エフィーシアの特に何の役にも立たない前世。

夕立悠理

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対面後

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混乱する私をよそに、セドリオは、不思議そうに、けれど、確かに笑った。

 「……!!!!」

 きらきらとした笑みは、私が前世で一度も彼から向けられることのなかった、笑みだ。

 元より、整っている顔が更に、美しさを増して煌めいて見える。その美しさといったら──

 しかし、その顔は前世で私を振ったセドリックにそっくりである。彼を見ていると、心臓がずぎずきと痛み──


 あ、無理だ。耐えられない。


 ──押し寄せる綺麗なものに対する憧憬と悲しみに耐えられなかった私は、意識を失った。


 ■ □ ■


 王太子との婚約に緊張して、倒れたことになっている私はこれまた三日三晩寝込んだ。そして、魘されながら、出した結論はこうだ。

 彼と婚約なんか、できるはずもない。

 セドリオとの婚約は、お父様がとても頑張ったからこぎ着けたのだろう。けれど、私には無理だ。王太子の婚約者だなんて、荷が勝ちすぎる、とかなんとか、様々な理由をつけて、断ろう。

 何かと私に甘いお父様だ。泣いてすがって、懇願すれば、なんとかなるかもしれない。

 「無理だね」
「……えっ」

 私の大泣きの末の懇願にも関わらず、お父様はきっぱりと言い切った。
「もう、王家ともう正式な書状は交わしてある」

 そ、そんなぁ。

 「でも、私の可愛いエフィーシアが王太子の婚約者として務まらないはずがないだろう?」

 無理です、お父様! というか、それは単なる親バカです!

 泣き崩れる私の肩をそっと叩くと、お父様は微笑んだ。
「それにね、誰だって最初は自信がないものだ。自信は、これから様々なことを学んでお前自身に身に付けていけばいい」
何だか良いことをいっている気がするけれど、全く頭に入ってこない。

 そして、そんな私に追い討ちをかけるように、お父様が手紙を差し出した。

 「読んでごらん、セドリオ殿下からの手紙だ」

 ■ □ ■

 涙で目を滲ませながら読んだ手紙は、季節の挨拶から始まり、顔合わせの時に、倒れた私を真摯に心配する内容だった。

 いい人だ。個人的に振られた相手に顔がそっくりだから、なんて、理由で断ろうとしていたなんて、自分の小ささにまた涙がでそうだ。字だってとても綺麗で──

 「……え?」

 食い入るように、手紙を見つめる。

 少しクセのある角張ったでも、綺麗な字は。


 「セドリック……?」

 彼のものとそっくりだった。
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