【マフィア×元軍人】 狂犬を躾けたら、ピカピカの可愛い「愛犬」になったでしょ?

あすぱら

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2号とリオン

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 俺は何か面白い「遊び」でも仕掛けようと、屋敷の中をリオンを探して歩いていた。
 だがあいつは、いつもいるはずの書斎にも、寝室にも、シアタールームにもいなかった。
(どこ行ったんだ?)
 俺は少しだけ、面白くない気分になった。俺の犬が、俺の知らないところで、何をしているのか。
 その時リビングの方から何か人の声がするのに気が付いた。
 低い、囁くような声。来客の予定はないはずだ。
 俺は猫のように音もなく、そっとリビングのドアの隙間から、中の様子を覗き込んだ。
 ​そして俺は信じられない光景を目にすることになる。
 ​リオンがいた。
 あいつは床に行儀よく膝を抱えて座り込み、テーブルの上に置かれた金魚鉢をじっと見つめていた。
 そして、その金魚鉢に向かって、話しかけている。
 ​その声は、俺や、他の部下たちと話す時の、あの、ぶっきらぼうな響きではなかった。
 もっと素直で静かで、そしてどこか疲れたような、穏やかな声だった。
「……今日の昼飯、また甘いもんだった。フルーツサンド。あいつ、俺が甘いもの好きだと思い込んでるらしい。……まあ、別に、嫌いじゃねえけど」
「……庭の、薔薇が咲いてたぞ。白いやつだ。……お前の、ヒレみたいで、綺麗だった」
 ​俺は息を呑んだ。
 俺以外に、話し相手が、いないから。
 だから、金魚に、話しかけているのか。
 俺が「リオン2号」と名付けた、ただの金魚に、一日の報告を。
 ​……なにそれ。
 ​健気すぎて、哀れで、そして。
 最高に、可愛いじゃん。



 屋敷の使用人たちは、むやみにリオンに話しかけない。やりとりは最小限。下手なことをして俺の怒りを買う事態を恐れるためだ。
 リオンはこの屋敷では腫れ物のように扱われている。それを俺は知っていた。その状況は、あいつを俺に依存させるためには、とても好都合だったから。
 それによってこいつは、こんなにも孤独で、そして、こんなにも可愛らしい生き物になってしまったのだ。



 俺はその光景に、腹の底から、どうしようもないほどの愛おしさが込み上げてくるのを感じた。
 ​あいつに気づかれないように、そっとその場を離れる。
 この秘密の光景を邪魔するのは、あまりにも、もったいない。
 ​俺は書斎に戻ると、ソファに身を沈め、込み上げてくる笑いを必死でこらえた。
 ああ、なんて、可愛いんだろう。俺の犬は。
 俺がいないところでは、金魚に、話しかけちゃうんだ。
 ​俺は決めた。
 この事実は、もちろん、あいつには教えてやらない。
 これは俺だけの新しい秘密。
 いつかあいつをどうしようもなくからかってやりたくなった時のために、大切に、大切にしまっておこう。



■あとがき■
2号は妙に人懐っこい。誰かしら人間が来るとすいっと近づいてくる。
自分の顔を見ると寄ってきてくれるので、リオンは2号が好き。


読んでいただきありがとうございました!

※次回更新予定は11/21(金) 20:00 です。
いよいよ寒くなってきました。ペットの皆様も暖かくしてお過ごしください。


―――――次回予告―――――

「せっかく可愛い声してるのに」

第12話『声 * 』
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