特別になれなかった私が、最愛のあなたの寵妃になるまで

夕立悠理

文字の大きさ
6 / 19

改めて

しおりを挟む
玉座の間から退出した私は、アンドリューに手を引かれるようにして、城内を進んでいた。

 そして、ある扉の前でアンドリューが立ち止まる。その扉の前には衛兵もいない。アンドリューはその扉の前に立つと、手をかざした。

 すると、扉が音もなく開く。
「!?」

 私が驚いていると、得意気にアンドリューは笑った。
 「俺は、〈魔法〉が使えるんだ」
〈魔法〉。私や巫女のような力とは、違う隣国にかつて存在していた力のことだ。けれど、その力を使えるものは絶滅してしまったはずだった。

 驚くまま、アンドリューに手を引かれて室内にはいる。

 室内は品のいい調度品で整えられていた。おそらく、ここがアンドリューの自室なのだろう。

 「それで、兄上の前で言ったことについてなんだが、」
アンドリューに、ソファに座るように促されて、座ると、アンドリューは話し出した。

 「!」
そうだった。魔法のことですっかり忘れていたけれど、アンドリューは隣国イーデンの王弟であり、しかも私と結婚すると王の前で宣言したのだ。

 「俺の身分も明かさぬまま、連れてきてすまない」
「い、いえ! 顔を上げてください! 私の命は貴方のものなのですから」
そうだ。私に意味を見いだしてくれるなら、アンドリューに命を捧げると決めたのだ。アンドリューに謝られる理由はない。

 「そう、だったな」
アンドリューはなぜか、少しだけ寂しそうな顔をしたあと、表情を切り替えた。

 「けれど、改めて問おう。──貴方の人生の残りすべてを、俺にくれないか?」
金の瞳はどこまでも真っ直ぐに、私を見つめていた。

 アンドリューの言っていることは、冗談ではない。本気で、私を妻に迎えたいと思っている。理由は、なぜかわからないけれど。

 もう一度、私の意思を確認してくれたことを嬉しく思う。王弟の妻だなんて、なんの身分もない私に勤まるかは甚だ疑問だけれども。アンドリューがそう望んでくれるのなら、私の答えは決まっていた。

 「──はい」

 私が頷くと、アンドリューは嬉しそうに笑った。
「ありがとう。貴女の生活のすべてを俺は保障する。俺は、貴女が──」

 アンドリューが何かをいいかけたとき、扉があわただしくノックされた。

 アンドリューが眉をひそめて、パチンと指をならすと、扉が開いた。入ってきたのは、かっちりと制服を着こなした男性だった。

 「アンドリュー様、陛下から伺いましたよ! なんの後ろ楯もない少女と結婚するという世迷いごとをおっしゃったと!」
「ジェフ、世迷い事じゃない、事実だ」
ため息をつきながら、アンドリューは頷いた。

 「お忘れですか! 来週には、サマリー嬢との見合いの席が──いえ、来週だけではありません。一目でいいから、貴方に会いたいと見合いの申し込みがたえないというのに!」

 アンドリューはジェフを鬱陶しそうに見たあと、私の手をとり、立ち上がらせた。

 「全部、断ってくれ。俺は、彼女、せ、せり、セリーヌ以外と結婚するつもりはない」

 
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

双子の姉に聴覚を奪われました。

浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』 双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。 さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。 三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

この恋を忘れたとしても

喜楽直人
恋愛
卒業式の前日。寮の部屋を片付けていた私は、作り付けの机の引き出しの奥に見覚えのない小箱を見つける。 ベルベットのその小箱の中には綺麗な紅玉石のペンダントが入っていた。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

処理中です...