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女菌と少年たち

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ねぇ……昔
皆が小学生ぐらいだったころ
こんなうわさが流行らなかった……?
私も友達と噂してたの
女菌っていう噂をね……

学校の昼休み時間

友達と廊下へと出ると
向かいから女子たちが歩いてきた
どいつもこいつも
道をふさぐように
横に並んで
ノロノロとやって来る……
ううっ本当に邪魔だな~っ!

同じくソレを見かねた友達のケンジも
女子たちに声をかける

「おいっ邪魔だぞ
  広がって歩くなよ!
  ぶつかったら女菌が移っちまうだろ!」

「そうだそうだww!」
俺とケンジがふざけ半分に
そんな言葉を浴びせると
不機嫌そうな顔になりながらも
女子たちは道を開け
俺たちはソレを横切って校庭へと向かった……

着いた校庭で他の奴らとも
合流すると皆に
女子のせいで遅れたことを話す


そして話題は
さっきケンジが思い付きで言い放った
女菌の話に変わった

「女菌かww
  本当にありそうだなww怖えw!」

「でっ?汚染されるとどうなんのw?」

皆でケンジの作り話に耳を傾ける
「それじゃ…
     女になっちまうってのはどうだww?
  んでっ心も
         女に染まっちまうのww!」

「うわぁww最悪だなそんなのw!」

「汚染したのに気づくにはどうするんだ?」
俺も聞いてみる

「ん~っ……あっ!
  女の匂いが自分の身体に
   移ったら菌に
    汚染されたっていうのはどうだww?」

皆で女子たち特有の匂いを思い浮かべてみる
確かに男にはないような
独特の匂いだし
嗅ぎ分けはつくよな……

「でも女って良い匂いだよな……
  オレの親戚の
          姉ちゃんはそんなんだった///」

一緒に思い浮かべていた
友達の一人が嬉しそうに語りだすが
皆呆れた顔で
話半分にしか聞かなかった……


そして放課後
帰りもその話題へと変わる

女菌の話を振ったのは
ケンジだった


「言い出しっぺはオレだしw
  この際女菌をリアルなものに再現して
   女子たちに
   デカい顔させないようにしてやろうww」

「本当楽しそうだなお前ww
  まぁ精々仕返しされないように
   頑張れよww」

また何か悪いことを
ひらめいたみたいだな
でも一体何をする気なんだろ……?

そして次の日にケンジの奴は
昨日の話を本当に実行に移した

ケンジは自身の服の袖に鼻を近づけ
イヤそうに嗅いだ

「匂いが染みついちゃったよ
     wwどうすんだよ!
 あーあっ‼
   女菌がついちまったよぉ~っ!」


「知らないわよ!そんなの
  人をばい菌扱いすんな!」

「バッカじゃないのww本当サイテー!」

ケンジの悪ふざけに
不快感を抱き言い返す女子もいれば
泣きだした女子もいた


でも確かに
ケンジの袖には何か
体臭とは違う匂いが染みついている

近づかなくても
漂ってくるそのキツイ香りに
少し俺は戸惑った

まさか本当に
女菌が……?
だけど
その後トイレで
ケンジはタネ明かしをした

「えっ⁉……じゃあその匂いって
  お前の母親の香水の匂いだったのか?」

袖を水に浸し石鹸をつけて手で
洗いながらケンジは笑う

「ああwおかげで
  大体の奴はオレに
   騙されたみたいだけどなww」


「……そうだよな!
  俺は嘘だってわかってるけど」

そして帰りの時間
俺はランドセルを背負い
またトイレに行ったケンジに
声をかける


「……おいっケンジ
  いつまで洗ってんだよww!
  早く帰んねぇと
      もうすぐ学校閉まるぞ?」

「ああっわかったわかった~っ
  (おかしいんだよな~……
  匂いが腕にまで染みついてやがる
  きつくつけたせいかなw?
  石鹸だけじゃ匂いが
                  全然落ちねぇよww)」

俺が待っているとケンジは
濡れた石鹸まみれの腕に
まくった袖をおろし
急いでトイレから出ていった……


だが次の日
学校にケンジの姿は……なかった

次の日もそして
また次の日になっても……


でもその次の日は
ケンジの席に知らない女の子が
朝早く教室に来て座っていた


その日偶然
日直だった俺は
まだ誰も来ていない
教室で初めて
その子と顔を合わせた
「おはよう……」

その女子は俺の顔を見つめ
笑顔で挨拶をしてきた

「?……おはよ」

誰だコイツ……
俺は尋ねた

「君の座っている
  そこ…ケンジってやつの
                             席なんだけど」
                             
                             
                             
「知ってるww」

「あのさ君……クラス
    間違えてんじゃないの?」

「ううん……
  私は最初からこのクラスにいたよ?」

「……

 ねぇ……君本当に誰なの?」

するとその女子は
はにかんで俺に笑って答えた

「信じてくれないかも
  しれないけど……私はケンジなの」

「はっ?」

秘密でも打ち明けたかのように
彼女は俺を
真っ直ぐな目で見つめた……

「そっそんな!まさかそんなの冗談だろ⁉
  どっか似ているなとは思ったけど
  本人だとしても
      女装してるだけだろww」

俺は冗談で丸く収めようとした……


でもケンジは
スカートの下の下着をずらし
自身の変わり果てた身体の
一部を俺に見せた

「っ……!」

こんなの見せられたら
信じる以外他にはない……

何も言えなくなっていく
俺にケンジは明るく声をかけた

「ごめんねw私……
  本当に女菌に
  かかっちゃったみたいなんだ……w

  これで嘘が本当になっちゃった……」

「お前さ……その体で
  何とも思わないの?」

「別に…w
  もう心も女の子になったみたいで
  今までの男の子だった
   自分が全部
     信じられないって感じかなw?」

「そう……か」

「……でもこんなカラダじゃ
  もう皆とは遊べないね
  きっと他の女の子たちからも
   煙たがられるだろうし……
   おっ…おまっ
   オマエも離れたくなるよなww?」

今まで普通に使っていた言葉遣いも
ケンジにとっては
ぎこちなさそうに見える……


「別に無理して慣れない
  言葉遣いなんかしなくていいよ

  それにさ……
   女菌でお前が女になろうが
   俺はお前を煙たがるもんかww」

「あっ……ありがと///」

ケンジは嬉しそうに
俺に飛びつく

でもそれはちょっと……
男と女同士でまずいんじゃないかなw?

こうして女に変わったケンジに
皆が驚いた一日が終わり
帰り道
先に家の前に着くとケンジは手を振る

「フフッばいばーい!」

「ああっ
   またな~!」


何だかまだケンジの匂いがする気がする
確かに良い匂いだよな……女の匂いって

「っ!……///」

いやいやww
何考えてんだ俺


家に着くと
俺は服を洗濯籠に脱ぎ入れ
風呂へと入った

そして夜になり
家族と夕飯を食べていると
母さんからこんなことを言われた……



「あらっ……パジャマに何か香りが染みついてるわよ?
  何か女の子みたいな……優しい匂い」


「えっ……?」

……end
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