特別になれなかった私が、最愛のあなたの寵妃になるまで

夕立悠理

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面倒ごと

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 「ほう……、どこのご令嬢だ」
頬杖をつきながら、王はアンドリューに尋ねる。

 「どこでもよろしいじゃありませんか。口を開けば、やれ身を固めろ、やれ結婚はいいぞ、と俺に再三結婚しろとおっしゃったのは、兄上でしょう。重要なのは、どこの誰かではなく、俺が彼女を妻にしたい、と望んだこと」

 アンドリューが自信満々にそういうと、王はため息をつきながら、私たちを見つめた。

 「それで、お前たちは愛しあっているのか? まさか、愚弟に無理矢理つれてこられたのでは、あるまいな」
「まさか。俺たちは愛しあっていますよ」

 実際は連れてこられたという点では、その通りなのだけれども、アンドリューに言われた通り、頷く。

 「それとも、恋愛結婚をされた兄上が、愛する俺たちを引き裂くおつもりですか?」
 すると、王は再びため息をついて、私たちを追い払うように手を振った。

 「もういい。わかった、結婚を認めよう」
「ありがとうございます、兄上」

 ■ □ ■

 玉座の間から退出する、二人を見届けて、私は深く息をはく。
「あれほど、結婚はしないといっていた愚弟が、急に結婚したいとぬかすからには、どんな娘かと思ったが……」

 まさか、隣国の巫女候補だった娘とは。娘の腕に、力を封じる腕輪がつけられていたことに、アンドリューは気付いているのだろうか。

 「いないだろうな」

 あれは、とにかくあの娘を囲いこみたいという目をしていた。娘の緊張して、訳がわからないといった表情から、大方、互いの素性も知らぬまま、ここにつれてきたのだろう。

 おそらく、アンドリューの一目惚れか。

 「惚れたなら、しっかりと守ってもらいたいものだ」

 愚弟とは、いえ血の繋がった弟だ。その恋が実るように応援したい、と思うのが兄心だろう。だが、ただの巫女候補と、ただの男なら関係ないが、問題は、アンドリューがただの男ではなく、また、普通の王族でもない点だ。

 「ひとまず、あの娘の力について調べさせるか」

 私は、面倒ごとにまた一つため息をついた。
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