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声 *
しおりを挟むその夜、ベッドの中で、ルシアンは満足げに俺の身体を撫でながら、ふと思いついたように言った。
「ねぇリオン、お前ってさ、いっつも声、我慢してるよね」
彼の指が、俺の喉元をそっとなぞる。その指が黒革のチョーカーに触れた。
こぼれそうになった吐息を、必死で喉の奥に押し戻した。
「ほら。もったいないなぁ。せっかく可愛い声してるのに」
俺がその言葉の意図を測りかねていると、彼は悪戯っぽく笑った。
「俺、お前のいろんな声が聞きたいな。だから今から、 俺がたーっぷり気持ちよくしてあげるからさ、可愛い声で鳴いてみせて?」
そのあまりにも馬鹿げた命令に、俺は思わず低い声を出した。
「……は? なんで俺が、そんなことを」
「あれ? 主人の命令なのに? できない子は、できるようになるまで、ちゃんと躾けてあげないと」
その言葉と共に、彼の指が俺の身体の、最も感じやすい場所を的確に探り当てた。
「っ…!」
思わず漏れそうになる声を、俺は奥歯を噛み締めて飲み下す。ルシアンは、そんな俺の様子を面白そうに観察しながら、耳元で囁いた。
「だーめ。そんなに唇噛んじゃ。可愛い声が聞こえないでしょ?」
彼の指が、俺の唇を優しくこじ開ける。
「ほら、もっと力抜いて。俺が聞きたいのは、お前の我慢してる顔じゃなくて、蕩けきった声なんだから」
それから、執拗な調教が始まった。
彼の指と舌は、俺の理性を飽和させるように、複数の敏感な箇所を同時に、的確に攻め立ててくる。ゆっくりとした愛撫から、突然激しい刺激へ。予測不可能な快感の波に、俺の呼吸はどんどん乱れていった。
「ほら、声、出そうだよ? 我慢しなくていいんだよ。もっと鳴いて? 俺が許してあげる」
「お前の可愛い声、俺に聞かせてよ」
その甘い囁きは、脳を直接溶かす毒のようだった。
声を上げることは、完全に屈服することを意味する。軍人としての、男としての最後の矜持が、必死に抵抗していた。
だが、身体は、もうとっくに正直だった。
「…ぅ、く…っ、ん……!」
噛み締めた唇の隙間から、押し殺した呻き声が漏れ始める。その小さな声を、この男は逃さない。
「そうそう、上手。もっと、もっとだよ、リオン」
彼は、とどめを刺すように、俺が最も抗えない一点を、深く、執拗に突き上げた。
その瞬間、俺の中で、張り詰めていた理性の糸が、ぷつりと音を立てて焼き切れた。
「あ……ッ、ぁ、あ、ルカ…っ、だめ、そこ、は…ッ、ぁ、ぁああッ!」
せきを切ったように、自分の喉から甲高く、甘い声がほとばしる。それは、俺自身が聞いたこともないような、恥ずかしいほどに蕩けきった、純粋な快感の発露。
もう我慢なんてできなかった。矜持も理性も、すべてが脳を焼く快感の奔流に押し流されていく。身体は大きく弓なりにしなり、快感に耐えきれず、目尻から涙がこぼれ落ちた。
「んっ、ふ、ぁ…、いや、や、だ…っ、もっと……!」
支離滅裂な言葉が、鳴き声と共にあふれ出す。
ルシアンは、その声を、まるで美しい音楽でも聴くかのように、うっとりと聞き入っていた。
そして、俺が絶頂の波に呑まれ、ぐったりと弛緩したのを見届けると、深く満足げに微笑んだ。
彼は、涙で濡れた俺の頬をぺろりと舐める。
「最高の声だったよ」
その金色の瞳は、勝利の喜びに蕩けていた。
「やっと聞けた、お前の本当の声。すっごい可愛かった」
彼は、まだ余韻に震える俺の身体を抱きしめ、耳元で、決定的な命令を下した。
「これからは、いつもこの声で鳴いていいんだよ。俺のために」
俺は、もはや抵抗する気力もなく、自分の最も無防備な部分を主人に完全に明け渡してしまったことを、快感の残滓の中で、ぼんやりと理解した。
■あとがき■
ルシアンはリオンの声が大好き。普段の声も、鳴き声も、たまに漏れてる鼻歌も。どタイプ。
読んでいただきありがとうございました!
実はこういうところに投稿するのは今作が初めてなのですが、ポイントが増えるのが目に見えるとやっぱり嬉しいですね!
※次回更新予定は11/24(月) 20:00 です。
もうすっかり吐いた息が白くなる時期ですねぇ。
―――――次回予告―――――
「待ってました。はじめましてこんにちは!ファンです!」
「……はあ?」
第13話 『フェブとノマの出会い(過去話)』
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