メイヴィス・アーノルには記憶がない。

夕立悠理

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そのさん

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私のことを知っているみたいだけれど、私は彼が誰なのか知らない。無反応な私をどう思ったのか、彼は眉を潜めた。
「まさか、この俺を忘れたとは言うまい」
「ええ。そのまさかです。あなたは誰ですか?」
「! とぼけるつもりか、メイヴィス・アーノル!」
いえ、とぼけているつもりは毛頭ない。本当に、覚えていないのだ。私が春休暇中に頭をぶつけて記憶喪失になったことを話すと、彼は眉をつり上げた。

 「まぁ、貴様にとっては忘れたい過去だろうな。だが、俺は忘れんぞ」
いや、だから本当に記憶がないんだってば! そう主張したけれど、彼は信じられないと鼻をならした。らちが明かない。まぁ、どうせ彼は私と同じ一年生というわけではないでしょう。少なくとも二年生か三年生だろうし。もう関わることはないだろう。そう思って踵をかえそうとすると、声をかけられた。

 「生徒会の書記という座は留年したにも関わらず、そのままだそうだ。良かったな」
生徒会? そういえば、お父様が生徒会がどうとか言っていたわね。まぁ今までの私の行動を予想すると、権力をかさになったのだろう。

 となると。もしかして。もしかしなくても。
「あなたも生徒会の役員ですか?」
「あくまでしらを切るつもりか。いいだろう、お前がそのつもりならば、のってやる。俺は生徒会の副会長、ライネス・ミュージだ」
ミュージ。確か公爵家の家名よね。だから、これだけ自信に満ちあふれた物言いなのかもしれない。

 「そうですか。ありがとうございます。ミュージ様」
今度こそ、ミュージに別れを告げて、屋上をあとにした。
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みんなの感想(1件)

に
2020.04.17

続きが気になります〜!!

他の作品も忙しいと思いますが、更新してくれるとありがたいです。

2020.04.17 夕立悠理

お読みくださりありがとうございます。更新が滞っていて申し訳ないです。続きがいつになるかはわかりませんが、お待ちいただけましたら、幸いです。

解除

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