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次に目を開けたとき、私はたくさんの花に囲まれて横たわっていた。
「……?」
もしかして、ここが異界なの? もっと、恐ろしい場所だと思ってた。花のかぐわしい香りを吸い込みながら体を起こすと、はらはらと薄桃色の花弁が空から降ってきた。
「……きれい」
その光景の美しさに思わず息を飲む。すると、低い声がした。何度も頭のなかで聞いた声だ。
「我が花嫁」
腰までのびた、真っ黒な髪。整った顔立ちに髪よりも深い黒の瞳。
私のいた世界に黒髪は存在しない。だから、この人が。
「……異界の、神」
──魔王相手に撤退したあと、私は、願った。魔王を滅ぼすために神から与えられたものよりももっと強い力が欲しいと。そのとき、頭のなかで声が聞こえた。
我と契約する気はないか、と。
強い力と引き換えに要求されたのは、この身ひとつ。それだけで、皆が笑顔になれるなら、ためらいは全くなかった──といえば嘘になる。私は、エイダン殿下が好きだったから。
でも、この想いが報われることはない。だったら、エイダン殿下のすまう世界を救うことができたという事実を抱いて、死にたかった。花嫁になるというのは建前で、てっきり異界の神に殺されるものだと思っていたけれど。
神は未だに私を見つめているだけだ。
「私を殺さないのですか?」
「殺さない。言っただろう、お前は我の花嫁とすると」
そういって、白くて長い指が私の髪に柔らかく触れた。
「ですが、私は……」
「みなまで言わずともよい。お前が恋しく想う者がいることは知っている。けれど、ひとの心は移ろいゆくもの。お前の身が神に変わるそのときまでに、我に焦がれるようになる」
私の体が、神に変わる?
「その身では、我と悠久の時を過ごすには脆すぎる。この世で、そう、お前の世界でいう一年を過ごすと神になる。婚姻の儀は、それから行おう」
「……?」
もしかして、ここが異界なの? もっと、恐ろしい場所だと思ってた。花のかぐわしい香りを吸い込みながら体を起こすと、はらはらと薄桃色の花弁が空から降ってきた。
「……きれい」
その光景の美しさに思わず息を飲む。すると、低い声がした。何度も頭のなかで聞いた声だ。
「我が花嫁」
腰までのびた、真っ黒な髪。整った顔立ちに髪よりも深い黒の瞳。
私のいた世界に黒髪は存在しない。だから、この人が。
「……異界の、神」
──魔王相手に撤退したあと、私は、願った。魔王を滅ぼすために神から与えられたものよりももっと強い力が欲しいと。そのとき、頭のなかで声が聞こえた。
我と契約する気はないか、と。
強い力と引き換えに要求されたのは、この身ひとつ。それだけで、皆が笑顔になれるなら、ためらいは全くなかった──といえば嘘になる。私は、エイダン殿下が好きだったから。
でも、この想いが報われることはない。だったら、エイダン殿下のすまう世界を救うことができたという事実を抱いて、死にたかった。花嫁になるというのは建前で、てっきり異界の神に殺されるものだと思っていたけれど。
神は未だに私を見つめているだけだ。
「私を殺さないのですか?」
「殺さない。言っただろう、お前は我の花嫁とすると」
そういって、白くて長い指が私の髪に柔らかく触れた。
「ですが、私は……」
「みなまで言わずともよい。お前が恋しく想う者がいることは知っている。けれど、ひとの心は移ろいゆくもの。お前の身が神に変わるそのときまでに、我に焦がれるようになる」
私の体が、神に変わる?
「その身では、我と悠久の時を過ごすには脆すぎる。この世で、そう、お前の世界でいう一年を過ごすと神になる。婚姻の儀は、それから行おう」
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