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第一部 高嶺の蝶

援助いじめ(R18)

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「ここってあんたの家なの?こないだの渋谷の豪邸じゃないの?」


ふかふかのソファに腰を下ろした玲奈は聞いた。ガラス張りの窓のむこうに雨にけぶるビル群と海がはるか遠くまで見渡せた。


「あそこが家だけど・・・こっちは通学用」


「ふーん・・・そう」


 なんてことない顔でそういうハヤトに、玲奈は肩をすくめた。


「ねぇ、玲奈ってよんでいい?」


「いいけど」


「俺のことは、ハヤトってよんでいいよ」


「そう・・・ところで条件だけど」


 そういいかけた玲奈を尻目に、ハヤトは浮き足立ってソファを立った。


「いいシャンパンがあるんだ、持ってくるよ」


 いらねぇよ・・・と玲奈は思った。正直、シャンパンをとくに美味しいとおもったことはない。


「乾杯しよう・・・あれ、シャンパンは嫌い?」


 ボトルとグラスを手にハヤトは首をかしげた。


「別に・・・ていうか、未成年でしょ。飲んじゃダメでしょ」


 ハヤトはははっと笑った。


「何だそれ。いまさらだよ」


 玲奈はふうとため息をついた。


「酔ったあなたにタクシーを呼んだとき、お家の人は口止め料に私と運転手に大金を渡したんだよ。それなのになんとも思わないの?」


 ハヤトはむくれた。


「なんだよ、お説教かよ。未成年なのはそっちも同じだろ。人のこと言える立場かよ」


玲奈は首をふった。


「そういう事じゃなくて。あなたには心配する人がいるんだから、危ないまねはやめたほうがいいって言いたいの」


「心配?はっ。あいつらは自分が醜聞をひっかぶるのがいやで金を出しているだけさ!」


「・・・出してくれる人がいるだけ、恵まれてる。それに気が付かないアンタはバカだよ」


 玲奈は苛立ちにまかせてそういった。


「なんだよ。それ・・・あんたに俺の何がわかるんだよぉ」


 怒るかと思ったが、ハヤトは唇を噛んでそういった。叱られた子どものような甘えた声だ。

 どんなに無茶を言っても、結局は許してもらえるとわかっている子どもの声。

 玲奈はとたんに面倒になってしまった。

 こんなわからずやの甘甘なぼっちゃんの相手をこれからしなければいけないことに。


(私はセラピストでもカウンセラーでもないんだから) 


 彼に注意などして何の意味もなかった。別に彼が酔いつぶれてアル中になったって、玲奈には関係ないのだから。


 玲奈はぐいっとシャンパンを開けて飲んだ。


「はあ。なんでもいいよ。悪かった。今のはなし。飲も飲も」


 玲奈に注がれたシャンパンを、ハヤトは嬉しそうに飲んだ。


「あはっ、そうこなくっちゃ。キャバ嬢はシャンパンが好きなんだろ?」


「別に・・・あなたは何が好きなの?」


「酒?うーん・・・チューハイかなぁ」


 その答えに玲奈は噴出しそうになった。


「なんだよ、笑うなよ」


「だってチューハイって。総理の御曹子のくせに。もっといいもの飲めばいいのに」


 ハヤトは唇を尖らせた。


「だって正直、高い酒って苦くておいしくない」


「そーだね、チューハイはジュースみたいで飲みやすいもんね」


 笑いながら言う玲奈に、ハヤトは聞いた。


「じゃあそっちは何が好きなんだよ」


「うーん、ビールかな」


「なんだよ、それなら早く言えよ」


 ハヤトは立ち上がって冷蔵庫からビールを取ってきた。


「あ…?ありがと」


 金色に輝く細長いびんをハヤトは差し出した。玲奈がそれを受け取ると、ハヤトは向かいではなく玲奈の隣にどさりと腰掛けた。


「なぁ・・・玲奈は彼氏いるの?」


「いないよ」



 玲奈は遠慮なくビールを傾けながら答えた。


 様々な酒の中で、玲奈はビールが一番好きだった。金と白い泡の、お腹がいっぱいになる幸せな液体。美味しい食事と一緒にそれで体を満たすと、心もなんとなく満たされる気がするのだ。


 キャバ嬢はみんなシャンパンや高級ウイスキーが好きという事になっているので、もちろんそんな事お店ではいえないのだが。


「本当に?」


「いないってば。いたらこんな所来ない」


「そっか・・・」


 ハヤトは上目遣いで玲奈を見上げてきた。彼はシャンパン一杯で、もう酔っているようだった。


「ねぇじゃあ俺と付き合わない?」


 玲奈は眉をひそめた。そんな事言われても困る。


「もう酔ってる?ハヤトくんはお酒弱そう」


 ハヤトがえへへと笑った。


「何わらってるの?」


「だって初めて名前よんでくれた」


 その笑顔はまるで小さな子のように素直で明け透けで、玲奈は思わず目をそらした。


(この子、無防備すぎでしょ)



 玲奈も周りの大人も、皆作り笑いばかりだ。唯一本当の顔を見せてくれる学の顔が浮かんだが、彼は玲奈に笑いかけるような関係ではない。


 なぜハヤトはなんの信頼関係もない、出会ったばかりの私にむけてこんな顔ができるんだろう。


「そんなことならいくらでも呼んであげるから」


 心の揺れを隠すため、玲奈はそっけなくそういった。


「ほんと?じゃあもっとよんで」


 その目は期待に満ち溢れていた。ソファの隣、わずか30センチほどの距離が、ハヤトはふいに遠く感じられた。


「ね、そっちにいってもいい」


「いいけど・・・」


 ハヤトはいとも素直に玲奈の体にもたれかかった。


「・・・酔ってるね。よくそんなんで、歌舞伎町で無事だったよ」


 そんな皮肉を言う玲奈の首筋に、ハヤトは唇を寄せた。


「ね・・・・おしゃべりは、もうやめて。俺を・・・見てよ」


 玲奈の肩にハヤトの手がかかった。そのままゆっくり2人はソファに沈んだ。

 玲奈の足にあたったハヤトのそれは、もう熱くなっていた。


「もうたってんじゃん・・・なんでよ」


「だってぇ・・・・ずっと、会いたかったから・・・」


 酔った舌足らずの声でハヤトは言った。


「なんで会いたかったの?私、ハヤトくんにだいぶひどい事したと思うけど」


 ハヤトはかあっと赤くなった。


「それは・・・あ」


 玲奈は膝でそこをぐいと刺激した。


「また、こういう事されたかった?」


 密着したハヤトの胸が、どくどくと脈打っているのがはっきりと感じられた。


「うん・・・・俺・・・またあんたとしたくて」


 酒のせいか、不気味なほどハヤトは素直にそう告げた。


「そう・・・・じゃ、裸にならなきゃ」


 玲奈は彼の服をすべて脱がせた。 


 彼の成長期の体は、すでに完成されている玲奈の体とはちがって、しなやかさと危うさが共存していた。

 その象牙色の肌に、夜景の光とオレンジ色の照明があたって、なんともいやらしい光景であった。


「あは、この部屋、壁一面が窓なのに裸になっちゃったね?誰かに見えるかな」


 玲奈は笑いながら外を見た。


「や、やめろよぉ・・・」


 さすがにハヤトはそう口にした。


「大丈夫、これだけ高いし誰も見えないでしょ。ね、もっと夜景を見たい」


 玲奈はソファから立ち上がってハヤトの手を引いて窓辺へ向かった。


「やだやだっていうわりに、しっかり立ってるじゃん、変態だね」


 玲奈が耳元でそうささやくと、ハヤトはよわよわしく抵抗した。


「へんたいじゃ、ない・・・れ、れいなが・・・俺に、こういうこと・・・するから」


「・・・え?」


 たしかに、ふだんさんざん気を使って尽くしている「男」という存在をこうしていじめるのは、悪い気はしない。玲奈は頭の隅でちらりと思った。


(私・・・変態なのかな?いや、まさか・・・これは単なる憂さ晴らし・・・お金も稼げるし)


 玲奈は意地悪く微笑んで聞いた。


「私のせいにするの?こんなになってるのも、前私の前でいっちゃってここから潮まで吹いたのも?」


ハヤトは言葉を詰まらせた。


「っ・・・・!」


「明らかに私のせいじゃないよね?ハヤトくんに素質があるんだよ、いじめられっこの」


 玲奈はそう言ってそっとハヤトの肩にふれた。それだけでハヤトの体はびくんとはねた。


 そのままハヤトの首筋から背中に手を滑らせた。抱きしめるような形になった玲奈は、ハヤトの耳元でささやいた。


「ねぇ・・・どうしてほしいの」


 ハヤトは潤んだ目を少し伏せた。その目じりまで真っ赤になっている。


「キス・・・してほしい」


 そのこたえに、玲奈は少し面食らった。


(ここまで来て、キス・・・って)


 別にキスくらいどうってことないが、そういわれると素直にする気はなくなる。


「キスね・・・でもハヤトくん変態だから、そうだな・・・・これに我慢できたらしてあげる」


 玲奈はハヤトのそこに手をのばした。


「んっ・・・ふ・・・っ」


 少し手で握っただけで、我慢汁が滴ってにちゃにちゃと音がした。


「わ、すごい。ちょっとさわっただけなのにもうこんななってる」


「あっ・・・だっ・・て・・・・んんっ・・・」


 窓に目をやると、暗い夜空の見えるガラスに、裸のハヤトと玲奈がはっきり映っていた。


「ねぇ見てハヤトくん、ガラスにはっきり映ってるよ、私達」


「んっ・・・やだ・・・っ」


 玲奈は片方の手でハヤトの顎をつかみ、強引に窓のほうを向かせた。


「だらしない顔のハヤトくんがよく見えるよ、あはは。こないだ撮った動画と同じだね」


「んっ・・・やめっ・・・あっ・・・」


 言葉とは裏腹に、そこはますます硬くなった。


「あはは、ほんとハヤトくんって変態だね・・・港区のみなさーん、ハヤトくんのみっともない姿、みてくださーい」


 玲奈はそう茶化して笑ったが、ハヤトは余裕がないのかはぁはぁ荒い息をしている。


「れ・・・れいな、我慢・・・い、いつまで」


「え?そうだね・・・うーん・・・あと・・・10分我慢できたらいいよ」


「そ・・・んなの、無理・・・少なく・・してっ」


「えー?しょうがないなぁ・・・じゃああと、5分ね。あの時計で」


 玲奈はテーブルに置いてあるデジタル時計に目をやった。8時45分。まだ早い夜だ。


「んっ・・・わかった・・・我慢、できたら・・・」


「キスね、はいはいわかってる」


 玲奈はそういって手を早めた。


「くっ・・・んっ・・・あっ・・・・!」


ハヤトは唇を噛んで我慢している。肩も腰も、小刻みに震えている。


「気持ちいい?いってもいいんだよ・・・?」


「や・・・やだ・・・・あっ・・・」


 その唇に、くっきりと歯のあとがついて、赤くなっている。


「あーあもったいない・・・唇かむの、やめなよ」


「やっ・・・あっ・・・」


 最早玲奈の声は届いていない。ハヤトはただ、ひたすら耐えていた。


(耐え抜くつもりだな・・・よし)


 そう頑張られると、こちらも張り合いたくなる。玲奈は両手をつかってそこを弄った。片方は前、もう片方は後ろへ。


「ひっ・・・!?・・・な、なにを・・・あっ」


 前を激しく上下させながら、足の間の繊細で柔らかな部分を玲奈の手を撫でた。


「男の子って、おちんちんとお尻の穴の間、なにもないんだよねぇ・・・当たり前だけど」


 ハヤトのそこは、薄い皮膚が張っていて、柔らかだった。


「あっ・・・なに・・・・そ、そんな、とこっ・・・」


「ほらほら、早くいっちゃいなよ・・・!」


 ハヤトは再び唇を噛んだ。


「っ・・・・・・・!」


 と、その時。約束の5分が過ぎた。ハヤトははぁはぁと荒い息をしている。玲奈は手を離した。


「すごいじゃん、ハヤトくんの、勝ち。よくできましたねぇ」


 玲奈はハヤトを抱きしめた。そして、ハヤトが何か言う前に唇に唇を重ねた。


「んっ・・・・!」


 ハヤトの両手が、玲奈の髪をかきわけ頭の後ろにまわった。お互いの舌が口の中に侵入し、口付けは深くなった。


「んっ・・・ふっ・・・れい、な・・・・っ・・・!」


ぎゅっとハヤトの手に力が入った。玲奈は太ももの辺りに何か違和感を感じた。


「あっ・・・・・」


 玲奈が思わずハヤトを見ると、彼は浅い呼吸をしながら玲奈を見た。


「ごめん・・・玲奈・・・い、いっちゃった」


 玲奈の足にかかったのは、ハヤトの精液だった。


(うわ・・・あぶな。短いスカートで来てよかった)


「ごめ・・・ごめんね玲奈、服が・・・」


 ハヤトは泣きそうな顔で玲奈に謝っている。それを見ると、なんだか自分が彼をひどくいじめているような気がして、ふいに玲奈は優しくしてやりたくなった。


「別にいいよ、ギリ、服にはかかってないし。でもティッシュ頂戴」


 玲奈は紙でそれをぬぐった。


「はい、とりあえず服、着たら?」


「うん・・・お風呂入ってくる」


「わかった」


 ところがハヤトはじっと立ち尽くしている。


「どうしたの?」


「い、一緒に・・・お風呂」


「無理」


 玲奈は即答した。メイクが落ちるし、ハヤトの前にで裸になるのはごめんだ。

 何より玲奈にとってお風呂はとてもプライベートな行為だった。一日のなかで唯一ほっとできる時間といってよい。それを他人と共有する気にはなれない。


「わかった・・・・」


 玲奈の断固とした態度を見て諦めたハヤトは、とぼとぼと一人で風呂場に向かったが、振り向いていった。


「で、でも俺が入ってる間に帰ったらダメだからな、待ってて・・・」


「はいはい、大丈夫、お風呂場までついってたげるよ」


 玲奈はハヤトの手をとってお風呂場に向かった。広々とした脱衣場に、大きな鏡、そしてその向こうのバスルームもガラス張りだった。


(ふ~ん、ここもガラス張り・・・。自分だったら、落ち着かないだろうな)


「ここで見ててあげるから、入っておいで」


 玲奈はそういった。
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