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中学生編
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「今日は、お好み焼きを作ります」
今日の部活は、ご飯系の日だった。お好み焼きは私も大好きなのでとても嬉しい。くじ引きの結果、今回も、更ちゃんとは班がわかれてしまった。今日もお好み焼きは大変おいしくできたが、更ちゃんは、私の前に完成したお好み焼きを置いた後、さっさっと片づけを始めてしまった。
とにかく私が避けられていることは、明白で、部活の先輩方からも心配されている。私が更ちゃんに何をしてしまったのかわからない。はっ! もしかして、私がテストで10位を取ったからライバル視されて……!? なんてことも考えたが、残念ながら私が避けられているのは、テストよりもずっと前からである。もしかしたら、先輩方のように私に完成したご飯やお菓子をあげたくないのに、先輩方が私に下さるから、それに習って私にくれているだけで、本当はものすごく嫌なんじゃなかろうか。私は、絶対に自分のクッキーなどを人にあげたくないし。
とにかく理由はわからないが、流石にこのままでは部活に支障をきたすので、私は期末テストの二週間前、更ちゃんを呼び出した。
更ちゃんを呼び出し、なぜ避けられているのか訳を聞くと、目に涙をためて、力いっぱい叫ばれた。
「だって、道脇さん前川くんのこと好きなんでしょう!? あんなに親しい幼馴染に勝ち目なんてあるわけないじゃない!」
「…………はい?」
そもそも前川と幼馴染ではないし、色々と誤解されている。しかし、なるほど。更ちゃんは、前川のことが好きだったのか。確かにそれなら、嫌われていたのも無理はない。私と前川は単に友達という関係性だが、外部受験の更ちゃんはそれを知らずに、もっと親しい関係に見えても仕方ないかもしれない。
話を聞くと、更ちゃんは入学式の新入生代表を務めた前川に一目ぼれをしてしまったらしい。
「誤解です。私は、前川様を恋愛的な意味では好きではありません。ただの友人です。それに他に好きな人……というか婚約者がいます」
私がそういうと、更ちゃんはとても驚いた顔をした。
「そうなの?」
そうなんです。
私は、とにかく淳お兄様の素敵なところ……、笑った時に目尻にできる皺とか、少し低い落ち着いた声とか、優しいことや、でも怒ると少し怖いことなどとにかく並べ立てて、力説した。……っていうか、納得してもらうためとはいえ、淳お兄様の素敵なところを言うのなんだか照れるな。頬が赤くなるのを感じる。
それにしても、私は、これで前川と更ちゃんに――もしくは、もっと多くの人が知っているのかもしれないが――淳お兄様のことが好きなこと(設定)を話してしまった。
現在婚約者である私が、淳お兄様のことを好きなことは全く不自然ではないが、いずれ振られることを考えると、あまり多くの人にべらべらと話さないほうがいいかもしれない。
「本当に、その人のことが好きなのね。……なんだ。私たち、同じ片思い仲間だったのね」
がしっと腕をつかまれた。……え?
そういうが早いか、気づけば、私と更ちゃんは携帯の連絡先を交換しており、新たなグループ――片恋同盟――というらしい、に招待されていた。
私の現状。
新たな友達ができた。
しかし、代わりに大きな嘘を突き通さなければならなくなった。
「……大丈夫なのかな、これ」
■ □ ■
「……はぁ」
「わざわざ近づいてきて、ため息をつくのやめてもらえますか?」
かなり冷めた返しをされたが、私の方が失礼だったので仕方ない。頭を振って気持ちを切り替える。今日は、道脇家主催のパーティの日。たった今、次期当主として出席している淳お兄様と一緒に挨拶回りを終えたばかりだった。その後、人込みをかき分けて桃の元へ行ったのだ。
私の中学校の目標その三である、家族関係をよくするため何かと家に帰る用事を作って、好感度アップを図っているが、中々桃には出会えていなかったのだ。なので、このパーティは桃と仲良くなるための大チャンス! なのである。
しかし、姉妹がする自然な会話って何だろう? 天気の話……は、固すぎるし、私の近況は、興味ないよね。
「……パーティの度に私になんてかまわないで、さっさと淳さんのとこにいけばいいのに」
「え?」
ごめん、今なんていったかよく聞こえなかった、と謝れば、別に、と返された。話題を考えていたからとはいえ、桃の言葉を聞き逃すとは不覚!その失態を取り戻すべく、積極的に話しかける。
「桃さん、最近ピアノはどうですか?」
確か、一週間後に発表会があったはずだ。よし、この話題でいこう。
「辞めました」
えっ! 辞めたの!? 来週楽しみにしてたんだけどなぁ。
「ええと、じゃあ、勉強の調子はどうです?」
「心配されるほど、酷い成績は取ってません」
「そうではなくて……。何か苦手な分野などありませんか?」
何て言ったって、淳お兄様のおかげだけど、10番が取れたからね!勉強、教えられるよ!
「別に……。特にありません」
「好きなテレビとか」
「興味がありません」
か、会話が続かない! 一体どうすればいいんだ!? 結局、終始そんな感じでパーティは終わってしまった! 折角のチャンスだったというのに、残念過ぎる。
そうだ、夏休みは、私も淳お兄様も桃もお姉様もみんな別荘にいくことになっている。
そうなれば、四六時中一緒にいられるはずだ! 今度こそ、頑張るぞ。
今日の部活は、ご飯系の日だった。お好み焼きは私も大好きなのでとても嬉しい。くじ引きの結果、今回も、更ちゃんとは班がわかれてしまった。今日もお好み焼きは大変おいしくできたが、更ちゃんは、私の前に完成したお好み焼きを置いた後、さっさっと片づけを始めてしまった。
とにかく私が避けられていることは、明白で、部活の先輩方からも心配されている。私が更ちゃんに何をしてしまったのかわからない。はっ! もしかして、私がテストで10位を取ったからライバル視されて……!? なんてことも考えたが、残念ながら私が避けられているのは、テストよりもずっと前からである。もしかしたら、先輩方のように私に完成したご飯やお菓子をあげたくないのに、先輩方が私に下さるから、それに習って私にくれているだけで、本当はものすごく嫌なんじゃなかろうか。私は、絶対に自分のクッキーなどを人にあげたくないし。
とにかく理由はわからないが、流石にこのままでは部活に支障をきたすので、私は期末テストの二週間前、更ちゃんを呼び出した。
更ちゃんを呼び出し、なぜ避けられているのか訳を聞くと、目に涙をためて、力いっぱい叫ばれた。
「だって、道脇さん前川くんのこと好きなんでしょう!? あんなに親しい幼馴染に勝ち目なんてあるわけないじゃない!」
「…………はい?」
そもそも前川と幼馴染ではないし、色々と誤解されている。しかし、なるほど。更ちゃんは、前川のことが好きだったのか。確かにそれなら、嫌われていたのも無理はない。私と前川は単に友達という関係性だが、外部受験の更ちゃんはそれを知らずに、もっと親しい関係に見えても仕方ないかもしれない。
話を聞くと、更ちゃんは入学式の新入生代表を務めた前川に一目ぼれをしてしまったらしい。
「誤解です。私は、前川様を恋愛的な意味では好きではありません。ただの友人です。それに他に好きな人……というか婚約者がいます」
私がそういうと、更ちゃんはとても驚いた顔をした。
「そうなの?」
そうなんです。
私は、とにかく淳お兄様の素敵なところ……、笑った時に目尻にできる皺とか、少し低い落ち着いた声とか、優しいことや、でも怒ると少し怖いことなどとにかく並べ立てて、力説した。……っていうか、納得してもらうためとはいえ、淳お兄様の素敵なところを言うのなんだか照れるな。頬が赤くなるのを感じる。
それにしても、私は、これで前川と更ちゃんに――もしくは、もっと多くの人が知っているのかもしれないが――淳お兄様のことが好きなこと(設定)を話してしまった。
現在婚約者である私が、淳お兄様のことを好きなことは全く不自然ではないが、いずれ振られることを考えると、あまり多くの人にべらべらと話さないほうがいいかもしれない。
「本当に、その人のことが好きなのね。……なんだ。私たち、同じ片思い仲間だったのね」
がしっと腕をつかまれた。……え?
そういうが早いか、気づけば、私と更ちゃんは携帯の連絡先を交換しており、新たなグループ――片恋同盟――というらしい、に招待されていた。
私の現状。
新たな友達ができた。
しかし、代わりに大きな嘘を突き通さなければならなくなった。
「……大丈夫なのかな、これ」
■ □ ■
「……はぁ」
「わざわざ近づいてきて、ため息をつくのやめてもらえますか?」
かなり冷めた返しをされたが、私の方が失礼だったので仕方ない。頭を振って気持ちを切り替える。今日は、道脇家主催のパーティの日。たった今、次期当主として出席している淳お兄様と一緒に挨拶回りを終えたばかりだった。その後、人込みをかき分けて桃の元へ行ったのだ。
私の中学校の目標その三である、家族関係をよくするため何かと家に帰る用事を作って、好感度アップを図っているが、中々桃には出会えていなかったのだ。なので、このパーティは桃と仲良くなるための大チャンス! なのである。
しかし、姉妹がする自然な会話って何だろう? 天気の話……は、固すぎるし、私の近況は、興味ないよね。
「……パーティの度に私になんてかまわないで、さっさと淳さんのとこにいけばいいのに」
「え?」
ごめん、今なんていったかよく聞こえなかった、と謝れば、別に、と返された。話題を考えていたからとはいえ、桃の言葉を聞き逃すとは不覚!その失態を取り戻すべく、積極的に話しかける。
「桃さん、最近ピアノはどうですか?」
確か、一週間後に発表会があったはずだ。よし、この話題でいこう。
「辞めました」
えっ! 辞めたの!? 来週楽しみにしてたんだけどなぁ。
「ええと、じゃあ、勉強の調子はどうです?」
「心配されるほど、酷い成績は取ってません」
「そうではなくて……。何か苦手な分野などありませんか?」
何て言ったって、淳お兄様のおかげだけど、10番が取れたからね!勉強、教えられるよ!
「別に……。特にありません」
「好きなテレビとか」
「興味がありません」
か、会話が続かない! 一体どうすればいいんだ!? 結局、終始そんな感じでパーティは終わってしまった! 折角のチャンスだったというのに、残念過ぎる。
そうだ、夏休みは、私も淳お兄様も桃もお姉様もみんな別荘にいくことになっている。
そうなれば、四六時中一緒にいられるはずだ! 今度こそ、頑張るぞ。
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