異世界召喚されたのですが職業が娼婦ってどういうことですか?

龍珠昴

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王様と契約し、私達は職業適性を受けることとなった。職業っていうのはファンタジーゲームお約束の剣士とか魔法使いとか、なんかそういうやつらしい。結構細かく分類されてるみたいなんだけど、この国はその道のエキスパートがちゃんと存在していて、技術や魔法などの継承が行われないと先人は死ねないそうだ。伝統工芸作家とか、失われし秘術を持つ人とかは……なんか大変そうだな、って現実逃避にも似た感情を覚えたのは心の中にしまっておこう。変なことを言ったらマジで死にそう。
李里さんは体がねじれ折れた死体となって石畳の上に転がっている。後で片付けておきます、という言葉に林子さんが丁重に弔ってほしいと頭を下げていたのが印象的だった。仲良かったもんね、二人共。
私達は魔法陣のある部屋から別の部屋に案内されて職業適性を受ける部屋へと案内されていた。

「棗ちゃん、大丈夫?」
「んー……あんまり。スプラッタは良くないね」
「あんたも大丈夫なの、甜禾。グロ系駄目でしょ?」
「うーん……、誰かに見えないようにされてたから今のところは大丈夫」

李里さんが死ぬ時、私の目を誰かが塞いでいてくれて、その最期を見ることがなかったから倒れずにすんでいる。多分、直接見てたら倒れてたかも。何人か吐いてたし、失神した子もいたな……。少しだけ落ち着く時間をもらったけど、それもあってないようなものだし。
職業適性を受けてなお、元の世界に戻りたいと言うなら好きにしても構わない、って言われたけど……多分命の保障はどこにもないんだろうな。王様との契約は勇者適性のある人間がこの国で戦うことでクラスメイト達の安全を保障するものみたいだし。結局のところ、その契約だってどこまで守られることやらって感じだしさ。

「甜禾の目、塞いでてくれたの、河戸だよ」
「………………え?」

河戸君が……?え、何で、と思ったところで重厚な扉が開いた。
私達がいた魔法陣のある部屋というのは召喚儀式をするお部屋らしい。部屋というには広過ぎるけどさ。職業適性を見る部屋はまた別にあるみたいで王様の先導によってそこに向かっていたのだ。
重厚な扉が開いた後、次の部屋に足を踏み入れると教会のシスターみたいな人達や教皇みたいな人が待っていた。王様を見て深深と腰を折る。教皇みたいな人の前になんか凄い彫り物のされた台座に支えられた水晶らしき透明の球体が部屋の奥にある。
私あれ、めっちゃ見たことあるんだけど……!?ファンタジーの定番じゃん!?漫画とかゲームとかでよくある、手を翳して魔法適性とか職業適性とか選ぶやつ!!不謹慎ながらもちょっとだけテンションが上がってしまったが、流石にいけないいけないと頭を振った。クラスメイトが一人死んだのにテンション上げてどうする。
確かに坂崎さんとはちょっとトラブルがあって苦手だったんだけど、死んでほしいと思っていたわけじゃない。あと一年一緒のクラスなのは憂鬱だったけども、それはそれだし。死んでくれと願っていたわけではない分、何だか居心地の悪さも感じてしまっているのが辛い。彼女と分かり合える日があったのかもしれない分、今あるのはあの時もう少し話をしていればということだけだ。

「これから貴殿達にはこの水晶に手を翳し、職業適性を見る。魔力体力魔法特性などが数値化言語化されるものであるが……やってみるのが早いだろう。誰か手本を見せてくれんか?」
「それなら私が……」
「いや、俺が行くわ。女子にばっか任せてらんねぇだろ」

杏さんが出ようとした時に三田村君が遮った。
三田村柾みたむらまさき君。男子バスケ部の花形で、甘いルックスと親しみやすい性格の為か女子の人気が高い。校則違反だけどオレンジに近い明るい茶色の髪は染めていてツーブロック、時折隠れる耳にはピアスが付けられていてそのちょっと悪めな、やんちゃしてるようなところがモテる要因となっていた。クラスでも中心人物であり、不良と名高い橘隼哉たちばなしゅんや君も彼の言うことには反対しない。喧嘩も強くて、橘君ともその縁で仲良くなったとか。私的にはカーストトップもトップで話しかけられることすら憚られるけど。そんな彼が前に出ると苺さんが流石だわ……!って感動してた。何しても格好よく映るんだろうなぁ……。

「これに手を翳せば良いのか?」
「左様。すぐにステータスが空に表示される」
「へぇ……」

面白そっと笑って三田村君は水晶に手を翳した。するとすぐに眩く水晶が光って長方形の紙のようなものが浮かび上がった。そこに色々書いてあるのは分かるんだけどサイズが小さくて読めない。だけど王様や教皇みたいな人が驚いているから凄いステータスなんじゃないかな。

「す、素晴らしい!職業適性も体力魔力知力も最高値だ……!ぜひ国直属の冒険者として戦って頂きたい……っ!」
「ほー……。よく分かんねぇけど凄いのな。ま、どうするかは後々考えることとして次いけよ。出席番号順で良いからさ」
「えっとじゃあ僕から……?」

三田村君に引っ張られるような形でクラスメイト達は順々に職業適性を受けていく。どうやら三田村君の他にも河戸君や光野さんはダントツのステータスを持っているらしい。ざくろちゃんが二つの職業に適性を持っていることが分かって、教皇さんが驚いた声をあげていた。
職業毎に詳しいことは後で説明を受けるみたい。なんかこれ職業訓練研修を思い出すなぁ……。それにしてはちょっと物騒な職業訓練になりそうだけど。

「次は新見だな」
「あ、はい」

十草君の声に私は自分の番が来たので水晶の前に歩いて行く。手を翳すように言われて私は素直に出した。パァ、と眩しいほどの光が目の前で散った後、それが文字の形をとる。日本語とは似ても似つかない形なのに、どうして読めるのか不思議だった。

『適性職業:娼婦
 魔力特性:水、拒絶
 能力:癒し、攻撃力・防御力付加』

……………………はい?
えっと?え?何それ……?娼婦って、あの、娼婦……?体を売る、アレ……?

「この者も娼婦の適性があるのか」
「いやはや、バーバラが喜びますな」
「え、ちょ、まっ、娼婦!?なんですかそれ……!?」
「後で職業代表者から説明があるから待ちなさい」

はい、次の者、という言葉に私は自分の適性職業に首を傾げることとなる。
ざくろちゃんがどうしたの?というような視線を向けてくるので私は見たままの言葉を伝えた。

「……、何か娼婦って言われたんだけど」
「私も言われたんだけどなんなのその職業」

私だけじゃないのかよっ!!
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