特別になれなかった私が、最愛のあなたの寵妃になるまで

夕立悠理

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甘い麻薬

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 俺は、兄上──現国王バージルの弟として、一つ違いで生まれた。兄上のことは、昔から尊敬していたし、好きだったが、年が近い分、何かと比べられることも多かった。何でもそつなくこなす兄上と違って、俺は、器用じゃなかった。それが悔しくて、兄上に八つ当たりしたことも何度もある。我ながら、嫌な弟だったと思う。

 それでも、俺が唯一兄上に勝てるものがあった。剣だ。剣の稽古だけは、兄上に一度も負けたことがない。それだけが、唯一の誇りだった。だから、幼い頃は、騎士になりたいと思っていた。

 けれど、兄上に万一の時があったための駒として育てられた俺が、臣籍に下るなんて許されなかったから、叶わぬ夢として終わるんだが。

 兄上に、対抗心を燃やしつつ、過ごしていたある日。兄上が、俺の兄上だけでは無くなったんだ。兄上は恋に落ちたんだ。その恋の相手が、現王妃クリスタだ。兄上たちは、運命的な出会いをし、恋をして、愛を育んだ。その様子を見て、兄上は俺の兄上である以前に、男だったのかと衝撃だった。

 そして、それは、俺自身もそうなのだと。

 俺も兄上のような素敵な恋をしたいと思い、社交も頑張った……つもりなんだが、そんな相手とは巡り会えなかった。

 けれど、そのことに感謝している。代わりに貴女に出会えたのだから。





 そう言って、アンドリューは言葉をきって、微笑んだ。
「……!」
だから、アンドリューはどうして、そんな照れるような言葉をぽんぽんと言えるんだろう。そう思ったけれど、そう言うアンドリューの目尻も赤かったから、私はもっと頬が熱くなるのを感じた。

 「まぁ、ここから先は、更にやさぐれていた時期だから、貴女には話せないが……」
「……聞きたいです」
「だめだ、話せない。本当に、自分でも恥ずかしいぐらい愚かだった時期だから」


 そしてまぁ、それから色々あって、遠乗りに出ているとき、俺も恋に落ちた。最初は、狼に襲われそうになっている国民を助けようと思っただけだった。でも、貴女を一目みた瞬間、俺が妻にすべきひとは、この人だと思ったんだ。

 貴女は、俺が貴女の容姿が気に入ったと思っているみたいだが──、いや、実際に実に愛らしい姿だと思っているんだが。貴女の姿を目に写したとき、容姿だけじゃなくて、何かを感じたんだ。何か、が俺自身も説明がつかないんだが。

 そして、性格も可愛らしいひとだということを知って、もっと愛らしいひとだと思っている現在に至る、というわけだ。

 「あ、愛らしいって……!」
「俺は、愛しいひとができたら、言葉を惜しまないと決めていたんだ。だから、慣れてくれ」

 アンドリューの過去を聞きたかったはずなのに、愛を囁かれた時間が同じくらい多かったのは、気のせいじゃない。アンドリューの言葉は、どこまでも甘くて、麻薬みたいだ。いつか、その甘さに慣れて、その言葉がないと満足できなくなってしまいそう。

 ──結局、その後も甘い言葉ばかりで、肝心のアンドリューの少年期の話を聞き逃してしまった。
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