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話がちがう
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蒼汰に念を押されていたので、詩音は前のバッグを手入れした後しまい込み、かわりに新しいこちらを下ろしたのであった。
すると三輪は大げさに顔をしかめた。
「えー? なんか、らしくないですね。先輩こういうの買うタイプじゃないでしょー?」
三輪はバッグを見て、なぜか面白くなさそうだった。勝手に手に取ってあれこれ言い始める。
「んーでも、実物みると、けっこう大きくてかわいくないかも。柄もダサく見えてきたなぁ~」
さすがにちょっと怖くなった詩音は、彼女をたしなめた。
「ちょっと、戻してもらえるかな? 私物なんだけど」
すると彼女はバッグを戻した。
「やだ、別に取ったりしませんよ。もうほしくないですしぃ」
くすくすくす、と彼女はバカにするように笑った。
「にしても、先輩見栄はっちゃいましたねぇ。ボーナス全部消えちゃったんじゃないですかぁ?」
言われて詩音は仰天した。
――蒼汰がカードでさっさと支払ってしまい、詩音は当然金額を聞いた。が。
『え? ないしょ。プレゼントだもん。そうだ、調べるのもダメだからね?』
そんな、と詩音が反論すると、蒼汰はあの圧のある笑顔で微笑んだ。
『やったらしーちゃんの検索履歴、チェックしちゃうからね?』
さすがにそれは、困る。というわけで詩音は、金額を知らずじまいだった。
ちょうどいい。彼女に聞いてしまおう。検索履歴にも残らないし。
「あのこれ……やっぱり、そんなに高いの?」
「は? 知らないで買ったんですかぁ?」
「いや、貰い物だったんだけど……さすがに……」
そんな高いものなら、何か返すなりしてけじめをつけなければ……。
と考える詩音を後目に、三輪は声を荒げた。
「え、もしかして買ってもらったんですか? あの社長に?」
詩音は彼女をたしなめた。
「しーっ、声大きいよ」
たしかに買ってもらったはもらったが、それで取引先とどうにかなってるなんて、誤解されては困る。
「はぁ? ねぇ、答えてくださいよ」
なぜかむきになっている三輪に、詩音は冷静に答えた。
「そんなの答える義務ないでしょう。ほら、お互い仕事に戻らないと」
しかし三輪は、デスクに座る詩音の全身をチラチラ見た。
「よく見たら靴も時計も……ふ~~ん……」
「ちょっとほら、いい加減部長に怒られるよ……」
困り声の詩音に、三輪は急に、にっこりと感じの良い笑顔を浮かべた。
「えへ、ごめんなさぁい。先輩の言う通りですね、お仕事戻りますぅ♡」
急激な変貌に、今度は詩音が戸惑った。
「え? まぁ、そうしてくれるとありがたいけど……」
三輪がさっと自席に戻ってくれたので、詩音はほっと胸をなでおろしたが――それもつかの間。
「せんぱーい、ここの取引先のこと、教えてくれませんかぁ」
「一緒にランチいきましょ、せんぱい♡」
なぜかたびたび、三輪が絡んでくる。
それも、友好的にだ。
「いや、ランチは遠慮しておく……仕事は教えるけど」
急に仕事に精を出し始めてくれたので、詩音はそこはありがたく質問に答えた。
「ここは田中くんと連携するといいよ。彼仕事早いし、数字も得意だから」
「はぁい。じゃ、田中君のところにいってきまぁす♪」
いつもおじさんたちに見せるようなニコニコ顔で、三輪は田中のもとへと向かった。
(ふぅ。や、やっと解放された)
どういう風の吹き回しかわからないが、とにかくまっとうに仕事をやる気になってくれたのはありがたい。
そう思いつつ、ランチ後も詩音はデスクに向かっていたが、そこへ速足で田中がやってきた。
「佐倉さん、ちょっと」
見上げると、田中の顔は若干げっそりしていた。
「どうかした?」
「なんであのパクリ女を、俺のもとに送り込んでくるんです。仕事になりませんよ」
「え? パクリ女って……」
ん! と田中が目線で、廊下を歩く三輪を指示した。
「田中くん、そんな言い方よくないよ」
「んなことどーでもいいんですよ」
若干田中が切れていたので、詩音は彼をなだめた。
三輪のことだ。どうせまた彼に対して、何かやらかしたのだろう。
「ごめんね。彼女が何かミスでもしちゃった?」
「ミスっていうか……」
普段は無表情な田中が、ぞっとしたような表情を浮かべて体を両手で抱きしめた。
「なんなんすか? あの人……仕事って言っておきながらやたらすり寄ってきて一方的にボディタッチしたりして……正直気持ち悪いっす、セクハラですよ!!」
な、なるほど。詩音は妙に納得してしまった。
「あ~……そうだよ、ね……。悪気はないとは思うんだけど……」
三輪のわざとらしいぶりっこ戦略は、年上のおじさんや――亮みたいな男には効果てきめんなのだ。相手がにこにこ鼻の下を伸ばして、仕事が円滑に回るんだろう。
けれど、田中のような若い新入社員にとっては、その対応は――。
「たしかにセクハラ、だよねぇ……うん。わかった。私からも伝えておくね。でもま、あんま悪く思わないであげて……そういう子なのよ」
男の子の方がアップデートしてるわね……と令和を感じながらも、詩音は答えた。
すると田中は険悪に言った。
「先輩も暢気すぎですよ。あんな人が俺や先輩にいい顔するなんて、また何か企んでるに決まってます。警戒してくださいよ。案件飛んだら、連帯責任なんすから」
「え? うーん、さすがに前の件で懲りてると思うけどね」
すると田中は、ちらっと詩音に目を走らせた。
「あとそーいうの、あんまりあの人に見せないほうがいいと思いますけど」
田中の目線が、詩音の新しい腕時計を見ていたので――さすがに詩音もがっくりきた。新しいバッグも時計も、人様にこんな言われるとは。
「こ、これ? そんなに似合わないかなぁ……」
「似合ってるから問題なんでしょ。センスいいですね、先輩」
さらりと言われて詩音はぎょっとしたが、田中はあくまで時計を見つめていた。
「トゥールビヨンドの準新作、いいですね。小ぶりながらも洗練されてて、腕の細い人がつけてもしっくりきてます」
「あ、田中くん時計好きなの?」
「はい。詳しいですよ」
詩音はちょっと聞いてみた。
「こ、これさぁ、いくらかわかる?」
「えーっと、」
さらっと答えられた金額に、詩音はのけぞりそうになってしまった。
―――たかが時計に、こんな値段がするなんて!!!!
そうちゃん、話が違う。次帰ってきたらとっちめてやろう。
一時間ほど残業し、詩音はこそこそ周りを見回しながら、退勤入力をした。
(こっそり、目立たないように帰ろう……)
自意識過剰かもしれないが、また亮につかまっても面倒だ。
そうっとオフィスから出た詩音だったが――
「せんぱぁい!」
「ひっ」
後ろにぴったりと三輪がくっついていた。
「先輩も今帰りなんですか? 一緒に駅までいきましょっか」
「そ、そうね。でも私、今駅使わないから、下まで一緒に行こうか……」
立地の近いマンションに感謝。
すると三輪は目を丸くした。
「えっ、先輩、今この近くに住んでるんですか?」
「うん、そう。一応……」
そもそもそこに住むことになった原因は、目の前の彼女にあるのだが……あまりに悪びれずに聞いてくるその図太さに、詩音はあきれを通り越して関心した。
「すごいですねぇ! あの社長さんが用意してくれたんですか? 太っ腹~」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
詳細を語りたくない詩音は濁した。
「いいですねぇ、一軒家? それともアパートですか?」
「集合住宅だよ……」
なぜか会社を出ても、三輪はついてくる。蒼汰と住むマンションは会社からも駅からもとても近いので、もうそろそろついてしまう。
「あの、私、こっちだからまた明日ね」
すると三輪ははっと気が付いたような顔をした。
「あっ、そうでした! 駅はあっちでしたね。先輩と話すのが楽しくってつい♪」
「いえ……それじゃあ」
いやいや……一体なんのつもりなのか……と思いながら、詩音はこわばった笑みでその場をあとにした。
すると三輪は大げさに顔をしかめた。
「えー? なんか、らしくないですね。先輩こういうの買うタイプじゃないでしょー?」
三輪はバッグを見て、なぜか面白くなさそうだった。勝手に手に取ってあれこれ言い始める。
「んーでも、実物みると、けっこう大きくてかわいくないかも。柄もダサく見えてきたなぁ~」
さすがにちょっと怖くなった詩音は、彼女をたしなめた。
「ちょっと、戻してもらえるかな? 私物なんだけど」
すると彼女はバッグを戻した。
「やだ、別に取ったりしませんよ。もうほしくないですしぃ」
くすくすくす、と彼女はバカにするように笑った。
「にしても、先輩見栄はっちゃいましたねぇ。ボーナス全部消えちゃったんじゃないですかぁ?」
言われて詩音は仰天した。
――蒼汰がカードでさっさと支払ってしまい、詩音は当然金額を聞いた。が。
『え? ないしょ。プレゼントだもん。そうだ、調べるのもダメだからね?』
そんな、と詩音が反論すると、蒼汰はあの圧のある笑顔で微笑んだ。
『やったらしーちゃんの検索履歴、チェックしちゃうからね?』
さすがにそれは、困る。というわけで詩音は、金額を知らずじまいだった。
ちょうどいい。彼女に聞いてしまおう。検索履歴にも残らないし。
「あのこれ……やっぱり、そんなに高いの?」
「は? 知らないで買ったんですかぁ?」
「いや、貰い物だったんだけど……さすがに……」
そんな高いものなら、何か返すなりしてけじめをつけなければ……。
と考える詩音を後目に、三輪は声を荒げた。
「え、もしかして買ってもらったんですか? あの社長に?」
詩音は彼女をたしなめた。
「しーっ、声大きいよ」
たしかに買ってもらったはもらったが、それで取引先とどうにかなってるなんて、誤解されては困る。
「はぁ? ねぇ、答えてくださいよ」
なぜかむきになっている三輪に、詩音は冷静に答えた。
「そんなの答える義務ないでしょう。ほら、お互い仕事に戻らないと」
しかし三輪は、デスクに座る詩音の全身をチラチラ見た。
「よく見たら靴も時計も……ふ~~ん……」
「ちょっとほら、いい加減部長に怒られるよ……」
困り声の詩音に、三輪は急に、にっこりと感じの良い笑顔を浮かべた。
「えへ、ごめんなさぁい。先輩の言う通りですね、お仕事戻りますぅ♡」
急激な変貌に、今度は詩音が戸惑った。
「え? まぁ、そうしてくれるとありがたいけど……」
三輪がさっと自席に戻ってくれたので、詩音はほっと胸をなでおろしたが――それもつかの間。
「せんぱーい、ここの取引先のこと、教えてくれませんかぁ」
「一緒にランチいきましょ、せんぱい♡」
なぜかたびたび、三輪が絡んでくる。
それも、友好的にだ。
「いや、ランチは遠慮しておく……仕事は教えるけど」
急に仕事に精を出し始めてくれたので、詩音はそこはありがたく質問に答えた。
「ここは田中くんと連携するといいよ。彼仕事早いし、数字も得意だから」
「はぁい。じゃ、田中君のところにいってきまぁす♪」
いつもおじさんたちに見せるようなニコニコ顔で、三輪は田中のもとへと向かった。
(ふぅ。や、やっと解放された)
どういう風の吹き回しかわからないが、とにかくまっとうに仕事をやる気になってくれたのはありがたい。
そう思いつつ、ランチ後も詩音はデスクに向かっていたが、そこへ速足で田中がやってきた。
「佐倉さん、ちょっと」
見上げると、田中の顔は若干げっそりしていた。
「どうかした?」
「なんであのパクリ女を、俺のもとに送り込んでくるんです。仕事になりませんよ」
「え? パクリ女って……」
ん! と田中が目線で、廊下を歩く三輪を指示した。
「田中くん、そんな言い方よくないよ」
「んなことどーでもいいんですよ」
若干田中が切れていたので、詩音は彼をなだめた。
三輪のことだ。どうせまた彼に対して、何かやらかしたのだろう。
「ごめんね。彼女が何かミスでもしちゃった?」
「ミスっていうか……」
普段は無表情な田中が、ぞっとしたような表情を浮かべて体を両手で抱きしめた。
「なんなんすか? あの人……仕事って言っておきながらやたらすり寄ってきて一方的にボディタッチしたりして……正直気持ち悪いっす、セクハラですよ!!」
な、なるほど。詩音は妙に納得してしまった。
「あ~……そうだよ、ね……。悪気はないとは思うんだけど……」
三輪のわざとらしいぶりっこ戦略は、年上のおじさんや――亮みたいな男には効果てきめんなのだ。相手がにこにこ鼻の下を伸ばして、仕事が円滑に回るんだろう。
けれど、田中のような若い新入社員にとっては、その対応は――。
「たしかにセクハラ、だよねぇ……うん。わかった。私からも伝えておくね。でもま、あんま悪く思わないであげて……そういう子なのよ」
男の子の方がアップデートしてるわね……と令和を感じながらも、詩音は答えた。
すると田中は険悪に言った。
「先輩も暢気すぎですよ。あんな人が俺や先輩にいい顔するなんて、また何か企んでるに決まってます。警戒してくださいよ。案件飛んだら、連帯責任なんすから」
「え? うーん、さすがに前の件で懲りてると思うけどね」
すると田中は、ちらっと詩音に目を走らせた。
「あとそーいうの、あんまりあの人に見せないほうがいいと思いますけど」
田中の目線が、詩音の新しい腕時計を見ていたので――さすがに詩音もがっくりきた。新しいバッグも時計も、人様にこんな言われるとは。
「こ、これ? そんなに似合わないかなぁ……」
「似合ってるから問題なんでしょ。センスいいですね、先輩」
さらりと言われて詩音はぎょっとしたが、田中はあくまで時計を見つめていた。
「トゥールビヨンドの準新作、いいですね。小ぶりながらも洗練されてて、腕の細い人がつけてもしっくりきてます」
「あ、田中くん時計好きなの?」
「はい。詳しいですよ」
詩音はちょっと聞いてみた。
「こ、これさぁ、いくらかわかる?」
「えーっと、」
さらっと答えられた金額に、詩音はのけぞりそうになってしまった。
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一時間ほど残業し、詩音はこそこそ周りを見回しながら、退勤入力をした。
(こっそり、目立たないように帰ろう……)
自意識過剰かもしれないが、また亮につかまっても面倒だ。
そうっとオフィスから出た詩音だったが――
「せんぱぁい!」
「ひっ」
後ろにぴったりと三輪がくっついていた。
「先輩も今帰りなんですか? 一緒に駅までいきましょっか」
「そ、そうね。でも私、今駅使わないから、下まで一緒に行こうか……」
立地の近いマンションに感謝。
すると三輪は目を丸くした。
「えっ、先輩、今この近くに住んでるんですか?」
「うん、そう。一応……」
そもそもそこに住むことになった原因は、目の前の彼女にあるのだが……あまりに悪びれずに聞いてくるその図太さに、詩音はあきれを通り越して関心した。
「すごいですねぇ! あの社長さんが用意してくれたんですか? 太っ腹~」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
詳細を語りたくない詩音は濁した。
「いいですねぇ、一軒家? それともアパートですか?」
「集合住宅だよ……」
なぜか会社を出ても、三輪はついてくる。蒼汰と住むマンションは会社からも駅からもとても近いので、もうそろそろついてしまう。
「あの、私、こっちだからまた明日ね」
すると三輪ははっと気が付いたような顔をした。
「あっ、そうでした! 駅はあっちでしたね。先輩と話すのが楽しくってつい♪」
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