冷酷宰相様のわかりにくい溺愛~役立たずと虐められ、権力者へのハニトラ要員にされましたが、すっかり気に入られてしまったようです~

小達出みかん

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二度と会いたくないと思ったのに

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 カーテンを見上げて、さもおかしげにバートは笑った。
「カーテンの裏なんて! お前はほんとうにバカだなぁ」
 ヘンリエッタはうつむいた。もっとましな場所に隠れればよかったと思ったが、もうあとの祭りだった。
「レイズは……レイズはどうしたの」
「ん? ああ、あの女の事? ニックたちが抑えてるよ」
 あの男まできているのか――。顔をしかめるヘンリエッタの手を無理やりひっぱり、バートは自分の方へとひきよせた。
「いい恰好してるじゃないか。意外だよ、すっかり愛人の座におさまったな」
 するりと片手で背中を撫でられる。ドレス越しではあったが、気持ち悪くて吐き気がしそうになる。
「お前、俺の前では清純ぶっておきながら――本当のところは、男をたらしこむなんて芸当ができたんだな? 俺の言ってた通りじゃないか」
 片手で無理やりあごを掴まれて、ヘンリエッタは目をそらそうと頑張った。が、バートは許さなかった。
「淫売の娘は、淫売だな。さぁ、お母さまがお待ちだ。さっそく宰相の情報を吐いてもらうぞ」
 その言葉だけは聞き流せず、ヘンリエッタは首を振った。
「いいえ! 私は愛人などではありませんし、何も、知りません」
 すると、イライアスは少し驚いた顔をしたあと、ヘンリエッタを嘲るようにのぞき込んだ。
至近距離のその表情は、毒々しかった。
「はは、おい、何をかまととぶってる? 本当に愛人かどうか、ここに聞いてもいいんだぞ」
 そう言って、尻をぎゅっと掴まれる。我慢できなくなったヘンリエッタは、身をよじって彼の腕から逃れようとした。
「やめて……放して!」
 ドン、と突き飛ばすと、バートの表情が毒々しい笑みから猛々しいいら立ちに変わった。
「お前……何様のつもりだ。売女の分際で!」
 ここで連れ去られるなら、いっそ殺された方がましだ――そう思ったヘンリエッタは、ずっと言いたかった事を口に出した。
「ちがいます! 私はそんな事、したことありません! いつも私に手を挙げてくるそちらこそ、卑しい事で頭がいっぱいじゃありませんか!」
 するとバートは激高して、ヘンリエッタに襲い掛かった。無理やり書斎の床に押し付けられ、バートの拳が振り上げられた、その時――
「うちの者に何か用か」
 バタンとドアがあいて、イライアスの低い声が響き渡った。
「あ……!」
 助けを求めるように、ヘンリエッタは夢中で彼の方を見た。戸口に立つイライアスは、今までで見た中で一番威圧感のある、鋭く冷たい目をしていた。しかし彼は冷静に、固まったバートをむんずと掴み、その下のヘンリエッタを起こして自分の傍らに立ち上がらせた。
「ソーンフィールド家の皆さんをお招きした覚えはない。不法侵入ということになるが」
 氷のように冷たい声で言ったイライアスに、バートははっとして立ちあがった。
「な……何が不法侵入だ! このヘンリエッタは俺の妹だぞ!」
 バタバタと足音がし、ヘンリエッタがはっと振り向くと、書斎の入り口には駆け付けたデリラとニックが立っていた。その後ろには、用心棒なのか体の大きな男性がぞろぞろと立っている。デリラはおびえるヘンリエッタを見たあと、勝ち誇ったようにイライアスに言った。
「その通りですのよ、宰相様。あらあら、そんな怖い顔をなさらないで。私たち、こうして顔を出すつもりなんてありませんでしたのよ。ただ……こうして我々の娘を囲っておくのならば、それ相応の扱いをしていただきたいと思いましたのよ」
「それ相応とは?」
「うちの娘を愛人としてもらい受けるのなら――我がソーンフィールド家にも温情をいただきたいものですわ。まずは先日取り上げられた領地の返還。それに、改正した奴隷売買の法律の撤廃……こんなところかしら」
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