エフィーシアの特に何の役にも立たない前世。

夕立悠理

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思い出した

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 それは、私が五歳の誕生日を迎えた日、だったと思う。私が所謂前世の記憶とやらを思い出したのは。

 私の前世は、聖女だった。日本で女子中学生だった私は、この国──ユートリアに召喚され、聖女となったのだ。

 思い出した当初は、混乱した。だって、私はまだ五歳で。自分が一度死んだなんて、信じられなかったから。でも、三日三晩寝込んで、ようやく受け入れられた。絵梨ことエフィーの生を。

 そして、今の私の名前は、エフィーシアという。

 名前が前世と似ているのは偶然じゃない。何の因果か前世と同じ、黒髪黒目で生まれた私に、両親が伝説の聖女に肖って名付けたのだ。

 そう、家族。今世の私には、家族がいる。そして、家族仲も悪くない。そのことに、どれだけ救われただろう。

 家族のお陰で、前世は前世、今世は今世、でも、家族は大切にして生きようと決めることができた。
 
 そんな、ある日のこと。

 お父様から、呼び出された。何だろう、と思いながら、お父様の執務室へ向かう。
執務室へ入ると、お父様はとても嬉しそうな顔をしていた。

 「お父様?」
「エフィーシア、お前の婚約が決まった! 今から顔合わせだ!」

 ■ □ ■

 私は、気づけば馬車に乗せられていた。

 私の婚約者は誰なのか尋ねたが、お父様もお母様も、到着するまで内緒だと言って教えてくれなかった。でも、お父様があんなに喜んでいたのだ。悪い縁談ではないだろう。それに、お父様とお母様だって、政略結婚だけど、今もとても仲が良い。私も、そんな関係が築けたらいいな。

 そんなことを考えていると、馬車は止まった。

 馬車からでて、唖然とする。

 「お城……?」

 つまり、私の婚約者は、王族ということ──?

 「驚くのは、これからよ、エフィーシア」
そう言ったお母様とお父様の後を着いていくと、王城のある部屋に通された。

 部屋には、陛下と王妃様がいらっしゃったが、私の婚約者であろう人は見当たらない。

 どうしたのだろう?

 そう思って、首をかしげていると、息を切らせながら、少年が部屋にはいってきた。

「君が、エフィーシアだね。初めまして。僕は、セドリオ。これから、よろしくね。顔合わせに遅れてしまって、ごめん。これ、君に渡そうと思って──」

 「……え?」
セドリオは、その後も微笑みながら、何かいっていたが、全く頭に入ってこなかった。

 セドリオという名前が、この国の王太子の名前だからじゃない。

 なぜなら。

 夕焼け色の瞳も。緩くカールした綺麗な金髪も。

 忘れもしない、セドリックを幼くした姿、そのものだったからだ。
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