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三章 私という存在
10話
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アリーの提案に頷く。
……でも。
食材などの準備はせずに来てしまった。
そもそも、食べるものはあるのかしら。
「ロイゼ様、貯蔵庫に食材がありました!」
「ありがとう、カイゼル」
本来なら、ここに住むのはノクト様だった。
食材があるということは、引っ越す準備もかなり進んでいたはずだ。
……それなのに。
私のために、この場所を提供してくれたのね。
「アリー、元々ある食材や消耗品を使ったときに、帳簿をつけて欲しいわ」
これだけ広い家だ。
家賃がどれだけになるかは、後々相場を調べるとしても。
消耗品などの帳簿をつけて、この家を出て行く際に、お金か同等以上のものを渡せるようにしておきたい。
「かしこまりました!」
にっこり頷いてくれたアリーは、腕まくりをした。
「私は料理も得意なので、昼食はお任せください!!」
「ありがとう」
厨房へ消えたアリーを見送り、そういえば、と思う。
お金のことで思い出したけれど、私のお給料はどうなっているのだろうか。
魔術師団長という職はかなりいいお金が入ってくるはず、と知識が囁く。
以前の私が豪胆な性格で、もらったお金をその日中に使ってしまった……という可能性もゼロではない。
でも、一般的には、ある程度、儲蓄するものではないだろうか。
「カイゼル」
「はい」
「昼食が終わったら、銀行について来てくれる?」
どれほど儲蓄があるかは、記憶にない。
でも、今後生活して行く上で、自分がどれほどお金を持っているか、知ることは大切だ。
「かしこまりました」
カイゼルは頷くと、でも……と続けた。
「住は、ディバリー様が。衣食は陛下より保証されると伺っております」
「……え」
必要最低限の生活を保障して欲しいーーそうは言ったけれども、その具体的な内容は、住を除いて決まっていないはずだ。
でも、その言い振りだと……。
「詳しい内容も決まっているの?」
「はい。食は、一週間に一度以上、食材が届く手筈となっています」
……そうなのね。
進められていた話に驚きつつ、頷く。
「では、運ばれる食材と今ある食材で帳簿を分ける必要があるわね」
気をつけておこう。
「……ロイゼ様は」
カイゼルが青い瞳を瞬かせた。
「真面目ですね」
以前の私がどうかは知らないが、今の私が真面目かと言われるとーー。
「……どうかしら」
「記憶がなくて不安なのに、周囲に与える影響まで考えていらっしゃる」
「……それは買い被りすぎだと思う」
単純に必要そうなことを計算しているだけ。
「いいえ、なかなかできることではありません」
カイゼルは首を振ると、微笑んだ。
「そのような方をお守りできて光栄です……っと、ベルが鳴りましたね」
先ほど言っていた食料の件だろうか。
「見てくるので少々お待ちください」
そういって、玄関に向かった後。
……?
カイゼル、なかなか帰ってこないな。
不審に思った私が玄関に行くとーーたくさんの食材や衣服が運び込まれていた。
※※
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……でも。
食材などの準備はせずに来てしまった。
そもそも、食べるものはあるのかしら。
「ロイゼ様、貯蔵庫に食材がありました!」
「ありがとう、カイゼル」
本来なら、ここに住むのはノクト様だった。
食材があるということは、引っ越す準備もかなり進んでいたはずだ。
……それなのに。
私のために、この場所を提供してくれたのね。
「アリー、元々ある食材や消耗品を使ったときに、帳簿をつけて欲しいわ」
これだけ広い家だ。
家賃がどれだけになるかは、後々相場を調べるとしても。
消耗品などの帳簿をつけて、この家を出て行く際に、お金か同等以上のものを渡せるようにしておきたい。
「かしこまりました!」
にっこり頷いてくれたアリーは、腕まくりをした。
「私は料理も得意なので、昼食はお任せください!!」
「ありがとう」
厨房へ消えたアリーを見送り、そういえば、と思う。
お金のことで思い出したけれど、私のお給料はどうなっているのだろうか。
魔術師団長という職はかなりいいお金が入ってくるはず、と知識が囁く。
以前の私が豪胆な性格で、もらったお金をその日中に使ってしまった……という可能性もゼロではない。
でも、一般的には、ある程度、儲蓄するものではないだろうか。
「カイゼル」
「はい」
「昼食が終わったら、銀行について来てくれる?」
どれほど儲蓄があるかは、記憶にない。
でも、今後生活して行く上で、自分がどれほどお金を持っているか、知ることは大切だ。
「かしこまりました」
カイゼルは頷くと、でも……と続けた。
「住は、ディバリー様が。衣食は陛下より保証されると伺っております」
「……え」
必要最低限の生活を保障して欲しいーーそうは言ったけれども、その具体的な内容は、住を除いて決まっていないはずだ。
でも、その言い振りだと……。
「詳しい内容も決まっているの?」
「はい。食は、一週間に一度以上、食材が届く手筈となっています」
……そうなのね。
進められていた話に驚きつつ、頷く。
「では、運ばれる食材と今ある食材で帳簿を分ける必要があるわね」
気をつけておこう。
「……ロイゼ様は」
カイゼルが青い瞳を瞬かせた。
「真面目ですね」
以前の私がどうかは知らないが、今の私が真面目かと言われるとーー。
「……どうかしら」
「記憶がなくて不安なのに、周囲に与える影響まで考えていらっしゃる」
「……それは買い被りすぎだと思う」
単純に必要そうなことを計算しているだけ。
「いいえ、なかなかできることではありません」
カイゼルは首を振ると、微笑んだ。
「そのような方をお守りできて光栄です……っと、ベルが鳴りましたね」
先ほど言っていた食料の件だろうか。
「見てくるので少々お待ちください」
そういって、玄関に向かった後。
……?
カイゼル、なかなか帰ってこないな。
不審に思った私が玄関に行くとーーたくさんの食材や衣服が運び込まれていた。
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