17 / 60
第一部 高嶺の蝶
いけない夏の楽しみ方
しおりを挟む
今日の放課後はハヤトに使わなくてはならない。
ああ、せっかくの休みなのに。だが、お金のためにそうすると決めたのは他ならない自分だ。
・・・それに彼をいじめるのは、それなりにストレス解消になる。
なので玲奈はぐちぐち考えるのをやめてタクシーで六本木駅に向かった。
「今タクシー乗った」
玲奈がラインすると、すぐに既読がついて返信が帰ってきた。
「わかった。下まで迎えいくから」
ふうと玲奈はため息をついた。
玲奈は窓から道路を走る車達をながめた。ふだんめったにタクシーなど使わない。だから珍しい光景だ。
(東京は本当に、人がおおいな・・・)
黒塗りのハイヤーやセダンタイプの高級車、大型車ばかりが、4車線の道路をゆうゆうと走っている。
どの車も決して飛ばしはしない。そんなことができるほど空いてはいないからだ。
江東区方面に向かうにつれ、高架線や道路に埋もれるように乱立する個人商店や戸建は姿を消し、堂々とした大きいビルに広々とした道が目に映る。
(そろそろだな)
道路わきの車寄せからタクシーを降りたら、ちょうど目の前にハヤトが立っていた。
「出迎えなんて珍しいじゃん、どうしたの」
ハヤトは楽しいいたずらを思いついた子どものような顔で言った。
「今日はプールに入ろうと思って」
「え」
いきなりそう言い出したハヤトについて、玲奈は巨大なビルの立ち並ぶ道を数分歩き巨大なショッピングモールに足を踏み入れた。
「ほら、お前水着なんて持ってないだろ」
「そうだけど、どこのプールにいくの」
「どこって上だよ」
屋上にプールか・・・金持ちは違うな、と玲奈は心の中で首を振った。
「な、な、どれがいい?」
夏もたけなわ、モールの大広場では水着がずらりとならんで買いに来る人を待っている。
「別に、なんでもいいけど・・・」
ハヤトはわかりやすく真っ赤な三角のビキニを手に取った。さくらんぼ柄だ。
「これとかどう」
「・・・・布少ない。やだ」
「じゃあこっちは」
またわかりやすい、黒のハイレグ、胸が深く開いたホルターネック。サイドはシースルーになっている。
「・・・・キメすぎてて、いや」
「じゃあどれならいいんだよ!」
むっとしたハヤトに、玲奈は適当に目に付いた水着を手に取った。上下分かれていて、上はキャミソール、下はショートパンツになっている。
「これがいい、安いし」
布が多いほうが安いとはいかがなものなのか。そう思いながらも玲奈はそれをハヤトに差し出した。
「そんなの、服と同じじゃん!だめだめ!」
「え~・・・じゃあどんなのならいいの」
「もっとかわいいか、えろいやつ」
基準がわからない、と思いながら玲奈はまた適当に白い水着を手にとった。
「じゃあこれ。」
下のパンツは少々小さいが、上はビキニタイプではなく、調節可能なバンドゥにパフスリーブがついている。これなら胸はしっかり隠れるだろう。
「わかった。それならいいや」
屋上のプールとやらは細長い空間に細長いプールがライトアップされていて、片側の一面ガラスから海とビル群が一望できた。
「どう?良い眺めだろ」
「そうだね」
玲奈は気のない返事をしてプールサイドにずらりと並んだイスに腰掛けた。合成レザーで、やわらかい。
ハヤトは腰掛けた彼女をじっと目に焼き付けた。
(似合ってる・・・・・かわいい)
細い肩と腰をフリルが彩り、手足はすらりと伸びている。ハヤトはくらっとめまいがしそうになった。
なぜ女というのは、こうもたくさんの姿を持っているのだろうか。
いつもの冷たい艶やかさはなりを潜めて、白いフリルにつつまれた彼女の華奢な肩は、触るのをためらわれるくらい、無垢な少女のものに見えた。
「・・・入れよ、一緒に泳ごう」
「私、泳げないんだよね」
「へーぇ」
ハヤトがにんまりと笑った。
「じゃあなおさら、泳ぎ教えてやるよ」
「・・・・ほんとをいうと、水はちょっと苦手」
「お前にも苦手とかあるんだ。何で?」
(・・・水泳の授業で、クラスメイトに沈められたことあるから)
とはさすがにいえない。そしてさらにほんとをいうと水だけでなく高いところろも苦手だ。理由は同じようなことで。
「だって息できないじゃん」
「は?なにそれ。冗談?」
「まさか」
怖い気持ちを振り払うように玲奈はイスから立ち上がった。
「でもそうだね、せっかく来たんだし。足くらいは入ってみる」
玲奈はプールサイドに腰かけ、足だけ差し入れた。
「・・・つめた」
「暑いからちょうどいいだろ」
「そうだね」
ザバリとハヤトが水から上がり、玲奈の隣に腰掛けた。怜奈を見るその表情は、甘えたいような拗ねたような、その中間の表情だった。
何をしてほしいかわかっている、だが玲奈からは言わない。ちらっとハヤトと目を合わせると、彼は観念してねだった。
「・・・・・キスして」
「いいよ」
玲奈は彼のあごをつかんでそっとくちびるをあわせた。
「んっ・・・ん・・・」
うすくて柔らかい唇だ。ハヤトは素直に玲奈の舌も唾液も受け入れるようになっていた。されるがままに舌をからませるうちに、ハヤトの体は熱くなった。
「あ・・・・あ・・・れ、玲奈・・・」
「なに?」
「し・・・した・・い」
「したい?何を?」
「れ、玲奈としたい」
玲奈は意地悪にふっと身体を放した。
「いやだよ。人くるかもじゃん、迷惑だよ」
「大丈夫・・・ひと、こないように・・・この時間、おさえさせた」
ああ、せっかくの休みなのに。だが、お金のためにそうすると決めたのは他ならない自分だ。
・・・それに彼をいじめるのは、それなりにストレス解消になる。
なので玲奈はぐちぐち考えるのをやめてタクシーで六本木駅に向かった。
「今タクシー乗った」
玲奈がラインすると、すぐに既読がついて返信が帰ってきた。
「わかった。下まで迎えいくから」
ふうと玲奈はため息をついた。
玲奈は窓から道路を走る車達をながめた。ふだんめったにタクシーなど使わない。だから珍しい光景だ。
(東京は本当に、人がおおいな・・・)
黒塗りのハイヤーやセダンタイプの高級車、大型車ばかりが、4車線の道路をゆうゆうと走っている。
どの車も決して飛ばしはしない。そんなことができるほど空いてはいないからだ。
江東区方面に向かうにつれ、高架線や道路に埋もれるように乱立する個人商店や戸建は姿を消し、堂々とした大きいビルに広々とした道が目に映る。
(そろそろだな)
道路わきの車寄せからタクシーを降りたら、ちょうど目の前にハヤトが立っていた。
「出迎えなんて珍しいじゃん、どうしたの」
ハヤトは楽しいいたずらを思いついた子どものような顔で言った。
「今日はプールに入ろうと思って」
「え」
いきなりそう言い出したハヤトについて、玲奈は巨大なビルの立ち並ぶ道を数分歩き巨大なショッピングモールに足を踏み入れた。
「ほら、お前水着なんて持ってないだろ」
「そうだけど、どこのプールにいくの」
「どこって上だよ」
屋上にプールか・・・金持ちは違うな、と玲奈は心の中で首を振った。
「な、な、どれがいい?」
夏もたけなわ、モールの大広場では水着がずらりとならんで買いに来る人を待っている。
「別に、なんでもいいけど・・・」
ハヤトはわかりやすく真っ赤な三角のビキニを手に取った。さくらんぼ柄だ。
「これとかどう」
「・・・・布少ない。やだ」
「じゃあこっちは」
またわかりやすい、黒のハイレグ、胸が深く開いたホルターネック。サイドはシースルーになっている。
「・・・・キメすぎてて、いや」
「じゃあどれならいいんだよ!」
むっとしたハヤトに、玲奈は適当に目に付いた水着を手に取った。上下分かれていて、上はキャミソール、下はショートパンツになっている。
「これがいい、安いし」
布が多いほうが安いとはいかがなものなのか。そう思いながらも玲奈はそれをハヤトに差し出した。
「そんなの、服と同じじゃん!だめだめ!」
「え~・・・じゃあどんなのならいいの」
「もっとかわいいか、えろいやつ」
基準がわからない、と思いながら玲奈はまた適当に白い水着を手にとった。
「じゃあこれ。」
下のパンツは少々小さいが、上はビキニタイプではなく、調節可能なバンドゥにパフスリーブがついている。これなら胸はしっかり隠れるだろう。
「わかった。それならいいや」
屋上のプールとやらは細長い空間に細長いプールがライトアップされていて、片側の一面ガラスから海とビル群が一望できた。
「どう?良い眺めだろ」
「そうだね」
玲奈は気のない返事をしてプールサイドにずらりと並んだイスに腰掛けた。合成レザーで、やわらかい。
ハヤトは腰掛けた彼女をじっと目に焼き付けた。
(似合ってる・・・・・かわいい)
細い肩と腰をフリルが彩り、手足はすらりと伸びている。ハヤトはくらっとめまいがしそうになった。
なぜ女というのは、こうもたくさんの姿を持っているのだろうか。
いつもの冷たい艶やかさはなりを潜めて、白いフリルにつつまれた彼女の華奢な肩は、触るのをためらわれるくらい、無垢な少女のものに見えた。
「・・・入れよ、一緒に泳ごう」
「私、泳げないんだよね」
「へーぇ」
ハヤトがにんまりと笑った。
「じゃあなおさら、泳ぎ教えてやるよ」
「・・・・ほんとをいうと、水はちょっと苦手」
「お前にも苦手とかあるんだ。何で?」
(・・・水泳の授業で、クラスメイトに沈められたことあるから)
とはさすがにいえない。そしてさらにほんとをいうと水だけでなく高いところろも苦手だ。理由は同じようなことで。
「だって息できないじゃん」
「は?なにそれ。冗談?」
「まさか」
怖い気持ちを振り払うように玲奈はイスから立ち上がった。
「でもそうだね、せっかく来たんだし。足くらいは入ってみる」
玲奈はプールサイドに腰かけ、足だけ差し入れた。
「・・・つめた」
「暑いからちょうどいいだろ」
「そうだね」
ザバリとハヤトが水から上がり、玲奈の隣に腰掛けた。怜奈を見るその表情は、甘えたいような拗ねたような、その中間の表情だった。
何をしてほしいかわかっている、だが玲奈からは言わない。ちらっとハヤトと目を合わせると、彼は観念してねだった。
「・・・・・キスして」
「いいよ」
玲奈は彼のあごをつかんでそっとくちびるをあわせた。
「んっ・・・ん・・・」
うすくて柔らかい唇だ。ハヤトは素直に玲奈の舌も唾液も受け入れるようになっていた。されるがままに舌をからませるうちに、ハヤトの体は熱くなった。
「あ・・・・あ・・・れ、玲奈・・・」
「なに?」
「し・・・した・・い」
「したい?何を?」
「れ、玲奈としたい」
玲奈は意地悪にふっと身体を放した。
「いやだよ。人くるかもじゃん、迷惑だよ」
「大丈夫・・・ひと、こないように・・・この時間、おさえさせた」
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる