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不穏な空気
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今日は、この国──イーデンの教養の授業だ。私の祖国であるサンサカとは、異なることも多いため、とても面白い。
「──などと、いう歴史を我が国は歩んできました。以前は、魔法協会が力を持っていましたが、魔法が使える方がほぼいらっしゃらなくなった今、実権を握られているのは、現国王バージル陛下になります」
「魔法協会とは、サンサカの神殿のようなものでしょうか?」
私が質問すると、教師は大きく頷いた。
「確かに、サンサカの神殿と似たようなものですね。サンサカの神殿の頂点に選ばれた者は、巫女と呼ばれますが、魔法協会では、最も優れた魔法を扱えるものを、魔術師と呼び、魔法協会を束ねました」
そこではた、と思い出す。確か、アンドリューは魔法が使えた。昨日聞いた過去の話では、さっぱり魔法の話がでなかったけれど、いつ使えるようになったんだろう。それに、現在弱体化した魔法協会に、王弟兼魔術師として担がれるようなことはなかったんだろうか。
私の疑問が顔に出ていたのか、教師は頷いた。
「そうですね、王弟殿下が魔法が使えるとわかったときには、魔法協会が何度も誘拐を企みました。けれど、計画は杜撰なもので、どれも失敗に終わりましたが」
ほっと息つく。今現在のアンドリューが無事であることは知っているけれど、過去のアンドリューが誘拐されなくてよかった。
でも、どうして、話してくれなかったんだろう。
アンドリューは、自身の少年期を『愚か』だったと評したからだろうか。どんなアンドリューでも、私は知りたいんだけどな。
そう思いながら、再び、授業に耳を傾けた。
■ □ ■
「なんですって!? セリーヌがまだ生きいると? 巫女殿、それは真ですか」
「……ええ、夢で見ました」
私が頷くと、神官たちはあわてふためいた。
「隣国イーデンとの森は、死亡率が高いはず。力も封じたのにどうやって……」
「どうやら、隣国の王弟アンドリューに助けられたようです」
更に神官たちは、顔を真っ青にした。
「王弟アンドリューといえば、滅びたはずの魔法が使えたはず。万一、腕輪が外されるようなことがあれば、大きな問題ですぞ」
「いいえ、腕輪は外されていませんでした。おそらく、外す力がないのでしょう」
私の夢見の力は、会話まで聞き取れる力はない。だから、憶測になるけれど、そう言うと、神官たちはようやく安堵した顔になった。
──でも、万一王弟アンドリューが、外すようなことがあったら?
セリーヌ自身、自分の力を正しく認識していない。だから、きっと大丈夫。もうすぐ行われる隣国との、戦争で、我が国が負けることはない。
一抹の不安を、振り切るように、私は、神に祈りを捧げた。
「──などと、いう歴史を我が国は歩んできました。以前は、魔法協会が力を持っていましたが、魔法が使える方がほぼいらっしゃらなくなった今、実権を握られているのは、現国王バージル陛下になります」
「魔法協会とは、サンサカの神殿のようなものでしょうか?」
私が質問すると、教師は大きく頷いた。
「確かに、サンサカの神殿と似たようなものですね。サンサカの神殿の頂点に選ばれた者は、巫女と呼ばれますが、魔法協会では、最も優れた魔法を扱えるものを、魔術師と呼び、魔法協会を束ねました」
そこではた、と思い出す。確か、アンドリューは魔法が使えた。昨日聞いた過去の話では、さっぱり魔法の話がでなかったけれど、いつ使えるようになったんだろう。それに、現在弱体化した魔法協会に、王弟兼魔術師として担がれるようなことはなかったんだろうか。
私の疑問が顔に出ていたのか、教師は頷いた。
「そうですね、王弟殿下が魔法が使えるとわかったときには、魔法協会が何度も誘拐を企みました。けれど、計画は杜撰なもので、どれも失敗に終わりましたが」
ほっと息つく。今現在のアンドリューが無事であることは知っているけれど、過去のアンドリューが誘拐されなくてよかった。
でも、どうして、話してくれなかったんだろう。
アンドリューは、自身の少年期を『愚か』だったと評したからだろうか。どんなアンドリューでも、私は知りたいんだけどな。
そう思いながら、再び、授業に耳を傾けた。
■ □ ■
「なんですって!? セリーヌがまだ生きいると? 巫女殿、それは真ですか」
「……ええ、夢で見ました」
私が頷くと、神官たちはあわてふためいた。
「隣国イーデンとの森は、死亡率が高いはず。力も封じたのにどうやって……」
「どうやら、隣国の王弟アンドリューに助けられたようです」
更に神官たちは、顔を真っ青にした。
「王弟アンドリューといえば、滅びたはずの魔法が使えたはず。万一、腕輪が外されるようなことがあれば、大きな問題ですぞ」
「いいえ、腕輪は外されていませんでした。おそらく、外す力がないのでしょう」
私の夢見の力は、会話まで聞き取れる力はない。だから、憶測になるけれど、そう言うと、神官たちはようやく安堵した顔になった。
──でも、万一王弟アンドリューが、外すようなことがあったら?
セリーヌ自身、自分の力を正しく認識していない。だから、きっと大丈夫。もうすぐ行われる隣国との、戦争で、我が国が負けることはない。
一抹の不安を、振り切るように、私は、神に祈りを捧げた。
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