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第一部 馴れ初めから結婚まで
初めてのキス
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「わかりました。行かせていただきます」
リリーの隣で、スノウはまぶたを伏せて父に答えた。その表情は沈んでいる。リリーは思わず心配になって彼女の肩に手を置いた。
「スノウ・・・可哀想に・・・」
すると予想外の言葉がスノウの父――リリーにとっては叔父――から出た。
「なーにが可哀想じゃ。お前も行くんじゃぞ」
「はい?」
「お妃候補は多いほうが良いにきまっておろう。スノウに比べりゃお前はちんちくりんだが、一人より二人のほうが当選確率は上がるじゃろ、はっはっ」
そんな、宝くじじゃあるまいし!?私は絶句した。
「ごめんなさい、リリーまでこの家のことにまきこんで・・・」
「い、いや・・その」
そこでスノウは私を見て儚く微笑んだ。プラチナブロンドの睫毛に縁取られた、サファイヤの瞳が美しくほころんだ。
「でも・・・一緒なら、安心だわ・・・・リリーは強いから・・・」
スノウが大好きなリリーは、その一言でお妃選定が始まる王子宮へ向かうことを承諾してしまったのだった。
「・・・どのドレスを持っていこうかしら」
「スノウにはピンクとか明るい色が似合うから・・・これと、これが妥当かな」
鏡の前で悩むスノウに、リリーは的確な指示を出した。
「なら、そうするわ。リリーの見立てっていつもおしゃれだもの」
ニコニコしながらスノウは言った。それに答えてリリーも鏡の中のスノウに控えめに微笑んだ。
鏡に映る、同じ年頃の少女2人はまったく対照的であった。
プラチナブロンドに雪のような白い肌、美しい青色の瞳を持つスノウは、その姿も中身も春風のように優しくたおやかで、誰もの目を引く美少女と言ってよかった。
一方リリーは深い栗色のブルネットに、金とも緑ともつかないヘイゼルの瞳。スノウに比べると表情が乏しく、一見すると無愛想に見える。がしかし、その目を覗き込むと強い意志のきらめきを感じさせる、どこか人をひきつける少女だった。
「あっ、でも待って、あんまり似合うドレスを持っていかないほうが、いいかも」
「え?なぜ?」
不思議そうに聞いたスノウに対してリリーは深刻に答えた。
「だって、噂のぼんくら第二王子だよ?第一王子が急病で亡くなったから最近王太子に躍り出たっていう・・・。スノウの事気に入られたら困るじゃない。ただでさえ美人なんだから!できるだけ目立たない服を持っていきましょう」
「まさかぁ。王子様が私なんか目に留めるはずもないわ」
春の小鳥のようにくすくすとスノウは笑った。
「でも、万が一、選ばれたら困っちゃうでしょう?スノウにはアーネストさんがいるんだから・・・」
とたんにスノウの表情が沈んだ。彼女にはすでに最愛の恋人、アーネストがいるのだ。
「そうね・・・私たちが王子宮に行くこと、彼に知られたくないわ・・・」
「でしょ?選ばれちゃったらもっと大変。だからうーん、ピンクはやめて、こっちの茶色と紺色のにしましょう」
そういうわけでスノウの荷物は少なめだが、リリーは化粧箱や香水などさまざまに入り用のものを旅行かばんにおさめたので大荷物になった。
「まぁ、リリーったら、そんなにたくさん持っていくの?」
「私は化粧しないと落ち着かないからね、はは」
「リリーは誰よりもおしゃれさんだものね。あら、リリーこそ王子様の目に留まってしまうかもしれないわ」
冗談めかして微笑むスノウに、リリーは心の中でこたえた。
ちがうの、
美しいあなたのとなりに立つ自分が、醜いのは恥ずかしいの。
あなたの目に映る自分が、少しでも美しくありたい。
そしてどうどうと晴れやかに、あなたの隣で微笑んでいたいの。
リリーが化粧に時間を割くのは、おしゃれが好きなわけでも、男性の気を引くためでもなく、すべてそのためだった。
ド田舎の辺境地域から、南へと馬車にゆられて王宮へやってきて2日目。与えられた部屋でスノウとリリーは肩を寄せ合っていた。
「あのご挨拶には、びっくりしたね・・・」
「私達、大丈夫かしら・・・」
昨日、全国から集まったお妃候補の娘達を前に、若き王子は実に尊大な態度だった。
「これで全員か・・・ふん」
蜜色の髪に透き通った色ガラスのようにまっさおな瞳。まだ少年らしさの残るその顔立ちは彫刻のように整っていた。だが見とれる娘もいる中で、彼は言い放った。
「余は次期国王のルセル。最初に言っておく。余は美人以外は嫌いだ。閨で動かぬ女、気の利かぬ女もだ。当てはまる者は即刻帰っていただきたい」
あまりな言い草に、大広間は水を打ったようにシーンと静まり返った。
(これは、まずい)
(俺様だ)
(サイコパスだ)
(モラハラだ)
姫達の胸中は様々に乱れた。王子のやばさを察してその日のうちに城を後にした者もいる。
一方リリーの胸の中もおだやかではなかった。
(どうしよう、スノウもこの国一と言っても過言ではない美人だ・・・。その姿はまさに立てば白バラ座ればネモフィラ、歩く姿はライラック・・・!予想以上にやばそうなあのあの王子に万が一、気に入られでもしたら!!)
一夜明けて、怯えるスノウにリリーは提案した。
「スノウ、私達も殿下のお眼鏡にかなわなかったってことにして、帰るチャンスよ!大丈夫、父上にはばれっこないわ」
優等生なスノウは一瞬迷ったがうなづいた。その胸の中にはアーネストの面影が浮かんでいるに違いない。
「よし、そうと決まればさっそく荷物をまとめましょう、幸いまだあまり荷物をひろげてませんから・・・」
さっそく手を動かし始めた矢先に、コンコンコン!とノックの音がした。いささか強めだ。スノウがびくっと身をふるわせた。
「はいはいすみませんね、今ちょっと取り込み中なので後にしてもらえませんか?」
リリーが扉に向かって言うと、相手は聞こえなかったのか扉をバンと開いた。
その向こうに立っていたのは、燃えるような赤毛の娘だった。着ているドレスは金糸や真珠を縫いこんだ豪華なもので、首元には大粒のガーネットが光っている。一見して裕福な有力貴族の姫だと見てとれた。
「あれ・・・?部屋、おまちがえでは?」
リリーがそういうと、彼女はつかつかと近寄ってきた。
「あなたたち、荷造りしているのね」
「そうですけど・・・」
すると彼女は満面の笑みになった。
「あら、よかったわ。また邪魔者を排除する手間がはぶけちゃった」
「はい?」
「ルセル様の妃の座を手に入れるのはこの私よ。負け犬はとっとと帰ることね」
面倒になったリリーは手を振って言い返した。
「ええそうですとも。ぜひ頑張って。ところで私達忙しいので、ご退出願えませんか」
「ふん、負け犬の遠吠えね、言われなくたって出て行くわよ」
ドアに向かって大またで歩いた彼女だったが、しかしピタリと立ちどまった。燕尾服をまとった長身の青年と行き会ったからだ。
「モーゼット侯爵のご息女、スノウ様とリリー様のお部屋はこちらでしょうか」
「そうですけれど・・・」
リリーはいやな予感がした。
「今、ルセル殿下が面会に参りますので、お支度をお願いします」
(くそっ、しくった!!!)
リリーはギリギリ歯噛みした。一方赤毛の令嬢は悲鳴を上げた。
「聞いていませんわ!お部屋訪問は明日からではございませんの!?」
「いえ・・・帰ってしまう姫もいたので今日から行うと。順番になりますのでどうぞエリザ様もお部屋でお待ち下さい」
赤毛の令嬢は返事もせずバタバタと部屋を出て行った。リリーはため息をついた。
「しょうがない。とりあえずここは殿下にお会いして、その後帰りましょう」
スノウとリリーは慌てて荷を隠してその場を取り繕った。
「ルセル殿下、おなりです」
さきほどの長身の青年の声がしたので、リリーは胸中でため息をつきながらドアを開けた。
「ごきげんよう、姫君たち」
予想とは裏腹に、王子は以外にもにこやかに部屋に入ってきた。
「お言葉ありがとうございます。どうぞお座りになってください」
リリーはそつなくイスを勧めたが、王子はまっすぐスノウへ向かって歩き、ひざまづいた。
「美しい人、どうかお手を」
ルセルは慣れた動作でスノウの手をとり、その白魚のような手に接吻した。
(ああーーーーっ!!!なんてこった!!)
いくら顔が綺麗でも、心の汚い男が大事なスノウに触れていると思うとリリーは怒りが湧き起こった。
そんなリリーをちらりと見て、ルセルがニタリと笑った、気がした。
一通り世間話をした後、ルセルは次の部屋へ行くためイスを立った。リリーがドアを開けて軽く頭を下げると、彼は再びニヤリと笑ってリリーの手をつかんでひっぱった。
「うわっ」
勢いあまってリリーは廊下へころげ出た。ドアがバタンとしまる。
「お前、さきほどスノウ姫に余が接吻したとき、すごい顔をしていたな?」
・・・やはり、みられていたか。リリーは素直に謝ることにした。
「申し訳ございません、殿下」
「よい、よい。お前、そんなに余の妃になりたいのか?」
「は?いやですけど」
「なんだと?」
しまった、本音が出てしまった。リリーは慌てて取りつくろった。
「いえほら、殿下は美人の基準が厳しそうですし。どうせお眼鏡にかなわないだろうから、私達帰ろうって言ってたんですよ」
「ふぅん・・・お前は好きに帰るのを許す。だがスノウ姫はなかなか気に入った。美人だからな。妃候補として残ってもらうぞ」
(そ、そ、そ、そんな~~~~~~~~!!!!!!!!!!)
そういい残してルセルは去った。リリーは敗残兵のような悲惨な表情で部屋に戻った。
「リリー、大丈夫?!あの人リリーにひどいことしなかった?」
心配していたらしいスノウがすぐさま駆け寄ってきてリリーを抱きしめた。その瞬間リリーの胸の中に熱い闘志が沸いた。
(ぜったいに、スノウを無傷で屋敷に戻す。そう、あの王子に手出しはさせない!!やってみせる、いや、決心した私にできないことなんて、ないっ!!!)
リリーの隣で、スノウはまぶたを伏せて父に答えた。その表情は沈んでいる。リリーは思わず心配になって彼女の肩に手を置いた。
「スノウ・・・可哀想に・・・」
すると予想外の言葉がスノウの父――リリーにとっては叔父――から出た。
「なーにが可哀想じゃ。お前も行くんじゃぞ」
「はい?」
「お妃候補は多いほうが良いにきまっておろう。スノウに比べりゃお前はちんちくりんだが、一人より二人のほうが当選確率は上がるじゃろ、はっはっ」
そんな、宝くじじゃあるまいし!?私は絶句した。
「ごめんなさい、リリーまでこの家のことにまきこんで・・・」
「い、いや・・その」
そこでスノウは私を見て儚く微笑んだ。プラチナブロンドの睫毛に縁取られた、サファイヤの瞳が美しくほころんだ。
「でも・・・一緒なら、安心だわ・・・・リリーは強いから・・・」
スノウが大好きなリリーは、その一言でお妃選定が始まる王子宮へ向かうことを承諾してしまったのだった。
「・・・どのドレスを持っていこうかしら」
「スノウにはピンクとか明るい色が似合うから・・・これと、これが妥当かな」
鏡の前で悩むスノウに、リリーは的確な指示を出した。
「なら、そうするわ。リリーの見立てっていつもおしゃれだもの」
ニコニコしながらスノウは言った。それに答えてリリーも鏡の中のスノウに控えめに微笑んだ。
鏡に映る、同じ年頃の少女2人はまったく対照的であった。
プラチナブロンドに雪のような白い肌、美しい青色の瞳を持つスノウは、その姿も中身も春風のように優しくたおやかで、誰もの目を引く美少女と言ってよかった。
一方リリーは深い栗色のブルネットに、金とも緑ともつかないヘイゼルの瞳。スノウに比べると表情が乏しく、一見すると無愛想に見える。がしかし、その目を覗き込むと強い意志のきらめきを感じさせる、どこか人をひきつける少女だった。
「あっ、でも待って、あんまり似合うドレスを持っていかないほうが、いいかも」
「え?なぜ?」
不思議そうに聞いたスノウに対してリリーは深刻に答えた。
「だって、噂のぼんくら第二王子だよ?第一王子が急病で亡くなったから最近王太子に躍り出たっていう・・・。スノウの事気に入られたら困るじゃない。ただでさえ美人なんだから!できるだけ目立たない服を持っていきましょう」
「まさかぁ。王子様が私なんか目に留めるはずもないわ」
春の小鳥のようにくすくすとスノウは笑った。
「でも、万が一、選ばれたら困っちゃうでしょう?スノウにはアーネストさんがいるんだから・・・」
とたんにスノウの表情が沈んだ。彼女にはすでに最愛の恋人、アーネストがいるのだ。
「そうね・・・私たちが王子宮に行くこと、彼に知られたくないわ・・・」
「でしょ?選ばれちゃったらもっと大変。だからうーん、ピンクはやめて、こっちの茶色と紺色のにしましょう」
そういうわけでスノウの荷物は少なめだが、リリーは化粧箱や香水などさまざまに入り用のものを旅行かばんにおさめたので大荷物になった。
「まぁ、リリーったら、そんなにたくさん持っていくの?」
「私は化粧しないと落ち着かないからね、はは」
「リリーは誰よりもおしゃれさんだものね。あら、リリーこそ王子様の目に留まってしまうかもしれないわ」
冗談めかして微笑むスノウに、リリーは心の中でこたえた。
ちがうの、
美しいあなたのとなりに立つ自分が、醜いのは恥ずかしいの。
あなたの目に映る自分が、少しでも美しくありたい。
そしてどうどうと晴れやかに、あなたの隣で微笑んでいたいの。
リリーが化粧に時間を割くのは、おしゃれが好きなわけでも、男性の気を引くためでもなく、すべてそのためだった。
ド田舎の辺境地域から、南へと馬車にゆられて王宮へやってきて2日目。与えられた部屋でスノウとリリーは肩を寄せ合っていた。
「あのご挨拶には、びっくりしたね・・・」
「私達、大丈夫かしら・・・」
昨日、全国から集まったお妃候補の娘達を前に、若き王子は実に尊大な態度だった。
「これで全員か・・・ふん」
蜜色の髪に透き通った色ガラスのようにまっさおな瞳。まだ少年らしさの残るその顔立ちは彫刻のように整っていた。だが見とれる娘もいる中で、彼は言い放った。
「余は次期国王のルセル。最初に言っておく。余は美人以外は嫌いだ。閨で動かぬ女、気の利かぬ女もだ。当てはまる者は即刻帰っていただきたい」
あまりな言い草に、大広間は水を打ったようにシーンと静まり返った。
(これは、まずい)
(俺様だ)
(サイコパスだ)
(モラハラだ)
姫達の胸中は様々に乱れた。王子のやばさを察してその日のうちに城を後にした者もいる。
一方リリーの胸の中もおだやかではなかった。
(どうしよう、スノウもこの国一と言っても過言ではない美人だ・・・。その姿はまさに立てば白バラ座ればネモフィラ、歩く姿はライラック・・・!予想以上にやばそうなあのあの王子に万が一、気に入られでもしたら!!)
一夜明けて、怯えるスノウにリリーは提案した。
「スノウ、私達も殿下のお眼鏡にかなわなかったってことにして、帰るチャンスよ!大丈夫、父上にはばれっこないわ」
優等生なスノウは一瞬迷ったがうなづいた。その胸の中にはアーネストの面影が浮かんでいるに違いない。
「よし、そうと決まればさっそく荷物をまとめましょう、幸いまだあまり荷物をひろげてませんから・・・」
さっそく手を動かし始めた矢先に、コンコンコン!とノックの音がした。いささか強めだ。スノウがびくっと身をふるわせた。
「はいはいすみませんね、今ちょっと取り込み中なので後にしてもらえませんか?」
リリーが扉に向かって言うと、相手は聞こえなかったのか扉をバンと開いた。
その向こうに立っていたのは、燃えるような赤毛の娘だった。着ているドレスは金糸や真珠を縫いこんだ豪華なもので、首元には大粒のガーネットが光っている。一見して裕福な有力貴族の姫だと見てとれた。
「あれ・・・?部屋、おまちがえでは?」
リリーがそういうと、彼女はつかつかと近寄ってきた。
「あなたたち、荷造りしているのね」
「そうですけど・・・」
すると彼女は満面の笑みになった。
「あら、よかったわ。また邪魔者を排除する手間がはぶけちゃった」
「はい?」
「ルセル様の妃の座を手に入れるのはこの私よ。負け犬はとっとと帰ることね」
面倒になったリリーは手を振って言い返した。
「ええそうですとも。ぜひ頑張って。ところで私達忙しいので、ご退出願えませんか」
「ふん、負け犬の遠吠えね、言われなくたって出て行くわよ」
ドアに向かって大またで歩いた彼女だったが、しかしピタリと立ちどまった。燕尾服をまとった長身の青年と行き会ったからだ。
「モーゼット侯爵のご息女、スノウ様とリリー様のお部屋はこちらでしょうか」
「そうですけれど・・・」
リリーはいやな予感がした。
「今、ルセル殿下が面会に参りますので、お支度をお願いします」
(くそっ、しくった!!!)
リリーはギリギリ歯噛みした。一方赤毛の令嬢は悲鳴を上げた。
「聞いていませんわ!お部屋訪問は明日からではございませんの!?」
「いえ・・・帰ってしまう姫もいたので今日から行うと。順番になりますのでどうぞエリザ様もお部屋でお待ち下さい」
赤毛の令嬢は返事もせずバタバタと部屋を出て行った。リリーはため息をついた。
「しょうがない。とりあえずここは殿下にお会いして、その後帰りましょう」
スノウとリリーは慌てて荷を隠してその場を取り繕った。
「ルセル殿下、おなりです」
さきほどの長身の青年の声がしたので、リリーは胸中でため息をつきながらドアを開けた。
「ごきげんよう、姫君たち」
予想とは裏腹に、王子は以外にもにこやかに部屋に入ってきた。
「お言葉ありがとうございます。どうぞお座りになってください」
リリーはそつなくイスを勧めたが、王子はまっすぐスノウへ向かって歩き、ひざまづいた。
「美しい人、どうかお手を」
ルセルは慣れた動作でスノウの手をとり、その白魚のような手に接吻した。
(ああーーーーっ!!!なんてこった!!)
いくら顔が綺麗でも、心の汚い男が大事なスノウに触れていると思うとリリーは怒りが湧き起こった。
そんなリリーをちらりと見て、ルセルがニタリと笑った、気がした。
一通り世間話をした後、ルセルは次の部屋へ行くためイスを立った。リリーがドアを開けて軽く頭を下げると、彼は再びニヤリと笑ってリリーの手をつかんでひっぱった。
「うわっ」
勢いあまってリリーは廊下へころげ出た。ドアがバタンとしまる。
「お前、さきほどスノウ姫に余が接吻したとき、すごい顔をしていたな?」
・・・やはり、みられていたか。リリーは素直に謝ることにした。
「申し訳ございません、殿下」
「よい、よい。お前、そんなに余の妃になりたいのか?」
「は?いやですけど」
「なんだと?」
しまった、本音が出てしまった。リリーは慌てて取りつくろった。
「いえほら、殿下は美人の基準が厳しそうですし。どうせお眼鏡にかなわないだろうから、私達帰ろうって言ってたんですよ」
「ふぅん・・・お前は好きに帰るのを許す。だがスノウ姫はなかなか気に入った。美人だからな。妃候補として残ってもらうぞ」
(そ、そ、そ、そんな~~~~~~~~!!!!!!!!!!)
そういい残してルセルは去った。リリーは敗残兵のような悲惨な表情で部屋に戻った。
「リリー、大丈夫?!あの人リリーにひどいことしなかった?」
心配していたらしいスノウがすぐさま駆け寄ってきてリリーを抱きしめた。その瞬間リリーの胸の中に熱い闘志が沸いた。
(ぜったいに、スノウを無傷で屋敷に戻す。そう、あの王子に手出しはさせない!!やってみせる、いや、決心した私にできないことなんて、ないっ!!!)
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