! 離婚は今では珍しい事ではありませんよ。
ちょっとお金と手続きが必要ですけど、弁護士と話す事によってかなりの程度まで楽にする事ができるのです。
まあ、若くて可愛い妻を手に入れるためですもの。
そのくらいのリスクは問題ありませんよね?」
「いや、子供もいるし、妻を愛している。離婚する気は全然ないよ。ごめんね!」
「ちい! やっぱり殺す(やる)しかないか。
殺人をするくらいなら、不倫して別れさせる方がマシだと思ったんですけど……。
この際仕方ないか?
いや、事故に見せかけて既成事実を作ればあるいは……。
子供は、私が育てれば良いし、そのくらいは受け入れます!
愛も、仕事も両方手に入れるわ!」
女の子は、オレを完全に無視し、何かを決意していた。
小声だからよく聞き取れなかったけど。
「どうしたの? 彼氏と不仲にでもなったのかな?」
「そう、そうなんです!
あなたと私は、恋人同士であんなに激しく愛し合っていたじゃないですか!
それなのにあの日の事を忘れたというのですか?」
「ええ! オレの知り合い?」
女の子は、また小声で何かをゴニョゴニョと言っている。
オレには聞き取れないくらいの声で……。
「ふふふ、こいつも男なら浮気の一つくらい経験があるはず……。
そこを突いて行けば、できちゃった婚として責任を取らせる事も出来るはずです。
最初に出会った男しか恋愛の対象にできない以上、その方法しかないです。
幸い、こいつは真面目そうな男。
子供がいるとなれば、責任を真面目に考え出すはず。
相手の子供も一緒に育てるという器の広さ。
さらに、若さで対抗すれば、こいつも私を選ぶはずです。
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