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今後の方針

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どくどくと、心臓が脈打つ。

 生まれ変わったのは、私だけだと思っていた。でも、セドリックだって、もう死んでいる。生まれ変わっていても可笑しくないのだ。

 けれど。

 顔合わせを思い出す。私の容姿は、セドリオのようにセドリックと全く同じというわけではないが、どことなく、絵梨だったころに似ている。でも、セドリオは、私を見たとき、何の反応も示さなかった。

 そこにあったのは、友好にやっていこうという優しい笑みだけだ。

 ──もし、セドリオがセドリックだったとして。
「セドリオには、記憶がない……?」

 普通は、前世の記憶なんてないのが当たり前だ。その可能性は、十分考えられるような気がした。

 だったら。もう、一度、初めましてからやり直せるなら、今度はセドリックに好かれることはできるだろうか。

 一瞬だけ、過った考えに頭を振る。無理だ。あのとき、呟かれた

 「どうして、一か月もエフィーの恋人でいなければならない! 私は──」

という言葉は、本当に忌々しげだった。私の何が原因であそこまで嫌われてしまったのかわからない。けれど、生まれ変わっても私の本質は変わらない。

 不用意に近づいても、また、何かしらの地雷を踏んで、セドリオにも嫌われてしまうに違いない。

 だったら、セドリオとは、必要以上に深く関わらず、もし、セドリオに好きな人ができたら、彼を自由にして笑顔で祝福できるようにしよう。

 よし、今後の方針は決まった。後は、実行するだけだ。
「王城に、行こう」
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