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カミングアウト
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そろそろ、五月も半ばだ。五月の半ばと言えば──。
「来週から、中間テストを行う。各自、準備をしておくようにな」
そう、中間テストだ。
「どう、しよう」
「どうしたの? 元気ないね」
「亮くん!」
ため息をつきながら、教室の外を見つめていると、亮くんに話しかけられた。亮くんと教室で話すのも、彼氏だと思うとなんだか、少しだけこそばゆい。
「もうすぐ、中間テストでしょう。それが、憂鬱で」
「小鳥遊さん勉強苦手?」
「……うん」
私の頭のレベルは中の中といったところ。それが、お兄ちゃんと同じ学校に通いたいからと、この進学校としてそれなりに名をはせている高校に来てしまったから、大変だ。毎日予習復習をしているものの、正直いって追い付いていなかった。
でも、補佐とはいえ、生徒会に入ったのに、テストで赤点なんかとったら、格好悪いし。
何とかして、せめて赤点を回避したいのだと、言うと、亮くんは首をかしげた。
「だったら、俺が教えようか?」
「え?」
亮くんは、少しだけ恥ずかしそうに言った。
「こう見えて、勉強は嫌いじゃないんだ」
「いーじゃん! 朱里、田中に教えてもらいなよ」
「彩月ちゃん!」
突然話に入ってきた彩月ちゃんに驚いていると、彩月ちゃんはもっと驚くようなことを言った。
「だって、田中、入試も首席で合格だったし」
「……えっ」
「ほら、朱里、覚えてないの? 新入生挨拶、田中がやったの」
お兄ちゃんが機嫌が悪そうなことばかり考えていて、全く意識してなかった。そうだったんだ。
「亮くん、すごいね」
野球部だから、運動もできるし、頭もいい。運動が苦手で、頭もそんなに良くない私とは大違いだ。
「……すごくないよ。それで、今週の日曜日なんだけど、小鳥遊さん空いてる?」
「うん」
「じゃあ、図書館に行こう。確か、学習スペースっていって、小声なら話してもいい場所があったから、そこで教えるよ」
「ありがとう!」
さて、日曜日の早朝。私は鏡の前で悩んでいた。
「うーん、この服は、勉強には向かないかなぁ。でも、こっちは地味すぎる?」
そう、服が決まらないのだ。目的は、勉強とはいえ、おそらく彼氏との初デート。どんな服でいけばいいのか、わからない。
なんとか、二択までしぼったものの、そこからが決まらなかった。よし、こういうときは。
隣の部屋の扉をノックする。
「お兄ちゃん、起きてる?」
すると、中からお兄ちゃんが出てきた。お兄ちゃん、朝弱かったはずなのに、最近どうしたんだろう。そう首をかしげつつも、お兄ちゃんに聞く。
「今から、図書館に行くんだけど、右と左の服、どっちがいいと思う?」
「朱里ならどっちもかわいいと思うけど、図書館なら左かな」
「わかった! 左にする。ありがとう、お兄ちゃん」
じゃあ、と、扉を閉めようとするとお兄ちゃんは、にこにこと笑った。
「駅まで送っていくよ」
「だっ、大丈夫!」
亮くんとは、駅で待ち合わせだ。流石に、彼氏との初デートに、何か特殊な事情もないのに、保護者という名のお兄ちゃんに送ってもらうのは、気が引ける。
「朱里が心配なんだ。一緒に行くのは、藤堂さんでしょ? 藤堂さんなら──」
「違うよ、彩月ちゃんじゃないから!」
「だったら、高校でできた新しいお友だちかな」
「──友達じゃなくて、彼氏なの!」
いっ、言っちゃった! お兄ちゃんも、ぽかん、とした顔をして固まっている。でも、もう、言っちゃったものは仕方がない。
「と、とにかく、一人で大丈夫! だから! いってきます!!」
お兄ちゃんが固まっている間に、急いで着替えて、家を出た。よし、今日は、勉強頑張るぞ。
「来週から、中間テストを行う。各自、準備をしておくようにな」
そう、中間テストだ。
「どう、しよう」
「どうしたの? 元気ないね」
「亮くん!」
ため息をつきながら、教室の外を見つめていると、亮くんに話しかけられた。亮くんと教室で話すのも、彼氏だと思うとなんだか、少しだけこそばゆい。
「もうすぐ、中間テストでしょう。それが、憂鬱で」
「小鳥遊さん勉強苦手?」
「……うん」
私の頭のレベルは中の中といったところ。それが、お兄ちゃんと同じ学校に通いたいからと、この進学校としてそれなりに名をはせている高校に来てしまったから、大変だ。毎日予習復習をしているものの、正直いって追い付いていなかった。
でも、補佐とはいえ、生徒会に入ったのに、テストで赤点なんかとったら、格好悪いし。
何とかして、せめて赤点を回避したいのだと、言うと、亮くんは首をかしげた。
「だったら、俺が教えようか?」
「え?」
亮くんは、少しだけ恥ずかしそうに言った。
「こう見えて、勉強は嫌いじゃないんだ」
「いーじゃん! 朱里、田中に教えてもらいなよ」
「彩月ちゃん!」
突然話に入ってきた彩月ちゃんに驚いていると、彩月ちゃんはもっと驚くようなことを言った。
「だって、田中、入試も首席で合格だったし」
「……えっ」
「ほら、朱里、覚えてないの? 新入生挨拶、田中がやったの」
お兄ちゃんが機嫌が悪そうなことばかり考えていて、全く意識してなかった。そうだったんだ。
「亮くん、すごいね」
野球部だから、運動もできるし、頭もいい。運動が苦手で、頭もそんなに良くない私とは大違いだ。
「……すごくないよ。それで、今週の日曜日なんだけど、小鳥遊さん空いてる?」
「うん」
「じゃあ、図書館に行こう。確か、学習スペースっていって、小声なら話してもいい場所があったから、そこで教えるよ」
「ありがとう!」
さて、日曜日の早朝。私は鏡の前で悩んでいた。
「うーん、この服は、勉強には向かないかなぁ。でも、こっちは地味すぎる?」
そう、服が決まらないのだ。目的は、勉強とはいえ、おそらく彼氏との初デート。どんな服でいけばいいのか、わからない。
なんとか、二択までしぼったものの、そこからが決まらなかった。よし、こういうときは。
隣の部屋の扉をノックする。
「お兄ちゃん、起きてる?」
すると、中からお兄ちゃんが出てきた。お兄ちゃん、朝弱かったはずなのに、最近どうしたんだろう。そう首をかしげつつも、お兄ちゃんに聞く。
「今から、図書館に行くんだけど、右と左の服、どっちがいいと思う?」
「朱里ならどっちもかわいいと思うけど、図書館なら左かな」
「わかった! 左にする。ありがとう、お兄ちゃん」
じゃあ、と、扉を閉めようとするとお兄ちゃんは、にこにこと笑った。
「駅まで送っていくよ」
「だっ、大丈夫!」
亮くんとは、駅で待ち合わせだ。流石に、彼氏との初デートに、何か特殊な事情もないのに、保護者という名のお兄ちゃんに送ってもらうのは、気が引ける。
「朱里が心配なんだ。一緒に行くのは、藤堂さんでしょ? 藤堂さんなら──」
「違うよ、彩月ちゃんじゃないから!」
「だったら、高校でできた新しいお友だちかな」
「──友達じゃなくて、彼氏なの!」
いっ、言っちゃった! お兄ちゃんも、ぽかん、とした顔をして固まっている。でも、もう、言っちゃったものは仕方がない。
「と、とにかく、一人で大丈夫! だから! いってきます!!」
お兄ちゃんが固まっている間に、急いで着替えて、家を出た。よし、今日は、勉強頑張るぞ。
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