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高校生編
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キラキラと輝くシャンデリアが目に眩しい。
今日も、道脇家が主催するパーティが行われていた。淳お兄様と挨拶回りをした後は、自由時間だ。
――こうして、淳お兄様の婚約者として出席するのは、あと何回だろうか……?なんていう、シリアスなことはおいておいて。
淳お兄様と直接会ってしっかりと話すのは、久しぶりだ。折角だから、楽しみたい。でも、何を話せばいいんだろう。何か共通の話題は――……。
しかし、こういう時に限って他に話題が出てこない。それでもどうにかして話題を捻りださないといけない。そうしないと、困ったことに私の恋愛脳は、淳お兄様を見ると条件反射で好きだと言いそうになるのだ。
結局、最近食べて美味しかったスイーツの話をした。
淳お兄様にとっては、実にくだらない話題にも関わらず、相槌を打って笑顔で聞いてくれた。そういうところもす――ああ、だめだ。脳が沸騰しそう。
――と。ふと、淳お兄様の視線を目で追って、一気に脳が冷静になった。
「淳お兄様は、」
表向きは婚約者がいらっしゃらないお姉様は、メガネ先輩を筆頭として、多くの異性に囲まれている。
「ん?」
「……いえ、何でもないです」
淳お兄様は、嫉妬とかされないんですか? と聞きかけて、飲み込んだ。もし、しない、と言われたら二人がお互いに強く信頼しあっているということだし、もし、する、と言われたら、それは淳お兄様がそれほど強くお姉様のことを好きだということだ。あ、危ない。自分から、ダメージを負いに行くところだった。
ここはダメージを負う前に、退散したほうがいいだろう。
「淳お兄様、私、友人のところにいってきますね」
「……うん、いってらっしゃい」
丁度お嬢様方に囲まれた前川と赤田がぐったりした顔で、助けを求めるサインを出している。そろそろ救出しないと、後日どやされそうだ。
私は、そそくさと前川達の元へ向かい、救出した。
■ □ ■
前川達を救出した後、私は人込みをかき分けて桃の元へ向かった。パーティは貴重な桃と交流するチャンスである。
「……すみません、私も桃さんとお話ししたいのですが」
私がそういうと、桃を取り囲んでいた異性の人たちもさっと退いてくれた。やっぱり持つべきものは権力だね。
今日は、桃と何について話そうかな、と考えていると、桃の方から話しかけてきた。
「あんなに仲良く話していて、楓さんは、淳さんの何が不満なんです?」
「えっ?」
??? 全く不満なんてないけど。そう答えると、桃は、大きくため息をつき、小声で囁いてくる。
「だったら、何で、まだ淳さんと桜お姉様が両想いだという世迷言を信じていらっしゃるのです?」
またその話か。桃は、私が淳お兄様とお姉様を話してからずっと、その言葉が信じられないようで、話しかけると、大体その話題が返ってくるのだ。桃は、お姉様のことが大好きなので二人のことを信じたくないのだろう。でも、私は、桃にはいっていないけど、キスシーンまで見ちゃってるしな……。
「桜お姉様に敵わないという気持ちは、私にもわかります」
……え? お姉様をあれほどまでに慕っていて、自身も優秀である桃が、そんな思いをお姉様に抱いているとは思わなかった。
「そもそも、桜お姉様に敵う人何ていません」
わぁ、きっぱり。さすが、お姉様大好きだな。
「それは、それとして、楓さんは自己評価が低すぎるというか、自分を卑下しすぎるのはとても愚か――ちょっと、話聞いてますか?」
うん、うん、聞いてる、聞いてる。何だか、よくわからないけれども、桃が私を励まそうとしてくれているのは十分伝わった。おそらく私が、沈んだ顔をしていたからだろう。
「抱きしめてもいいですか?」
「いっ、いきなり何をいいだすんですか! いいわけないでしょう!」
つまり、いきなりでなければいいと。桃は、本当に嫌っている私にも優しい。
その後しばらく、桃と話をしているうちに、夜は更けていった。
今日も、道脇家が主催するパーティが行われていた。淳お兄様と挨拶回りをした後は、自由時間だ。
――こうして、淳お兄様の婚約者として出席するのは、あと何回だろうか……?なんていう、シリアスなことはおいておいて。
淳お兄様と直接会ってしっかりと話すのは、久しぶりだ。折角だから、楽しみたい。でも、何を話せばいいんだろう。何か共通の話題は――……。
しかし、こういう時に限って他に話題が出てこない。それでもどうにかして話題を捻りださないといけない。そうしないと、困ったことに私の恋愛脳は、淳お兄様を見ると条件反射で好きだと言いそうになるのだ。
結局、最近食べて美味しかったスイーツの話をした。
淳お兄様にとっては、実にくだらない話題にも関わらず、相槌を打って笑顔で聞いてくれた。そういうところもす――ああ、だめだ。脳が沸騰しそう。
――と。ふと、淳お兄様の視線を目で追って、一気に脳が冷静になった。
「淳お兄様は、」
表向きは婚約者がいらっしゃらないお姉様は、メガネ先輩を筆頭として、多くの異性に囲まれている。
「ん?」
「……いえ、何でもないです」
淳お兄様は、嫉妬とかされないんですか? と聞きかけて、飲み込んだ。もし、しない、と言われたら二人がお互いに強く信頼しあっているということだし、もし、する、と言われたら、それは淳お兄様がそれほど強くお姉様のことを好きだということだ。あ、危ない。自分から、ダメージを負いに行くところだった。
ここはダメージを負う前に、退散したほうがいいだろう。
「淳お兄様、私、友人のところにいってきますね」
「……うん、いってらっしゃい」
丁度お嬢様方に囲まれた前川と赤田がぐったりした顔で、助けを求めるサインを出している。そろそろ救出しないと、後日どやされそうだ。
私は、そそくさと前川達の元へ向かい、救出した。
■ □ ■
前川達を救出した後、私は人込みをかき分けて桃の元へ向かった。パーティは貴重な桃と交流するチャンスである。
「……すみません、私も桃さんとお話ししたいのですが」
私がそういうと、桃を取り囲んでいた異性の人たちもさっと退いてくれた。やっぱり持つべきものは権力だね。
今日は、桃と何について話そうかな、と考えていると、桃の方から話しかけてきた。
「あんなに仲良く話していて、楓さんは、淳さんの何が不満なんです?」
「えっ?」
??? 全く不満なんてないけど。そう答えると、桃は、大きくため息をつき、小声で囁いてくる。
「だったら、何で、まだ淳さんと桜お姉様が両想いだという世迷言を信じていらっしゃるのです?」
またその話か。桃は、私が淳お兄様とお姉様を話してからずっと、その言葉が信じられないようで、話しかけると、大体その話題が返ってくるのだ。桃は、お姉様のことが大好きなので二人のことを信じたくないのだろう。でも、私は、桃にはいっていないけど、キスシーンまで見ちゃってるしな……。
「桜お姉様に敵わないという気持ちは、私にもわかります」
……え? お姉様をあれほどまでに慕っていて、自身も優秀である桃が、そんな思いをお姉様に抱いているとは思わなかった。
「そもそも、桜お姉様に敵う人何ていません」
わぁ、きっぱり。さすが、お姉様大好きだな。
「それは、それとして、楓さんは自己評価が低すぎるというか、自分を卑下しすぎるのはとても愚か――ちょっと、話聞いてますか?」
うん、うん、聞いてる、聞いてる。何だか、よくわからないけれども、桃が私を励まそうとしてくれているのは十分伝わった。おそらく私が、沈んだ顔をしていたからだろう。
「抱きしめてもいいですか?」
「いっ、いきなり何をいいだすんですか! いいわけないでしょう!」
つまり、いきなりでなければいいと。桃は、本当に嫌っている私にも優しい。
その後しばらく、桃と話をしているうちに、夜は更けていった。
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