偽乳と女装と俺とルームシェア男友達

#９５悟れない本心と、突然の嫉妬

ネットの掲示板で得た「本心を伝えろ」というアドバイスに、サトシの心は大きく揺さぶられた。しかし、自分の本心とは一体何なのか。哲夫の強引な行為に抵抗しながらも快楽に溺れたこと、そして、最近哲夫が触れてこないことへの虚しさ。それら全てが入り混じり、サトシは自分自身の本心が悟れない状態のまま、家へと帰宅した。

玄関を開けると、リビングから声が聞こえてくる。先に帰っていた哲夫が、ソファに座り、楽しそうに電話で話しているのだ。その声色は、普段サトシと話す時とは違う、どこか甘やかで親密な響きがあった。

「うん、うん、そうだな。また今度、ゆっくり話そうぜ」

哲夫の口から漏れる言葉から、相手が女性であることは明らかだった。モテモテ男の哲夫のことだ。女性と電話していること自体は珍しくないはずなのに、その時、サトシの胸に、今まで感じたことのない奇妙な感情が芽生えた。

（……誰だ？ あの女……）

胸の奥がざわつき、言いようのない不安感がサトシを襲う。そして、電話の向こうの、顔も知らない女性に対し、嫉妬のような感情が渦巻いた。自分のものとして所有したいわけではない。しかし、哲夫が自分以外の女性に、あんな甘い声で話していることが、なぜか許せなかった。

哲夫は電話を終えると、こちらに気づいて笑顔を向けた。

「お、サトシ。おかえり」

いつも通りの笑顔。しかし、その笑顔が、サトシの胸の奥に渦巻く嫉妬の感情を、さらに募らせていくようだった。